ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
揺れている、身体が
誰かの背中が凄く暖かい気がするけど
目も開かないし、口も開けないや
「もう少しで着く、だから頑張れシノっ・・・!」
この声はアズサちゃんかな、ずっと話しかけてくれたのかな
血だらけだったよな、お洋服・・・汚しちゃったかな
「出血量が酷いですが・・・死なせません!救護騎士団の名に誓います!」
「嘘だよね、シノちゃん・・・無事で帰ってきてくれるって・・・!」
「ユメ、気持ちは分かるが・・・」
「シノちゃん!シノちゃん・・・!」
聞こえてます、聞こえてますから・・・泣かないでくださいユメ先輩
約束、破っちゃってごめんなさい
でもユメ先輩が無事で良かった
次に意識が戻ったのは、おそらく病室・・・だと思う
なにせ・・・何も見えないのだから触覚と聴覚くらいでしか場所を判断できないから
「シノちゃんは・・・無事なんですか?」
「落ち着いて聞いてください。」
「今夜が山です。多量の出血と熱によるダメージが脳に蓄積しています・・・」
「このまま目覚めないか、障害が残るという可能性も考慮しておいてください。」
「そんな・・・嘘ですよね・・・?」
「私達も最善を尽くします。」
「今は患者さんの傍にいてあげてください。」
「うぁ・・・私が・・・私が止めてれば・・・私が、私をっ・・・庇ったから・・・!」
「私の・・・せいで。」
私が選んだことなんですから、私が悪いに決まっているじゃないですか
だから自分を責めないでください
場面が目まぐるしく変わる、まるでテレビのチャンネルを変えるかのように
次に意識があったのは、補習授業部の皆が来てくれた時だった
「シノ・・・ちゃんっ・・・」
「嘘でしょ、嘘って言いなさいよ・・・なんであんたまで・・・」
「すまない、私が付いたときにはもう・・・」
「アズサちゃんは悪くないです。悪いのは・・・傷つけた人に決まってます。」
心配かけちゃってごめんね、皆。
「シノ・・・目を覚ましてよ!一緒に海に行くって約束したじゃない!」
「コハルちゃん・・・」
「先生も、シノも・・・どうしてっ・・・」
「・・・こういう時は、聴力は残るって聞きます。」
「私達が悲しんでいたら、シノちゃんもきっと悲しいですよ。」
「・・・そうね。」
「これ、シノちゃんに似合うと思って買ってきたんです。」
「ペロロ様の限定パジャマなんですよ。」
「ホシノさんに協力してもらったので、サイズも合うはずです。」
嬉しいな、今度は皆でパジャマパーティがしたいな
「あんたが起きたら水着を買いに行くわよ。それで、それで・・・っ!」
「カフェにも行って・・・アビドスにも遊びに行って・・・」
「皆でしたい事、沢山あるんだから・・・早く起きなさいよね、シノ。」
「私、待ってるから・・・っ!それだけ!」
海、楽しみだけど
火傷の跡が残ってないか心配だな
私は気にしないけど・・・ユメ先輩が気にするだろうから
「シノ、サオリ達は私が何とかする・・・だからゆっくり寝ていてくれ。」
「ア、アズサちゃん?どこに行くんですか?それに何とかするって・・・」
行かないで、って言葉は届かない
貴方が責任を感じる必要は無いんだよ、アズサちゃん
「もう、私の大切なものは誰にも奪わせない。」
「ありがとう、皆。さよなら。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいアズサちゃん・・・!」
「何してるの、追うわよヒフミっ!」
「私は少し、シノちゃんにお話ししなければいけない事があるので、先に二人でアズサちゃんをお願いします・・・!」
「シノちゃん、気になっていると思うので・・・現状をお話ししますね。」
「先生とナギサさんですが・・・先生は意識は不明なものの一命をとりとめたそうです。」
「ナギサさんは、ユメさんの活躍もあって無事です。今はトリニティ全体の指揮を執っています。」
「アリウスという未だない脅威に対して、学園が一丸となって団結しています。」
「こんな事はトリニティ史上で初めてのことかもしれませんね・・・ふふっ。」
良かった、先生もナギサも無事だったのか
なら、
「・・・だから心配はいりません、ゆっくり休んでください。」
「でも、私が寂しいので・・・早く元気な顔を見せてくださいね、なんて。」
好意をストレートで伝えられるとむず痒い
ハナコちゃんが今、どんな顔をしているのか、見てみたかったな
