ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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3日目の朝のお話
後、2話程度で合宿編は終わりになるはずです。


補習授業部の合宿 その4

▼シノ視点

 

結局あの後は考え込んで眠れなかった

戦争の引き金になるのが本当に彼女なのだろうか

先生に言うべきなんだろう、けど

 

そんなことを考えていたら、いつの間にか明け方になっていた

 

「シノ、ちょっといいだろうか。昨日の事で話がある。」

 

このタイミングで、おそらく要件は・・・

何故私に?尾行がばれていた可能性も大いにあるが

それなら寝込みを狙うだろう

・・・違うだろ、アズサは仲間だろ

最悪な可能性を探る分には頭が回って嫌になる

 

『構いませんよ。』

 

「そうか、お茶を入れておくから・・・15分後くらいに来てほしい。」

 

 

 

きっちり、15分後

食堂に向かうと、窓の外をみつめているアズサ

時間が早いからか・・・まだ誰も起きてきていない

愛用の散弾銃(eyes of horus)が、ここまで重く感じる事は無かった

 

『それで、話って言うのは・・・』

 

「お茶を入れたから、飲んで。」

 

『え、えぇ。いただきますが。』

 

緊張からか、嫌な汗をかいたからか・・・喉が渇いていたので助かりはするが

彼女の意図が読めない

飲み終わると、彼女がゆっくり口を開く。

 

「本当に、そうなんだな。」

「試すような真似をしてすまない。」

 

『何がですか。』

 

「昨日渡したレーションは・・・」

「軍用のレーションはそもそもあまり美味しいものでは、ないんだ。物にもよるけど。」

「昨日のは、同胞・・・いや、友達の中でも特に評判が悪くて・・・」

「一般の味覚なら、笑って美味しい・・・って言える物でもないはず。」

 

『何が、言いたいんですか?』

 

「そのお茶・・・甘くなかったか?」

 

「・・・えぇ。甘かったですね。」

 

「塩を、少し入れてみた。」

 

見事にカマをかけられた

こうなっては弁明は不可能だろう

 

「友達にも・・・いたんだ。戦いや訓練の中で「強いストレス」を感じて。」

「味覚を・・・失うのは。」

「そういうのは、PTSDの一種と言うらしいと習ったが。」

「シノは料理も得意だから、初めからそうだったという線はないと思っていた。」

 

こちらに来てからだったか、味とか美味しいとかわからなくて

「食べ物を雰囲気でしか」判断できなかった

 

『お手上げです、何がお望みですか?お願いですからユメ先輩には内緒にしておいてください。』

 

 

「ち、違う。」

何処か慌てた様子のアズサ

「その、食事をするのが・・・辛いだろうと思ったから。」

 

そう言って渡されたのは緑色のスムージーのようなドリンクだった

「友人も飲料なら取りやすいと言っていたから・・・」

「当然毒は入ってない、毒見をしてもいい。」

 

私を・・・気遣っての行動だったわけだ、こんな朝早くに用意までして

 

「理由は、聞かない。触れられたくない物もあるだろうから。」

「それでも、もし辛かったら。ヒフミ、コハルにハナコ・・・そして先生。」

「皆優しいから、きっと悩みを聞いてくれると思う。」

 

「勿論私もシノの力になりたい、シノにはお世話になってるから。」

「レシピは置いておくから、要件はそれだけだ。」

 

立ち去ろうとする、アズサ

 

本当はこのまま見送って、先生に伝えに行くのが正解だ

彼女は合宿中も隠れて、第三者に会って・・・現状をリークしている

間違いなく何処かトリニティとは別の勢力の息のかかった存在

 

『私からも、お話したいことがあるんです。』

 

だから、今から私が行おうとしているのは

客観的に見れば・・・正しくない行い

 

 

『昨日の夜は、あんな場所で・・・誰と会っていたんですか?アズサちゃん。』

 

 

 

「・・・ごめん。それは言えない。」

 

『力ずくで聞きだしても、いいんですよ。』

 

「シノを、皆を・・・巻き込みたくないんだ。」

 

『この期に及んで自分の身より、お友達の身が可愛いですか。』

 

 

これで、もし戦争が起きたら・・・私の責任だ

でも、信じたくなってしまったから

私はこちらを選ぶよ、先生

 

 

『・・・信じてもいいんですか。』

 

「皆を傷つける事は絶対にない、それだけは信じてほしい。」

「と言っても何も証明できるものはないが・・・」

 

アズサちゃんの目をじっと見つめる

嘘をついているかなんて、私には分からないけど

 

『・・・コーヒーいりますか?昨日も寝てないなら眠いんじゃないですか?』

 

 

「それは・・・」

 

『先生や皆には黙っておきます。』

 

