ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼ユメ視点
いつも通りの廃校対策委員会の自室・・・の筈だが。
少し寂しく思えるのは、シノちゃんがいないからだろうか。
「・・・ん。カイザーPMCが変な動きを見せてる。」
「カイザーの活動が、活発になってきていますね・・・」
私達が来る少し前に、カイザーのPMCとの争いがあったらしいが・・・
そのカイザーPMCの動きが活発になってきているらしい。
何か、企んでいないと良いんだけど・・・
「聞いた話だと、カイザーコーポレーションと色々あったんだっけ?」
「あっちでは、何故か土地を売ってアビドスから撤退してたけど・・・」
「えっ、初耳なんだけどユメちゃん。」
「あれ、言ってなかったっけ・・・私達の世代で借金の問題はもう何とかなってたから・・・」
「にしても・・・只でさえ先生も忙しいって言うのに・・・こんな時にシノ先輩は何してる訳?」
「「やらなきゃいけない事がある」って言ってから、顔を見せてないですもんね。」
「全く・・・どうして皆、いつも相談もせずに突っ走るのかしらね・・・?」
「う、うへぇ・・・耳が痛い話だよぉ・・・」
「それでも、シノちゃんは私と違って相談してから行くと思ってたんだけど・・・何か事情があるんじゃないかなぁ。」
「そうね、シノ先輩は”ホシノ先輩と違って”しっかりしてそうだしね?」
「うぅ、返す言葉もないよぉ・・・」
「ほら、シノちゃん強いしさ・・・そのうちしれっと戻ってくるよ。」
「今日の所は各自解散と言う事にしよっか、これじゃ勉強や対策出すどころじゃないでしょ?」
そう言って立ち上がるホシノちゃん。
「ちょっと!?ホシノ先輩はどこに行くつもりなの?」
「あはは、ちょっと野暮用でね〜」
何かを隠してる顔だが、恐らく「ああ」は言ったもののシノちゃんを探しに行くのだろう。
ホシノちゃんは誰かを喪う事に、いつも怯えているから。
そう言って一旦解散となった私達。
私も、シノちゃんを探してはいるものの・・・居そうな場所には居なかった。
「連絡、これは・・・先生からですね。」
「用意して欲しい物があるそうなのですが・・・」
「ん、私はカイザーの動向を確認してみる。」
「ちょっと!?危ないことはしないでよね!」
「大丈夫、ザル警備に見つかる程馬鹿じゃない。それにシミュレーションは完璧。」
「あはは、まぁ一旦解散しましょうか。ユメ先輩も夕方に集合でいいですか?」
「う、うん!それで大丈夫だよ!」
「ん。早速、行ってくる。」
誰もいなくなった室内で、シノちゃんが座っていた席を撫でる。
2,3日いなかったせいで、薄っすらと積もった埃を・・・払い除けるように。
「シノちゃん・・・私はまだ頼れない先輩、なのかな。」
何となく、シノちゃんがいる気がして・・・昔いったアクアリウムにやってきた。
やる事があるなんて言っていたから、こんなところにいる訳ないなんて分かってる筈だったのにな。
あの頃は、少しつんけんしてるところもあったけど・・・
アクアリウムに来たときは、子供のように目を輝かせていたっけ。
水槽越しに、大きなクジラが目の前を通る。
シノちゃんも・・・好きだって言ってたっけ。
あの時はもっと楽しかったはずなんだけど・・・一人で来たここは、前よりも色褪せて見えた。
「・・・あれ、ユメちゃん?」
そう言って後ろから声をかけてきたのは、ホシノちゃんだった。
こんな所で偶然・・・という訳ではないと思う。
「ホシノちゃんじゃん~こんな所でどうしたの?」
「い、いやぁ・・・それは。」
「ホシノちゃんも、シノちゃんを・・・捜しに来たんだよね。」
「話したいこともあるし、お腹も減ってきたから・・・一緒にお昼にしない?」
「ユメちゃんにはかなわないなぁ・・・そいじゃ、行こっか。」
歩き回って疲れたからか、しっかりとしたものが食べたくて・・・アクアリウムのカフェでトマトのパスタを頼んで、席に座る。シノちゃんはお腹すかしてないかな。最近・・・というよりは、”彼女”が死んでからだろうか、シノちゃんはご飯を食べる時に、少し寂しそうな顔をするようになった。
・・・本人は気づかれてないつもりなんだろうけど。
その事も、私に心配をかけまいと気丈に振舞っている事も知っている。
確かに、彼女は強い・・・私は彼女が負けたところを、1度しか見たことがない。
それでも、心は別だ。
例え、私が頼りない先輩でも・・・一声くらい助けを求めてくれればいいのに。
「ユメちゃんも・・・何処に行くかは聞いてないんだよね。」
「うん。本当に困っちゃうよね~全く~」
「皆はああ言ってたけどさ、シノちゃん・・・相談するタイプじゃないよ。」
