ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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最後の休息

▼カタコンベ前

 

 

『タイミング良く合わせてくれよ』

 

高所から思い切り跳ぶ、敵陣のど真ん中に

困惑しているアリウスの生徒たち、銃を撃とうとするが、そうすると・・・

 

『撃ちづらいだろ?特にそんな高火力武器(ダネルMGL)。』

 

 

「スクワッドじゃない!?総員、あいつを捕まえろ・・・!」

じりじりとアリウスの生徒たちが距離を詰めてくる

 

 

何故、彼女たちがグレネードランチャーなんていう高火力武器を支給されているのか

サオリの話を聞いてなんとなくわかった気がする

結局の所、ベアトリーチェは生徒たちを駒としか見ていない

 

だから自爆覚悟の特攻をさせる訳で・・・

それでも、やはり一緒に訓練した仲間もろとも射撃するのは、咄嗟には厳しいのだろう

 

 

『おいおい、こんなに集まっていいのかい?榴弾ってさ。』

『誘爆・・・しやすいんだぜ?』

 

 

インカムから、声が聞こえる

 

”ミサキ、お願い。”

「了解。塵は、塵にかえるもの。」

 

想定より早い・・・!

空から、拡散するミサイルが飛んでくる・・・

黒い空に輝く、それ(EX)はまるで、流れ星のようで・・・

 

「総員、退避っ!?」

 

私が生徒じゃないと思ってるからって、結構躊躇なく撃ったなぁ・・・

良い性格をしている、別にいいけどさ・・・

この位置からじゃ退避も間に合わないしな

なんて事を思いながら、最悪の雨を眺めていた

 

彼女たちの持っていた爆発物の類が一気に誘爆して、大きな爆発を起こす

 

 

 

「凄い、あんなに苦戦したのに一瞬で一網打尽。これが大人の力か・・・」

”良いね、ミサキ~完璧なタイミングだったよ!”

 

 

 

『げほっ、げほっ・・・』

 

まさかのクラスター弾かつ・・・燃焼弾・・・

煙で咽るし、耳も痛い・・・

 

 

『あのさぁ・・・タイミングを見計らえって・・・』

 

「お喋りをしている時間はない、先を急ごう。」

 

『・・・そう。』

 

 

 

まるで地下迷宮のような洞窟

夏なのに、冷たい空気が満ちている

此処がカタコンベか

 

「ここからが、カタコンベだ。ここから先は電波も通じない。」

「マダムの領域だ・・・一層気を引き締めて進むぞ。」

 

 

この地下坑道に入ってからというものの、常に誰かに見られているような感覚がする

目に神秘を込める。気のせい・・・じゃないな、見られている。2人・・・いる?

片方は酷く粘着質で・・・気色が悪い

片方は・・・知っているような・・・あっ

 

な、なんでついてきちゃったんですがセイアさん・・・!?

というか何時から見られていた?白鷹の前から?

いや、それはないと信じよう

 

どことなくジトーっとした目線を感じるけど

これ以上見られると計画に支障が起きかねない

邪魔者にはご退場願おう

 

 

『無料で見れるのはここまでだよ、今後は”白鷹”をどうぞよろしく。』

 

神秘を込めて、空間を握る

そこには確かに何かがあるかのように、空間が歪んで

パリンと割れるような音がして、気配は無くなった

 

 

 

 

「これは・・・マダムの気配?」

「見られていたという事か、急ぐぞ先生。」

 

”う、うん!今なにしたの?”

 

『企業秘密だよ、センセ。』

 

 

 

暫く歩いて、ハッチから外へ出る

ここは・・・荒廃しているが、遺跡だろうか

 

「さすがに、この辺りは巡回もいないね。悪くない選択。」

「・・・懐かしいですね。」

 

 

”ここがアリウスの自治区?”

「いや、ここは訓練場だよ。内戦が終わってから・・・ね。」

 

 

壁に掛けられた木の板は・・・おそらく的扱いか

確かに近くの壁が所々えぐれている

 

『センセ。』

”うん、分かってる。ここで小休憩を取ろう。”

 

 

サオリを見る、顔も赤いし・・・巻いた包帯から血が滲んできている

カタコンベに入りさえすれば、夜明けまではまだ時間もあるし

此処から先は休めないだろうから、ここで休息を取るのは正解だろう

 

「なっ・・・私はまだ・・・」

『別に君の為だなんて言っていないんだけど、否定するって事は自覚はあるんだね?』

 

 

「それでも、姫が・・・!」

『助けられるものも助けられなくなるって話をしてるんだけど。』

 

 

「この位なんともない、訓練ではもっと過酷な状況もあった・・・」

『足手まといだって、言外に言ってるのが分かんない?』

『足を引っ張るなって言ったのは君の方だろ?』

 

”すぐ起こすから、とりあえず横になって?”

