ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
あと何話か更新予定です。
▼先生視点
持っていたシッテムの箱から、声が響く。
と言っても、私にしか聞こえない・・・らしいけど。
「たった今、キヴォトスで超高濃度のエネルギー体が合計”7つ”確認されたそうです。」
「場所は、アビドス砂漠、DU近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市、サンクトゥムタワーの真上。そして最後の一つは・・・「アリウス自治区」みたいです。」
「とくに後者の二つは、特に大きなエネルギーが観測されているようです・・・」
「それによりリン代行は、緊急プロトコルを発動。キヴォトス非常対策委員会を発足しました。」
「行政官のリンさんが、主要自治区の代表生徒を招集するそうです。」
「その取りまとめ役に・・・先生のお力をお借りしたいとの事です。」
”まとめてくれてありがとう、アロナ。”
「はい!まもなく連邦生徒会の手配した車が来るそうですよ!」
「私は、引き続き情報を精査してみます!何か分かったことがあったらお伝えしますね、先生!」
”うん、よろしくね。”
そんな話をしていると、ヘリコプターの音が外から響く。
暫くしてヴァルキューレの生徒が二人やってくる。
「お迎えに上がりました、先生。」
「ここから先はヴァルキューレがサンクトゥムタワ―までお送りします。」
”ヴァルキューレが・・・?うん、よろしくね。”
「ヘリポートにヘリを用意しているので、そちらまでお願いします。」
シャーレの屋上に、泊めてある大きなヘリ。
何か違和感を感じながらも、私は・・・
「それでは、どうぞこちらに。」
”うん、ありがとう。”
その中へ、歩を進めた。
今日もこのキヴォトスでは様々な思惑が渦巻いている。
「連邦生徒会からの・・・招集依頼ですか。しかも非常対策委員会を設置するとは・・・これはミカさんとセイアさんにも声をかけなければなりませんね。」
「キキキッ!我々万魔殿の偉大さを再認識させる時がやってきたという訳だ!」
「妾も、様子位は見ておかねばな。」
「にゃはは、まさか私達の所まで連絡が来るとは。百花繚乱がいれば押し付けられたんだけど・・・」
「この全知と呼ばれる、超天才病弱美少女ハッカーの私としても・・・同じ意見に至りました。つまるところ・・・」
「「シャーレの先生」の協力を仰ぐべきでしょう。」
それぞれの思惑が複雑に絡み合った。
「続いての議題ですが・・・おや、そろそろ時間ですか。」
「・・・私は、こんな所で燻っている訳にはいかないのだ。」
「・・・いよいよ、始まるのですね。」
―――永い、永い一日が始まる。
ヘリに乗って、しばらくして・・・
外の風景を眺めていると、何か違和感がある。
”これって、サンクトゥムタワ―に向かってるんだよね?”
「そうですよ、先生。どうかされましたか?」
”・・・そういえば随分と豪華なヘリだね?”
「えぇ、財政には余裕がありますので。」
向かっている方向は、どちらかと言えばヴァルキューレの校舎の方向だ。
確かに、何か問題があって迂回しているという可能性もあるけど・・・
ヴァルキューレと言えば、キリノやモエの発言を思い返す・・・
「ヴァルキューレは・・・財政状況が良くないそうで・・・」
「SRTでなら、よそでは使えないような高性能の武装も使えるからさ!」
”ヴァルキューレの財政は・・・苦しい状況が続いてるって聞いてるんだけど。”
「おや、そんなことはありませんよ?」
勘違いと言うには、大きすぎる疑問。まさか・・・
”貴方達は・・・誰?”
「・・・」
突如として、銃を突きつけられる。
狭い室内で、逃げ場所もない。
「おや、どうやら「シャーレの先生」とやらは勘がいいらしい。」
「だが、少しばかり気づくのに遅れたな。」
そう言って、外装のようなものを剥ぎ・・・その姿を露わにする機械の兵隊。
”カイザー・・・PMC・・・!”
「ご名答。こちらα分隊、先生の確保に成功した。」
通信機越しに、声がする。
「ご苦労、では引き続き任務を進める。」
聞いたことのない声だったが、恐らくは相手の新しい指揮系統だろう。
アビドスでの数か月前の争いで、PMCの理事は何処かに飛ばされたと聞くし。
奥の方から、ぞろぞろと現れるカイザーのPMC。
その中に1人だけ、妙に背格好の良いPMCがいる。
「大人しくしてもらおうか、先生。安心しろ命まではとるなと通達を受けている。」
「ただし、余計な真似をできないように脚でも一発撃っておけとの御通達だ。」
”・・・っ!”
