ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼ユメ視点
放課後、シノちゃんがやや遠慮がちに私の袖を掴んでくる。
今日は用事があって遅めに登校したんだけど・・・何かあったんだろうか?
『ユメ先輩、2人でデートに行きませんか?』
「うん、いいよ~・・・えっ?」
二つ返事で了承しちゃったけど・・・
今、デートって言ったのかな。聞き間違えだったかな?
シノちゃんが、私とデート?
買い物とかお出かけ的な話じゃなくて・・・?
「ど、何処に行く予定なの?」
『百鬼夜行ですよ、桜も綺麗で良いですよね。』
ひぃん、まさかの学区外!特に用事がある訳でもないよな・・・
つまり、本当にデートなんだ・・・
あ、明日・・・何着てこうかな。
家に帰ってきてからも、シノちゃんは特にいつもと変わらない様子だった。
緊張とか・・・しないのかな?一緒にお出かけする事はよくあったけど、デートは初めてだよ!?
シノちゃんが寝るのを待ってから、クローゼットを開く。
そういえば、家を借りたいって話だったけど、なし崩し的に同棲してしまっている。
今更シノちゃんがいないというのも・・・ちょっと寂しいのでまあ良いか。
制服って言うのも、あれだよね。
ちょうど前にデパートに買い物に行ったときに買った、ピンクのリボンが付いた白色のワンピースがあったのでそれにしようかなと思う。ちょっと露骨すぎるかな・・・?
それにしても明日、楽しみだなぁ・・・なんて、思いながら眠りについた。
迎えた当日、シノちゃんは・・・なんというかものす~っごくいつも通りで。
何となく嫌な予感がした。
『・・・どうしたんですか?ユメ先輩。』
「シノちゃんは制服で行くの?」
『え、ええ。ユメ先輩は・・・可愛いですね、とっても似合ってますよ。』
「本当?嬉しい・・・じゃなくて!なんかいつも通りだね、シノちゃん。慣れてるの・・・?」
『何回か行ったことありますし・・・』
「ひぃん!は、初耳なんだけど・・・!ちなみに、誰と?」
『一人でですけど・・・』
「ひ・・・一人で!?一人でいったの!?」
『・・・?昨日の対策会議で話したじゃないですか・・・あ。』
「あの、シノちゃん。私来たのお昼から何だけどさ。」
『す、すっかり失念してました。昨日はですね・・・』
話によると・・・
「それじゃあ、今日の廃校対策会議を始めますね。主な議題は・・・定例報告です。」
「それじゃあ今日も元気に廃校対策会議していこうかぁ~ユメちゃんはお昼からだっけ。」
『そう聞いてますよ、何でも欲しいものがあるとかないとか。』
「そっか、まあ自由登校日だからねぇ。」
「えっと、それじゃあシロコ先輩、何かありますか?」
「ん、私の方は最近治安が悪いからか指名手配が多い、稼ぎ時。」
「それは・・・喜んでいいんでしょうか・・・」
「そういえば、シノ先輩の方で進めてた「リゾート計画」?はどうなったの?」
『えっと・・・まあ相変わらず交通の便は悪いので、そこで頓挫している形ですね。逆に言えば、交通の問題さえ何とかしてしまえば直ぐにでも採算がとれる見込みはあります。』
『都合よく鉄道でもあればいいんですが・・・そうも行きませんよね。』
「ぐ、具体的なプランってあるんですか?」
『まず、オアシスが既存の海に比べている点として・・・オフシーズンが極端に短いお陰で海で泳げない期間も遊べる点です。7,8月はともかく・・・他の季節ではかなりの収益が生まれると踏んでいます。』
『収益の出し方は・・・入場料と出店の二パターンを考えています。主に地元の商店街、企業、そして各部活の三種類になるでしょう。まあこの際、収益は置いておいてアビドスに人が戻ってくればいいなという気持ちも強いですが。』
『当然、ボールや浮き輪等のレジャー用品のレンタルでも収益を見込めるので・・・試算した感じでは・・・これくらいです。』
「ん、一攫千金。」
「うへぇ・・・維持に人手がいるとは言えすっごい額だねぇ・・・おじさん驚きすぎて腰が抜けそうだよ~」
『当然、元手や失敗した時のリスクはありますが・・・こちらでその辺はなんとかしておきます。とはいえ、このままでは夢物語も良い所ですが。』
「わ・・・私・・・!感動してます・・・!建設的な意見を求めて建設的な回答が返ってくることって・・・あるんですね・・・!」
『アヤネちゃん・・・』
「私も一つ案がある。銀行を・・・」
「シロコ先輩?何か言いました?」
「・・・ん。」
『それで、今回は専門家に話を聞く・・・のもあるけど、とある部に誘致の話だけでも通しておきたいから、明日視察に行こうと思ってるんですよ。』
「へぇ・・・それで、どこに行くつもりなの?」
『百鬼夜行連合学院の・・・お祭り運営委員会です。』
『ちょうどいいので、ユメ先輩でも連れて明日行ってきますね。』
