ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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運命と言う名の歯車が、廻りだす。


雨の降るこの街で

▼とある廃墟

 

 

 

「お前が・・・なぜ負けたのか。分かるかアズサ?」

「手負いの私に勝てない・・・理由。」

 

 

 

「”殺意”だよ。殺意が足りない・・・だから、こうして私一人にも負ける。」

 

 

「・・・っ!」

 

 

「何時からだ、いや・・・分かりきったことか。」

「暖かい日だまりのようなぬるま湯に浸かりきって、勘違いしてしまったんだろう。」

 

「自分はまだ、この暖かい陽だまりにいられる・・・とな。」

 

 

「違う・・・それは違うアズサ。一度手の汚れたものは二度と表の世界には出れない。」

「お前の傍にいてやれるのは、私達だけだ。戻ってこい、白洲アズサ。」

「お前の居場所は”ここ”(アリウス)だけだ。」

 

 

「私は・・・っ。まだ負けてな・・・ッ!」

 

 

 

 

 

引き金を引く

「虚しい」

 

撃つ

「虚しい」

 

撃つ。

「虚しい」

 

撃つ撃つ撃つ撃つ撃つ

「虚しい、虚しい、虚しい、虚しい、虚しい・・・虚しい。」

 

「うっ・・・ぐぁ・・・・っ」

 

 

 

 

 

「アズサ、お前がいればあの白鷹とかいう傭兵も倒せる。」

「お前が必要なんだ、戻ってこいアズサ。」

「姫が捧げられるところは・・・お前も見たくはないだろう?」

 

 

 

 

「私が・・・っ、戻ったら。皆を傷つけないと・・・誓ってくれるか。」

 

「それは」

 

撃つ

 

「出来ない相談だ、アズサ。私達はトリニティとゲヘナを消し去らなければいけない。」

「やはり、友情か・・・そうか、仕方がない。」

 

 

 

「なら、その友情とかいう無駄で・・・虚しい物から壊してやろう。」

「その人形をくれた奴は確か・・・”ヒフミ”だったか。」

 

 

 

 

 

 

「そいつの死体をプレゼントしてやる。」

「そうすればお前もそんなもの(友情)なんて虚しい事が思い出せるだろう。」

 

 

 

「ヒフミは関係ない・・・っ!」

 

 

撃つ

「虚しい、弱くなったなアズサ。」

「その弱さがお前を縛り付けていることが何故分からない。」

 

 

 

(ふるふる)

 

「姫、心配はいらない。大丈夫だ、こいつの事は私が一番わかっている。」

「この程度で死ぬほど、やわな訓練はしていない。」

 

 

 

 

”これ”は、怪我をしたサオリを・・・確実に殺すだろう

私は今、選択を強いられている

”サオリを殺して皆を救うか”、”サオリを殺さずヒフミを殺すか”

暴力的な二者択一・・・世界にはハッピーエンドなんてなくて

ほろ苦いものだって・・・分かっていたのにな

 

 

 

私は選んだ、さよなら皆

ありがとう・・・ヒフミ

 

 

懐に入れていたグレネードのピンを抜く

白い閃光と爆音が辺りを埋め尽くす

 

 

 

 

「な・・・っ、閃光弾!また逃げるのか白洲アズサッ!」

 

 

「・・・逃げ足だけは相変わらず早い。」

「だが、忘れ物をしていくとは・・・らしくないなアズサ。」

 

廃墟に転がっている、白いブサイクな鳥のぬいぐるみ

アズサが心底大切そうに持っていた、それ

 

 

「大事なお友達がくれたプレゼントとやら、お前はこれを取り戻しに来るだろう。」

 

光を知った虫は、それなしでは生きられないのだから

 

「その時こそ、お前にこの世界の真実(すべては虚しいという事)を教えてやる。」

 

 

 

 

室内に、聞きなれない電子音が響く

ピッ、ピッ・・・と等間隔で鳴る・・・それ

音源は・・・人形

違う、これを私は知っている

 

セイア襲撃の時に渡した・・・それ(ヘイローを壊す爆弾)

 

「サオリッ!」

 

 

スローになった世界で見えたのは(サオリ)を突き飛ばした(アツコ)の姿

 

強烈な爆風が壊れかけた廃墟を揺らす

 

 

「死ぬな・・・姫っ!」

「頼む・・・アツコ・・・!返事をしてくれ・・・!」

 

 

 

 

汚れた路地に、雨が降る

 

「ううぅっ・・・ごめん、ヒフミ。」

「折角くれたプレゼントで・・・私は・・・!」

 