「シノちゃんは大切な時はいつも私を置いていくんだよ。」
「私は、シノちゃんにお姫様扱いしてほしい訳じゃなくて・・・隣を歩きたい、それだけなのに。やっぱり私、頼りないのかなぁ・・・」
「・・・なんて、愚痴っぽくなっちゃたね。出来たみたいだからそろそろ取りにいこっか。」
「あのさ、ユメちゃん。今日はおじさんとアクアリウム回らない?良ければなんだけど・・・」
おそらく私の顔色を見て、そう提案してくれたホシノちゃん。
気を使わせてしまったかな。これじゃあ理想の先輩には程遠いなぁ・・・
「本当?私もホシノちゃんと一緒に回りたい気分だったんだよね~」
「ご一緒してくれる?」
「うんうん、おじさんこれでも海の生き物には詳しいからさぁ。期待して待っててくれてもいいよ!」
そう言ってホシノちゃんと一緒に見たアクアリウムは、午前中よりも色付いて見えた。
「みてみて~!タコだよタコ!アクアリウムってなんでもいるんだね~」
「タコって英語で「オクトパス」って言うんだけど・・・
「本当に物知りなんだね?そう言う所はそっくりかも〜にしても美味しそうだなぁ。」
「えっ・・・美味しそう・・・?そ、そうだね?」
私も、ホシノちゃんも・・・良い息抜きが出来たと思う。
この時、までは。
時刻は夕方ごろ、そろそろアビドスに帰ろうとしていた所で、不意にホシノちゃんのスマホがなる。アヤネちゃんからみたいだけど。
「ホシノ先輩!?大変なんです!ユメ先輩はご一緒ですか!?」
「うん、一緒にいるけど。どうしたの?」
「そ、それが・・・!」
何かすごく嫌な予感がした。
「正体不明の黒・・・虹色の光が、砂漠から放たれたと同時に・・・!」
「シロコちゃんと・・・連絡が、取れなくなったんです。」
「なん、で。いや、私もすぐ向かうから」
「話は聞いてたよね、ユメちゃん。」
「うん・・・」
「何で、シノちゃんに続いてシロコちゃんまで・・・!私は・・・!」
急いで帰る私達、確かに遠くの方で何かが光った気がする。
帰りの電車に乗っている最中、夕方を告げるチャイムが鳴る。
急いでも電車が早くなるわけではないけど・・・焦燥感だけが、募っていった。
▼シノ視点
黒服に連れられてやってきたのは、いつもの薄暗いオフィス。
そんな薄暗いオフィスに佇む、直径1m程の銀色の箱とその上に浮かぶ”赤色の”ヘイロー。
『・・・黒服、この箱は何?』
「誓って生徒ではありません、”これ”はデカグラマトンとある意味同一のモノ。本来ないはずのヘイローを得た・・・箱のようなものだと認識して頂いて構いません。」
『・・・そう。生徒じゃないならいい。それにしても何処かで見覚えがある気がするんだけど。』
「今・・・先生と貴方に敵対する訳にはいきませんからね・・・ククッ。」
『・・・教える気はないと。まあそれでも構わないけど。』
「それでは、実験の内容をもう一度説明しておきましょう。「他人への神秘の譲渡とそれによって見られる傾向」他にも同時並行で観測は続けていきますが・・・貴方のそのネックレスに関わってくるものとは言え・・・本当によろしかったので?」
『くどいよ、私は力を得る必要がある。その為に手段を選ぶだけの時間は・・・ないんだ。』
前よりも状況は良いとはいえ、あれに勝てなければ何の意味もない。
どれだけの戦力を集められるかもわからない以上、準備は万全にするべきだろう。
「そうですかそうですか・・・確かに”神秘”を移す先の母体の選定には難儀しておりましたから・・・渡りに船といった所でしょう。」
「それでは始めましょうか。至高の神秘を作る実験を。その神秘が生徒としての臨界点を迎えたとき・・・それは、きっと・・・”崇高”に至り得る。」
「”それなり”の痛みは伴うかもしれませんが・・・どうか耐えてください。」
「私は・・・いえ、我々は遂に・・・届かなかったコインの表面に手を伸ばす。」
▼???
結局の所、一手を埋める手駒が欲しかっただけ。
失っても惜しくない・・・そんな駒が。
『捜したよ。初めまして・・・かな?』
「貴様は・・・何者だ、怪しげな面などつけよって。」
『私が誰かどうかは・・・重要なファクターじゃない。』
『あえて、名をつけるとすれば・・・「白鷹」そう呼んでくれればいい。』
「貴様、まさか・・・何の用があってノコノコと・・・!」
『それにしてもらしくない、まさかこんな所で燻っているなんて。』
「・・・何が言いたい。」
『聞いてしまえば・・・貴方は誘蛾灯に吸い寄せられるよう虫のように・・・光に吸い寄せられるだろう。それでも良いというのなら・・・』
「言いから聞かせろと言っているんだ!」
『それでは・・・貴方に。」
『決して拒めないであろう提案を、ひとつ。』