「初めて・・・だったんです。私が私のままでいられたのも・・・」
「あんなに心地良い空間も・・・だから」
「私の初めてを奪った責任・・・とってくださいね♡」
「・・・少し柄にもない事を言ってしまいましたかね。」
「私も、アズサちゃんを追います。それじゃシノちゃん・・・また会いましょう、ね。」
「シノ先輩・・・!」
「シノちゃん・・・」
アビドスの皆、来てくれたんだ・・・
遠かっただろうに
「ホシノ先輩は、用事があるとかで・・・後で来るらしい。」
「シノ先輩のお見舞いより大事な用事って何がある訳!?信じらんない!」
「まあまあ、あまり大人数で押し掛けても迷惑になりますからね?」
「全く、ホシノ先輩もシノ先輩も・・・一人で抱え込みすぎです。」
ごめんね、アヤネちゃん
「なんでこんな事になってるのよ・・・!」
「テロに巻き込まれて、ミサイルが直撃したというお話でした・・・」
「許せないっ!シノ先輩は何も悪くないじゃない!」
「シノちゃんは少し働きすぎです。」
「ん、ヒフミたちの事は任せてゆっくり休むべき。」
「アリウス?の事は私たちに任せてゆっくり休みなさいよね!」
「芝の大将も心配してたんだから!」
大将・・・
また、皆のいる陽だまりに・・・帰りたいなぁ・・・
「そろそろ面会時間も過ぎてしまいますし、帰りましょう。」
「また来ますね、シノ先輩。」
どれくらいの時間が、経ったのか・・・分からない
どうも時間間隔が曖昧な気がするのも、仕方がない事なのかもしれないが
ふと、指先に温かみを感じる
「遅くなっちゃって、ごめんね。シノちゃん。気持ちに整理つけるのに時間かかっちゃって。」
ユメ・・・先輩
「手を握ったり、話しかけてあげると良いって・・・お医者さん言ってたから。」
「あのね、えっと・・・シノちゃんとゆっくり話せるのも久しぶりな気がするね。」
「最近は忙しかったからさ・・・少し話そ?」
「シノちゃんに伝えたいことも、話したいことも・・・沢山あるんだから。」
「ごめんね、私駄目な先輩で。」
「あっちでも、こっちに来てからもシノちゃんに迷惑かけてばっかで・・・」
そんなことはない、今まで頑張れてこれたのも
貴方のひたむきに頑張る姿を、見てきたからだ
誰かを信じてみようと思えたのは、貴方がいたからで
「シノちゃんは、かっこよくて・・・可愛くて・・・自慢の後輩だよ。」
「私は・・・シノちゃんの先輩に相応しい人でいられたかな?」
相応しいとか、権利とか・・・そういうのじゃない
私がついていきたいと思えた先輩は、貴方なのだから
「シノちゃんは・・・私をいつだって守ってくれていたのに、私が守ってあげられなかった。」
「シノちゃんはいつだって・・・私なんかより凄い子だから、今回だって何とかなるなんて。」
「無理してることなんて・・・分かってたはずなのに・・・私、先輩失格だよね。」
泣かないでください、ユメ先輩
私が悪かったんです、皆に心配をかけて
私の選択が引き起こしたことなんですから
「でもね、私・・・シノちゃんのこと信じてるから。」
「無事に戻ってきてくれるって、約束したから・・・っ。」
「後輩の事を信じてあげるのも、先輩の役目だもんね?」
私の手を握る手に、入る力が強くなる
「だから、私信じてる。」
「私に出来るのは、信じる事だけだから。」
「絶対帰ってきてくれるって信じてるから・・・っ。」
「だから今はゆっくり休んでね、シノちゃん。」
「私、いつまでも待ってるから。」
「でもね、寂しいから早く帰ってきてほしいな~・・・なんて。えへへ・・・」
・・・締まらないなぁ
「それでね、すっごく美味しいカフェ見つけたの・・・!パンケーキが5段なんだよ・・・!」
「アビドスの前で猫ちゃん見つけたの・・・珍しいよね?うちで飼えないかなぁ・・・?」
「わっ、可愛いパジャマだね?最近ペロロちゃん?も可愛いかなあって思うんだよね。」
それから、他愛もない話を続けてくれた、ユメ先輩
きっと私が寂しくないように
そんな心遣いが、暖かいなと思う
あれから、何度か日を越したようにも感じるし
ユメ先輩が来てからすぐな気もする
「や、シノちゃん。遅くなってごめんね?」
小鳥遊ホシノ・・・こちらの世界の、私。
「ちょ~っと調べものしててさ。なかなか尻尾が掴めないもんだから、時間がかかっちゃった。」
「ユメちゃんもこの所、無理してるし・・・おじさん困っちゃうよ~」
「愛されてるねぇ・・・うりうり、アビドスの皆も心配してたよ?」