「ごめんなさい。コハル、ハナコ、ユメ、シノ・・・先生。」

「私はっ・・・私は・・・ううっっ!ああぁっ・・・!」

 

 

雨は次第に強くなり、雨雲はトリニティを覆うほどに大きくなる

この雨がいつ止むのかは、誰にも分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

▼とある病室

 

 

目が覚める

目に入ってきたのは、真っ白な天井

 

”知らない天井だ・・・”

なんて、一度言ってみたかったんだよね

 

 

「先生!?目を覚まされたんですね!」

 

”うん、ありがとうセリナ。私はこの通り無事・・・あいたたた・・・”

 

 

脇腹のあたりが痛い、包帯で巻かれていて見えないが、銃弾が貫いたのだ

生きていることに感謝しなければいけないだろう

 

「無理に動いちゃダメです・・・!今包帯を・・・」

 

”いや、いいよ。行かなくちゃいけないんだ。”

 

「行くって・・・その怪我でどこにっ!」

 

 

”私の可愛い生徒たちが・・・待ってるんだ。”

 

 

 

▼トリニティ校門前

 

校門前に補習授業部の三人がいるのを見つける

アズサは・・・いないか

 

「・・・先生!目が覚めたんですね・・・!良かったです・・・」

「ちょっと先生!?立ち歩いて大丈夫な訳っ!?」

 

”見ての通り、元気だよ。”

 

「どう見ても無理をしていますね・・・」

 

 

「でもですね。実は・・・先生が来る気がしてたんです。」

 

 

”生徒が助けを求めてるんだ。何処へだって私は行くよ。”

 

 

「アズサちゃんは、今も一人で戦い続けています」

「確かに、アリウスと言う特殊な環境で・・・人を傷つける術を学んできた彼女と・・・」

「私は、同じ立場なんて言えないのかもしれません。」

 

 

「それでも私は・・・っ!アズサちゃんを迎えに行きます!」

「これでおしまいなんて・・・そんな終わりは認めません!」

 

 

”そうだね、エンドロールにはまだ早い。”

 

 

「友達を一人になんて・・・させないんだからっ!」

「言葉にしないと、伝わらない事もありますからね?」

 

 

”それじゃあ、行こうか。”

 

 

 

「ユメさんはやる事がある・・・らしいです。シノちゃんは今は寝ているそうで・・・」

 

”大丈夫、シノとユメを信じよう。”

 

 

 

 

 

▼トリニティ監獄前

 

紅茶を飲み終える、おかわりは・・・

と思った所で携帯の通知が鳴る

 

 

「ふぅ・・・これで一息つきましたね。・・・おっとモモトークですか。」

 

「ナギちゃん・・・?あのさ・・・これ本当に私が手伝ってよかったの?」

 

「何を言ってるんですか、駄目に決まっています。」

 

「うぇっ・・・じゃあ・・・なんで?」

 

「決まっているじゃないですか、実績作りですよ。」

「それにここには私とミカさんしかいないので。ああ・・・もう一人増えますね。」

 

 

「えっと、それって・・・」

 

 

 

 

 

「久しぶり・・・でもないか、すまないね。寝ていると時間間隔が曖昧になるもので。」

 

「セ・・・セイアちゃん!?」

「セイアさん・・・お元気そうで何よりです。」

 

「起きて初めに会いに行ったのはミカさんだったそうですね?いえ、他意はないのですが。」

 

 

「ナギサ・・・そういう所がトリニティ仕草と言われるんだ。」

「伝えなければ伝わらない事もある・・・らしいぞ。」

 

「・・・そうでしたね。会えて嬉しいです、セイアさん。」

「私もだ、二人とも。」

 

 

「セ・・・セイアちゃん・・・夢じゃないんだよね?私・・・私っ・・・!」

 

「ミカ・・・私からも謝らなければならない・・・がそれより先にやる事があるだろう。」

 

「え、えっと?」

 

「君は、アリウスを使ってテロを起こした・・・その張本人。」

「そういう風説が、今トリニティの中でも活発に噂されている。」

「事実として、アリウスを中に招き入れたのは・・・紛れもない事実だ。」

「学園でのテロに殺人未遂。騙されていたとはいえ、君がやったことは大変な問題だ。」

 

 

「う・・・うん。ごめん・・・謝って済む問題じゃないけど・・・私っ・・・本当は・・・!」

 

 

「お、落ち込まないでくれ・・・えっとだな、その・・・今も先生達は戦っている。」

「まだ、この問題は終わっていない。君が他者に比べて誇れるのは・・・その腕力と顔くらいのモノだろう。」

 

 

「えっと・・・?」

 

