ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
だからこそ、希望から絶望へと切り替わる、その落差こそが最も醜く暗い
▼シノ視点
どうしようもなく眠れなくて、荷物の整理等を始めてしまった午前6時
こんなにも眠れないのは、今日ががエデン条約の調印式がある日だから・・・だろう。
先生は今日もゲヘナでマコト議長や風紀のヒナ委員長と会ったり、最後まで忙しいらしいが
流石にヒナちゃんがついていれば安心だろう、少なくとも軽率に手は出せないと思う
荷物の整理をしていると、黒色のボストンバックを見つける
中に入っているのは狐のお面と着物
これをくれた彼女は今元気だろうか
初めて会った時の事を思い出す
確かあれは、この世界に来てから・・・1週間程が経ったある日の事だった
その日は、良く晴れた日曜日の午後だった
情報収集と地理の把握の為に駅前を歩いていたところ
後ろから聞きなれない声に呼び止められる
「良いお面ですね?天狗でしょうか。」
「お面をつけているのは、素顔を見せたくないから・・・ですか?」
街中で話しかけてきた狐面の彼女
『貴方は確か、狐坂ワカモ・・・?』
「ご存じでしたか、それは自己紹介の手間も省けるというものです。」
7囚人の災厄の狐とも呼ばれる、破壊と略奪を趣味とする彼女
私に何か用事が・・・?元の世界でも、そう関わりがあった記憶がないが
『まあ・・・素顔を晒せない、晒したくない事情があるっていう所ではありますね。』
「そうですかそうですか・・・少し気になったので。」
「貴方とは仲良くやって行けそうですからね。」
『それはまた、どうして・・・?』
「匂いますもの。」
「どうしようもなく染み付いた・・・破壊の匂いが。」
物理的な香りや匂いの話ではないのだろう
もしくは彼女特有の感覚と言うべきか、もしくは・・・
「強者特有の「それ」よりも洗練された破壊と死の香り・・・心当たりはあるのでしょう?」
『・・・えぇ。』
心当たりは、あった
私は一を救うために全てを捨てた愚か者だったから
あの世界のすべての命を背負って生きているといっても過言ではない
「今は私には
「少しばかり、親近感がわいてしまいました♥」
「こちらは差し上げます、ご自由にお使いください?」
「実はバレンタインで作りすぎてしまって、処分先に困っていたところだったのです。」
そう言って渡された衣服一式と狐の面・・・これをどう使えと
まあ、使う事もあるかもしれない・・・
それに、よく見ると結構お洒落だし
『えぇ。ありがとうございます。』
「ただ、どれだけ取り繕っても、面はすぐに剝がれる事。」
「ゆめゆめ、お忘れなきよう。」
『そう・・・ですね。』
「ふふふ・・・いつの日か、貴方がキヴォトスに巻き起こす混沌が・・・」
「私好みな事を祈っています♥」
その後、モモトークの交換をしたわけだが
何故か定期的に、今日のお面はどちらがいいかの連絡が来る
丁度、今朝のように
自分の好きなものをつければいいと思うが・・・
『私は左の方が好みだと思いますよ、っと。』
返信は・・・「参考にしますね♥」
本当にこの狐面をつけて出かけたのか、私には分からないけどまあ・・どっちでもいいか
何となく付けたテレビではエデン条約についてのニュースが流れている
「この番組をご覧の皆様!見えますでしょうか!」
「私は今、エデン条約の調印式が行われる古聖堂に来ております!」
「いやぁ、犬猿の仲とも言われたゲヘナトリニティの両校が一同に会するとは圧巻ですね!」
「現場の空気も冷え冷えです!え?余計な事を言うな?」
「私達には報道の自由が・・・スポンサーの意向?なら仕方ありませんね・・・」
「という訳で第一回公会議の会場である古聖堂を選んだのはゲヘナ側だそうで・・・」
ニュースを見ていると、後ろから気配を感じる
「しーのちゃんっ!おっはよ!」
『おはようございます、ユメ先輩。』
「今日はいよいよ、エデン条約の調印式だね。」
『早く起きすぎたので、まだ時間がありますけどね・・・』
「まだ時間もあるし、ちょっとお外でも一緒に歩かない?」
まだ少し寒い、トリニティの住宅街を歩く
どこか活気があるのは今日が調印式だからだろう
朝露が窓の淵をツーっと落ちているのが、今日の寒さを更に感じさせる
「いやーちょっと寒いね・・・」
「手つないでいい?シノちゃんも寒いでしょ、ね?」
ちょっとビックリした、まあ・・・前もこんなことがあった気がする
『い、いいですよ。』
声は、上擦ってなかっただろうか
「えへへ、シノちゃんの手・・・あったかいね。」
『反応に困る事を言わないでくださいよ・・・』
「良い街だよね、トリニティのこの辺って・・・美味しいスイーツもいっぱいあるし・・・」
『小物屋さんもあって、先日に行った焼肉屋さんもいい所でした。』
『今日のエデン条約が調印されれば・・・きっと』
「あの戦争もなくなる・・・よね。」
『そうなるとは、思います。』
「そっかぁ・・・そっか・・・」
「誰も、死なないといいね。」
本当にそう思う
そのためにもここまで頑張ってきたのだから
『そうですね。その為にも今日も頑張りましょうね。』
暫く歩くと、商業区にまでつく
この時間でも幾つかお店はやっているのは
やはりトリニティの繁栄具合を感じる
「そこのパン屋さんが美味しいってヒフミちゃんに教えてもらったところで・・・」
「今日の朝ごはんそこにしよっか!先生にも買ってって上げよ~?」
『分かりましたよ・・・領収書忘れないでくださいね?』
「は~い!私ちくわパンがいい!」
『ユメ先輩・・・。』
「どしたの、シノちゃん?」
『えっと、明日も・・・来れたらいいですね。』
「うん!そうだね、明日は先生も連れてこよっか。」
そんな事を話してると、どうやら人だかりが多くなってくる
もう、そんな時間か・・・
「それじゃ、帰ろっか。」
『そうですね、帰りましょう。先生もお腹を空かせているかもしれませんしね。』
”おはようシノ、ユメ。どこ行ってたの?”
