『パパーただいまー!』
『お待たせした』
『ぱるるぅ』
「おー、お帰り。みんな無事だったか」
結局そう間を置かずにユクシー達の回収を終えて戻って来た。
タイミング的には何やら一度合流してから帰還した気配が漂っているのだが、害意や敵意は感じないので問題ないと信じたい。
(まさかアテナエクスクラメーションの撃ち合いをしてリベンジ合戦したんじゃないよな?)
ふと、そんな考えが過った。
パルキアの突拍子もない言動と、アグノムの独特なノリが合わされば、予想もできない反応を起こし勢いでやらかす可能性は低くないように思える。
ディアルガはあれで好戦的な部分はあるし、ギラティナは遊びたがりだ。
ユクシーは知識欲が旺盛だからデータ収集の機会は逃しそうにないし、エムリットも勝ち気なところがあるから喧嘩は買うタイプだろう。
つまり地味にストッパーがいない。やらかした可能性は低くないのだ。
(まぁ、無事だからいいけど)
結局のところ、それに尽きる。
肝心のユクシー達の挨拶を聞いてないが、揃って目を回して気絶しているので仕方がないのだ。
「……で、弁明は?」
『……不幸な事故だ』
『ぱらりらぱらりら』
『かったよ?』
やっぱりやらかしてるじゃねーかこいつら!
このあと少しだけ説教した。
『いやぁ、参りました。ですが実りある結果が得られて満足です』
『しばらく会ってなかったからチームワークにブランクがあったのが痛かったわねー』
『くっ、力が暴走しないよう意識を割く必要がなければ勝っていたものを……!』
「あー、元気そうで何よりだよ」
復活したユクシー達と久々の会話だが、キャラ濃いなー。誰に似たんだ。
「とりあえずこれで全員揃ったし、みんなの無事が確認できたのは喜ばしい事だ。ところでみんなはこれから何かしたいとかあるか?」
実際に対面して安否確認したかったので集まってもらったが、特にこれから何かをするために集めたわけではなかった。
しかしこの面子が集まれば大概の事は成し遂げられるだろう事は明白で、だからこそ希望があれば協力して事に当たるのも思い出作りにいいかな、と考えた。
『ぼくはパパといっしょにいるー!』
「おっふ」
反応が一番早かったのはギラティナだった。時間も空間も関係なく即断即決。判断が早い。
だが、飛び付いてじゃれつくのは体格差的に割と危険なのでお辛い。向こうの方が大きくて重いので。俺は創造神だから耐えられたけど邪神だったら耐えられなかった。
しかし重量のある『ゴースト』タイプとはいったいなんなのか。あるいは想いと重いの駄洒落という可能性。
物理技がある時点で任意に物質と非物質の性質を切り替えているのは推測できるが、防御相性として『ノーマル』と『かくとう』を無効化する以上は非物質状態が正常な状態なわけで。
そうなるとギラティナの行動もわざわざ触れるために意識して実体化しているのだと解釈できる。いじらしい。かわいい。ほっこりする。ビバギラティナ。『始まりの間』にギラティナの像を建てよう。そんな感想が脳内を駆け巡るのも無理がない事だろう。
『特にないが、時の針を進めるなら尽力しよう』
『ぱるっ』
ディアルガとパルキアも特に希望なし。
時間と空間を安定させる役割があり、存在する事――厳密には息災でいる事に意義があるので、能動的に何かをしたい気持ちが薄いのかもしれない。
同時に、時間と空間を操作する能力を使えば大抵の事はできそうだし、急ぐ必要もないと考えている可能性もある。
『私は出現した生命を見て回りたいと思っています』
「ふむ」
ユクシーは知識を司るから知的好奇心が強いし、その知識を受け取る事も与える事も好んでいる。あるいは知識だけでなく知恵を与えて生物の進化に一役買いそうだ。
『わたしも生き物がどんな感情を抱いてるのか確認したいわ。単調すぎてもつまらないし、お節介するかも?』
エムリットも世界飛び回りを希望する。
恐竜時代だと恩や見栄はなさそうだし、復讐に走る憎悪もなさそうだ。味で言ったら砂糖や塩じゃなくショ糖と塩化ナトリウムを直接口に入れるようなものだろうか。それは料理を知り期待する者からすれば我慢ならない部分はあるかもな。
『ふん、我が恩恵を授かりし者共が命を繋ぐ事だけに囚われているのは忍びない。新たなる力に目覚める気があるか意思を問うて回ろうではないか』
意訳すると「自分の仕事ぶりに納得してないから残業します」になるのかな。
謎のポーズを取ってるせいで内容が半分くらいしか頭に入ってこないぞ。そして喋り方のせいで内容の理解を拒んでしまうから半分くらいしか入ってこない。
つまり全部入ってくるか全く入ってこないか半分の更に半分しか入ってこないか。果たして正解は……?
