ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
「あれ、ホシノ先輩が居眠りなんて珍しいっすね!」
『ん、あぁ・・・』
頭が割れるように痛い
私・・・私は、何をしようとしていたんだっけか
『今日の予定は、何だっけりょーちゃん。』
寝ていた私の横にいる金髪のショートヘアの彼女
何が余程うれしいのか、きりっとした顔立ちのわりに
まるで忠犬のような反応を見せている、いや・・・いつもこうだったか
「今日は待ちに待った砂祭りじゃないですか!忘れちゃったんすか?」
「なんて、私を試してるっすね?」
「ユメ生徒会長もあんなに楽しみにしてたんすから、忘れようがないですもんね。」
『ああ、そうだった。』
今日の為に色んな企業が出店してくれている
アビドスを今後一層盛り上げる為にも今日は失敗できない
しっかりしないとな
気合を入れる為に、両の頬を手でパチリと叩く
少しずつ意識が鮮明になってきた
「大丈夫っすか?体調悪いなら保健室に・・・」
『ううん、大丈夫。ありがとね・・・りょーちゃん。』
砂祭りは金曜日から土日の三日間に渡って行われるが
お祭りの目玉としては主に三つ
「砂でできた彫像」と「沢山の出店や催し物」
「夜にオアシスの小島から打ち上げられる花火」だ
特に鏡のような湖面に映る花火は絶好の告白スポットとして話題・・・みたいだけど
ちなみに、オアシスで海水浴を楽しむこともできる
夏の暑い日なのでさぞかし気持ちいいだろう
そんなわけでアビドスの一般の生徒は本日休校になっている
私達が登校しているのは一重に・・・
「じゃ、私は先に警備と搬入してくるっすね!また後で!」
運営側としての仕事があるからだ
幸い人数が多いから手分けすれば夕方には終わるだろう
入れ替わりのように、生徒会室の扉がガラリと開く
「ごめ~ん!ホシノちゃん、りょーちゃん!遅れちゃった・・・」
「ってあれ?りょーちゃんは?」
『ユメ先輩が遅いから、もう行っちゃいましたよ。』
「ひぃん・・・ごめんね~一杯写真撮りたくて高いカメラ借りてきちゃった!」
『いいですけど、落とさないでくださいよ・・・』
「もちろん!任せてよ!」
「あとね・・・じゃーん!何時でも泳げるように水着着てきたの!」
『ゆ、ユメ先輩!?はしたないですよ?』
「ホシノちゃんしか見てないなら良くない・・・?」
「それに、ただのスクール水着だよ?皆水泳で着てるよね?」
それはそうなのだが、室内で見るとなんと言うか・・・こう
いけないことをしているような、そんな感じがする
『そ、そういう問題じゃないんです、心臓に悪いのでやめてくださいね。』
『あと私たちの仕事が終わるのは早くても夕方なので・・・日が落ちてますよ。』
「ひぃん・・・じゃあ何のために・・・水着を・・・」
お昼から本格的に仕事が始まった
強い日差しの中ではあるものの
会場はオアシスと言う事もあって、体感気温はそこまで高くはなかった
「ホシノ副会長、搬入予定だった荷物が届きました。」
『花火組合の方に持って行ってあげて、場所はここ。』
「副会長、企業の方々が是非ご挨拶にと。」
『15分後目途で向かいます、先方には涼しいところでお待ちいただいてください。』
「ホシノ先輩~!不審な人物捕まえたっす!」
『りょーちゃん、ご苦労様。その、警備局から聞いてるから直接私に言わなくてもいいんだよ?』
「りょーかいっす!また来るっすね!」
わかってない・・・
猫じゃないんだから捕まえた不審者をトロフィー扱いしないでください
「あの・・・ホシノちゃん?いやホシノ副会長・・・私・・・いる?」
『何言ってるんですか、ユメ先輩は腕でも組んで偉そうにしててください。』
「え、えっへん!・・・その、私邪魔じゃない?」
『協力してくれている地域の方々は貴方の人柄に惹かれて快く引き受けてくれた節があります。』
『企業とか、治安関係の整理は私に任せてください。その方が適任ですから。』
実際、彼女が一年からひた向きに頑張っていた姿を見て
今回の砂祭りも快く受け入れてくれたという側面が強い
天性の人たらし、そんな彼女だからこそ
このアビドス連合は成り立っている、と思う
『この後皆さんに挨拶回りに行く予定なので、その時はお願いしますね?』
「うん!私頑張るね!」
お祭りらしく、様々な屋台の並ぶ出店ブース
凄い人の数に少し酔いそうになるけど
見ているだけでも楽しいものだ
「おう、ユメちゃん!よく来たね!焼き鳥いるかい?」
「はい!いただきます!」
『挨拶に来たんでしょうが・・・お世話になってどうするんですか。』
「ひぃん・・・そうだった。」
「いいのいいの、美味しそうに食べてるユメちゃん見てりゃ自ずと人足も増えるっつうもんよ!」
「ほら、ホシノの嬢ちゃんもどうよ?」
『そう言う事なら・・・頂きます。』
美味しい、噛むとお肉の油が口の中一杯に広がって
甘辛いタレが食欲をそそる
「美味しい~!」
『とっても、美味しいです。』
あっという間に一本食べ終わってしまった
少し名残惜しい
そういえばお昼、何も食べてなかったな
「・・・もう一本、いるかい?」
そんなに分かりやすい顔をしていただろうか
『流石に申し訳ないので、お金払わせてください・・・』
何故か12本入りの袋を貰ってしまった
