ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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二つの世界は、似ているように見えてずれている
まるで鏡合わせのように


フタリノ夜

▼シノ視点

 

「え、ユメ先輩が・・・先輩じゃない・・・?」

 

「うん?こっちのホシノちゃんって三年生だったんだ・・・ず、ずいぶん大きく?なったね~?」

 

「ユメ・・・ちゃん?」

 

「うんうん、ユメちゃんでいいよ~」

 

「えっと、その・・・ユメちゃ・・・」

 

 

ちなみに身長は残念ながら伸びていない

あっちはあっちで大変そうだが

こっちも随分観察されている

 

 

「それで、なんでホシノ先輩が二人もいる訳?妹がいたなんて話聞いたことないけど」

 

 

少し、ドキリとする

バレる事は織り込み済みだが、いきなり気づかれるとは

 

『私、何も言った覚えがないんだけど・・・』

 

一応顔は隠していたんだけど

 

「なんでって変なお面被ってても、声もヘイローも同じじゃない。」

 

「ん、ヘイローの形はちょっと違う」

 

『それは・・・』

 

 

全校生徒が五人しかいないなら、そうなるか

今はいいが、後々対策する必要があるかもしれない

 

『荒唐無稽な話だし、長くなるから・・・無理に信じてくれなくていいけど』

 

『その前に、これ・・・つまらないものだけど、よかったら皆で召し上がってほしい。』

 

 

来る前に買っておいた土産を渡す

何故か学生証で支払いができてよかった

まあ、心当たりがなくはないが

 

 

「あ、バームクーヘン・・・ご丁寧にありがとうございます。」

「今、お茶を入れてきますね。」

 

 

黒髪のよく気が利く彼女が席を立とうとする

 

 

『私も手伝うよ、えっと・・・名前、聞いてもいい?』

 

 

 

 

 

 

お茶を飲んで、一息つく

彼女たちの人柄だろうか、知らない場所なのに

何処か落ち着く、気が緩んでいる自覚はある

少し引き締めなおさないと

 

『それで今に至るって所かな。』

 

重い話になると判断して、ここに来たかなり大まかな経緯を話し終える

 

 

「その、何と言葉をかければいいか・・・」

 

奥空アヤネと名乗った彼女

初対面の私をここまで気遣ってくれるのは

私が・・・

いや、誰相手にでも優しくしてあげられる娘なんだろう

 

「ですが、世界を渡る・・・なんて想像もつかないですね」

 

「ん、私も気づいたらこのへんにいた、多分アビドスではよくあること。」

 

「いやいやいや、そんなわけないでしょ。」

 

「・・・あるかも・・・しれませんねぇ」

 

「ノノミ先輩まで!?」

 

それにしても、ノノミ・・・十六夜、十六夜・・・

どこかで聞き覚えがあると思ったんだが

 

 

 

『あぁ、ハイラ「ちょっとストップです~☆」』

 

 

 

何かを察したらしい彼女に、口元を手で塞がれた後、そっと耳打ちをされる

 

「そっちの私がどういう道を行ったのかは」

「よーくわかりました・・・が、出来れば・・・その・・・」

 

『ごめん、無遠慮だったかもしれない。絶対に言わないから信じてほしい』

 

「ありがとうございます~☆」

 

今日が初対面の私の何を信じろという話ではあるのだが

 

にしても、少し迂闊だった

別の世界から来た、私たちがどんな影響を与えるか分からない以上

あちらの情報を出すのはリスクであることは理解しておかないといけない

 

 

 

 

それから、暫くしての事

空は徐々に夕焼けに染まりつつある

そろそろ、行動を起こさないといけない

 

『私たちは、そろそろ』

 

「その・・・あんたたち、これからどうするの?」

 

 

どうするとは・・・今日や明日は何処に泊まる。と言った単純な話をしたいわけではないのだろう

 

『今のところは、予定はない・・・かな』

 

「そ、それなら・・・」

 

 

「アビドスの生徒になっちゃうっていうのはどうでしょうか~☆」

 

 

