ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。


火と灰に染まる町

 

「―――ん!」

 

―――熱い、背中が焼けるように熱い、痛い、脳が茹ったかのように動かない

 

何が、あったんだっけ。

そうだ、ミサイルが。ユメ先輩は無事か?

 

 

 

「―――シノちゃん!」

 

ああ、無事みたいだ。良かった・・・

それで私はどうすればいいんだっけ

 

頭が割れるように痛い、頭の温度を・・・

下げないと・・・?どうやって?

 

 

 

 

「―――しっかりして、シノちゃん!!!」

 

 

『あ、ユメ先輩・・・無事、でしたか?』

 

「わ、私はシノちゃんが庇ってくれたからっ・・・!そんな事よりシノちゃんの方が・・・」

 

『冷たいもの・・・ありますか?』

 

「ある、あるよ・・・滲みるかもしれないけど我慢して・・・っ!」

 

 

大き目の水筒から、水を被る。

背中が焼けているらしく、酷く滲みるものの

当初の目的を果たすことには成功した

 

 

『・・・』

 

 

冷静になると聞こえる、怒号と悲鳴・・・

当然かもしれない

この古聖堂にミサイルが撃ち込まれるとは思ってもいなかった

トリニティ側の警戒網にすら映らないとなると・・・

ミレニアムかそれに準する技術がないと不可能ではないか

 

 

「良かった、良かった・・・生きててよかったよ・・・!」

 

ユメ先輩も無事のようだ、所々火傷はしていそうだが

走れる程度には元気そうでよかった

無事を祝いたいところだが、時間がない・・・

 

 

『ユメ先輩は、正実と合流して指示を仰いでください。』

 

「シ、シノちゃんはどうするの?」

 

『私にはやるべきことがあります・・・ので。』

 

「その怪我じゃ無理だよ!?治療を受けに行かなくちゃ・・・!」

 

 

ここまでやったなら、私がアリウスならどこを狙う?

トリニティのトップと・・・ゲヘナのトップはまだ到着してない

あとは先生・・・か。

 

 

『ユメ先輩が、ナギサさんを守ってくれれば・・・私は安心して先生を守れます。』

『だから、どうかお願いします。ユメ先輩・・・私を信じてください。』

 

 

「・・・っ。絶対無事に戻ってきてくれる?」

 

 

 

『えぇ、約束です。後はお願いします、ユメ先輩。』

 

 

「うん・・・。うん!私達で戦争を止めるんだ・・・!」

 

 

 

そう言って走っていったユメ先輩の背中を眺めながら、立ち上がろうとするが

平衡感覚が狂っているらしく、バランスを崩す

 

 

でもまだ手も足も動く、状況もあの時程悪くない

だからまだ動ける、動く

 

 

 

ようやく立ち上がった所で、懐に入れていた「白いカード」が淡い光を放つ

どうやら先生はまだ無事ではあるらしい

此処でその札を切る判断をしてくれて助かった

 

 

先生に渡した白いカード。

曰く「移動と偽装の時間の肩代わりをするだけの模造品」

先生の場所が分からないこの場では大いに役に立つ

 

 

 

 

 

 

視界が白に染まって・・・目の前に先生が現れる

違う・・・私が移動したんだ

いつの間にか服も真っ白な、それに代わっている

 

 

近くにいるのは・・・正実のハスミとシスターフッドのヒナタ

それとレオタードにガスマスクをつけたシスターが10人程・・・敵だろうな。

 

 

「この方は一体・・・!?」

 

『呼んでくれてありがとう、センセイ。あれを蹴散らせばいい?』

 

”倒してもきりがないらしいから、道をこじ開けて「白鷹」”

 

 

本当に良かった、もし認識の阻害がなければ

怪我をした生徒である(シノ)

大人である先生は、頼らなかったはずだから

 

『分かった・・・よッ!』

 

シスターもどきのガスマスクを蹴り飛ばす・・・と同時に

それらの姿が霧のように消える

どうやら元を絶たないと意味がないらしい

 

 

 

逃げる、逃げる・・・逃げ続ける・・・

何処まで行けば安全なのかはわからないけど、トリニティがゲヘナの学園内なら安心だろう

 

背中が痛む、止血は最低限行えているとはいえ・・・走ると傷口が開いていくのが分かる

長い戦いとなると不利になる、短期決戦を狙いたい所だけど

 

 

「ところであなたは・・・?」

 

”彼女は白鷹。この場においては味方・・・だと思っていいはず。”

 

 

『心外だなぁ、味方で合ってるよ。報酬を支払い続ける限り・・・ね?』

 

演じろ、私が生徒だと分かれば、先生は怪我をした生徒を頼らない

何としても、戦争は私達が止める

 

 

『邪魔っ・・・!』

 

あれから20程の「ユスティナ聖徒会」と言うらしい、青白い肌を叩き潰した頃に気づいたことだが

まるで幽霊のように実体があやふやで、際限なく沸き続ける・・・が

どうやら私を狙ってくることはないらしい

何かしらの規則によって縛られているのだろう

 

 

 

「先生、こっちっ!」

 

風紀委員のヒナか、このタイミングで頼もしい援軍だが・・・

どうやらあちらも損傷が激しそうだ

 

 

「ゲヘナの・・・いえ。先生を頼みます。ここは私達が食い止めますので・・・!」

「ティーパーティも万魔殿もいない今、状況を収めるのには先生が必要なのです。」

「わかって、くれますね・・・?」

 

”・・・ハスミ。分かった、皆、無事でいてね!”

