ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼トリニティ監獄前
随分と豪華な独房の前で、ペンを走らせる音が響く
忙しそうにしている彼女・・・それが学園のトップ組織のティーパーティ
その一人だとは誰も思わないだろう
「シスターフッドとも連携を取ってください、ええ。」
「そちらの書類は、私が目を通しておきますので、こちらはよろしくお願いします。」
「・・・忙しそうだね、”ナギちゃん”。」
「そう思うなら手伝ってくれませんか?ああ、ミカさんは今獄中でしたね。」
「その、爆発に巻き込まれたんでしょ?動いて大丈夫なの?」
「大丈夫ではないですよ、今も頭は痛いですし。」
「紅茶が切れると、ペンを持つ手が恐怖で震えるんです。」
「ナ・・・ナギちゃん?それは病院に行った方がいいよ?」
「でも、もっと大変な目に合ってる先生が、補習授業部が・・・」
「私にあんな仕打ちをされても。なお、人を信じる事をやめない彼女たちが・・・」
「今もどこかで戦っているのです。私がトリニティをまとめないでどうするんです。」
「なんか・・・変わったね、ナギちゃん。1年の時に戻ったみたい。」
「それは、成長してないと言いたいのでしょうか・・・!?」
「ふふっ、そういうこと~☆」
「ロールケーキのおかわりを用意しておいてあげますね・・・っ!」
▼緊急救護本部
「新しい死体・・・ではなく負傷者です。」
「縁起でもないこと言わないでくださいセナさん!?」
「現場から近いので、負傷者を収容しやすくて助かります、セリナさん。」
「トリニティで救護を行う事になるとは思っていませんでしたが。」
「エデン条約が調印されていたら・・・そういう所も連携していけたのでしょうか。」
「関係ありません、救護が必要な場に救護を・・・それが私達のモットーですから。」
「立場とか、学年とか、派閥とか・・・学校とか。」
「そんな事は二の次で、ケガをされた方のいる場所が、私たちの居場所です。」
「それに、エデン条約が無くたってこうやって肩を並べて救護をできているじゃないですか。」
「誰かを助けたいって気持ちに、きっと所属は関係ありませんよ。」
「それも、そうかもしれませんね。」
▼トリニティ某所
深夜ともいえる時間に差し掛かったトリニティで人通りのない橋の上
辺りを警戒するかのように、周囲を見渡している白い翼の少女
「・・・こんなところにいたんですね、アズサちゃん。」
「ヒフミ、決意が揺らぐから・・・会うつもりはなかったんだ。」
「先生やシノがあんな事になっているのも、私のせいだ。だから私が止めなきゃ。」
「そんなこと・・・!アズサちゃんのせいじゃありません!」
「止めるって言ってましたけど・・・なんで私達を頼ってくれないんですか?」
「皆みたいな善良な人は、来ちゃダメだ。」
「そんな・・・なんで・・・!」
「ヒフミは、平凡で・・・優しい人だから。こんな世界は似合わない。」
「・・・っ。私は!」
「私は今から、”人を殺す”。」
「人殺しになった私は皆とは一緒にいられない・・・だろう?」
「・・・ま、待ってくださいアズサちゃんっ!何かほかに方法が・・・!」
「美しい世界を見せてくれてありがとう。」
「可愛いものや綺麗なものがいっぱいあるんだって教えてくれてありがとう。」
「可愛いぬいぐるみをくれてありがとう。」
「そして、こんな私を・・・友達と呼んでくれて・・・ありがとう。」
「待ってくださいっ、駄目です・・・アズサちゃんっ・・・行かないでっ・・・!」
「ありがとうヒフミ、そして・・・さよなら。」
「アズサちゃんっ・・・!」
▼???
