ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

35 / 87
これは、あったかもしれない未来のお話



この話は、特に「曇らせ」「鬱」要素を含むので
閲覧の際はお気をつけください
苦手な場合は読み飛ばして大丈夫です


分水嶺―――IF―――

▼???

 

身体が、揺れている

どこか遠くから、声が聞こえる

 

 

 

「出血量が酷いですが・・・死なせません!救護騎士団の名に誓います!」

 

「嘘だよね、シノちゃん・・・無事で帰ってきてくれるって・・・!」

 

「ユメ、気持ちは分かるが・・・」

 

「シノちゃん!シノちゃん・・・!」

 

 

 

聞こえてます、聞こえてますから・・・泣かないでくださいユメ先輩

約束、破っちゃってごめんなさい

でもユメ先輩が無事で・・・良かった

 

 

 

 

次に意識が戻ったのは、おそらく病室・・・だと思う

なにせ・・・何も見えないのだから触覚と聴覚くらいでしか場所を判断できないから

 

 

「シノちゃんは・・・無事なんですか?」

 

「・・・わかりません。最善を尽くしましたが・・・」

「多量の出血と熱によるダメージが脳に蓄積しています・・・」

 

「このまま目覚めないか、障害が残るという可能性も考慮しておいてください。」

 

 

「そんな・・・嘘ですよね・・・?」

 

「・・・今は、シノさんの傍にいてあげてください。」

 

 

「・・・私のせいだ。」

違います、ユメ先輩

 

「私が、私が・・・シノちゃんを・・・こんな目に・・・」

だから、泣かないで

貴方に曇った顔は・・・似合わないから

 

 

「私、先輩なのに・・・シノちゃんの事っ、守ってあげられなかった・・・!」

「最低だ、私って。私が・・・私が代わりに・・・」

 

 

 

死んじゃえば良かったのに

 

その後の事は霞がかかった様によく覚えていない

 

 

 

 

まるで、俯瞰するようなそんな視点

 

これは、見届けろと言う事なのだろうか

私の選択から生まれた

世界を、過ちを・・・だとしたら神様って奴は随分と悪趣味だ

 

 

コハルちゃんが、ヒフミちゃんが・・・泣いているのが見える

「お医者さんは・・・目覚めないかも・・・なんて言ってましたけど。」

「きっと大丈夫ですよね!?目を、覚ましますよね!?」

 

「シノ・・・なんで・・・なんでっ・・・やだぁ・・・!」

 

「私・・・こんな終わり方・・・認めませんから・・・っ!」

 

 

 

「世の中には、ハッピーエンドばかりじゃない。」

「そんな事、わかってたはずだったのに。」

 

「ア、アズサちゃん?何を言って・・・」

 

 

「ごめん、シノ。私は今度こそ・・・皆を救ってみせる(人殺しになる)。」

「アズサちゃん!待ってください・・・!アズサちゃん!」

 

 

待って、いかないでください

 

 

 

 

場面が切り替わる、私にはただ見ている事しかできない

目をそらしたくなるような光景を、見ている事しか

 

 

廃墟で、かつての仲間同士が相対する

世界を滅ぼそう(仲間を助けよう)とするサオリと、世界を救おう(仲間を助けよう)とするアズサ

 

 

「良い目をするようになったな、白洲アズサ。」

「お前はやはり私達と同じだ、何処まで行ってもお前は陽だまりには戻れない。」

 

「戻れなかったとしても・・・皆は守ってみせる。」

「・・・たとえ相打ちに、なっても。」

 

 

最期は、アズサちゃんが持っていたヒフミのプレゼントが爆発して・・・

殆ど0距離だった、2人のヘイローが砕けるのを

 

見ている事しか・・・出来なかった

 

 

 

 

場面が、切り替わる、病室に

補習授業部の皆が・・・いや

3人がお見舞いに来てくれている

 

「シノちゃん・・・目を覚ましませんね。」

「あれから、1か月も経ちますね。最近ではユメさんの姿も・・・見ませんし。」

 

「ユメは何してるのよ・・・!こんな、シノが大変な時に・・・!」

「コハルちゃん・・・きっと、彼女にも事情があるんですよ・・・」

 

「だから、だからって・・・!」

 

「シノちゃん、早く帰ってきてくださいね。皆・・・心配してますよ。」

 

「寂しいよっ・・・会いたいよ・・・シノっ・・・」

 

 

ごめんなさい、皆。聞こえてますよ

皆が来てくれるから、私は寂しくないんです

 

 

 

 

 

場面が、切り替わる

 

ここは、トリニティの学園だろう

通行人と、近くに先生がいるのが見える

 

 

「聞いた?トリニティの裏切者って、氷の魔女だったらしいわ?」

「テロの首謀者と相打ちだなんて、いい気味よね。」

「裏切者にはお似合いの末路かもね。」

 

