「次はパルキアだけど、なんとなく既に復活してそうなんだよな」
あの感覚派天才型っぽくて要領の良さそうなパルキアが、理論派努力型っぽい誠実だが不器用そうなディアルガよりも消耗しているとは考えにくい。
回復速度という観点では、時間を操作する余力が出たら速そうなディアルガの方が早期復活を遂げる可能性もあるが。現に眠ってたから『ゆめくい』して起こしたし。
『奴は……』
「うん?」
『私を盾にして戦っていた。消耗は私よりも少ないはずなので、復活を済ませている可能性は高い』
「お、おぅ」
『そうだっけ……?』
「あぁ、タイプ相性ですねぃ」
ディアルガの妙に重々しい告白は、なんというか、パルキアのフォローを躊躇わせる力があった。
相手をしていたギラティナは我を忘れて暴れていたので記憶にないらしく首を傾げ、案内役は何やら納得した風だった。
「どゆこと?」
「御三方のタイプである『ドラゴン』は同じ『ドラゴン』タイプの技が弱点なんですけど、ディアルガさんは『はがね』複合により等倍で受けられるんですよ」
「ほー」
探検隊では面子固定だったし、仲間を含めて『ドラゴン』技を使う機会がなかった気がする。ポケカGBにいたっては『ドラゴン』タイプが存在しなかったし。
だが、一つ気になる事があったので質問してみる。
「俺のLVって1らしいんだけど、ディアルガ達もLV1なんじゃないのか? 『ドラゴン』タイプの初期技って覚えてるもんなのか?」
「えーと、少々お待ちを……デビューの第四世代から第七世代までは御三方全員がLV1から『りゅうのいぶき』を覚えてますねぃ。第八世代からは『メタルクロー』『みずのはどう』『かげうち』に変更されてまして、ギラティナちゃんは『あやしいかぜ』を没収されたりもしてますよぅ。実際の喧嘩では途中からバリバリそれっぽいの使ってましたが」
「……つまりどういうことだってばよ?」
おかげで私も吹き飛ばされかけました、とケラケラ笑う案内役に疑問を投げれば、あくまでも予想ですが、と前置きした上で解説が始まる。
「んー、多分ですけど、オレセウスさんは戦闘中でも成長はできるものって認識なんじゃないですかね。あと神なら強くて当然、現実ならターン制やそれによる攻撃回数の制限はない、その辺りが創造した世界に適応されている可能性が高いかと」
「なるほど、否定できないな。ついでに言うならLV概念も薄くて筋肉理論で使った部分が成長していく感じなんだが」
どんな世界を創造するかハッキリとは決めかねてるから法則が曖昧というか、少なくとも当時はゲームのように戦闘終了で精算して反映ではなく前世ベースの成長理論になっているようだ。
ただ、戦闘が長引くほどに新技を使っていたらしい事に関しては、その場で思い付いて試したようには思えない。ゲーム的なレベルアップによる習得も起きているのだろうか。
ぜんぜんわからない。俺は雰囲気で創造をやっている。
「あー、途中からディアルガさんが、パルキアさんが後衛の役割分担を始めたのはそれもあるんですかねぃ。ギラティナちゃんは『あやしいかぜ』だけじゃなく『ぎんいろのかぜ』と『げんしのちから』も使って基本的に全方位攻撃だから成長内容は不明ですが、おそらく追加効果でどんどん手が付けられなくなってました」
『えっへん』
「よしよし、それはそうと、パルキアに話を戻そうか。消耗が比較的少ないなら、休む前に遠くへ移動した可能性もある」
喧嘩の内容は気にならないでもないが、今の目的はパルキアを見つけ出しギラティナと和解させる事だ。
成長に関しても、推測するより改めて法則を決めて創造する方が早くて確実なので後回しにするべきだろう。
空間を司るならどこにだって行けるはずなので、あるいは俺の知らない世界まで高跳びしている可能性すらある。
あるいは兄弟喧嘩で成長する前なら違ったかもしれないが……いや、パルキアが空間を司るのは先天的に生まれ持った権能であり、生態だ。バトルで磨かれるまでもなく熟練度は高い。
俺がそう認識してる以上は、おそらくそのようになっている。責任重大で面倒な話だ。
自分から望んで背負った事ではないのが拍車をかけるが、さりとて投げ出すには少々愛着が湧きすぎた。体感一日と少ししか過ごしてないのにチョロすぎんか俺。でもかわいいんだもん、仕方ないね。
『ならばどうする? 正直、奴の行き先の心当たりなどない』
「うーん、そうだな」
考える。世界を創造してからしばらく経過したが、パルキアの好みに合致するような物が生まれたかの判断は付かない。
ディアルガなら夢の内容から甘い食べ物で釣れそうだのだが。
「好物で釣ろうにも、パルキアの好みなぁ」
『待て。何故、私を見た?』