「おや、先生・・・おっと。君も迷い込んだのかな。高那シノ。」
声が聞こえる、夢の中と言うには現実感のありすぎるティーセットと百合園セイア
隣にいるのは・・・先生か
”シノ・・・無事だったんだね。”
『先生お久しぶりです。まさか夢の中で会う事になるとは思いませんでしたが。』
ここは何処なんだろうか、死後の世界という訳でもないと思いたいが
揃っている面子が面子である
「ここは夢・・・のようなものだと思ってくれれば良い。君まで来たのは想定外だったが。」
「少しずつ、お話を紐解いていくとしようか。」
「私の最初に見た未来とは・・・随分と様相が変わってきている。」
「ナギサが健在な事、アリウススクワッドが痛手を負ったこと・・・」
「トップがいる事で、トリニティで”何か”をしようとしていた不穏分子も鳴りを潜めている事。」
「とても大きな変化だ。今まで未来がズレたことは・・・無かった。」
「だけどいつからか、正確な未来が見えるようになった。」
「というのも・・・」
「そもそも、私の最初に見た未来には・・・君は存在しなかったんだ。高那シノ。」
私達がこの世界にとっての”異物”だったからだろう
埒外の存在ともいえる私達、この世界の存在ではない・・・変数
「変数が加わったことで、世界は良い方向には向かっている。」
「結果的には
「・・・でも、駄目だ。白洲アズサの運命は変わらなかった。」
「彼女は、私に使うはずだった”ヘイローを壊す爆弾”でアリウススクワッドを殺すつもりだ。」
「契約の主体である
「これはそういう暴力的な二者択一だ。
「まるで、7つの古則の5番・・・のようだね」
「・・・君や、小鳥遊ホシノ、ミカが彼女達を殺めていた世界もなかったわけじゃない。」
「そうはならなかったが、結果として誰かが追い詰められて・・・誰かを殺める。そんな物語。」
「たったさっき、未来は確定した。ここから先は助かった大多数と・・・」
「助けられなかった少数の・・・悲しくて、虚しいエピローグがあるだけ。」
「ここから先の未来に、見る価値なんてない。」
「・・・と言いたかったわけじゃないんだ。前置きが長いのと、言い回しが迂遠なのは・・・ミカにも注意されていたんだが、なんとも癖と言うのは治らなくてだな・・・」
「先生、人殺しとは・・・許されることだと思うか?」
「トロッコの問題のそれのように、多数を救うために一人を殺した生徒を・・・」
”私は・・・”
「取り返しのつかない、それ。」
「でも必要な事だったんだ。」
「だから白洲アズサを・・・先生だけは、許してあげてほしい。」
”・・・と言う事は、セイアはこの後の未来は見ていないんだね?だから・・・”
「ご明察の通りだ、私は・・・見る価値がないと一蹴した・・・訳じゃない。」
「単純に怖かった、私が見たことで未来が確定してしまうのが・・・人殺しになってしまった彼女がどうなっていくのか・・・全てから逃げた、どうしようもない臆病者なんだ。」
”ごめんねセイア。私は・・・さっきの問いにはまだ答えられない・・・”
「・・・っ。なら白洲アズサは・・・!」
”だけど、そうならない為に最善を尽くすよ。例え虚しい事だったとしても。”
「実際の先生は、傷も治ってないだろう。それでも行く・・・んだろうね。」
「先生は、そういう人だ。止めても無駄だろう。だから」
「最期に一つ聞いてもいいかい?」
「前にも聞いた、七つの古則の五番。」
「楽園に辿り着きし者の真実を、証明することはできるのか・・・」
「先生の答えは・・・決まったかい?」
”・・・私はね、信じているんだ。”
”あの時、ハナコが着ていたのも・・・きっと下着だったって・・・!”
『ゲホッ、ゲホッ・・・!うっ・・・!何でそうなるんですか・・・・・・!』
紅茶が気管支にはいってむせる
夢の中でも紅茶が変なところに入ってむせたりするんだな、なんて事を思う
「つまり、本人が信じていれば・・・それはそうであると、そう言う事か。」
”そろそろ行かないと、生徒たちが待ってるから。”
『最ッ低ですね・・・先生の変態・・・』
”うぐっ・・・否定できない・・・それじゃシノもまたね。”
『「いってらっしゃい、先生。」』
なんとなく、私もそろそろ起きれそうな気がする
『という訳で、私も行きます。またあちらで会いましょうセイアさん。』
「君には世話になった。」
「もし君がいなければ、私はきっと今より暗い未来に絶望していただろう。」
「その上で、問おう。君は・・・いったい何者なんだい?」
私は・・・
『私は、高那シノです。それ以上でも・・・それ以下でもありません。』
「そうか、野暮な事を聞いたかもしれない。」
「どうか、白洲アズサを・・・助けてあげてほしい。」
『当然です。大切な・・・友達、ですから。』
次は私が助ける番だ、待っててアズサちゃん
目が覚めると、真っ白な天井が広がっている。
ホシノ先輩が来てからどれくらい時間が経ったのだろう
そんな私の病室のベッドに寄り掛かる形で、ユメ先輩が寝ていた
私のモモトークを見てから、ずっといてくれたのだろうか
私が起きたときに、一人で寂しくないように
「ありがとうございます、ユメ先輩。」
そっと、頭をなでる
起こさないように優しく
私にはこの後やる事があるから、起こすわけにもいかなかった
書き置き位残しておくべきだろうな
刺さっていた点滴を抜く、絶対勝手に抜いちゃいけないと思うから
良い子の皆はマネしないでほしい
立ち眩みは・・・ない、足も手も動く
私の装備は病室の隅に置いてあった、これでまだ戦える
『待っててくださいね、アズサちゃん。』
シノ『・・・この紅茶・・・美味しい・・・香りも匂いも甘さも感じるんですけど。』
セイア「夢の中だから、それくらいはなんとかなるとも。」
シノ『あの、お茶菓子のおかわりとかあったりしませんか?』
セイア「勿論、あるよ。ルマンドとエリーゼで良いかな?」
シノ『ありがとうございます・・・セイアおばあちゃん・・・』
セイア「だ、誰がおばあちゃんだって・・・?君には一度華の女子高生の扱い方と言うものを教えてあげた方が良さそうだな・・・!」
この小説で増やしてほしい描写
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会話文
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地の分(場面描写)
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地の文(心情描写)
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今のままがいい