「そういう事ならたまに帰ってきて土産話を聞かせてもらおうかな。気を付けて行ってこいよ」
『『『はーい』』』
と、いうわけでユクシー、エムリット、アグノムの三体は恐竜時代真っ盛りな地球相当の惑星に降り立ち、視察等をして回る事になった。
それに伴いトリオ名をUMAに決定したので、今後はそちらを使っていこうと思う。
ディアルガ達最初の三体もまとめて三龍と呼ぶように決めたが、そちらは俺のそばにいるらしいので使う機会は少ないかもしれない。
『『『行ってきまーす!』』』
「達者でなー」
そうして旅立つUMAトリオを見送る。返事や挨拶の際は普通になるアグノムを、努めて気にしないようにしながら。
『……行ったな』
「だな。まぁ、現地の生命体に比べたら圧倒的に強いから心配はいらんだろ。食い物も困らんだろうし」
ディアルガはどこか心配そうにしているが、未来でも見たのだろうか。あるいは三体揃えば互角以上に戦える相手がいなくなって感傷に浸っているかもしれない。
『ぱるぅ〜ぱるらぱるぱらぁ〜?』
「あー、隕石衝突や噴火、地震に氷河期と環境的には厳しい時期もありそうだな。ま、そんときゃ帰ってくるだろ」
パルキアは他人事っぽいが鋭い指摘を入れてきた。そういうとこだぞ。
とはいえ、どちらにしろ神と呼ばれるポケモンのスペックからすれば誤差だ。何しろ一般ポケモンでも体温が一万度あったり、それ相手に接触技を繰り出したりするのだから。
マグマや炎の温度に関しては敗北者ラップの流れで覚えたから、一万度相手に『のしかかかり』確率で『やけど』を負う程度に済ませるポケモンの耐久力が途端にヤバい。そんなポケモンを『ひんし』にする『ひのこ』とは。
とりあえず今の内に惑星の温度耐性上げておこうかな。
『それで、パパはこれからどうするの?』
と、ギラティナから質問が飛んできた。
「俺か? うーん」
候補自体はいくつかあるが、どれから手を付けようかと考え始めると悩ましい。
むしろガチャを回したいが、案内役の漏らしたリソースの正体を確認するまでは無計画に回すわけにもいかない。三龍に聞かせて大丈夫な内容なのかも不明なので確認は後回しせざるを得ないが。
ガチャを回す度に俺の寿命が削られるとかだったら洒落にならないからな。それを知った三龍に監禁されるエンドは御免被る。
前世から見て古代に相当する現在の惑星を眺めるのも楽しそうだが、時間を操作すればアーカイブ気味にいつでも楽しめるので後回しにして問題ない。
惑星にポケモンが自然発生するのかの観察もアーカイブでいいか。地球の焼き直しで人類が繁栄するまで自然発生しないようなら、その時は積極的に介入していこうと思う。
とはいえ古代から生きるポケモンの存在も多いので、現段階から介入も選択肢の一つではある。さっき例に挙げた体温一万度も古代から生きてるらしいし。
メタな話をすれば、後付け設定は長編シリーズの常である。そして基本的に後発情報の方が正しい。
科学技術の発展に伴う機器の性能向上や、新たな理論に基づく斬新な方法、そして古い慣習への疑問提起。それらは時に常識を覆し、認識を変える。
つまり後から世界を改変してポケモンの存在が当たり前で、昔から存在していたかのようにしてもなんら問題はない。
それでも、例えば日記だが暗号化されていたりバラバラに保管されたルーズリーフであったりする場合は干渉しそこねる可能性は大いにあり、そこからある日突然ポケモンが出現したと推測される事態は考えられるのだ。
そんな陰謀論を起こす側になったのは良い事なのか悪い事なのか。考え始めるときりがないので、ここは思考を停止しようそうしよう。
「……よし、昼寝しよう」
『おひるねー』
『復活するまでずっと眠っていたのでは?』
『ぱるぅぱるぅ』
『ふむ、そういうものか』
ディアルガが至極まともな事を言っていたが、パルキアの説得であっさり納得した。眠り過ぎて眠いは神でもあるあるネタなんだな、と妙な感動を覚えつつ、俺達は『始まりの間』に戻ってスヤるのだった。
「ここまで案内役の私に台詞なし……放置プレイもいいものですねぃ(ふるふる」
何か聞こえた気もしたが、気にせず夢の世界へ。
………………
…………
……
「パラドクスポケモン? 古代と未来? どういうことだってばよ?」
なにやらポケモン世界を旅する夢を見た。舞台は海外だったが、問題なく日本語が通じていたのは俺が創造したのと関係あるのだろうか。パルデア、イッシュ、キタカミで同一言語だったし、会話の内容的にもおそらく日本語で間違いないだろう。
