ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
とある部分に気合を入れすぎて、いつもより少し長くなりました
楽園
▼シノ視点
あれからエデン条約について
調べて、調べて・・・調べても
一般の生徒に開示されている情報がそう多いはずもなく
分かったのは「調印式」が一月以内に行われる、という話だけだった
前の世界では、私が2年生の時に行われた「それ」は
ゲヘナとトリニティの仲違いにより
両校全体を巻き込んだ「楽園戦争」に発展した
ヘイローを破壊する事はキヴォトスでも最悪の
いかに身包みを剥こうが、違法HP弾を使おうが
さして特別取り上げられるわけでもない、ここでだ
その条約の裏で何があったのかは知りえないが
人が人を殺めるに至る「何か」がそこで行われたのだろう
一度、始まってしまった戦争は
憎しみが憎しみを呼び・・・歯止めが利かなくなる
その後、両校とも疲弊した所に
白い花の咲いた、赤い木のような異形が出現
当時の総力を挙げて討伐にあたったはいいものの・・・
討伐にこそ成功したものの、薄気味の悪い結末となった
私も、あまり思い出したくはない
この事が原因でゲヘナ・トリニティは大きく力を落とし
およそ三か月後、キヴォトスの空は真っ赤に染まることとなった
今は、少しでも情報が欲しい
私はどうすれば、どうすればいい
そういえば・・・先生もトリニティに行くって言ってたような気がする
時期的にエデン条約関係以外考えられない
でも、迷惑じゃないだろうか
長期で生徒が学校を抜けるのも先生は良しとしないだろう
やはり自分で、何とかする方向性で
”シノこそ困ったことがあったら・・・いや、何もなくても待ってるね。”
・・・頼りにしてもいいのだろうか
朝の冷たい空気を肺に取り込む
ユメ先輩の家があるこのあたりはほとんど人のいない住宅街で
人通りも少ないので、深夜に帰ってくるのに人目を気にしなくて良い所は気に入っている
少しだけ・・・ほんの少しだけ、夜は怖いけど
『おはよう、先生。朝早くにごめんね。』
"ううん?私も今日から出張だから早めに起きて荷物をまとめていたところだったんだ。"
『そう、それはよかった。』
”何か、困ったことでもあったの?”
少し、返答に詰まる。実際先生の言う通りではあるが
全てを打ち明ける?いや、言われたところで、どうしろと・・・そもそも信じてくれるのか?
そんな所で、一つだけ穏便に済ませる方法を思いつく
『実はお金に困ってて、先生一人だと何かと大変でしょ?秘書として一人、いっ・・・!』
後ろから頬をつままれる、そんなに痛くはないけど
どうやらかなりお怒りのようで
「シ~ノ~ちゃん???」
後ろから声をかけられると同時にユメ先輩は指を二本勢いよく立てた
巻き込みたくない、彼女を・・・私にはもうユメ先輩しか
『いひゃいです、ユメひぇんぱい。』
更に両頬をつままれる
どうやら引いてはくれなさそうだ
結局、いつも通り私の方が根負けして
『お待たせしました、先生。二人・・・二人ほど秘書はご入り用ではありませんか?』
”それは・・・学校の方は大丈夫なの?”
『アビドスでは授業はおろか教職員もいないので。』
『基本的にBDでの学習なので、問題ない事は一応確認済みです。』
それに、時間のある時に3年の範囲までは履修済みである
勿論、ユメ先輩に教えるためであるが
”・・・そう言う事ならお願いしようかな。昨日私の決済が必要な資料は終わらせたんだけど。”
”まだまだ沢山あるし・・・出張報告書も支出も・・・”
『徹夜ですか?いえ、徹夜しましたね?先生。迎えに行くので仮眠しててください。』
”い、いやぁ?そんな事はないんだけどなぁ・・・”
”ご、ごめんね?じゃあシャーレの仮眠室で待ってるから。”
『えぇ、それではまた会いましょう、先生。』
電話を切る、先ほどとは打って変わって悲しそうな顔をしている
そんな顔をしないでほしい
貴方には向日葵のように笑っていてほしいのに
今回、そんな顔をさせているのは・・・私に原因があるのだろうが
「シノちゃん。」
『はい、ユメ先輩。』
「私もね、ニュース見たよ。」
『そう、ですか。』
何の、とは聞かない
十中八九、エデン条約についてのニュースだろう
「私はさ、確かにシノちゃんより力もないし、頭も回らないかもしれない。」
「私は、シノちゃんの先輩で、アビドス連合の生徒会長で。」
「たった二人しかいない、生き残りなんだよ。」
そして、ドの付く程のお人好しだ
貴方は誰かを見捨てる判断を、きっと良しとしない
・・・だから、話したくなかったのに
誰かと自分を天秤にかけて、見知らぬ誰かを取ってしまう人間だから
でも・・・
「私だって、何も思ってない訳じゃないんだよ?シノちゃん」
彼女だってあの惨禍を見た一人だから
