案内役の心中……だと一緒に死ぬ的な方を思い浮かべかねないな、えーと内心はさておき、世界を安定させるためには『ギラティナ』を創造する必要がある事は確からしい。
ディアルガとパルキアも首を縦に振っているので間違いない。何故知っているのかはこの際気にしないでおこう。
いやね、俺が創造したんじゃなく俺の創造したガチャから排出されてるから、こう、英霊が召喚される時に聖杯から必要な知識を与えられてる的な?
だとしたら俺は人類最後ならぬ世界最初のマスターになるのか。夢が広がるな。
「世界を安定させるための重りというか安全確保のためのクッションというか、世界の裏側、または虚数空間的な『やぶれたせかい』が必要でして。それがないと時間は加速し続け空間も膨張が止まらずリソースがみるみる枯渇します」
「なんかリソースとか怖い言葉が聞こえたけど、まずはガチャ更新して回すわ」
時間が加速し続けたら世界が一巡するのは知っている。○ョ○ョで見た。キョキョだとマギレポを思い出すね。まぁ主人公が円環の理になるノルマを達成した時点で大往生だろ。
この場合だと加速させるディアルガ、平行世界に渡れるから実質逃げられるパルキア、後は時を渡るセレビィとかの例外があるくらいで、それらを除いた全ての生命体が良く似た他人に変わってというか代わってしまう事になる。
俺は嫌だぞ、失敗するのはわかってるけどやらなきゃないとか。
結果がわからないから僅かな希望に縋って進めるわけで、途中で絶対に当たらなくて最初から天井確定とか萎えるわ。
なおここまで確定ガチャのみ。
というかアルセウスボディの俺も耐性持ちじゃんね。
どちらにせよ、急速に加齢している事実は耐え難い。急げ俺。光よりも、時間よりも、思考よりも更に先へ――!
『ぼ、ぼくのなまえは、その、ギラティナ……です』
「あらかわいい」
「よろしくな、ギラティナ」
『はっ、ははははいぃぃ! よろしくおねがいしましゅごすずん!』
うむ、とても控えめで良い子だ。案内役の説明を聞いてはんこつポケモンを反骨じゃなく半骨って脳内誤変換して作業してたら骨無しチキン的な感じで臆病になってしまったようだ。
いやそうなならんやろ。
ディアルガとパルキアが顎外れてるけど、案内役は受け入れてるから世界の維持には問題ない……はずだよな?
「次は『やぶれたせかい』ってやつ?」
「ですの。時間は流れず空間は安定していない、世界の裏側。独立した世界なので動きがないだけとはいえ、時空の四次元は必須項目です。そこに虚実というか表裏というかの軸が増えて、より高次元で高難易度になってる感じですねぃ」
「なるほど、じゃあガチャ頼りをやめてガチ創造するぞー」
そんなわけで次は世界を安定させるための『やぶれたせかい』の創造だ。
ところでどっちかっていうと管理者的なギラティナよりも先にこっちの世界を作っておくべきだったんじゃないだろうか。
やばいな、割とガバいぞ案内役。致命的でなけりゃ多少効率が悪くても助言なしか。
『ぼくのせかい……ぼくのための……えへ』
『ぐぬぬ……』
『ぱるる……』
『ふぇっ!? ご、ごごごごめんなさい、ぼくごときがごすずんのてをわじゅらわひぇてぇ!』
ガチャを創造したときの感じを、もう少しだけ規模を広げかつ持続もする。
サンドボックスゲーのクラフトを思わせる進捗率の棒がAR気味に視界をジャックしてるのは、生前の記憶を参照して世界のシステムを創造してる部分もあるんだろうか。能力に振り回されてる感じがして少し恥ずかしい。
同時に、暴走のリスクを考えたら要練習だな、と自分を律する必要性に心を引き締められた。今は『やぶれたせかい』を最優先だが。
(ギラティナが過ごす場所だから、居住性も上げないとないよなー。時間が止まってて空間も不安定とかいう時点でアウトな気もするけど)
そもそもポケモンにとっての居住性ってどんな感じなのか。野生動物に近いとしても、近い地球上の生物の巣は千差万別だ。
