ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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一度芽を出した不信感は、根となり心に巣食い続ける


いつも、誰かのエミュをしていないかこの子


ボタンの掛け違い

▼シノ視点?

 

ゲヘナの市街地を走るトラックの振動に揺られながら、外の様子を伺っているが

あまり人通りがないな

 

「ハルナ!?ちょっと本当に大丈夫なのよね!?」

 

赤司ジュンコと言うらしい、赤色の髪の彼女

あまり喋ると喉を傷めそうなので、ひらひらと手を振っておく

 

「うわぁ!?ご、ごめんなさい!」

 

余計に怖がらせてしまったみたいで申し訳ない

 

 

トラックに揺られること暫く、開けた通りに出る

こちらの方面からゲヘナの学区を出るためには、この道を越える必要があるのだが・・・

どうやら封鎖されているようで、ゲヘナの風紀委員会が待ち構えている

 

景気づけに、アカリのアンダーグレネードランチャー(ボトムレス)をバリケードに打ち込んでもらう

勢いよく爆発したバリケードに驚きを隠せない様子の彼女達・・・好都合だ

そのまま中に突入して制圧しよう

 

 

「き、緊急っ~!逃走中の美食研究部4人に・・・!災厄の狐「狐坂ワカモ」が合流っ!」

「し、至急増援をっ!お願い!このままじゃ・・・!」

 

 

『このままじゃ、どうなってしまうというのでしょうかぁ?』

 

「ひっ、ひいっ!?やだ、助けて!」

 

『聞こえますかぁ?風紀委員会の皆様・・・今夜、(わたくし)と遊んでくださる皆様は東へお越しになってください♥』

『もし、誰も来られないなんて事になったら・・・とても悲しいですが・・・』

『その時は「この子」に遊んでもらう事にしましょう♥』

 

「お、お願い!誰か・・・いないの?誰か助けてよぉ・・・」

 

ギャン泣きしているゲヘナの風紀委員会の子を見ていると、とても申し訳ない気持ちになる

本当にごめんなさい

出来れば傷つけたくはなかったが、先生の方に目を向けないためにも必要な事だ

 

『それでは皆様、良い夜を♥』

 

ブツリ、とトランシーバーと彼女の意識を落とす

 

 

 

声を上げないようにお願いしていたハルナ達が口を開く

 

「あ、あの意外な特技があるのですね。私、今でも少し信じられませんわ。」

 

『いいから逃げますよ、あまり悪戯に人を傷つけたくないですし。』

 

「むーむー!」

 

この黒髪でぐるぐる巻きにされている子は、給食部のフウカちゃんと言うらしい

どうやらこの車も彼女が「快く貸してくれた」とか

絶対巻き込まれただけの一般人だよね、これ・・・

 

 

ゲヘナの自治区の境界付近まで来たが、シークレットブーツなだけあって少し動き辛い

とはいえ最初の攪乱が効いたのか、北へ人が密集している

後はこの橋を抜ければ、別学園の自治区だが・・・

流石に何人か待ち構えているな

ご丁寧に通行止めのバリケードもある

 

『さあさあ、貫かれたいのは誰かしら?』

 

「そこまでだ、規則違反者どもめ・・・!」

 

 

「おや、イオリさんではないですか、こんなところで会うとは奇遇ですね。」

「これから一緒にお食事でもいかがでしょう?」

 

「行くわけないだろ!馬鹿なのか!?」

 

褐色の肌に銀色のツインテール・・・風紀委員会の白鏡イオリか、有名どころが出てきたな

 

 

『ここで、二手に分かれましょうか。合図があったら車から降りてくださいな。』

 

銃剣をくるりと回して構えなおす

負けることは無いだろうが、時間を使う訳にもいかない

タイミングが重要になる・・・主導権はこちらで取りたい

 

「わかりました、お世話になりましたわね。」

「また今度ご飯食べようね~!」

「むー!むー!!!」

 

「敵の前で作戦相談とか、私を舐めてるのか!?」

 

『ふふふ、それはどうでしょうか?』

 

『いつ撃ってきてもよろしいのですよ?』

 

『ああ、それとも・・・』

頭をこんこんと指さす、可能な限り挑発的に

 

『何処を狙えば良いか・・・わからないのでしょうかぁ?』

彼女は直情的なタイプそうだから

 

「舐めやがってっ・・・!覚悟しろっ!」

 

3発の弾丸が顔目掛けて飛んでくる、機械のように正確な早撃ち。

あまり最新のタイプのスナイパーライフルに見えないし、光学機の類も見受けられないのにこの精度とは・・・良い腕をしている。

が、どこを狙っているか見えている弾丸が当たるはずもない。

首をそらして最小限の動作で弾を避けるとともに、グレネードを二つ放る。

 

「なっ・・・」

 

強烈な閃光が視界と聴覚を奪う・・・が流石に顔を逸らすか

だが、一瞬作れればそれで良い

二つ目に投げたスモークグレネードが展開できるまでの時間が稼げれば

 

「スモークだと!?逃がさないっ・・・!」

 

給食部のトラックが橋を渡ろうと、彼女の横を通り過ぎる。

あまり加速するための距離もなかったので、速度自体は早くなかったとはいえ・・・

流石の反射神経だ、しっかりと荷台に手をかけている・・・が

 

『今です。』

「なっ・・・!」

 

合図とともに、美食研究部の4人(+1人)がトラックから「飛び降りる」

とともにトラックの荷台に積んでいた爆薬のスイッチを・・・押した。

 

轟音が遠くまで響く、これで人はこちらに寄らざるをえないだろう

炎上するトラック、倒れ伏す風紀委員会の面々・・・

綺麗にバリケード事、一網打尽にできたな

 

「むー!?」(特別意訳:また、うちのトラックがぁ!?)