実際問題、このキヴォトスにおいて・・・「学生でない」「学園に所属していない」というのは

非常に大きなデメリットではある

 

だが・・・

 

『ごめん、直ぐには結論出せないから考えておき・・・ます。』

 

自分でも、どうしてそう言ったのか、よくわからなかったけど

 

 

『今日はありがとう、楽しかったです。』

『行きますよ、ユメ先輩。』

 

「は~い!じゃあ、またね!ホシノちゃん!皆も!」

 

「あ、ま・・・またねぇ~」

 

 

 

あれからずっと・・・何かを選ぶことに、慎重になっている自分がいた。

 

 

 

 

日が沈みかけた道を歩く、歩く、歩く。

先輩を家の方へ送り届けてから、どことなく、ふらふらと。

こんな行動に意味はないのだろうけど

何故かこうしていたい気分だった

 

それにしても先輩の家に停電用の予備バッテリーがあって助かった

使いすぎなければ2,3日は持つ・・・はずだ

水道は即日対応してくれて助かった。

 

特に意識もしていなかったが、気づいたら家の前にいた。

帰巣本能とでも言うべきだろうか、とは言えここは正確には私の家ではないのだが

 

 

「おやおや、迷子?」

丁度帰るところだったのであろう、荷物を持った家主と鉢合わせる。

 

 

『いや、散歩・・・みたいなもの、かな』

 

 

「そう?あんまり遅くなると寒いよぉ・・・」

 

 

不思議な感じがする

話し方も世界も違うけど、自分と喋っているなんて。

 

 

 

 

「あの、さ」

 

「立ち話もなんだから、さ。良かったらあがってかない?」

 

 

 

 

 

 

「あまり大したものはないけど、ゆっくりしてってよぉ~」

 

『お邪魔、します』

 

「自分の家みたいなものでしょ?変に気を使わないでいいから~ほら、ポテチあるけど食べる?」

 

自分の家だけど、自分の家じゃない

 

部屋にはお魚のシールが貼られているし

・・・可愛いな、これ

 

「クジラ・・・可愛いよねぇ。おじさんもクジラが好きなんだぁ、やっぱり気が合うねぇ。」

 

いつの間にか彼女が隣に座り込んでいる

 

『うん、可愛いと思う。』

 

「その、簡単なものだけど・・・夜ごはん、食べてかない?」

 

『それ、は』

流石にそこまでしてもらうのは不味いだろう

 

「いやいや~遠慮しないで?おじさんも話したいと思ってたしね~」

 

 

 

 

半ば押し切られる形で、夜ご飯を頂くことになってしまった。

 

今日は鍋料理らしく、美味しそうな匂いがこちらまで漂ってくる

 

 

「できたよぉ~」

 

『今、お皿運んじゃいますね』

 

「いや~ありがとね~助かるよ」

 

配膳を終える、確かに自分でも驚くほどにお腹がすいているらしかった

 

『「いただきます」』

 

暖かくて、美味しい・・・と思う

 

 

「食事中でも、お面は外さないんだね?いや、責めてるわけじゃないんだけどさ」

 

『ごめんなさい、行儀が悪いのはわかってはいるんですが。』

 

 

 

「私のため・・・なんだよね?」

 

 

唐突に核心を突かれて、言葉に詰まる

 

「私の前ではあれ以来、一向に外す素振りがないからさ。どうしてか・・・聞いてもいい?」

 

『それは、その。自分と瓜二つの顔の人間がいきなり現れたら、不快に思うかと思って。』

 

「全然~?そんなことなら早く言ってくれればよかったのに。」

 

買ってきたお面を、外す

デザインは気に入っていたけど、確かに食事中くらいは外したかった

 

 

「うんうん、折角の可愛いお顔がもったいないよ~なんて・・・ナルシストみたいでちょっとあれか」

 

 

 

「それで、料理の方はどう?あんまり得意ってわけじゃないからお口にあったら幸いなんだけど」

 

『美味しかった、です。久々にお腹一杯食べれた気がします。ごちそうさまでした。』

 

 

