ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
とある奇跡の終着点 プロローグ
▼セイア視点
この力が危険なものだとはわかっている、それでも・・・何処か嫌な予感がしたんだ。
「―――嗚呼、そうじゃ、最後に・・・本質を喪う過程で・・・最後の予知が発動するかもしれぬ。」
そう言われて、一度だけ・・・一度だけ、視てみようと思った。
それが、正解だったのか、間違ったことだったのかは・・・
その時にならないと分からないのだろう。
ただ、どうしても・・・あの子の行く末が気になってしまった
視えた未来の空は、赤く―――紅く染まっている。
夕焼けというには赤すぎて、まるで空が燃えているようだった。
そこで見えたのは、一つの悲劇から生まれた関係の終わり。
白と黒いドレスを身にまとった少女たちの争い。
その物語の終わりが、どう足掻いても辛いものだと知って。
声を上げようとして、届かない事に今更気づいた。
誰か、誰でもいいから・・・どうか、この声を聴いてくれ。
そして、どうか・・・彼女を、救ってあげてほしい。
「―――それは、叶わない願いだ。」
―――この物語は、覆された。
世界をまたいだ因縁は消えることなく、絡み合い、混ざって・・・攪乱され。
「青春の物語」は、統制を取る事も出来ない程に、色褪せてしまった。
「これまでの物語はすべて忘れるが良い。」
全てが分解されて、縺れあった・・・
主人公も、悪役も、事件も、葛藤も無かった「はずの」
全ての意味を失った不条理な世界。
そんな世界が意味を持ってしまった、持たせてしまった。
そんな、どうしようもなく終わった世界の・・・
「―――取り返しのつかない、復讐の物語なのだから。」
▼先生視点
ざあざあと雨が降る、荒廃した廃墟のような場所
撃ちぬかれたシッテムの箱が、無残な姿で転がっている。
目の前にいるのは、黒いドレスを纏った・・・狼耳の少女。
シロコによく似た少女は、こちらに拳銃を向けたまま・・・微動だにしない。
「これで・・・全部・・・終わるはずだから。」
彼女は、拳銃を・・・引き金を。
・・・引いた。
次に気が付いたのは、黄昏の空が広がるお茶会の会場。
ただし、腕どころか・・・指先の一つも動かせない。
まるで金縛りにでもあったかのように。
セイアの声だけが、響くように聞こえる。
「―――先生、聞こえているかい?」
「聞こえている体で・・・話を進めさせてもらう。」
「すべての色が抜け落ちた、モノクロの世界・・・そこで先生は、歪なヘイローの少女によって・・・生を終える。」
「これが、私と先生が見た予知夢の未来。何故、先生が未来視を予知夢として見たのかは・・・わからないけど。」
「おそらくそれは、これから来るキヴォトスの終焉。朱い空と関係するものだろう。」
「だけど・・・違うんだ先生。」
「私の最後の予知は、この終焉を”乗り切った”先生の姿を確かに見た。」
ノイズがかかった様に大切なところが聞き取れない。
「だから、先生に頼みたいのはまた・・・別の話。」
「君が答えられなかった、あの問いを覚えているかい?その、答えを出す時が来る。その時に、先生。貴方は・・・どんな選択をするのか。その結論が、例え今までの物語を
「私だけは、否定しない。だから・・・」
「だから、救ってあげてくれよ・・・先生。大切な・・・友人なんだ。」
そんな彼女の懇願するかのような、一言は・・・
ぼやけて・・・私の意識と共に・・・消えた。
「・・・色彩がここを発見しました。」
「ベアトリーチェのせいでな。忌々しい事だ・・・!」
「・・・そして彼の存在はここを目指して進行しつつある。」
「動き出した歯車は、止まることは無い。これから先の行く末を・・・見守るとしましょう。」
強い光が目に入る。
手足が思い通りに動く、どうやら起きる事が出来たのだろう。
”・・・知ってる天井だ。”
シャーレのオフィスで目を覚ます。いつのまにか寝ていたらしい。
この予知夢を・・・誰かに伝えないと。・・・一体、誰に?
リンちゃんと・・・他に誰がこんな荒唐無稽な話を信じてくれる?
・・・いや私はこの話に似た状況を知っている
その事を教えてくれたのは、彼女。
高那シノ・・・もう一つの世界のホシノ。
彼女なら・・・この夢の詳細も知っているかもしれない。
”「リンちゃん、今どこ?」・・・これでいいか。”
モモトークを送信して、そのまま下にスワイプしていく。
シノは・・・どうしようか。
今から通話しても・・・いいかな。
”もしもし、シノ?今大丈夫?”
『ええ、大丈夫です。・・・火急の要件ですね?とりあえずすぐに向かいます。』
連邦生徒会にやってきた。リンちゃんもシノも既に部屋に揃っている。
”集まってくれてありがとう、2人とも。話したいことが・・・あるんだけど。”
”・・・とても信じられないような・・・予知夢のお話なんだ。”
『・・・えぇ。』
予知の話をした後、リンちゃんは何かを考え込むように手を顎に当てていた
そして、シノは・・・
『終わったと、思っていたのに・・・。』
苦しそうな表情で、悲しそうな・・・怯えているような・・・そして何かに怒っているような、複雑そうな表情で俯いているシノ。
リンが、手元のタブレットを操作しながら、話の内容をまとめて繰り返してくれる。
「・・・話は大体分かりました。キヴォトスは終焉を迎える、証拠は先生の夢のみ・・・と。」
”到底、信じられる話じゃ・・・”
「・・・連邦生徒会のデータベースを確認してみます。同様のケースがあるかどうかも確認してみましょう。」
”リンちゃん・・・信じてくれるんだね!”
「誰がリンちゃんですか、誰が。」
「私は、信じきれているわけではないですが・・・少なくとも先生はその事を・・・信じているのですよね。」
「それなら、私は、その事を信じる・・・先生を信じる事にします。」
「それが、先生を選んだ・・・連邦生徒会長への義理立てにもなりますから。」
「他の生徒を説得するには、証拠がいりますが・・・」
『赤い空、7つの柱・・・迫る太陽・・・』
「大丈夫ですか?高那シノさん・・・でしたよね。」
『・・・っ。ええ、大丈夫、大丈夫です。』
『やる事が出来ました、先生。戦力を集めてください。いつでも動けるように・・・』
『アビドス高校はこの件に”全面的に”協力します。』
『私には、やるべきことが・・・やらなきゃいけない事があります。それではこれで。』
そう言って席を立つ、シノ。
何か急いでいるようで、急かされているようで。
”・・・シノ。”
『7つの柱の対策はこちらでまとめておきますが・・・あくまで「あちら」での話です。』
『鵜呑みにはしすぎないでください。戦力を、集めてください。そして・・・』
何かを言いかけた後。
『いえ、なんでもないです。頼りにしてますね、先生。』
”任せて、シノ。私も精一杯頑張るから。”
・・・彼女は部屋を後にした。
この時、私は彼女と向き合うべきだったんだろう。
それでも、世界の終焉を前に・・・私は彼女を・・・
高那シノ、個人をしっかりと見てあげられなかった。
本編投稿中ですが、適当なタイミングで幕間も挟むことになると思います。