 

「皆様、それではごきげんよう!」

 

律儀にこちらに手を振りながら走っていくハルナにこちらもひらひらと手を振り返す

これでこちらに人員を割かざるを得ないし、先生の事どころではないだろう

 

先生達は、無事に現地に着けただろうか・・・

私も早い所、試験会場に向かおう

適当な廃墟で着替えをすまして、何食わぬ顔でその場所を後にした

 

 

 

 

携帯を開けたのは、時刻がちょうど試験の開始時刻になった所だった

モモトークで聞いたところによると、先輩たちは何とか試験会場までたどり着けたようだ

まずは、一安心というところだろうか・・・範囲が違う以上合格は厳しい気もするが

 

指定された地点まで5分ほどの場所まで歩いて、そして気づく

妙に温泉開発部の人員が多い

 

・・・妙な胸騒ぎがする

 

 

「なあ、本当なのかよ?」

「ああ、「信頼できるタレコミ先」らしいぜ。」

「本当にあんな「廃墟」の地下に温泉なんてあるかぁ?」

 

『ちょ、ちょっと待ってっ・・・!』

 

「ま、出るまで掘れば出るでしょ?じゃ、発破ぁ~!」

 

突如、鳴り響いた大きな爆発と、暴風

ユメ先輩と、補習授業部の彼女たちはおそらく無事だろう

だけど、先生は違う。先生はヘイローのない人間でっ・・・!

 

 

道を走る、走る。

勘違いだったら、それでいい。

だから、今は少しでも早く確認して・・・安心したかった。

 

でも、勘違いなんかじゃなくて、試験会場「だった」場所には瓦礫しかなかった。

心臓の鼓動がいやに大きく聞こえる

 

『先生?ユメ先輩?コハルちゃん?アズサちゃん?ハナコちゃん、ヒフミちゃん?誰でもいいから返事をっ・・・返事をしてください!』

 

「あっ、シノちゃん・・・」

 

『ユメ先輩?先生は・・・?』

 

”私は無事だよ。でも・・・試験は・・・”

 

『どうやって・・・っ。いや、試験は仕方ないです。』

『生きていてよかった・・・本当に。本当に良かったっ・・・!』

 

 

 

”ちょ、ちょっとシノ?くすぐったい・・・ほら元気だから、ね?”

 

柄でもないのに抱き着いてしまった、安心からだろうか

どうやってあの爆風から生き残ったかは、この際どうでもいい

今はこの奇跡を噛みしめていたかった

 

 

 

軽く事情を聞くと、試験中にいきなり爆発が起きて解答用紙を全損したらしい

結果、試験には不合格になったらしいが・・・そんな事より

 

『全く、万が一の場合の保険があるなら!先に!言っておいてください!』

 

”いやぁ、ごめんごめん。失念してた・・・”

 

『心配したじゃないですかっ!バカ!大バカ!もう知りませんから!』

 

「せめて私たちには先に教えておいて欲しかったなぁ・・・心臓が止まるかと思ったよ・・・」

 

”反省してます・・・”

 

『・・・とりあえず帰りましょう。みんな疲れてると思いますし・・・明日以降の事も考えなくてはいけませんから。』

 

 

 

行きと同じタクシーを使って、トリニティまで帰った

少し寝たいけど、もしかしたら・・・襲われるかもしれないから

宿舎に就くまでは気を抜かないでおこう

 

 

 

 

 

翌朝・・・といってもお昼に近いが

ユメ先輩から昨日の大体の事情を聞いた

 

どうやら風紀委員会にも、温泉開発部にも「匿名の口コミ」とやらがあったらしい

十中八九、ティーパーティのナギサの一策だろう

 

試験会場を深夜3時のゲヘナに変えて・・・それだけでは飽き足らなかったらしい

真剣に頑張っている彼女たちの事をどれだけ馬鹿にすれば気が済むのか

 

気分転換に散歩をしていると、耳を澄まさなくても誰かの陰口が聞こえてくる

 

何が、エデン条約を進める為だ

もし私達が正体を晒して、ゲヘナで一悶着を起こせば・・・当然問題になるだろう

それがティーパーティー主導のテストとなれば猶更

 

エデン条約の為に、裏切者を退学にするどころか

裏切者を退学にさせる為に、エデン条約をおしゃかにしようとしているではないか

 

 

先日見掛けた、虐められていた少女のらしき下駄箱には沢山の手紙が入っていた

それを見て、昨夜の泣いていた風紀委員会の子を思い出す。

 

『ふふっ、あはは。なんだ・・・私も変わらないじゃないですか。』

 

こんな連中だって分かっていたなら、初めから別の方法を取れば良かった。

 

『・・・くっだらない。』

 

本当に誰かに救いの手を差し伸べる必要はあるんでしょうか?

私にはもうわからなくなってきてしまいました、ユメ先輩、先生。

 




ワカモ「お久しぶりです、あなた様・・・!」
先生 ”ワカモ、ゲヘナでは助けてくれてありがとう・・・攪乱してくれたんだよね?”
ワカモ「何の事でしょうか・・・?」
先生 ”イオリから聞いたよ。ワカモが風紀委員相手に大立ち回りしたって。”
先生 ”ちょっとやりすぎだとは思うけど。”

ワカモ「・・・・・・ああ、そういう筋書きですか。」
先生 ”ん?何か言った?”
ワカモ「いえ、あなた様のお役に立てたのなら幸せです♥」

この小説で増やしてほしい描写

  • 会話文
  • 地の分(場面描写)
  • 地の文(心情描写)
  • 今のままがいい
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