アズサちゃんを悪く言わないで

彼女は誰よりも優しくて

誰よりも諦めるという事を知らない、優しい女の子なのに

 

そんな彼女に、引き金を引かせたのは・・・私なのかもしれないけど

 

 

 

「・・・こうして、尊い犠牲の元にキヴォトスには平和が訪れたわけだ。」

「本当に憂鬱になる、こんな物語に・・・本当に価値はあったのかい、先生。」

 

”それでも、私達は・・・進み続けなくちゃ。それが・・・”

”残された側の・・・義務だから。”

 

 

”それに、私は信じるよ。いつかシノが、目を覚ましてくれるって。”

 

 

「・・・そうか、だがこの物語の結末は”禍根”を残す。」

「何時の日か、毒となって私達を蝕むだろう。」

「・・・その事を、努々忘れないでくれよ、先生。」

 

 

 

 

 

場面が・・・切り替わる

次はアビドス高校へと

 

 

今度は、俯瞰ではなく・・・誰かの視点のようだ

これは・・・小鳥遊ホシノ(こちらの世界の私)・・・か

 

 

皆、何処となく暗い顔をしている

私の、せいだろうか。

そうなんだろう、思わず目を背けたくなるけど

 

だけど、最後まで・・・見届けないと

これは、私の責任だから

 

 

 

 

 

 

「ユメちゃんは・・・今日もいないんだね。」

 

「ホシノ先輩・・・あれから、もう1月も経ちますね・・・」

「食事はとれているみたいですが・・・心配です。」

 

「おじさんが、ちょっと様子を見てくるよ。」

 

 

「ん、前行ったときは門前払いだった。」

 

「ほら、おじさんだったら開けてくれるかもしれないでしょ?」

 

 

 

こんなにユメ先輩の・・・ユメちゃんの家に行くのが怖いと思ったことは無かった

インターホンを押すと、中から足音がする

生きている事にほっとするが、開けてくれるだろうか

少しでも、彼女の支えになってあげたかった

 

 

数分ほどして、ドアの鍵が・・・開いた

 

ドアを開けたユメちゃんは・・・おそらく碌に眠れてないのだろう、酷い隈だった

目の焦点もどこかずれている

 

私を見ているようで、見ていない。そんな目だ。

 

 

「あがってってもいい?ユメちゃん。少し話そう・・・?」

 

 

 

 

 

あ、シノちゃん?シノちゃんだよね!目が覚めたんだ!

「違っ、おじ・・・私は・・・っ」

 

 

 

 

「あはは、良かったぁ。すっごく心配したんだから!」

「でも、私・・・”信じてた”の!だってシノちゃんが約束を破る訳ないもんね!」

 

 

「あがってってよ、話したいことがたくさんあったの!」

 

 

まるで、消えかけの蝋燭のように儚い彼女の生きる気力

それを、否定したら・・・今度こそ彼女がどこかへ消えてしまいそうで

私は・・・

 

 

「わかりましたよ。ユメ先輩

 

 

私は、罪を犯した

 

彼女の心を守るため、なんて酷い言い訳

耐えきれなかったのは、自分の方でしょ?

 

 

 

 

不気味なくらいにいつも通りの彼女

本人が登校できると言うもので登校する事にした訳だが

 

 

「皆、ごめん~心配かけちゃったよね?」

 

「ん、おかえり。ユメ先輩。」

「全く、心配したんだから・・・!もう大丈夫なの?」

 

 

 

「うん、私もシノちゃんも大丈夫!ただいま、皆!」

 

「・・・っ、あんた・・・!」

「信じらんない・・・!ホシノ先輩はそれで良い訳!?」

 

「抑えて、セリカちゃん。私から必ず話すから・・・」

 

 

 

「・・・私、今日は帰るから!」

「ま、待ってくださいセリカちゃん・・・!」

 

 

 

「セリカちゃん、体調・・・悪かったのかな。心配だね、シノちゃん?」

「う、うん。そう・・・ですね。」

 

 

 

場面が、切り替わる

切り替わる。切り替わる・・・切り替わる、切り替わって、それを見て。また、切り替わって

切り替わって切り替わって切り替わって切り替わって切り替わって

そしてまた、切り替わって

 

次の風景は見覚えのあるオフィスにいた

そこにいたのは、見慣れた白く罅割れた黒い顔

 

 

『もう・・・限界だ。私を、殺して・・・!殺してよ、黒服ッ・・・!』

 

 

「・・・それは出来ない相談です。」

 

 

 

 

 

『な、なんでっ・・・!私が、私が欲しかったんでしょっ!?』

『身体も、神秘も・・・全部っ、全部あげるからぁ・・・』

 

『もう、終わらせてよ・・・!』

 

 

 

 

 

「私は貴方たちに危害を加えられない。」

「そういう契約でしょう?高那シノ。」

 