というかキタカミはどう考えても北上でとーほぐのいわてでがんす。イッシュは一首? 一種? でもポケウッドとかモロにホーリーの森だった。逆にパルデアは漢字が当てられない。パルキアとは無関係そうだったし。
しかしテラスタルはどうするかなー。惑星内のエネルギーを循環させてるだけとも言えるが、表面に出したまま内側に還元しないとバランスが崩れて自然災害や環境問題を引き起こしかねない。ポケモンがいる時点で崩壊してる? わはは何も言えねぇ。
というか夢だけど夢じゃなかったというか、それこそパラドックスが起きてるというか。果たして生物の多様性で片付けていいのだろうか。
(うーむ、衝撃の事実を色々と知ってしまったな。闇が深いぞポケモン世界)
あるいは人の業か。何とも考えされられる夢だったと言えよう。
『大変、大変、たいへーん!』
「んをぅ!?」
寝ぼけ頭でシリアスってたら大声を上げながら飛び込んできた小さな影。
少々驚かされたものの、おかげでばっちり目が覚めた。
「って、エムリットか。おかえり」
『ただいま! じゃなくて、大変なのよ!』
その正体は地球型惑星――面倒だから地球でいいか――に降り立ち大陸の様子を見て回っているはずのエムリットだった。
非常に慌てた様子で、とにかく大変なのだと叫んでいる。具体性のない報告は憶測を呼び無用な混乱を招くので好ましいとは言い難いので、後ほどレポートの書き方をまとめて配布でもするべきだろうか。
『何が大変なのだ?』
『ぱーるぱーる』
『何がって、それはもちろん――』
起こされたのか起きていたのか不明なディアルガが質問し、パルキアがそうだそうだと囃し立てると、エムリットは何が大変なのかを口にしようとした。
しかし、そこで入口の扉が力強く開かれる音が響き渡った。何事かと全員の関心がそちらに向き、エムリットは口をつぐんだ。
「話は聞かせてもらいました……」
そこにいたのは案内役。エムリットの慌てようからして扉は開けっぱなしだったろうから、こいつは注目を集めるためだけにわざわざ外に出て扉を閉めてから改めて開けたようだ。その手間を別の何か生産的な行為にかけようとは思わないのだろうか。
「このままでは人類は滅亡します!」
「「「な、なんだってー!?」」」
「わざわざ分身してまでの反応、ありがとうございます」
「で、エムリットの言おうとしてた内容より詳しいんだろうな?」
テンプレに従って驚いてはみたものの、これまた具体的な『何が』には触れていない。
エムリットが慌てている以上、その内容は緊急性の高い話題なはずだ。無駄に時間を取った案内役には、是非それをするだけの価値を示してもらいたいものだった。
「まぁ百聞は一見にしかずですが、端的に言うと世界が乗っ取られかけてます」
「……は?」
案内役の放った言葉は、とんでもない爆弾だった。
なお、ギラティナは安眠中である。
ユクシー:好奇心が旺盛。クイズ大好き。新しいものも好き。知能や記憶力は高いが、別に全知なわけではない。ディアルガに未来を見せてもらおうと付き纏って返り討ちにされないかオレセウスに心配されているが、むしろ創造神だから全知全能に違いないとオレセウスに絡んでギラティナにシャドークローされかねない。性自認は男だが伝ポケボディは基本無性ただし気軽に性転換できる。欲しいスタンドはヘブンズ・ドアー。
エムリット:普段は勝ち気な女の子。実は感情にハァハァする変態性があり、興奮も感情なので自家発電で永久機関を実現させてるやべーやつ。コイバナ大好き。なお現状。おそらく世界で一番ポケモンや人間を待ち望んでいる存在だと思われる。感情の段階で懐の広さが無限大になるので、恋愛に性別は関係ないと言い切っちゃうタイプ。その関係で世界に心が溢れるようになった段階から腐海へと誘う素養も仕込まれてるので、お察し下さい。ギラティナがファザコンでウォロに協力する可能性がないため、代わりに『アカイクサリ』に縛られてくっころするディアルガを見たい一心で協力する可能性がある。
アグノム:男の子→中二病→ご覧の有様だよ! 今の面子には演技なのがバレバレだったりするものの、初志貫徹せんと強い意志を見せている強い子。素の性格は甘えたがりな末っ子。レジェアルの頃には落ち着いて卒業する予定だが、黒歴史になっているので原作ネームドトレーナー達のイケてる台詞の数々に身悶えする未来が待っている。それはそれとしてそいつらの強い意志は大好物なので、アレルギー持ちの猫好きみたいな悲しい生物と化すに違いない。