頬をぐりぐりされる、触覚はあるので普通に恥ずかしいから止めてほしい
「全く・・・こうして見ると寝てるみたいだ。」
「眠り姫は王子様のキスで起きるなんて言うけど、ユメ先輩にお願いしてみようかな、なんて。」
ユメ先輩は王子様と言うより、お姫様よりだと思いますよ
「それで・・・本題なんだけど。」
「アリウススクワッドって言うんだね、あいつら。」
「カタコンベとかいう通路を使って学園を出入りしてるみたいだけど。」
「親切なアリウスの娘が教えてくれて助かったよ~」
「あのね、シノちゃん。こっちは任せていいよ。」
「もう、”私”の大切なものは・・・誰にも奪わせない。」
覚悟が決まった様子の、彼女
「アリウスも、アリウススクワッドも・・・その裏に何がいても・・・」
「私が全て、蹴散らす。私の可愛い後輩と、同級生を傷つけた・・・」
「責任を取ってもらうから。」
そんな事を求めてない、だから一人で抱え込まないでほしい
「だからゆっくり休んでていいよ、シノちゃん。」
「それじゃ、また来るね。」
足音が離れていく、このまま行かせたら良くない方向に進んでいく気がする、だから
『待って・・・っ!』
行かせられるわけが、ないでしょうが・・・!
「し、シノちゃん!?目が・・・覚めたんだね。」
「よ、良かったよ・・・本当に・・・っ!そうだ皆にも連絡しないと。」
『その前に、お話ししなきゃいけない事があります。ホシノ先輩・・・いや、私。』
『復讐なんてする気なら、やめてください。』
『私もユメ先輩も無事です、だから踏みとどまれるのなら、踏みとどまってください。』
「何の事かな、おじさん難しい話はさっぱり・・・」
『その道は、色々な物を取りこぼしますよ。』
「・・・やけに、実感がこもってるじゃん。でもさ、可愛い後輩をこんなに・・・」
「こんなにっ・・・傷つけられて。黙って見てろって言うの?」
「先生だって、あんな目に・・・それでも。相手の事を許せって言うの?」
『許さなくてもいいと、思います。でも。』
『戦って問題を解決しようとしたら・・・それは次の争いの火種になるだけ。』
「・・・それはっ。」
『ユメ先輩が、言っていた言葉です。こちらの彼女も似たような事を言っていたかもしれませんが。』
「・・・うん。」
『それに、”私はまだ生きてます”、生きている以上やり直せると・・・私は思いますよ。』
『復讐によって生まれた戦いは、きっと、復讐を呼びます。』
『だから、彼女達を倒すのは”聞こえの良い夢物語”であれば良いなと私は思います。』
『確かに、力のない主張に意味はないと私は思っています。』
『それでも・・・たとえ解決する手段が、”暴力”であっても。』
『結果として、起きる事象が一緒でも・・・そっちの方が・・・良いと思います。』
「・・・シノちゃんがそういうなら、やめておくよ。」
『それに、ヒフミちゃん達は強いですよ。だから信じて待ってみてもいいと思います。』
『とはいえ、相手も強大なので・・・何とか手伝ってあげたいですが。』
「それこそおじさんに任せて。ヒフミちゃんにはお世話になったし・・・」
「おじさんも一肌脱いじゃうぞぉ!」
絶妙に言葉が古臭いのはなんでなんだろう
・・・それにしても、何とか起きれたはいいものの
眠くなってきたな・・・
『流石に眠くなってきてしまいました、でもユメ先輩に起きたってモモトーク・・・しないと。』
『起きましたよ・・・っと、それじゃあ・・・ふわぁ・・・お休みなさい。』
「うん、お休み。シノちゃん。」
黒服「クックック、支払いの方は口座に入金しておきました」
「ですがあれだけの戦闘を行ってなお失われない神秘・・・実に興味深い」
「”計測器”としての価値だけでなく、貴方自身の神秘にも興味が尽きませんね・・・」
シノ(なんで、一人で喋ってるんだ・・・警備は何やってるんだ・・・早く帰ってくんないかな・・・!)
この小説で増やしてほしい描写
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会話文
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地の分(場面描写)
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地の文(心情描写)
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今のままがいい