「あ、ありがとう・・・シノ。すまない、」

 

 

「貴方の行動をすべて信じるという訳ではありません。』

『必要であれば昨日のように尾行だってします。」

 

「それでいいけど、自分の身は大切にしてくれ。」

 

『どの口が言うんですか、全く・・・』

 

 

 

『実は、コーヒーだけは何となく味が分かるんですよ。苦いかな・・・くらいですけど。』

 

「・・・そうか。それは・・・うん、頂こう。」

 

窓の外から射す日光は先ほどより強くなっていて

二人で飲んだコーヒーはいつもより少しだけ苦く感じた

 

 

 

 

▼同刻・先生視点

 

「いやぁ~ごめんね?こんな時間に呼び出しちゃって・・・先生。」

「にしてもこのプールに水が入ってるのなんて久しぶりに見たよ☆」

 

私を呼び出したのは、ティーパーティの一人「聖園ミカ」だった。

おそらく、ナギサから頼まれていた件についてだろう

そう考えると、緊張からか少し体が強張る。

 

「合宿の方はどう?何か楽しい事とかあった?やっぱり水着で泳いだりしたの?」

 

”・・・”

 

「・・・あはっ。そんなに警戒されると、傷ついちゃうなぁ?」

 

”用件は何?”

 

「ああ、先生はあんまり長い前置きは好きじゃなかったかぁ。じゃあ本題に入るとしよっか?」

「ああ、それと・・・ここに来たのは私の「独断」。ナギちゃんは知らないよ。」

 

「それで本題なんだけど・・・ナギちゃんから何か言われてるんじゃない?」

「そう、例えば・・・「トリニティの裏切者」を探してほしいとか?」

 

”それは・・・”

 

何処まで話すべきだろうか、そういう話が出てくるあたり・・・

ナギサとは別の思惑で動いていることはわかるが

そんな私の逡巡とは裏腹に、彼女の方は何かを納得したようだった

 

「はぁ・・・やっぱりかぁ。ナギちゃんならそうするよね。」

「それで、どこまで知ってる感じ?何で裏切者を探してるかまで聞いた感じかな?」

 

”私は、ナギサとは違うやり方をするつもりだよ。”

 

「それは・・・断ったって事?ティーパーティーのホストのナギサちゃんと下手したら敵対する事になりかねないのに?」

「やっぱり、自分の生徒たちを疑いたくなかったから?」

 

”私の役目は、そうじゃないと思ったから。”

 

「確かに、ナギサちゃんは「トリニティ」のトップだけど、先生の立場はあくまで「シャーレ」だもんね?」

「じゃあ、先生は誰の味方なの?ナギちゃん・・・トリニティと敵対して。」

「ゲヘナ?それともアビドスかな?ホシノちゃんの妹さん?と一緒にいるよね?」

 

何処からかシノの所属が知られている。隠している訳ではないが・・・

とはいえ、彼女についてはあまり情報を知っている訳ではないようだが

私の方で調べても、ホシノに妹がいたという話は・・・聞いたことがない

 

”私は、生徒たちの味方だよ。”

 

「えっと。それは、私も・・・ってこと?」

 

”勿論だよ。”

 

私は先生として、大人として・・・生徒の味方であり続けるべきだし

私がそうしたいから

 

「・・・わーお。先生って結構人たらしだね・・・?」

「嬉しい、けど。それはちょっと信頼できないなぁ・・・だって。」

「立場によっては誰とでも敵対するって事でもあるよね?」

 

「だから・・・「取引」をしようよ、先生。」

「補習授業部の中にいる「裏切者」が誰なのか・・・私が教えてあげる。」

 

”それは・・・!取引の内容にも、よるかな。”

 

「簡単な話だよ、先生。」

「先生にはその子を守ってほしいんだ、白洲アズサちゃんを・・・ね。」

 

「詳しく話すとね?彼女、転校生なのは知ってるよね?」

「彼女の出身校は・・・トリニティから随分前に分かれた「アリウス分校」の生徒なの。」

 

「トリニティは色々な分派が集まった学園だけど、昔は毎日のように紛争をしてたらしくて。」

「その時の大きな派閥が「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」と・・・「アリウス」の四校。」

「そんな現状に嫌気がさしたか、戦いに疲れたのかは分からないんだけど・・・」

「「第一回公会議」で一つの学園になろうってお話をした。」

 

「聡明な先生ならここまで言えばわかるかな?そう、この時の連合に反対意見を出したのがアリウスなの。」

「大きな力を得たトリニティ連合は、その力を誇示するかのように。そんなアリウスへの迫害を始めた・・・まあ、よくある話だよね。力を得た個人や組織が、その力に溺れるなんて。」

 

