ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼シノ視点
あれから週が明けて月曜日の朝
いつも通り朝食の支度をしていると
どこか興奮した様子でユメ先輩が携帯を見つめている
「今日は先生が来るみたいだよ!シノちゃん!」
『へぇ、そうなんですね・・・』
「あれ、あんまり興味ない感じ?」
『いや、興味はあるんですけど・・・』
単純に顔を合わせ辛いのだ
『また会えることを楽しみにしてるよ、センセイ?』なんて言っておいて
こんな形での再開になるなんて・・・
相手は、私があの時の”白鷹”だって分かりようがないだろうが、とても気まずい。
アビドスの皆にとっては恩人らしいけど、私の中の「大人像」って
黒服くらいしかいないから・・・こう・・・
裏があるんじゃないかと勘繰ってしまっている自分がいる
リサーチの結果
キヴォトスでの先生の評価は、概ね好評・・・だ
生徒の事を第一に考えて、親身になってくれる「大人」の先生
連邦捜査部「シャーレ」の顧問
ヘイローのない、神秘を持たない人間
眉唾物だが・・・脚を舐める等のセクハラを行うという噂話も上がっていた
真相は自分の目で見て確かめるほかないだろう
いつもより少し早く登校した私達
そこにはヘイローのない人間が確かにいた
”初めまして・・・だよね?”
『えぇ、初めまして、シャーレの先生。』
「初めまして~梔子ユメです!」
”もしかして・・・ホシノの・・・”
『妹です。』
「・・・・・・」
”皆から、転校してきたって話は聞いてるよ。これからよろしくね?”
『えぇ、よろしくお願いします。』
「よろしくね、先生!」
第一印象は優しそうな人、普通の大人だった
時たま、タブレットに話しかけているところを見るに
誰かと通話でもしているのだろうか
続々と他の生徒たちも登校してくる
先生って何しに来たんだろうか
「先生、今日は遠いところからお越しいただいてありがとうございます。」
”ううん?皆に会えるって思ったら嬉しくて、ちょっと早めに来ちゃった。”
うっわ、人たらしだ・・・
”顧問としても、もっと来てあげられれば良いんだけど・・・”
驚きで、持っていたお茶を落としそうになる
『顧問・・・なんですか?』
「あぁ~ごめんねぇ・・・おじさん、すっかり説明し忘れてた。」
「アビドス廃校対策委員会は、少し前まで連邦生徒会非公式の組織だったんだ…」
「そのせいでちょっといざこざがあったんだけど、その時助けてくれたのが先生でさぁ。」
めちゃめちゃ恩人じゃないか・・・
初対面で大嘘をついてしまった事に冷や汗が止まらない
いや、ただ・・・先生が信じられるかどうかは、別の話だ
それに、あんな話をされても、もうどうする事もできないのだから
・・・過去を変えることは、できない
知らずに済むなら、その方が良い
「ん。先生はもっと来るべき、そうすべき。」
「こら、シロコちゃん。先生だって忙しいんだから・・・」
「そういえば最近シャーレでお手伝いさんを募集してるって聞きましたよ~?」
「私でよければお声をかけてくださいね☆」
”うん。助かるよ、ノノミ。”
”これ、ミレニアムのお土産なんだ。良かったらみんなで食べてね。”
「ありがとうございます、先生。今お茶のおかわり用意しますね。」
これは・・・ミレニアム新素材グミせんべい?
なんだこれ・・・なんだこれ・・・
何故かせんべいなのに、グミのような食感というよくわからないせんべいを食べ終える
米粉100パーセント・・・凄い、物凄い高度な技術が使われているのはわかるんだけど
なんで・・・せんべいを・・・新素材開発部・・・
何でよりによってこれをチョイスしたのか、先生の事がまた一つ分からなくなった
先生は、授業をしてくれたり、廃校対策会議に出席したり
なんと言うか、憧れていた先生というものを体現したような存在だった
生徒と一緒に悩んだり支えたり、時には導いたり
そんな、大人の・・・先生
きっと良い人なんだろう
でも黒服があそこまで執着する何かがあるようには見えなかった
”今日は楽しかったよ、皆・・・ありがとね?”
”実は明日からトリニティに行くことになってて。”
”アビドスに来る頻度が少し減っちゃいそうなんだ。”
トリニティか・・・あまり、いい思い出はないけど
そういえば、こちらでは今の所平和だが・・・
「それは、寂しくなりますね~」
「体調には気をつけなさいよ!」
「またカップラーメン漬けの生活してたら、ただじゃおかないんだから!」
”心配してくれてありがとね?気を付けるよ。”
「心配なんてしてない・・・事もないけど・・・」
「うへ~なになに、ツンデレセリカちゃんだぁ~」
「ホシノ先輩・・・?聞いてよ先生。ホシノ先輩ったら二日連続で寝坊して・・・!」
「そ、その話は掘り返さないでよぉ~」
「先生、その時のホシノちゃんの写真もあるよ!」
「ちょ、ちょっとユメちゃんまで・・・うへ~」
「ホシノ先輩は反省するべき。」
”ふふふ、でも夜更かしはだめだよ?ホシノ”
「うへへ~わかったよ~」
「それにしても、お腹すいた。」
『よければ食べます?カロリーメイトですけど。』
「ありがとうシノ。でも、先生がいる。」
「紫関に行きましょうか~先生も来ますよね?」
”うん、ご一緒させてもらおうかな。”
外はもうすっかり暗く、「らーめん」の提灯が綺麗に光っている
もはや、憩いの場となっている柴大将の柴関ラーメン
流石に屋台に8人も押しかけると狭くて・・・
必然的にカウンター4人、パラソル付きのテーブル4人という形に落ち着く
最近大人数で押し掛けることが多く、柴大将が用意してくれた
なんて良い人なんだろう
大将と少し仲良くなったので、話を聞いてみたところ
どうやら店を持っていたが爆破されたらしい
「悪い子達じゃねえんだ、あんまり気にしてねえからよ。」
「あんまり嬢ちゃん達の事悪く思わないでやってくれ」
とのこと・・・聖人か何かか?