ただ、ギラティナは分類的には創造神の直下に属する神なわけで。果たして仙人的な断捨離系なのか、王様的な贅を尽くす系なのか。どちらにも適性はありそうで判断が難しい。
ポケダンだと集落作ってて、家もあって、寝床やら何やらがあって、割と人間に近い生活だった。今回もそれでいくべきかなぁ。
(とはいえ一人暮らしは気楽だけど時折無性に寂しくなるからなぁ。臆病な感じで自分から動くのは苦手そうだし、何かしら遊びに来たくなるような要素を盛り込んでおこうかな)
作ったあとの拡張とかは創造パワーでサクッと済ませられるけど、模様替えとかは人力ならぬポケ力の作業になるっぽいんで、それなりに広くシンプルな感じに決める。
そうと決まれば後はくりえ〜いと、くりえ〜いと(掛け声)。
「……うん、できた」
『え、もう?』
『さすセウス』
『喋っ……!?』
そこそこ長考した気もするが、ギラティナの驚き具合だと短い時間で終わったと思われる。そしてパルキアがぱるぱる以外の言葉を発してディアルガが固まった。
なにはともあれ、だ。
『ほあぁ……』
ギラティナの反応も悪くない。これは成功と言ってもいいのではなかろうか。
これだけ大がかりな創造は初なので、それを考慮したら頑張った方だろう。
「完全にテーマパークです本当にありがとうございました」
「……デスヨネー」
はい、めっちゃコンセプトはポケモンとでも言いたい感じの押しが強めなアトラクションの並ぶ遊園地っぽいものができあがりました……おかしいな、どっちかっていうと空の探検隊にあったパッチールのカフェを思い浮かべてたはずなんだけど。
アトラクションってサイズ的に制限多そうだし、それ以前にポケモンバトルの方がもっと刺激的な体験できそうだし、人気出なそうなんだけど。無意味とは言わんけどギラティナが混ざれるのも少ないし……ちょっとしくじったな。
『ぱるぅ……』
『我々は小さくなる事ができるだろうに』
『ばる……ぱる?』
肩を落としているパルキアに、ディアルガがあっさり解決策を伝授してた。
そう、ポケモンは技としての『ちいさくなる』とは別に、モンスターボールに収まる程度に小さくなれるのだ。元ネタのカプセル怪獣達も1cmとかミクロとかまで小さくなれるしな。
むしろこいつらの場合はオリジンフォルムとかの変身形態があるなら人化もいけるんじゃなかろうか。日本発なら間違いなく擬人化の一つや二つはされてるだろうし、神なら余計に化けるくらいはできるに違いない。
小さくなる能力と技の『ちいさくなる』を考えれば、別に技の『へんしん』を覚えられなくても理屈としては通るはず。
『……みんなであそべるの?』
『望めば、な。無理強いはいかんぞ』
『う、うん』
ギラティナの少年少女感がすごい。かわいすぎて生きるのが辛い。見た目はかっこいい系統だけど。つまりギャップ萌えってやつか。
「一通り世界の基礎部分を創造し終わったら遊ぶか?」
『いいの!?』
「もちろんだ」
気付けば遊びの予約を提案していた。手をかざすと、向こうも答える形で手を合わせる。
いやぁ、ギラティナの、目の輝き具合が実に眩しい。なんというか、こう、湧き上がる何か。いや……これが、そうか。この掌にあるものが。
「心か」
『こころ?』
「あ、次に創造お願いしたいのがちょうどそれ関係のポケモンですね。」
「マジかよ」
なんか奇妙な偶然でお仕事に流れを戻された。地味に優秀だぞ案内役。
しかし心と関係か、洗脳とかされないかちょっと怖いな。
「ユクシー、エムリット、アグノムの三体になります」
「空の探検隊で『ときのはぐるま』守ってた子じゃん」
めっちゃ知ってるポケモンだった。でもそっかー、そりゃ重要な役割を持ってるわけだわ。こんな最初に創造されるとか。
その割にジュプトルの襲撃がほぼ成功してるのは、護衛ミッションの難しさとジュプトルが男前すぎたからって事で納得しよう。
しかし変に記憶あると影響しそうだけど大丈夫かな。ギラティナは『はんこつポケモン』をちゃんと知らなかったせいで変な影響出たっぽいけど。
知ってても知らなくてもダメとか酷くない?