世界が滅ぶのを見ていた一人だから
私は結局自分のエゴで、彼女の気持ちを何も考えられていなかった
「だから、一人で背負い込もうとしないで。」
「約束、してくれる?」
『・・・えぇ、約束します。』
「うん、良かった!何でも一人で抱え込もうとするの・・・悪い癖だよ?」
「そりゃあ、私は頼りないかもしれないけどさ。」
『そんなことはないです。』
私が頑張れるのは、貴方がいるからで
『ただ、きっと危険な事がたくさんあると思います、だから・・・巻き込みたく、なくて。』
「私が危ないときは、シノちゃんが助けに来てくれるでしょ?」
「シノちゃんが危ないときは、私が助けにいくからって・・・忘れちゃったの?」
『えぇ、えぇ・・・そうでしたね。よろしくお願いします、ユメ先輩。』
「うん!それじゃあ寝坊助さんを起こしにいこっか?」
シャーレの仮眠室で先生を回収してから、街を急ぐ事五分
予定してたらしい電車に間に合うかどうかはこのペースだとギリギリという所
『それで起きるのに15分も使って電車の時刻がぎりぎりと・・・』
”ご、ごめんね!あんまり寝起きが良くなくて。”
『それで、朝ごはんは食べたんですか?まだなら駅の売店で何か買っていきますよ。』
「私もお弁当食べたい!」
『ユメ先輩はもう食べましたよね?太りますよ?』
「ひぃん・・・」
”ふふ、仲良しなんだね。”
『笑ってる場合ですか?急ぎますよ、というか背負いますね。』
”ちょっと待って、世間体とか色々な物がぁぁぁ!?”
駅の改札を抜ける、シャーレ近くの駅は随分と混みあっている
急いで走ったお陰で駅の売店でご飯と飲み物を買う時間くらいは作れたが・・・
私の背に乗っていた先生はグロッキーな顔をしている
”うぅ・・・あんな人前で生徒に背負われて・・・もうお嫁にいけない・・・”
『その件は悪かったので機嫌治してくださいよ、ほら飴ちゃんあげますから。』
”小っちゃい子じゃないんだよ・・・?貰うけど。”
貰うんだ・・・なんか今日の先生少し子供っぽいな
寝不足だからだろうか
『それで、朝ごはんというのには遅いですけど・・・ゼリーとかにしときます?』
”うん、そうしようかな。ブドウ味がいい。”
「お菓子も買おうよ~!先生が奢ってくれるんでしょ?」
”任せて!お給料が入ったばっかりだからね・・・!”
『まあ、貰えるものは有難くもらっておきますけど。』
『セリカちゃんに怒られるので食生活には気を使ってくださいよ。』
”うっ、はい・・・善処します・・・”
『出張中は私が作りますから、出張中は心配しなくても大丈夫です。』
”えっ、本当?楽しみにしてるね?”
『給料に見合った仕事ができるように頑張ります。』
お昼前には、トリニティの前に辿り着くことができた
正式名称をトリニティ総合学園、パテル・フィリウス・サンクトゥスの3学園が統合されて出来た
ゲヘナに次ぐ、あるいは並ぶマンモス校だ
こちらではトリニティ・ミレニアム・ゲヘナの三校を三大学園と呼んでいるらしい
生徒の傾向としては、羽の生えた・・・お嬢様気質な生徒が多い
のだが、あまり良い噂を聞かない
特筆すべき戦力として正義実現委員会の剣先ツルギ
楽園戦争の・・・トリニティ側の英雄こと聖園ミカあたりだろう
私が知る彼女たちは二年だったが、兵器ともいえる戦力だった
特に聖園ミカはゲヘナ側の英雄こと、空崎ヒナと三日三晩に渡り、殴り合い続けたとか
もし彼女たちがいたら、私たちは赤い空に打ち勝つことは出来たのだろうか
なんて、今更考えてもしょうがないことだった
味方に引き入れられれば心強くはあるだろうが、人柄を知らない
何が戦争の引き金となるか分からない以上、不要な接触は控えたい
そんな考え事をしている間にティーパーティ
トリニティにおける、生徒会の代わりである組織の部屋の前に辿り着く
どうやら先生はここに用事があるようだけど
”どうやらナギサは私とミカと3人で話したいみたいなんだ、申し訳ないけど・・・”
トリニティは非常に面倒くさい組織構造をしていて・・・
生徒会長が三人いる・・・その上で決定権を持つ「ホスト」が存在し、それが周期毎に切り替わるらしい
そんなティーパーティの現在のホスト桐藤ナギサ、先生が呼ばれたらしい彼女だ
『私達はその辺で待ってますね、帰るときには声をかけてください。』
「先生行ってらっしゃい~」
”うん、ごめんね。もし暇だったら先にお昼食べちゃっててもいいから・・・”
先生を待っている間、当初の目標である情報収集をしようとはしているのだが
あまりにも、人目を引いている
一体どうしてだろうか、先生との付き添いだったからだろうか
「あのね、シノちゃん。絶対その天狗のお面のせいだと思うよ。」
『そんな・・・わけ・・・』
「ねえねえ、あの娘。あんなお面何てつけてお祭り気分なのかしら。」
「薄気味悪いわ?」