「じゃーん、朝ごはん買ってきたんだよ!」
『好きなの選んでください、今日は長丁場になると思いますし・・・朝ごはんは大切です。』
”うん、ありがと。じゃあ私は・・・”
迎えた調印式の日、古聖堂にはトリニティもゲヘナも相当な人数がいるあたり
両校がエデン条約にかける期待が伺えるが・・・
「ちょっと?ゲヘナの角付きがどうしてここに並んでる訳?」
「すまんすまん、羽が邪魔で線が見えなかったわ。きをつけまーす」
「バカにしてるの・・・?取り締まりの必要があるわね・・・!」
両校とも仲が悪い
まあ分かっていた事ではあるが・・・
トリニティとゲヘナは犬猿の仲、と言う話はよく聞く
こんなことで条約が上手くいくのか、雲行きが怪しくなってきた
「くひひひひっ。醜態をさらすなぁ。」
「つ、ツルギ先輩!?」
「気を付けます!!」
これが正実の最終兵器とも言われる剣先ツルギか・・・
こちらで見るのは初めてだが
確かに風格がある・・・気がする。顔も怖い
同じ二挺ショットガン使いとしては戦い方が気になる所だ
「あっ―――先生。今日はいい天気ですね?えっと、用事があるので失礼しますね。」
急に乙女漫画みたいな顔になる彼女、さっきまで白目剥いてたのに・・・
先生にホの字、というやつだろうか
それにしてもあまりにも分かりやすすぎる
そして、今回の調印式にはシスターフッドも同席しているようで・・・
隣にいたシスターフッドの子も話しかけてくる
「えっと、お久しぶりですね!先生。」
”久しぶり、ヒナタ。”
ヒナタと言うらしい彼女、随分と立派なものをお持ちだ
私にもちょっとくらい分けてくれれば良いのにな
「サクラコ様の指示で、今日は・・・」
「シスターフッドとしても前回の件を踏まえて色々な事に協力する事にしたみたいなんです。」
「この後、式までは時間があるんですけど・・・よければ中を案内しましょうか?」
”お願いしようかな、シノとユメはどうする?”
『こちらはこちらで、危険物や不審者の類がないか、確認しておきます。』
「一応、昨日も確認したけどね・・・やっぱり用心するに越したことは無いから!」
”あはは、大丈夫だと思うけどね。じゃあシノもユメも気を付けて。”
「はーい!また後で会おうね!」
実際、古聖堂の周辺に不審な人物や、危険物の類は見当たらなかった
喧嘩やその仲裁は、多分に起こっているけど
まあ、ゲヘナの風紀委員会とトリニティの正義実現委員会が勢ぞろいしている訳だし
ここから戦争になるとしたら・・・何かあるだろうか
思考の放棄は簡単だが、考えるのをやめる訳にもいかない
ゲヘナかトリニティがこの場で宣戦布告をするくらい・・・だろうか
ナギサも会場についたらしいから、そろそろ調印式が始まるだろう
先生はどのあたりまで行ったのだろうか
ゲヘナのトップである羽沼マコトもどうやら飛行艇でこちらに向かっているらしい
確かに、遠くの方に大きな飛空艇が見える・・・
その横を通り過ぎたのは翼の生えた・・・灰色の弾頭
あれは、まるで・・・っ?
『皆、伏せろッ!!!』
「え?」
困惑した様子のユメ先輩、それも仕方ないだろう
私もミサイルが飛んで来たなんて、一瞬信じられなかった
世界が酷くスローに見える
ヒュルルルという風切り音が耳に残る
先輩は反応しきれるだろうか、ミサイルが降ってくるのは殆ど私達の直上に見える
駄目だ、逃げるのは間違いなく間に合わない
ユメ先輩をかばう方向に意識を切り替える、重要なのは間違いなく頭と胸部
爆心地には背を向ける形に先輩を地面に押し倒す、と同時に
真後ろで、雷のような爆音と業火が花開いた
「貴様らには負債を払ってもらわねばらならない。」
「我々が受けた苦痛・・・そして生まれた憎悪・・・全ての。」
「我々、アリウスが審判してやろう、楽園の名の元にな。」
シノ『ちょっと、ユメ先輩。』
『もう一回このマイクに向かって「おはよう」って言ってみてくれませんか。』
ユメ「いいけど、なんで?」
シノ『目覚まし用のアラームにするので。』
ユメ「そんなことしなくても、毎日起こしてあげるよ?」
この小説で増やしてほしい描写
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会話文
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地の分(場面描写)
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地の文(心情描写)
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今のままがいい