 

「・・・君のその銃と腕力は飾りじゃないんだろう?」

「少し考えれば、自ずと答えは出るはずだ。私達は・・・進まなければならない。」

 

 

「ごめんね、セイアちゃん・・・やっぱり私の事なんて・・・嫌いだよね・・・」

 

 

「そんなことはない!えっとその・・・だな。」

 

 

 

「つまるところ、自分のケツは自分で拭け・・・そういうことですね?」

 

「な、ナ・・・ナギちゃん!?」

 

 

「失礼、あまりにもセイアさんが迂遠すぎたので、つい言葉が乱れました。」

 

「ナギサ・・・その通りだが。仮にも淑女である君が、あまり汚い言葉を使うものじゃないよ?」

 

 

「そういうことかぁ・・・」

「あはは、セイアちゃんたら相変わらず難しい話ばっかり。だから友達がいないんだよ。」

 

「先ほど、2人ほどお茶をする友達が増えた所なんだ。残念だがその煽りは効かないぞ。」

 

 

 

 

「で、でも・・・どうやって?私・・・」

 

「ティーパーティのホストたる桐藤ナギサが命じます。」

「聖園ミカは早急に自身の引き起こした事態の鎮静化を図りなさい。」

 

 

 

 

「まだ、ティーパーティの権威は失墜していません。これくらいの事は許されるでしょう。」

「行ってきてくださいミカさん。」

「そしてこれは・・・私が今、彼女たち(補習授業部)に出来る唯一の贖罪です。」

 

 

 

監獄の鍵が開く、出ていこうと思えば何時でも出ていけた・・・それを

この場にとどまっていたのは、彼女自身の贖罪の気持ちの表れだったのだろう

 

 

「ナギちゃん、セイアちゃん・・・私っ!」

 

「存分に”ティーパーティの暴力担当”の名を轟かせてくるといい。」

 

「セイアちゃん?後で覚えておくじゃんね?」

 

 

 

 

 

 

ミカさんが行ってから、2、3分が経った頃

セイアさんがベッドに倒れこむように横になる

 

 

「ミカは・・・行ったか。私は・・・少し眠る事にする。」

 

「無理をしすぎです、セイアさん。」

 

「ああ、でも未来を変えるには・・・こうするしかなかった。」

「出演者は皆・・・始まりの場所に・・・楽園の名を持つあの廃墟へと集まりつつある。」

 

「古聖堂・・・その場所で。この物語はある種の結末を迎える。」

「ふわぁ・・・私も、この物語の結末を・・・見届けるとしよう。」

 

 

 

 

 

▼古聖堂

 

 

「アズサ・・・っ!よくも、よくも姫をっ・・・!絶対に許さない・・・っ!」

 

「私は、サオリを止めてみせる・・・刺し違えても。」

 

 

「お前にそんな事ができる訳がない!」

「私達の怒りに・・・憎しみに・・・恨みにっ!耐えられるとでも思っているのか!」

 

 

それでも、それでも私は・・・

 

「私は、人殺しになる(皆を救ってみせる)。」




セイア「・・・つまるところ、私達は相互理解をするべきだった。ミカを・・・彼女を知るべきだったんだ。思い返してみれば”アリウスと仲良くしたい”なんて思いつきで・・・当時はまた馬鹿な事をと思った訳だが。それを私は幼気な感情と決めつけて、一方的に見下した気でいた。その行為に如何ほどの価値があるんだい?なんて君に問いかけてしまったね。ゲヘナの事が嫌いだなんて言っていたこともそうだ、私は君がゲヘナを嫌いな理由を知らない。アリウスと仲良くしたいなんて言っていた理由を知らない。君が私をどう思っていたのかを知らない・・・結局、私は”見ていた”だけだからね。知っている事と言えばスイーツが好きな事、腕っぷしが強い事、そして・・・本当は心優しい事、それくらいのものだ。私はまだ、君の事をあまりにも知らない・・・だから」

ナギサ「あの、セイアさん?寝るとおっしゃられていませんでしたか・・・?」

セイア「すまないね、ナギサ。夢の中では基本的に一人だったから、口に出す癖が抜けないんだ。一人・・・一人か・・・考えてみれば私達はミカを・・・彼女を一人にしてしまっていたんだね。それはなにも物理的な意味じゃない・・・精神的な意味でだ。私達はもっと・・・むごごっ!?」

ナギサ「ふふっ、ロールケーキはお口に合ったでしょうか?」

この小説で増やしてほしい描写

  • 会話文
  • 地の分(場面描写)
  • 地の文(心情描写)
  • 今のままがいい
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