参った、トリニティでは天狗のお面は不評らしい
どうしようか
「あ、あの!人違いだったら失礼なんですけど・・・ホシノさんですか?」
困っていたところに話しかけてきた、金髪の彼女
参ったことにホシノの知り合いらしい
『いや、私はアビドス所属2年生シノ。ホシノの妹です。』
「い、妹さんがいたんですね・・・何かお困りだったようだったので・・・」
『困ってはいるんですけど・・・ううん・・・』
『どうやらこの天狗のお面、トリニティだとすっごく不評みたいでして。』
『訳あって素顔を晒したくないんですけど・・・』
「そ、そういうことなら!」
そういって彼女が取り出したのは舌を出した、白い鳥のお面だった・・・これは・・・
「これ、ペロロ様のお面なんです!実はミレニアムで開催されたお祭り限定で販売されていたものなんですけど!あ、ペロロ様をご存じですか?知らない?そうですか、ではそこから説明しなくてはいけませんね・・・ペロロ様というのはモモフレンズっていうお仲間の一人なんですけど、べーっと出してる舌とつぶらな瞳がとってもキュートなんです!他のモモフレンズのお友達もとってもキュートな子が多いんですけど、これ以上は長くなっちゃうので、断腸の思いで割愛しますね。それでなんですけど、このお面ミレニアムが開発に力を入れているだけあって、とぉぉぉってもキュートなんです!見てくださいこのキラキラしたおめめ!更に衝撃に強い新素材を使用したおかげでハンマーで叩いても傷一つしかつかないんだとか!まあ、恐れ多くてそんなこと絶対できないですけどね!それで・・・」
「私、布教用と観賞用と使用用途で三つ買ったので・・・よければいかがですか?」
「ホシノちゃん・・・これは・・・」
『えぇ・・・』
『めちゃくちゃ可愛いじゃないですか!こんないいもの貰ってもいいんですか?』
「シ・・・シノちゃん?」
「勿論です!同志に布教するために買ったので!それに・・・」
「鞄の奥底に置いておくより、必要としてる人に使ってもらった方が・・・」
「このペロロ様も本望だと思いますから!」
「ちょ、シノちゃん?おーいシノちゃん・・・?聞こえてる?」
『こうしちゃいられませんね、変えてみますね。』
白い鳥のお面をつける、視界は悪くなったが
私の場合そんなに大きな問題じゃない
可愛い・・・可愛いお面をつけているせいか私自身も可愛いんじゃないかと思えてくる
『ありがとう、同志。名前を聞いていませんでした。』
「わ、私は阿慈谷ヒフミって言います!大した取柄もない平凡な人間ですけど!」
平凡・・・?此処までに平凡な要素等あっただろうか
『私は高那シノ、ヒフミちゃん改めてよろしくお願いします。』
先生からモモトークが届く、どうやら話し合いは終わったようだ
私としては何も進展がないが、あのお面をつけたままでは
話を聞くどころか、注目されたままだったので
一つ、進展したと言うべきだろう
「いや、やりきったみたいな顔しても、何も改善してないよ?」
「これ、私のモモトークです!私、呼ばれているので・・・その、また語り合いましょう!!!」
『うん、ありがとう。じゃあまたいつか。』
まあ、此処からは忙しくなる、早々会うことは無いだろうが
元気よく走り去っていく彼女を見届けてから、ティーパーティの部屋の前に戻る
先生は、どうやら難しい顔をしている
あまり明るい会議の内容ではなかったのだろうか
当然と言えば、当然ともいえるが
”ちょ、シノ?そ・・・それ?どうしたの?”
『親切な人からもらったんです。あのお面は、トリニティでは少々目立つらしいですから。』
”ふっ、そ・・・そう。きっ・・・気に入ったなら良かった、”
あれから、お昼を済ませている際に聞いた話によると
先生はどうやら補習授業が必要な生徒の面倒を見るらしい
・・・エデン条約とは関係ない?
そんな筈はないと思うのだが、純粋に先生としての腕を買われた可能性は考えてなかった
どうやら、この教室に一人目がいるらしいが・・・
「あ、あはは・・・どうも、先生・・・と、シノちゃん!?」
『ヒフミちゃん?どうしてここに。まさか・・・』
とんだ偶然もあったものだ、補習授業部最初の一人目は・・・
どうやら阿慈谷ヒフミ、その人らしい
ノノミ「それは、ペロロちゃんのお面じゃないですか!」
「シノちゃんもモモフレンズ好きなんですか~?」
シノ「親切な人から貰ったんですけど・・・可愛いから集めてみようかなって思ってます。」
ノノミ「わぁ~☆私はMr.ニコライちゃんが好きなんです!」
「今度一緒にショッピングに行きましょう~♧」
ホシノ「う、うへ~おじさんにはちょっぴり若い娘の考えることはわかんないなぁ・・・」
↓正直この小説に求めてるものって↓
-
ストーリー(シリアス)
-
日常
-
バランス
-
その他(コメントまでどうぞ)