ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼トリニティ校門前
ミカの聴聞会が行われたらしい。
結果として、彼女はティーパーティとしての権限の殆どを剥奪されたそうだ。
ただし、パテル分派の代表としての立場は暫定”保留”。
来週から学業への復帰、並びに無償のボランティア活動を行うそうだ。
クーデターを行った生徒に対する処遇としては、あまりに破格。
同規模の事件の処遇としては退学処分になるはずだが、その後の行動やティーパーティの対応が上手くいったのだろう。
ただ、その判決に納得のいかない一部の生徒がデモ行為を行っているそうで・・・日夜、校門の前にはちょっとした人だかりが出来ている。
「魔女を吊し上げろ!」
「裏切者には死を!」
”スク水で謝意を見せろ!”
「そうだそうだ!脱げ・・・!ん?」
「何か今いなかった?」
「・・・気のせいでしょ。」
”いや、絶対いたよ。”
「怖っ・・・今日は解散しよう。」
そう言って解散していく生徒たち。
「・・・先生、何やってるんですか!?。」
”ヒフミ?それと補習授業部の皆、奇遇だね。いや通れそうな雰囲気じゃなかったから・・・”
”ああいう子達は主体性がないから、誰かが帰り始めたら帰るかなぁ・・・って。”
”・・・それにしても、これは、酷いね。”
デモ用のプラカードには考え付くありとあらゆる恨みの言葉が。
どこかからか持ち出された私物には、火がつけられたようで黒く煤けている。
「確かに、あの一件でミカ様が起こしたことは、悪い事だけど、何もここまで・・・!」
「ティーパーティの一角が落ちかけている現状を、好機と捉える人間が多いのも事実です・・・それだけティーパーティの影響力は絶大ですから。面白がって先導している子も多いですけどね。」
「こうやって寄ってたかって石を投げるような状況の方が気に入らない。」
「それにミカは危険なカタコンベに突入して、アリウスの皆を助けてくれた。」
「その事実がある以上・・・私は、そんな彼女の事を憎む理由がない。」
”アズサ・・・”
「実際、彼女の態度と行動を見て考えを改めている人々もいますから・・・”赦しと慈悲を知らない私たち”も・・・少しずつ変わり始めているのかもしれません。」
「そういえば・・・先生はどうしてトリニティにいらっしゃったんですか?お忙しいとお聞きしてましたが・・・」
”ティーパーティに会いに来たんだ。”
「ナギサ様にですか?だったら正実の地下の・・・牢屋の前にいらっしゃると思います・・・」
”・・・?何で?”
「きっと、高尚なお考えがあるんだと思います・・・」
「あの猫ちゃん・・・そこまで深いこと考えてないと思いますよ。」
場所を移して、何故かやけにしっかりとした造りの部屋が前にある・・・正実の牢屋。
階段を下りている最中にも誰かの声が聞こえてくる。
「これでこの独房ともお別れかぁ・・・しみじみだなぁ・・・」
「ティーパーティとしてミカさんの住居を抑えることは出来ないので、第三者が「公正な」審査の元、手配した物件に住んでいただくことになります。何か質問はありますか?」
「その第三者って・・・?」
「極一般的な生徒ですよ?フィリウス分派ではありますが・・・」
「ナギちゃんさ・・・」
「仕方ないじゃないですか・・・こうする事でフィリウスの内部へのアピールにもなるのですから。これ以上ティーパーティの権威が失墜すると、学園の運営に問題が起きかねません。」
「それが偶々、私の家の近くであったとしても・・・まあ、公正な審査の元なので問題ないでしょう。」
「あれ、先生?こんな所まで・・・どうしたの?」
”ティーパーティに会いたいならここに行けばいいって言われたんだけど・・・ミカはともかくナギサは何でここに?”