「それは、ほら……好みを知ってるかなぁ、と」
よく考えたらディアルガの夢で見かけたあの謎甘味も俺の知らない物体だったし、お手上げ感がすごい。
こうなると他者を頼るしかなく、何かを知っているとしたら一番可能性が高いのはパルキアと対になっているディアルガだ。
『好み、か。基本的に私とは反対の属性を好むが……ふむ』
予想は的中し、あっさりと嗜好の傾向が発覚した。これは大きな収穫だ。
しかし判明しているディアルガの好みは甘い物くらいである。他の好みについて聞き出したいところはあるが、個人情報に当たるので無理強いはしたくない。パワハラで訴えられるのはもう嫌なんだ!(過呼吸)
とりあえず食べ物で試してみる予定だが、味覚と嗅覚には密接な関係がある。あるいは視覚情報から連想する事も考えられるので、ディアルガにダメージが入りかねないのがネックか。
「なるほど。しかしそうなるとそれを使って誘い出すのはディアルガにとっては苦痛になるか?」
『いや、それは……そうだな。ここは一つ、私は『始まりの間』で待機していよう』
そんなわけで確認すれば、ディアルガは逡巡した後に退避を申し出てきた。
気を遣わせてしまった上に、最短で再会する機会を奪ってしまう事になるので、非常に心苦しい。
とはいえ、正解だと信じている答えを出した後だと他の手段を考えても出てこない。申し訳ないが今回は留守番をお願いする事にしよう。
「すまんな。後でおやつでも差し入れるから」
去っていく後ろ姿に声をかけたら、尻尾がピンと立った。猫かな? 歩みを緩めない辺りにはプロ根性(?)を感じる。
「さて、ディアルガの好きなもの、つまり甘味と反対の要素を創造してパルキアを一本釣りする作戦だが」
『かんみ……あまい? あまいのはんたいって?』
「うん?」
「どこ情報なんです甘味が好きって」
「うん」
作戦の説明を始めようとしたら、ギラティナと案内役からそれぞれ質問が。会議らしくてイイね!
しかし甘いの反対。勝手に苦い物を思い浮かべていたが、考えてみればカレーなら甘いの反対は辛いだし、酒も甘い辛いで内容は糖分とアルコールの割合だし、鮭の甘い辛いは塩分濃度だ。柑橘系やキウイフルーツを考えたら甘いの反対は酸っぱいとも言える。
要は甘いの反対は甘くないが正解になり、それだけではパルキアの好みが絞りきれない。これはマズい。
しかしそれを見抜くとはギラティナ……恐ろしい子!
「と、いうわけで色んな料理を用意してみました」
『すごーい!』
『ぱるーぅ!』
ギラティナの貴重な意見を参考にして、数撃ちゃ当たる作戦に変更したら、ものすごいあっさり釣れた。
最初はつっかえ棒を引っ張って倒す事で支えを失ったザルが倒れ標的に被さって閉じ込め捕獲する例の罠を仕掛けたのだが、好奇心旺盛なギラティナが引っ掛かる事故を起こしてしまったので失敗したのは内緒だ。突撃も離脱もシャドーダイブ使えばよくねってツッコミを我慢した俺は偉いと思う。
とにかく、多種多様な料理を創造していたら、今まで悩んだ時間は何だったのかと拍子抜けするくらい、いつの間にかパルキアが来ていた。
気合を入れて集中しながら創造してたせいもあるのかは不明だが、アルセウスの感知力をすり抜けてくるパルキアの底が知れない。行儀よく伏せと待てを実行している姿からは想像できないが、本気になったらかなり手強そうだ。
ちなみに、和解以前にわだかまりが存在していなかったらしく、ギラティナから謝罪を受けても首を傾げていた。これにはギラティナも苦笑い。戸惑う表情をスクショしたいんですが実装まだですか。俺が実装しなきゃないですね。
「呼んできましたよぅ」
『これはまた豪勢な』
パルキアが早々に合流したので、謝罪や事情聴取をしている間に案内役へディアルガを呼んでもらっていた。
何故ならば、創造した料理を消費してもらわないとないのだ。食事会の開催である。
この調子で騒いでたらユクシー達も寄ってきたりしないものか。
で、料理を無事に食い尽くしたので、ユクシー達の捜索にパルキアの力を借りれないか相談する事に。
「……と、いうわけで、どこかへ飛ばされてしまったらしい三体を捜すのを手伝って欲しくてな」
『ぱるほど……』
「混ぜるな混ぜるな。頭にハコフグ乗せた人の親戚みたいになってるぞ」
『ぱるぅ!?』
いかん、驚きの声もギョギョの仲間にしか聞こえなくなってきた。まぁいいか。
「とりあえず空間を司る能力で大体の位置とか探れん?」
『ぱるぱる、ぱるぅ……』
こちらの要求に即応して、何やら目を閉じて唸る。その表情はこれまで見た事のないほどに真剣だった。これは期待できそうだ。
そして約九十秒。パルキアの目がカッと開かれた!