「今もアリウスの分校は何処か誰も知らない場所にあるって聞くけど・・・今の生徒たちはアリウス分校なんて学校の存在すら知らないだろうね。」

「これが、アズサちゃんの出身校についてのお話。」

 

「大丈夫?先生からしたら面白くない話だと思うけど。」

 

”続けてほしい。”

 

「私はね、先生・・・そんなアリウスの子達とも仲良くなれたらなって思うの。」

「だから、アズサちゃんの事をトリニティに入学させた。平和の懸け橋になればいいなと思ってね?書類の偽装は大変だったんだよ?」

 

「それに・・・アリウスの生徒だって今のアズサちゃんみたいにお友達と笑って、勉強して・・・幸せに・・・幸せになれるって証明したかったの。」

 

 

「でも、ナギちゃんはそうは思わなかった、今ここにいない、セイアちゃんもだね。」

「アリウスは今でも私達トリニティを憎んでいるから。両校が手を取り合うのは簡単じゃない。」

「そういう意味では、トリニティに来たスパイ・・・裏切者は元アリウスのアズサちゃんだよ。」

「広義の意味でいえば、ナギちゃんを邪魔している私もナギちゃんからしたら裏切者かもね?」

 

 

”セイアはどうしたの?姿を見ていないけど。”

 

「・・・っ。本当に先生は鋭いなぁ・・・今日の所は聞かせるつもりはなかったんだけど。」

「ただ、この事も話さないと納得しないかぁ。」

「先生は、裏切らないって約束してくれる?この事を知られて裏切られたら・・・私。」

 

 

この話をしている間も、表情を大きく崩さなかったミカの顔が酷く辛そうな顔つきになる

それはまるで、悲しさに何かが入り混じったような様相で

 

 

”私は、生徒の味方であり続けるよ。”

 

「そっかぁ・・・いや、それなら裏切られても、それはそれで悪くないかな?」

 

「セイアちゃんはね、体調を崩したとか、入院したとか・・・そういう訳じゃなくて。」

「ヘイローをね、壊されたんだよ。犯人はまだ・・・捕まってない。」

 

”そんな事が・・・”

 

「この事は、ティーパーティ以外誰も知らない情報なんだけどね。」

「おそらくこの事件が起きてからだと思う、ナギちゃんが裏切者を躍起になって探しているのも、エデン条約を無理にでも推し進めているのも。」

 

”それは、どういう・・・?”

 

「エデン条約は副産物でしかなくて・・・その「本質」はエデン条約機構、通称「ETO」と呼ばれるゲヘナとトリニティの武力集団を作る事なんだから。」

「その力を用いてナギちゃんは何をするつもりなんだろうね。」

 

「ねえ、先生。この状況ってまるで・・・「第一回公会議」の時と同じだと思わない?」

「その時のアリウスが「ミレニアム」になるのか、はたまた「連邦生徒会」になるかはわからないけど。」

 

「ナギちゃんはそんなことする子じゃない・・・とは思わないよね。」

「今にも、気に入らない子は皆ゴミ箱にいれて、ポイしちゃおうなんてしている訳だし。」

 

否定は、出来なかった

彼女は裏切者ごと、補習授業部を退学にしようとしている訳で

 

「そういう意味では平和なトリニティを脅かす裏切者は、ナギちゃんなのかもしれないけど。」

 

「・・・なんて☆これは私の視点から見た一方的な話だから、最後は先生が決めることだよね。」

「長い事、話しちゃったね、あんまり長居するとある事ない事いわれちゃいそうだし。」

「それじゃあね、先生!あんまり女の子を勘違いさせるようなことを言ってると、知らないよ☆」

 

明るい表情で去っていこうとするミカが、どこか無理をしているように見えて

引き止めなくちゃいけないと、そう思った

 

”ミカは・・・大丈夫なの?”

 

「わ、私の心配?大丈夫だよ~私・・・こう見えても強いんだから!じゃあね☆」

 

そう言って去っていくミカの後ろ姿にどこか・・・シノを、そしてホシノを重ねてしまっていた

 




ユメ「とんでもない事に気づいちゃったんだよ、先生!」
先生 ”どうしたの?まさか・・・”
ユメ「そう!この辺りのピンク髪の女の子、多すぎない!?」
先生 ”シノ、ハナコ、コハル・・・ミカ。確かに半分は髪がピンク色だね。”

シノ『ミカって・・・先生?私の知らないところで他の女の子と会ってたんですか?』
先生 ”い、いやぁ・・・”
シノ『何のための私達なんですか、護衛するので一声かけてくださいよ。』
先生 ”ああ、そういう?一人でも大丈夫だよ?”

↓正直この小説に求めてるものって↓

  • ストーリー(シリアス)
  • 日常
  • バランス
  • その他(コメントまでどうぞ)
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