「ところで同じタマゴから生まれた三つ子って説がありますけど、いけます?」
「ガチャに不可能はない」
「おお! 言葉の意味はわかりたくもないがとにかくすごい自信だ!」
案内役から地味に無茶振りをされたが、そこはボックスガチャに変更して三連で回す事で達成できるはずだ。それとも一体のみ封入単発をステップアップ式に三回の方が脳汁出るだろうか。
一つのタマゴから同時に生まれた場合、誰が先に生まれたから兄だ姉だと争いが生まれても困るし、それなら最初から序列を明確にしておく方がマシだと思う。別に能力の重要度と生まれた順番に相関なんてないし。
「と、いうわけで回すぞー!」
「おーパチパチパチ」
『わーわー』
『ぱるぱる』
『何度見ても神秘とはかけ離れた光景なのだが』
周りの軽いノリに癒やされ、ディアルガの冷静なツッコミを心地良く感じながら、創造パワー的なものを込めながらいざ、ピッピカチュウ!
『
『
『|きゅううん!《我が名はアグノム!いしポケモンにしてエスパー!やがてはヒキニートする者!》』
「お、おぅ。よろしくな」
いかん、約一名キャラ濃度が致死量レベルの痛々しい名乗りを上げてるぞ。しかも文字数が多すぎてルビに収まらん。聴覚情報だけなら鳴き声だからギリセーフか?
『ふっ、決まった……自己紹介が完璧すぎてリアクションを封じるほどに心を奪ってしまうとは』
「意志が強すぎる!?」
ギラティナと案内役は目をキラキラさせてるけど、後者は玩具を見付けた感じだろうこれ。ディアルガとパルキアはすごく冷めた目で見てるし、俺も合わせて多数決取るとギャグを外してお寒い空気になってるんだが。
というか、え、もしかして演技じゃなく素なの? 鳴き声の意訳だけじゃなく発言までしっかりそっち系とか。発言内容に気を取られて喋れる事へのツッコミしてなかった事に今気付いた。これが情報津波か。
「それじゃ面子が揃いましたし、仕上げですね。ディアルガさん達三体の祈りで物を、ユクシーさん達三体の祈りで心を生み出してもらいます」
「は?」
そこへ案内役が爆弾を投下。いや、物と心って、そこ一番重要なところだよね? なんでそこから俺がハブられてるの?
『心得た』
『る〜ぱらるぱられるぅ』
『がんばるー』
『やりましょう』
『やっちゃうよ!』
『ふ……解き放たれし我が力、存分に見るが良い!』
ポケモンたちもめっちゃやる気なんだけど。あの、これはどうしたら?
そんな所在なさげな俺を置いてけぼりにして、事態は進む。お互い三名のグループで集まって、ポーズをとって……?
『『『アテナエクスクラメーション!!』』』
「小規模ビッグバン!? って、あれ……」
ツッコミを入れた途端、力がごっそり抜けるような感覚と共にめまいを起こし、あれよあれよという間に意識が遠くなっていく。
「安心して下さい。眠るだけです。起きた頃にはそれなりに時代が進んで生命が溢れてる事でしょう」
「なん、だ……それ……」
案内役からトンデモ発言が飛んできたが、意識を失いつつある俺は理解するのもやっとだった。対処法も思い浮かばす、流れに逆らうだけの力も残っていない。
「ギラ、ティナ……ご、めん……」
最後に思い浮かんだのは、一通りの作業が終わったら一緒にアトラクションを巡ろうという約束だった。
オープニングイベント終わり。現在の更新はここまで。今後の予定は未定。年内には固まると信じたい。
予定では時代スキップしてオレセウス君が目覚めるけど、眠ってる間に世界最初の兄弟喧嘩が起きて終わったり、地球が生まれて仮説を含めた年代記通りに進んでたりする。でもオレセウス君の予想とは違って、とある存在がいない世界だったので介入せざるを得なくて……とまぁある意味で神話の続きが待っている感じ。果たしてオレセウス君が創造するポケモン世界はどのようなものになるのか。