それはそれとして、陸八魔アルと便利屋68か・・・
名前は覚えた
テーブル席に座った私
シロコちゃん、ユメ先輩、それと・・・先生
「私とシロコちゃんは柴関ラーメン大盛で!」
「シノちゃんと先生はどうする?」
『私は、並でいいです。』
”私も並でいいかな。”
「そう?わかった。大将さん~!注文お願いしま~す!」
「あいよ、ちょっと待ってな!」
「ねえ先生、今度はいつサイクリングに行く?」
”次のお休みに行こうか、でも全身筋肉痛になるんだよね・・・”
「ん、わかった。次は少し減らして40㎞にしておこう。」
”・・・うん、覚悟しておくね。”
『シロコちゃん、初心者の先生と行くなら10㎞くらいがちょうどいいよ。』
「・・・盲点。先生、少し鍛えた方がいいと思う。」
”あはは・・・いやぁ助かったよシノ、ありがとね”
「私も運動しようかな・・・ちょっと最近ご飯食べすぎてるから・・・美味しくて・・・」
「ユメ先輩も行こう。ユメ先輩はヘイローがあるから100㎞は余裕のはず。」
「ひぃん、む・・・無理だよ~」
「無理かどうかはやってみないとわからない、明日行こう。」
「た、たすけてシノちゃん~!」
『ふふっ、トレーニングは重要です。頑張ってくださいね?ユメ先輩。』
「ひぃん!」
ラーメンが届いた
580円の野菜たっぷりのラーメンには
大将のこだわりと暖かさが詰まっている気がして
「「いただきます!」」
「ん、美味しい。」
「美味しい~いやぁ・・・週7で食べれるね!」
痩せたいとか宣っていなかったか
こっちにきてからトレーニングの時間も取れていないし
本格的に動かすべきかもしれない
”いやぁ、若い子達の食べっぷりは見ていて気持ちいいものがあるね”
『先生も、お若く見えますけど。』
”そう?なら嬉しいな。”
”シノはあまり食べないんだね?”
『私も乙女なので、デリカシーに欠けますよ。』
”ごめんごめん。”
”何ていうんだろうね、何故か今日初めて会った気がしなくて。”
表情が強張る、握っている手に無意識に力が入る
ホシノと似ているという意味であってほしい、切実に
『そういうのは、ナンパする時にしてくださいね。』
”ち、違う違う。ごめんね。”
何とか、煙に巻けた・・・と思う
大人っていうのはどうして皆こんなに察しがいいんだ
解散の運びとなって、私が先生を駅まで送ることになった
時刻は既に夜の八時を回っていて人通りも昼に比べて少ない
とはいえ駅前なだけあって活発なようで、広告のネオンが淡く輝いている
普通はこういうの逆なんだろうけど、先生はキヴォトス人じゃないからな
特に何事もなく、駅の改札口の前までたどり着くことができた
『先生、これ。』
”ん、これって・・・”
『私のモモトーク、困ったら連絡してほしいです。』
”シノこそ困ったことがあったら・・・いや、何もなくても待ってるね。”
『えぇ、帰り道には気を付けて帰ってくださいね?今日は楽しかったです。』
”そう?私がいて話辛くなかった?どこか緊張した顔してたから”
『顔は見えてないはずですけどね・・・そんなことはないですよ。』
先生とあってから一度も外してないので
私の顔色が分かるはずないのに
見透かされているような、変な感じだった
不快な気はしないけど
”よく似合ってるね、天狗好きなの?”
『まあ、そんな感じです。』
電車が来るまで後少し
『先生・・・』
”ん?どうしたの?”
『いえ、何でもないです。今日は奢ってもらってありがとうございました。』
”うん、大人だからね。全然気にし・・・うん。シノは美味しかった?”
懐事情が厳しいのだろうか、意外と
シャーレの給料ってラーメンも奢れない程なのか
散財癖があるのか・・・後者だろうな
『えぇ、とっても美味しかったですよ。いいお店ですよね、柴関。』
”・・・シノ。今はまだ無理かもしれないけど。辛かったら大人を頼っていいんだからね。”
『えぇ、お気遣いありがとうございます。』
”シノ、私は・・・”
『おやすみなさい、先生。』
少し強引すぎただろうか、でもこれ以上は踏み込まれたくはなかったから
電車に先生を残して、駅のホームを後にする
電灯が明滅する暗い道の月明かりに照らされながら
帰りの路を進む、そんな道すがらに今日の出来事を思い出す
良い人なんだろう、先生は
一日過ごしただけで、人柄がよく伝わってきた
先生といると、暖かい陽だまりの中にいるようで・・・
つい話過ぎてしまう、まるでユメ先輩みたいだな・・・なんて
でも、それでも
これは、この感情は
私だけのものだから
シノ『良かったです、先生が信頼できる大人で。』
『先生が生徒の脚を舐めまわしてるなんて悪質なデマが流れてたんですが。」
『そんな人じゃないって今日でしっかりわかりましたから。』
先生 ”ウン、ソウダネ。”
シノ『先生?凄い辛そうですけど大丈夫ですか?』
『ああ、そんな噂立てられたら、しんどいですよね・・・気遣いできなくてごめんなさい。』
先生 ”本当にごめんね、ダメな大人で・・・・”
シノ『・・・?』
後何話か挟んで、次章に移る予定です
メインストーリーのネタバレ、独自展開を含みますので
お気を付けください
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