 

 

「えぇ、ここから先は誰一人通しません・・・!」

 

 

 

二人と別れて、暫く走った後・・・

一際大きな悲鳴が聞こえる

方角は・・・進行方向から大分反れた位置にあるが

どうやら倒壊した橋の下敷きになっているらしい、近くからは火の気が上がっている

 

 

”あの子を助けてあげて白鷹・・・!私はヒナがいればもう大丈夫だから・・・!”

 

拒否したかった

先生の身の方が私にとっては大事だから

それでも、気に入らない黒服の知り合い(白鷹)にすら真剣に頼み込む先生の目を見て

断ることが・・・出来なかった

 

 

 

「お、お願い!誰か・・・誰かいないの?助けてよぉ・・・!」

「なんでっ、なんで私ばっかこんな目に・・・」

 

先ほどのミサイルの爆風で倒壊したのだろう

橋の下敷きになってギャン泣きしているゲヘナの風紀委員会の子

足が瓦礫に挟まって抜けないようだが、出血の類はなさそうではある

・・・何処かで見た気がする

 

 

『大丈夫・・・ではないよね。今瓦礫どけるから待ってて。』

 

「た、助かりました・・・足の感覚が少しずつなくなっていって・・・怖くて。」

「貴方が来てくれなかったら、どうなっていた所か・・・ひぐっ。」

 

 

足は青くはなっているが、そちらも出血の類はない・・・一先ずは安心だろう

 

『歩ける?』

 

「な、なんとか!これでもゲヘナの風紀委員会の端くれです・・・!」

 

『風紀はあっちで見たから、合流できるはずだよ。』

 

「は、はい・・・!あのお名前を聞いても・・・」

 

『私は、大したものじゃない。』

『感謝するなら、シャーレの先生の指示だからそっちにしてあげると良い。』

 

「あ、あの!本当にありがとうございました!」

 

急いでその場を去る、ヒナのと思われるマシンガンの銃声は激しさを増している

私も急がなくてはいけない

 

 

 

私が先生達に追いついたときに、目に入ったのは・・・倒れ伏したヒナと

赤い血だまりの中に沈む、先生だった

遅かった、どうしようもなく遅かった

離れなければよかったと思う、けど

今は後悔している暇はない

 

 

先生に駆け寄る、どうやら意識はあるらしい・・・が

腹に穴が開いていて、止めどなく血が流れている

 

”白鷹・・・?”

 

『喋らないほうがいい、傷口が開く。』

 

 

 

 

”ねぇ、白鷹・・・私の生徒は・・・無事?”

 

 

こんな時でも、他の子を気遣う余裕があるのか

黒服が、先生に執着する理由が・・・

何となく、分かった気がする

 

 

『ああ、今頃は治療を受けていると思うよ。』

 

”そう、か・・・良かった。”

 

 

そういって気を失う先生

おそらくは・・・無事

傷は致命傷を避けているように見える

迅速な応急処置を行えば一命はとりとめるはずだ

迅速に手当てを行えれば・・・だが

 

 

『空崎ヒナ、先生の護衛をお願いしてもいいかな。無事に送り届けてね。』

 

「・・・あっ。うん、まかせ・・・て。」

 

ヒナの方も怪我が酷い、立ち上がったのが奇跡と言えるほどに

ここは私が殿を務めよう

丁度、救急医学部の車両が到着した

 

「先生、風紀委員長!こちらにっ!」

 

車両内から氷室セナがこちらに手を伸ばしている

 

 

 

 

 

「・・・っ!行かせると思うか。それにあのお方から聞いているぞ。」

 

こちらにアサルトライフルを向ける、マスクをつけた長い黒髪の女

アズサから聞いた特徴と一致する、アリウススクワッドの錠前サオリ・・・

 

「黒服の私兵の・・・白鷹と言ったか。ゲマトリア同志の敵対行為は「契約違反」の筈だ。」

 

先生の方を狙うタイミングがあれば、いつでもそのタイミングで仕掛けられる

だからこそあちらも手招いているのだろう

白い散弾銃達(eye of horus)を握りなおす

 

 

『ゲマトリア同志は敵対してはならない・・・そうだね。』

『でも残念ながら、私は「先生」に雇われているだけだから。「黒服の指示」ではない。』

 

『少なくともお互いに「そういう契約」を結んでいるんだ。私と黒服でね?』

 

車両が勢いよく離れていく

これでひとまずは問題ないだろう

後は目先の問題を解決するだけだ

 

 

「・・・またあの「大人」か、厄介だな。」

「だがそれなら話は簡単だ。」

「お前を仕留めてから、ゆっくりと空崎ヒナと先生とやらを追えばいい。」

 

 

『私も、お前達を倒してゆっくりと先生を追うとするよ。』

 

 

 

 

「吠えたな。すべては虚しいもの(vanitas vanitatum et omnia vanitas)だというのに、よく足掻くものだ。」

 

 

 

 

『全てが虚しいというのなら・・・せめて。』

『今を生きる生者の邪魔をするなよ、亡霊共。』




今回の一言後書きはお休みです

明日も更新予定です

この小説で増やしてほしい描写

  • 会話文
  • 地の分(場面描写)
  • 地の文(心情描写)
  • 今のままがいい
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