そんな私を見て、彼女は頬に手を伸ばして・・・

 

 

「あんまりね、肩肘張らなくてもいいんだよ。君の敵はここにはいないんだから」

 

 

見た目も声も、何一つ似ていないのに

 

 

それは、まるで・・・いつの日かのあの人みたいで

 

 

少しだけ、肩に背負っていた何かが軽くなった・・・ような気がした。

 

 

 

 

 

不思議と心地よい静寂の中

食事の後片付けを手伝ったところで、時計は八時を回った。

 

『私、そろそろ行きますね。』

 

「ああ、うん。送ってこうか?」

 

『大丈夫です。なんと言っても私、強いですから。』

 

 

油断はしないに越したことはないが、今の私を傷つけられる人間はそうそう存在しないだろう

荷物をまとめて玄関に向かう

 

 

『本当にお世話になりました、それじゃあまた・・・』

 

 

扉を開けようとしたところ、彼女が私の手首を引き止めるかのように掴んで

どこか慌てたように手を放す。

 

「あ、あはは。いやぁ~どうしちゃったのかなおじさん?」

 

「ごめんねぇ~何か、ちょっと。何でもないの、寄り道せずに帰りなよ?なんて」

 

 

 

そんな彼女の顔が、どこか寂しそうに見えて

 

 

 

 

『不躾なお願いで申し訳ないんですけど・・・』

 

 

『今夜はもう遅いですし、泊っていっても・・・いい、ですか?』

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなったんだろう。

 

「お風呂、沸いたから・・・先入っていいよ」

 

どうして、こうなったんだろう?

 

「いやいや、おじさんはソファで寝るからいいよぉ。」

 

「家主に申し訳ない?いやいや、自分の家だと思って寛いでいいって・・・え?じゃんけん?」

 

どうしてこうなったんだろう・・・

 

「動体視力がいいからって、見てから出してない?イカサマは良くないと思うなぁ・・・?」

「ここまで、30勝60分け30敗・・・いつまで続けるつもりなのさぁ・・・」

 

 

私は今、私と同じ布団の中にいる

哲学的な話に聞こえるが、事実として

 

 

2人とも小柄とはいえ、一つの布団はさすがに、狭い・・・狭すぎる

 

 

「あの、さ。今からでもソファに行って寝ない?」

 

『そうするべきだと思います、私が』

 

『な、中々頑固だよねぇ。まぁ、私も譲る気はないんだけど。』

 

そう言って彼女は黄色と水色の瞳で私をじっと見つめた後、揶揄うように笑う

 

自分でも、子供っぽいところがあったんだなと思う

普段なら絶対にこんな事はしないのに

相手が、小鳥遊ホシノ・・・だからかもしれない

 

 

 

 

さっきと打って変わって、気まずい沈黙が場を支配する

今から寝ようというところなので、静かな事はいい事なのだが

 

そのせいか、お互いの呼吸や鼓動がよく聞こえる、聞こえてしまう

そんな状況でも、疲れからか・・・布団の暖かさからか・・・流石に眠くなってきた

 

 

 

 

 

「あの・・・さ。いや、返事はしなくていいんだけど。ありがとね」

 

「私の事、気遣ってくれたんだよね。」

 

「変な事、言うかもしれないけど、さ。」

 

「何故かユメちゃんも、シノちゃんも・・・何処かへ飛んで行ってしまう気がして。」

 

「そう思ったら急に寂しくなって、変だよね。」

 

「まあ、とにかく。ありがとね。それだけ・・・」

 

「じゃ、おやすみ。」

 

 

 

その日は、いつもより・・・よく眠れた、気がした。

 




翌日
ユメ「遅いと思って起こしに来たらホシノちゃんが二人・・・!」
  「一緒に寝てる!!!か、可愛い~!!!!」
  「写真撮っちゃお・・・」

シノ『あの、合い鍵渡してた私も悪いんですけど、普通に不法侵入ですよ。』

↓正直この小説に求めてるものって↓

  • ストーリー(シリアス)
  • 日常
  • バランス
  • その他(コメントまでどうぞ)
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