私もユメ先輩の事言えないじゃないか
ちなみにぼんじりは特に絶品だった
今度、個人的に買いに行こうと思う
気が付いたときには、空はもうすっかり暗くなってしまった
結局諸々の業務が終わったのは夕方、というより夜で
お祭り用の照明がオアシス全体を綺麗にライトアップしている
もう夜だというのに、まだ人だかりが捌けないあたり
皆楽しんでくれている・・・といいな
「じゃーん!」
そういって現れたユメ先輩は、白地に淡い水玉の浴衣を着ていて
長い、長い水色の髪をお団子にして後ろの方でまとめていた
「浴衣~!どう?似合ってる?夏祭りみたいでしょ~」
普段と雰囲気の違うユメ先輩が少し大人びて見えて
『ま、まあ、似合ってるんじゃないですか?』
なんとなく気恥ずかしくて、素直に褒められなかった
「知ってるっすよ!「馬子にも衣装」ってやつっすね!素敵っす!」
「本当~?えへへ、ありがと!」
馬子にも衣装は誉め言葉ではないんだけど
あまりにも喜んでるユメ先輩に水を差すのもあれなので黙っておくことにする
まあ、当人達が幸せならそれでいいだろう
「あっちのブースで着付けもしてくれるんだよ!」
「ほら、ホシノちゃんも、りょーちゃんも着ようよ~!」
『わ、わかりましたから、押さないでください!』
渋々、浴衣に着替える
浴衣は胸のないほうが映えるなんていうけれど
それ以前にお子様体型だからな・・・
「わ~可愛い~!可愛いよホシノちゃん!」
「りょーちゃんも別嬪さんだねぇ・・・!」
「そうっすか?立てば爆薬・・・ってやつっすね!」
『それを言うなら芍薬だね、うん。』
『とっても似合ってるよ、りょーちゃん。』
「か・・・感激っす!ホシノ先輩もとっても可愛いっす!」
お世辞でもちょっと嬉しいのと恥ずかしいのが合わさって
少し耳が熱くなっている気がする
赤くなって・・・ないだろうか
「写真!写真撮ろうよ!いつかあんな楽しかったんだって!見返せるように!」
『は、恥ずかしいんですけど・・・ユメ先輩。』
「え~でもタイマーかけちゃったし・・・3・・・2・・・1・・・!」
「はい、チーズ!」
写真のシャッター音がパシャリと鳴ると同時に
一際、大きな花火があがった
アビドスの校章の形の、水色と桜色の花火
偶然・・・じゃないな、花火師の組合らしきおじちゃんがこっちにサムズアップをしている
「わ~綺麗・・・だね。」
『ふふっ、そうですね。』
「ちょっと、ホシノ先輩!そこは「君の方が綺麗だよ!」って言うとこじゃないんすか?」
『どこで覚えてきたんですか・・・全く・・・』
少女漫画の見すぎじゃないか
そんな歯の浮いた台詞・・・言えるわけない
『また、来年も・・・皆で来れたらいいですね。』
来年・・・?
「うん、そうだね!」
「あ、流れ星っすよ!願い事言わないと・・・」
「なんてお願いするの~?りょーちゃん。」
『ちょっと、言ったら叶わないじゃないですか、ユメ先輩。』
「良いんすよ、もう叶わないですから。」
普段と違う、酷く暗いりょーちゃんの声に
冷や水をかけられたような、そんな気分になる
そうだった、あの時
「それでっすね・・・」
やめて
「私は・・・」
ごめんなさい
「これからも皆で一緒にいられたらいいな!って」
もう彼女はいないというのに
『ああああああああああ!?』
身体を固くして飛び起きる、時刻は・・・朝の5時半
身体にはびっしりと嫌な汗が張り付いていて
とても、
『はあっ、はぁ・・・ぁっ』
上手く呼吸が吸えない
こんな時こそ落ち着いて深呼吸、して
『・・・とりあえず、水でも飲まないと。』
『最近は、落ち着いたと・・・思ってたんだ、けど。』
部屋には誰もいないのに
言い聞かせるかのように独り
あれから何となく寝れなくて、寝付けなくて
ぼーっとしながらテレビを見ていた
いや、今日の事は、必然だったのかもしれない
そうでなければ、この時間のニュースなど見なかっただろうから
「クロノススクープのお時間です!」
「なんと、今回トリニティへ極秘裏の取材を行った所・・・」
「連邦生徒会長の失踪に伴って凍結されていた・・・」
「トリニティとゲヘナの大規模な講和が進められているとの事!」
時期が合わない
未来は変わったんじゃなかったのか
また、あの「戦争」が
繰り返されようとしている
「犬猿の仲と言っても過言ではなかった両者の間に何があったのか!?」
「プロジェクトの名前はエデン条約、と―――」
「ちょ、誰ですかあなた達!?いいですか?私達には言論の自由が―――!」
ぶつりと・・・何も移さなくなったテレビを、ぼんやりと見つめていた。
『私が・・・どうにかしないと。』
UA10000人を突破しました
自分の見たい景色を文章化したくて始めた投稿でしたが
たくさんの方に見ていただいて恐縮です
これにて一章の内容を終了して、次回からエデン条約編に入ります
小説を書き始めてからインプットの時間が取れていないので
少し頻度が落ちるかもしれませんが
この物語の終着点と、ある程度のプロットは既に決まっているので
安心してお待ちください
本編の内容が明るかったので、今日のぷちっと後書きは無しです
↓正直この小説に求めてるものって↓
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