『ぱる!』
「おぉ、見付けたか! すごいぞパルキア!」
『ぱるぱるぅ!』
仕事が早い。やはり天才か。
とりあえず素晴らしい結果なので、手放しで褒める。これで見付けたのがおいしい食べ物だったり貴重そうな骨董品だったりしたらキレるが。だからそう考えた瞬間ビクッとするのはよそうかパルキア。
そして俺が褒めるのを見たギラティナがむくれている気配を感じる。後で何かしら褒めるための作業をお願いしておかなければなるまい。
『ぱるっ、ぱるぅ』
「おー、綺麗にバラけてるのか。まぁまだ俺ら以外にポケモンはいない世界だし、時間そのものは余ってるからな。ちょっと迎えて来るわ」
『待たれよ』
「うん?」
と、ここでディアルガから制止の言葉。声は違えど抑揚がほぼ同じで、某動く城のコスプレ弟子少年を思い出す。
それはそれとして、何か止めなければならないような問題があるだろうか。
首を傾げると、ディアルガは言葉を続けた。
『私は時間を停止して運んでくれば一瞬だし、パルキアも瞬間移動で同じく一瞬だ。ギラティナとて影があるならば容易だろう。ここは一つ私達に任せてくれないだろうか』
「任せても特に問題はないが、なんでまた?」
それを言ったら俺は一応どっちもできるんだが。
ギラティナは影から影に移動できるから、確かに条件付きではあるが瞬間移動を使えると言って良さそうだ。仮に舞台が『やぶれたせかい』なら、強い権限を持っているのである程度は時空の操作すらできる。
『パパ、ぼくもつれてくる!』
「わかった。お願いできるか?」
ギラティナもやる気は十分だ。シャドーダイブは奇襲性が高いから相手を脅かさないといいんだが。
『うん、がんばる!』
「じゃあお願いな、ギラティナ。ディアルガとパルキアもすまんが頼んだ」
『引き受けた』
『かしこま!』
そうしてそれぞれ回収に向かった。変に競争して負担を掛けないようにお願いしたいところだが、どうなる事やら。
(しかしなんだろう、三体の有能アピールがすごい。もしや褒めて欲しいとかなんだろうか)
ギラティナはわかりやすく全身でアピールしてくれるが、ディアルガはクールな真面目系でそれほど表に出さないし、パルキアはセクシーコマンドー部かハジケリストを目指してそうな感じなので本心がわかりにくい。たまに喋るのはどんな基準があるのか。
三者三様ではあるし、不利益を与えようってマイナス感情はないから問題ないとは思うが。
むしろ問題があるとすれば、俺の貧弱な語彙では褒める言葉の種類が少ない事だろう。絶対に足りなくなる。辞書下さい。
(つーか、遅くね?)
一瞬とはなんだったのか。そして完全に会話へ混ざれずカカシ状態の案内役に何か配慮するべきなのだろうか。
そんな事を考えながら、俺はみんなの無事を願いつつ到着を待つのだった。
パルキア:公式から供給された「ぱるぱるぅ!!!」で世界を獲ったと言っても過言ではない伝説のポケモン。時を経てオリジンフォルムでバリエーションを増やした公認ネタ枠でいいのだろうか。ここでは意識してネタ枠に収まろうとしている演技派……なんて事はなく、素でぱるぱるしている。喋る条件は特に決めていないが、強いて言うなら気分次第。なんとなくで大体何とかなる直感と幸運持ち。いわゆる『お約束』に敏感で、そのためなら体を張る事に躊躇いがないタイプ。ボタンがあったら自爆ボタンだろうと押しちゃうが、代わりに被害をアフロ化に抑えて許しを乞うまでがワンセット。将来の夢は聖鼻毛領域の展開。座右の銘はボスケテ。ヒゲに憧れ有。いくつか地雷を持っていて、踏むと当たり前にキレて乱暴な口調で喋るようになるが、背景に『!?』が飛び交う。