 

「だが・・・!いや、すまない。わかった。」

 

 

野営の形になったが、居場所を探られる可能性があるので火の類を使えないのは不便だ

サオリは解熱剤を飲んでから、すぐに眠りについた

呼吸も安定しているので心配は無いだろう

 

 

「そのカバン・・・他に何が入ってるの?そのフィギュアって今必要?」

”ふ・・・普段から持ち歩いてるから・・・”

 

「これは・・・旅行雑誌ですか?」

”うん、良ければ見る?”

 

「えっ、くれるんですか!?ありがとうございます・・・!」

”あぁ、うん。良いけどさ・・・”

 

 

”ミサキ、アリウス自治区について・・・聞かせてくれる?”

 

「そんなこと聞いて、どうするの?」

 

 

”私は知っておかなくちゃいけないと思って。このアリウスで起きたことを。”

 

 

「聞いてて楽しい話じゃないよ。まあ、時間はあるからいいけど。」

 

「内戦があったって言ったのは・・・十年くらい前かな、アリウスが二つに分かれて起きた戦争の事。その戦争の後、仲介者として、生徒会長として・・・そして、このアリウスの支配者であると宣言したのが・・・マダム。」

 

「彼女は、私達に様々なものを教えた。」

 

「戦闘技術もそうだけど、トリニティが私達にしてきた所業のせいでアリウスはこうなっているとか。ゲヘナの生徒は共存など出来ないから滅ぼさなきゃいけないとか。」

「「|全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。《vanitas vanitatum et omnia vanitas》」という、この世界の真理を。」

 

「そして、自分こそが真実を教える真存在なのだと。」

「生徒は大人を敬い、その言う事に従うべきだと。」

 

 

「そんなマダムに反抗した人間もいなかったわけじゃないけど。」

「皆、懲罰を受けたか・・・粛清された。」

 

「そうして出来たのが今のアリウス自治区って訳。こんな話を聞いて、先生は何が・・・先生?」

 

 

”ごめんね・・・ごめん・・・!”

 

「なんで、先生が謝るの?それに、泣くのか怒るのか、どっちかにしなよ・・・」

 

 

 

”その、生贄の方も・・・聞かせてくれる?”

 

「・・・何の生贄かは・・・私達は分からないけど。姫、アツコは自治区を統治してたアリウスの生徒会長の血を引いてる・・・「ロイヤルブラッド」なんて呼ばれてて。」

「世襲制のアリウスで、血統は大きな意味を持つ・・・みたいな噂は聞いたことがあるくらい。」

 

「それに反発したのが、サオリ姉さん。」

「サオリ姉さんとマダムの間にどんな約束があったのかは・・・知らないけど。姉さんはそういう子を拾ってくる癖があったから。」

 

「当時マダムに反発していた、アズサも・・・姉さんが庇って指導した形になるのかな。」

 

「そうして直々にリーダーが指導したのが私達、アリウススクワッド。」

「そこからは先生も知る通り。5人だったスクワッドは今や3人だけになった。」

 

”アツコは、助けてみせるよ。”

 

「・・・そうなるといいけどね。」

 

 

 

気分の悪い話だった、きっとあちらの世界でも同じような事が行われていたのだろう

そんな話を終えて、少し時間が経ってから・・・視線を感じた

 

先生が、私を見て、カバンの中を見て、私の顔を見る

何をしていたいのかよく分からなくて、聞こうとした所で

先生がちょうど口を開いた

 

”あのさ、白鷹。貴方に渡すものが・・・あって。”

 

 

そう言って取り出したのは、一通の手紙

 

『手紙?それまた一体誰から。』

 

 

”あなたが助けてくれた、ゲヘナの風紀委員会の生徒を覚えてる?”