「お~シノちゃんも隅におけないねぇ~デート楽しんできてね~」
『・・・これもデートなんですか?まあ、そういう事なら楽しんできますね。』
『・・・という訳なんですよ。その誤解をさせてしまったなら。』
「ふーん。そうなんだ~?」
『ゆ、ユメ先輩?』
「傷ついたなぁ・・・私の乙女心が・・・」
『そ、その・・・』
「傷ついたなぁ。」
『ど・・・どうすればいいんですか。』
「私のと色違いのワンピースがあるんだけど。」
『・・・着ます、着させてください。』
「えへへ、そうこなくっちゃ!」
私のと色違いの水色のリボンに白色のワンピースを着たシノちゃん。
シノちゃんを色んな意味で自分の色に染めてるみたいで、ちょっとだけ変な気持ちになる。
「うへ~似合ってるよ~シノちゃん!とっても可愛い!」
『ホシノ先輩みたいにならないでください・・・』
「えへへ、移っちゃった。それにしても本当に可愛い!」
『そ、そうですか・・・?肩も出てるし、私には少し可愛すぎませんか・・・?』
「シノちゃんは自分の可愛さを自覚した方がいいよ・・・あー可愛い・・・!」
そう言って、何枚か写真を撮る。
恥ずかしそうに俯いているが、負い目があるからか何も言わずに撮られていてくれる。
数分後、絞り出すような声でシノちゃんが口を開いた。
『そういえば、一番くじでモモフレンズがやってるみたいなので・・・買ってきてもいいですか?』
「良いよ~でもその前にもうちょっと写真撮らせて?」
『うぐっ・・・今回は私に非があるので、好きなだけ撮ってください。』
電車に揺られること、暫く。
目的地の百鬼夜行の学区に辿り着いた私達。
観光名所が多いというだけあって、やはり駅も町も人が多い。
『あの、ユメ先輩。』
「どしたの、シノちゃん?」
『その・・・元はと言えば私のせいなので、今日くらいはエスコートさせてください。』
そう言って手を差し出してくるシノちゃん。
「えっ、うん。よろしくお願いします?」
握った手は小さいけど、あったかくて。
普段こんなに意識して握っていなかったからか、シノちゃんもちょっと気恥ずかしかったようで。
『それに、こんなに人がいっぱいいるとはぐれちゃいそうですからね。』
「も~そんなに子供じゃないよ!」
『ふふっ、それじゃ行きましょうか。』
誤魔化すように笑った、彼女の耳はほんの少しだけ赤くなっていた。
百夜堂のお店の前に着くと、店の前で接客をしている看板娘の彼女の姿が目に付く。
「百夜堂へようこそご主人様!にゃんにゃん!」
可愛らしい、可愛らしい事には間違いないけど・・・
「あの、シノちゃん・・・デート一件目のお店の選択じゃなくない・・・?」
『今日は百夜堂に用があるので・・・店主はメイド喫茶みたいですけど、味は絶品ですよ。』
「それは知ってるけどさ・・・でもシズコちゃん可愛いね。」
『とりあえず行きましょうか、アポはとってあるのでその辺は大丈夫だとは思います。』
「あっ、特別なお客様ですね!?今特別席の方にご案内します!にゃん!」
そう言って通されたのテーブル席の奥にある、接客用の個室。
店内と造りとそう変わらないように見えるが、防音はしっかりしていそうなので・・・商談用なのかな。
「百夜堂名物!
『ありがとうございます、河和シズコさん。』
「いえいえ!こちらとしても、面白い話だと思ったので!」
「・・・それで、詳細についてお聞きしてもいいですか?」
がらっと雰囲気が変わるのは、何度見ても慣れない。
営業用の元気のある彼女しか知らなかったから、初めて見たときは物凄く驚いたけど・・・こっちでもそうなんだなぁ・・・
シノちゃんやアヤネちゃん程、頭の出来が良くないのは自分でもわかってはいるけど・・・商業的な話になるとさっぱりついていけなくなるなぁ・・・
シノちゃん達が難しい話をしている間、あんみつを頬張る。
あんこの程よい甘さと、ほろほろとした食感の寒天がとても美味しい。
緑茶もあんみつにあっていて、とっても良い。これは学区外からも人が通う訳だ・・・
『・・・という訳なんですよ。』
「・・・成程。これは内密でお願いしたいんですが、丁度百夜堂でも
もう暫く、かかりそうだなぁ・・・
内容は当然、頭に入れるようにはしてるけど。
分からないところは後でシノちゃんに聞くことにしよう。
それが生徒会長としての責務だ・・・いや、今は生徒会長じゃないんだった。
それでも、可愛い後輩にだけ仕事させて自分はあんみつを頬張ってただけなんて駄目だよね!
話が終わったころには、百夜堂に来て3時間が経っていた。
どうやら商談は上手くいったようで、ご機嫌そうなシズコちゃんが印象的だった。
「砂祭りが開催できそうなときは呼んでください!」なんて、シズコちゃんは言ってたけど。
この調子ならそう遠くないうちに、開催できるのかも・・・しれない。
次回、テーマ―パークに行ったり温泉に行ったりいかなかったりする話。