 

 

 

 

『あっ、あ・・・うぁぁ・・・あああああああああ!』

 

 

「安心してください、この世界も・・・もう直ぐ、一つの終わりを迎えるのですから。」

「貴方に頂いた、研究資料は・・・私にとって中々に興味深い物でした。」

 

「せめて、この物語のエンディングを救いのあるものにしてくるといいでしょう。」

「それでは、さようなら高那シノ。」

 

 

 

場面がまた切り替わる、ここは・・・病室か

 

 

 

 

いつもと違う事があるとすれば、空が・・・真っ赤に染まっていることくらい

病室にいるのは、ホシノ先輩と・・・ユメ先輩

どちらも、ボロボロだ

今の今まで戦闘があったかのような、そんな恰好

 

 

「こ、ここは何処なの?シノちゃん。」

 

「話が、あるんです。ユメ先輩・・・いや、ユメちゃん。」

 

「この子・・・シノちゃんにそっくりだね。」

 

 

ホシノ先輩が、ユメ先輩の肩を掴む

怒っているようにも、泣いているようにも見える顔で

 

「シノをっ・・・シノを見てよ、ユメちゃんっ・・・!」

 

 

「え?わ、私は・・・」

 

 

「どんなに辛くても!苦しくても!シノちゃんの事を・・・」

「高那シノといた時間を否定しないであげて・・・!」

 

 

 

「私・・・は。シノちゃん・・・そうだ。なんで・・・!」

「こんな大事な事・・・っ!まるで私が私じゃないみたいに・・・!」

 

「ごめん、ごめんねぇ・・・シノちゃん・・・ホシノちゃん・・・!」

 

 

暫く、病室には言葉にならない慟哭が響いていた

自戒のようにも、後悔にも聞こえるそんな嘆き

 

 

 

「思い、だしたんだね。うん。」

「・・・おじさんはさ。最後まで足掻いてみるから。」

「寂しがり屋な後輩と、一緒にいてあげてくれる?ユメちゃん。」

 

 

「うん・・・うん!」

 

 

「じゃあね、ユメちゃん。きっとまた・・・会おうね。」

「またね、ホシノちゃん・・・!」

 

 

 

 

 

「ねえ、シノちゃん。聞こえてる?」

「・・・駄目な先輩でごめんね。こんな私で良ければ最後までいるからさ。」

 

そう言って、ユメ先輩が手を握ってくれる。

指先に彼女の暖かさを感じる。

久しく感じていなかった、人の温もり

 

 

身体が、少しずつ動くようになっていく

そう、長い時間は動けないだろうけど

私が動けなくなるより、世界が終わる方が先なんだろう

 

 

『おはようございます、ユメ先輩・・・その。』

 

「シノちゃん・・・!私っ、私ねっ・・・!」

「お話ししたいことも、伝えたかった事も・・・沢山あるの!」

 

『ええ、私もです。ユメ先輩。お話・・・付き合ってくれますか?』

 

 

まるで空いた期間を埋めるかのように

何気ない会話に華が咲いた

 

 

「でね?実は先生がさ・・・」

『ふふっ。なんですかそれ・・・』

 

 

本当に、くだらないような話でも、隣にいてくれる

それだけで幸せだった

 

 

もう残された時間はそう、長くはないのだろう

何処か、ユメ先輩も緊張しているようだった

 

 

 

 

「ねえねえ、もしさ。こんな時に縁起でもないかもしれないんだけど。」

「地球最後の日にシノちゃんだったら・・・何したい?」

 

 

『そう、ですね・・・私は・・・』

大切な人と過ごせたら・・・それだけで幸せです。』

 

「あはは、私もかなぁ・・・」

 

 

病室の窓から見える空が、まるで落ちてくるような錯覚を覚える

 

 

世界が滅んだら、私達は無になるのだろうか

あの時感じた・・・寂しくて、冷たい空間に行くことになるのだろうか

 

 

ぎゅっと、ユメ先輩が私の手を握りなおす

それは不安を押しつぶすかのように、そこにいるのを確かめるように

 

そんな握った手が暖かかった。だから、もう寂しくない

 

真っ赤な空を見上げる彼女の横顔が・・・とても、美しく見えた

 

 

「もう絶対一人になんてさせないから、一緒にいよ?」

『えぇ、何があってもこの手は離しません。』

「うんっ!約束だよ?」

 

そう言ってはにかんだ彼女の笑顔がとても、眩しくて―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――大好きだよ、シノちゃん。」

 




本人たちはきっと幸せ(メリーバッドエンド)です



こういう諦め感とか曇らせとか好きなんですけど
変に感情移入しちゃったせいで
書いてて流石にちょっとしんどくなったので
今日はもう一本更新予定です

どんな端末から小説みてますか?

  • PC
  • 携帯端末
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。