 

調印式のあの日、生き埋めになっていた彼女か

そういえばあの事件で、死傷者は奇跡的に0だったと聞くから

生きているんだろうなとは思ってはいたが

 

 

『いや、全く記憶にないね。』

 

”その子が、貴方に感謝がしたいって、これを。”

”渡すかどうかは・・・本当に迷ってたんだけど。そこまで悪い人じゃなさそうだから。”

 

 

『はぁ・・・貰っておくけどさ。ゲマトリアなんてものを信頼しないほうが良いよ、センセイ。』

 

 

さっきの話の通り、ロクでもない奴らの集まりなんだから

それに協力している私も立派なろくでなしだけど

 

”分かってる。でも・・・貴方の選択が生徒を救ったことは、否定されるべきじゃないと思って。”

 

『そ、先生も他の子もそろそろ寝なよ。寝ずの番は私がやっておくからさ。』

 

”う、うん。おやすみ、皆。”

 

 

そういって、目を閉じる先生

流石に疲れていたのだろう、ここまで強行軍だったし

キヴォトスの人間じゃない先生には過酷だったに違いない

 

 

「私は・・・信頼できないから良い。慣れてるし。」

『別に起きててもいいけど、パフォーマンスは落とさないでくれよ。』

 

 

 

 

先生達が寝てから、二時間程が経っただろうか

 

 

「うわぁん!こんなに一杯の焼きそば食べきれません・・・苦しいです・・・」

「どうしてこんなに世界は苦しいんでしょうか・・・」

「空が青いですね・・・あんなに沢山の海水・・・どうやって作ったんですかね・・・」

 

この状況で爆睡してる水色の髪の子、ヒヨリだったか

確かに寝てもいいとは先生が言っていたが、流石に図々しすぎないか?

 

 

 

まあ、白鷹として、変に気障なセリフを喋るのも疲れてきたところだったから

喋らなくてもいいというのは気が楽だった、のだが

 

 

 

「お前・・・結局何が目的なの?」

『・・・私とお話ししてくれる気になったんだ?』

 

「・・・チッ。」

 

 

目的、目的か・・・

キヴォトスの滅びを止める為、先生を守る為・・・

その為にここに来た、でも今はもう少しだけ思っていたことがあって

 

 

『気に入らなかったんだろうね。』

 

 

こんな過酷な環境を作り上げたベアトリーチェが、こんな世界がある事に気づけなかった事が。

事情を知らなかったとはいえ、憎しみのままにそんな彼女たちに銃を向けてしまった自分が。

そして、こんな・・・生贄の少女なんていう胸糞の悪い結末が。

 

『・・・ヒフミちゃんの、宣言を覚えてるかい?』

「ああ、あの変な白い鳥の鞄の。私は全く納得できなかったけど。」

 

友情、努力、勝利・・・そんなどこかの三原則みたいな・・・

都合が良くて、温かいハッピーエンドのお話

 

 

『私も同意だよ、世界はもっと汚くて、残酷で・・・ある日簡単に崩れてしまうような・・・』

 

私達の世界は、ある日突然終わりを告げた

きっと水面下では色々な事が起こっていたのだろうけど

壊れたものはもう戻らない、私達の世界はもう戻っては来ない

 

「虚しいもの。全ては虚しいもの(vanitas vanitatum)だから。それが・・・」

 

 

 

『それでもこんなに頑張ってるなら、少しくらいは報われないと・・・気に入らなくないか?』

 

「はぁ?気に入らないって何が・・・」

 

 

『全てが。神でもマダムでも誰でもいい。』

『少しくらい正当に評価してくれてもいい、いや・・・してくれないとおかしい。友情も努力もあって・・・試練ばかりで勝利だけが最後までない。』

 

『私の努力も今や殆どが塵となって消えた。その時心底気に入らなかった。』

『だから同じように無意味な結末を迎えようとしている・・・ここが気に入らなかった。』

 

 

「随分自分勝手な感想だね。」

 

『そりゃそうでしょ・・・自分の人生なんだから。私の好きなようにするだけ。』

 

 

 

「つまり・・・善意って事?馬鹿馬鹿しい・・・」

 

『そう聞こえたなら、その耳は飾りだよ。』

 

 

 

『後、それと・・・一発撃った分の貸しくらいは返しておきたかった。それだけの話だよ。』

 

「そう。それは私じゃなくてリーダーに言えば良いんじゃない?」

 

 

 

 

 

「はぁ・・・聞くだけ無駄だった。」

 

「・・・私も少し寝るから、さぼらないでね。」

「はいはい、おやすみ。ミサキ”ちゃん”」

「・・・うっざ。」




先生 ”きさま!見ているなッ!・・・うん、これも良いな・・・”
   ”後は、深淵をのぞく時深淵もまたこちらをのぞいているのだよ。これも捨てがたいか。”


白鷹『悪くないんじゃないか?ほら、私も一つ考えてあげよう。』

先生 ”・・・殺して。”

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