「これには、深い理由がありまして・・・」
「ナギちゃんが寂しがり屋さんなだけじゃんね☆」
「ミカさん・・・?」
「先生は。どうやら私に用があるようだね。」
ひょっこりと不自然に膨らんでいたベッドから出てくる狐耳の彼女。
”当然の如くセイアもいるんだね・・・”
「いや、ナギサがどうしても離してくれなくてね・・・子供じゃないんだから、少し目を離したくらいでいなくなる訳がないんだが・・・」
「そう言って、目を離した隙に一日寝込んだのも忘れてませんよ?」
「・・・あれは、私は悪くないだろう。」
「まあ、長くなりそうなので・・・お茶の方を用意していただきますね。こちらにどうぞ、先生。」
監獄前の部屋にしてはやけにしっかりとした造りの椅子に座って、紅茶を頂く事・・・5分程。
あまりゆっくりしている時間もないので、早速本題に入らせてもらおうと思う。
”それで、セイア。今朝の最後の予知夢についてなんだけど。”
「・・・それはおそらく、未来の私からのメッセージだろう。必ずしもあの空間の時間とは整合性が取れたものではないのは、先生も知る所だろうが・・・」
「私は”それ”を知らない。そして、今・・・未来を視ることもできない。つまるところ訪ねてもらって申し訳ないが先生の役に立てる訳ではないんだ、すまないね。」
あてが一つ外れてしまった・・・今後の方針はどうしようか。
「つまるところ、キヴォトスに滅びの運命が迫っているという事ですか・・・セイアさんが言うなら嘘ではないのでしょうが・・・実感が沸きませんね。」
”いや、話を信じてもらえただけ助かったよ。私が夢で見たなんていっても・・・セイアがいなければ・・・こんなにスムーズに受け入れられなかったと思うし。”
”シノが言うには、戦力がいるらしいんだけど・・・”
「それで、この複雑な時期に・・・言ってしまえば軍拡ですか。なかなか難しい話題ではありますが。」
「やってみせましょう、皆さんには返しきれない恩があります。」
”ナギサ・・・!”
「とはいえ、他組織にもよく通達しておかないといけませんね・・・とくにシスターフッドと救護騎士団からはあらぬ疑いをかけられかねません。」
「ミカさん、当面のボランティアは先生のお手伝いと言う事で割り振ります。「シャーレ」への協力依頼と言う事にすれば、内外からも文句は少ないでしょう。」
「分かったけど・・・何すればいいの?」
”有事の際に直ぐに動けることと・・・異変がないかのパトロールかな・・・”
「そして、非戦闘要員の救助に救護要員の確保と十分な物資・・・やる事は山積みですね。」
”本当に助かるよ、私一人でできる事は限られているから・・・”
「とは言え、私が学園の他組織を回るのは・・・少しばかり誤解を生みかねないので・・・」
「先生、お願いできるでしょうか?」
そう言って、シスターフッドの教会から訪れることにしたわけだが。
「ティーパーティーからのお使いとして・・・私を一番に尋ねるとは。良い判断ですね、先生?」
「先生とは誰もいないところで・・・一度。二人きりでお話ししたいと・・・常々思っておりました。」
にっこりと笑ったままの、サクラコ。
この部屋自体が少し薄暗いからか、何とも言えない雰囲気を感じる。
彼女本人からは、風評被害だとは聞いているが・・・
「おや、緊張されているのですか?先生程の方がそこまで恐れるとは・・・私も用件を聞くのが恐ろしくなるものです。」
「とは言え、安心してください。我々はシャーレに対して・・・大きな「貸し」がありますので。お手伝いできることがあれば、私個人としても嬉しいです。」
そう言って笑みを深める彼女。
本心なのだろう・・・本心なのだろう・・・!だけど・・・!
「・・・とは言え、最近のトリニティは少しばかり物騒です。先生の身に「万が一」がなければよいのですが・・・」
「良い事を思いつきました。私が自ら先生の護衛をしましょう。それなら先生も・・・「安心」ですよね?」
”サクラコ・・・この件が終わったら一緒にお話の練習しようね・・・”
「何でですか!?」
何とか用件を伝えると、時刻はもうお昼を過ぎていた。
「成程、防衛力の強化と。セイアさんがおっしゃられたなら信憑性はありますが・・・」
「この時期に、戦力の強化とは・・・まるで、「抗争の準備」のように思われてしまうのも無理はないかもしれませんね・・・」
「とは言え、そういう訳ではないのでしょう。我々の方でも、「準備」をしておきます。」
”サクラコ。”
「・・・今のも、駄目だったのでしょうか。やはり何か可愛らしい語尾をつけるしか・・・」
”ぴょん・・・とか?”
「さ・・・流石にそれは・・・恥ずかしいぴょん。」
赤面したサクラコは確かに可愛かったが・・・
後日、ラビット小隊をトリニティが取り込もうとしているという・・・根も葉もない噂が流れたという。
「流石ですね!サクラコ様!」
「シャーレの先生を手籠めにしてSRTの実権を得ようとは・・・」
サクラコ「・・・誤解が広まっているようです。」
「まさかそれだけではない・・・と?」
「シャーレを足掛かりに連邦生徒会にも手を伸ばそうというのですか・・・!流石です!」
サクラコ「どうして・・・私は何も・・・!」