シッテムの箱がある以上、ダメージは通らなくても・・・私にこの状況を打開する方法が・・・
カードを使うしか・・・
同刻、とある廃墟にて密談を交わす生徒と、ロボットが一組。
「ご苦労、では引き続き任務を進める。」
「・・・無事に、先生の確保は出来たようですね。流石と言っておきましょう。」
「これで・・・ついに始まります。」
「先生のいない、非常対策委員会は瓦解・・・リン行政官の権威は地に落ち・・・必然的に”先生”のいないシャーレも解体・・・素晴らしいストーリーで・・・!?」
そんな中に響き渡る、銃声。
一発ではなく、頑丈なキヴォトスの生徒を気絶させるために執拗に、何発も。
「そして、防衛室長殿には事が済むまで御隠居頂こう。」
「少し前に、計画が変わったのでな。我々は防衛室長と行政官・・・そして先生のいない連邦生徒会を強襲し・・・そしてサンクトゥムタワ―を掌握する。」
「企業による、企業の為の都市・・・そうプレジデントはおっしゃられていた。素晴らしいストーリーだとは思わないか?」
「ジェネラル・・・ッ!裏切るつもりですか?」
「裏切る・・・?違う、我々は互いの利害が一致したから協力関係にあっただけの事。」
「”砂漠の宝”が見つかった今・・・最早、防衛室もゲマトリアも必要ない・・・それに。」
意識を失う、糸目の彼女。
それに対して、軍服を着た機械の指揮官は追い打ちをかけるかのように呟いた。
「最初から君の掲げる「正義」とやらにも興味はないのだよ。」
絶体絶命のヘリの中。
PMCの持つ銃が、私を撃とうと・・・その銃口を脚に向ける。
胸元に入れていた、カードに・・・手を入れようとして。
発砲の直前、大柄なPMCがその銃器を大きく振り被った。
仲間であるはずの、他のPMCに向けて。
PMCは思わずと言った様子で、撃とうとしていた銃を取り落とす。
「・・・がはっ!気でも狂ったか!?」
「気が狂う?ああ、気が狂いそうだったとも。出世ルートから外れ、嘗ての部下のご機嫌を取りながら毎日営業をするような辛酸を舐めさせられ続け・・・!しまいにはこの私にトイレの案内業務だと・・・!?」
「その上、私が情報を集めていた”砂漠のお宝”の手柄の横取り・・・温厚な私も我慢ならん。」
砂漠の宝・・・情報を集めていた・・・まさか・・・?
変装用の外装らしきものを取り外した先に見えたのは、特徴的なオレンジ色の目を持つ頭部。
私にとっても、対策委員会の皆にとっても・・・因縁の相手である、彼。
「あなたは・・・!?いや、貴様は・・・!オクトパスバンクに出向された筈では・・・!?」
「かつての上司に敬語も使えんのか、教育が足らなかったようだな。」
”カイザーPMC理事・・・!?何でお前が・・・!”
「細かい話は後だ。とりあえずはヘリを制圧するぞ・・・先生。」
”戦えるの・・・?”
「普段は前線には立たんが・・・そこのポンコツ共よりはマシな装甲とアクチュエーターを積んでおるわ。」
「・・・っ!?ジェネラルに連絡をっ・・・!」
「先生!端末のハッキングに成功しました!これで暫く連絡機器は使えない筈です!」
”ナイスアロナ!それじゃ・・・反撃開始と行こうか!”
敵は3人、武装しているが・・・シッテムの箱から理事のスペックを見てみると・・・確かにカタログスペックは高い事が分かる。
生徒以外の指揮なんて初めてだけど・・・まあ、何とかなるだろう。
”理事っ!三歩下がって左のPMCから片付けて!右の射線は気にしなくていい!”
「よくわからんが・・・指示には従うぞ、先生。貴様の指揮能力は脅威になりえると身をもって体感したからな・・・!」
そう言って、持っていた一般兵と同じアサルトライフルを構える理事。お世辞にも射撃が上手いとは言えないが、この狭い室内で先に撃ち出してしまえば少なからず当たるものだ。
「がっ、撃ち返せっ・・・!」
「おいおい、こんな時に
右のPMCが弾詰まりを起こすのは分かっていたので、後回しでいい。
まずは一人、続いて二人目も撃ち返してくるが・・・!
「馬鹿!撃つな!操縦席にぶつかるっ!」
「・・・くっ、だが。」
相手は位置取りが悪く弾を撃てない。
「撃たないなら、撃ち続けるまでだ!はははは!」
「ぐっ・・・」
二人目も無事倒れる。
最後の一人は、諦めて近接戦を仕掛けてくるが・・・
「ふんっ!」
理事の綺麗なラリアットが入り、ヘリの壁に打ち付けられてその機能を停止する。
指揮があるとはいえそこそこ強いんだな・・・
ふんぞり返ってるだけの人だと思ってた。
「おい、先生。何か失礼な事を考えてないか・・・?」
”とりあえずはお疲れ様。話を聞かせてくれるんだよね。”
どうやら彼自身も、上層部の意図を理解しきっている訳ではないらしいが。
カイザーはどうやらサンクトゥムタワ―を掌握したいらしい。
理事自体は、「計画」とやらの為に、カイザーPMCに一般戦闘員として潜伏していたらしいが・・・
「まさか、こんなことになるとは思ってもいなかったがな・・・」
仲間面をしているが、PMCを片付けるのに手を貸しただけで・・・
こいつに協力する気は全くない。
”私は、貴方がしたことを許さないよ・・・絶対に。”
「この状況でそれだけの大口が叩けるのなら、メンタルの方は大丈夫そうだな。」
「何、私も貴様となれ合うつもり等・・・毛頭ない。私には私の目的があるだけだ。」
「とはいえ、貴様はサンクトゥムタワ―に向かいたい。私も「シャーレの先生」をタワーに送り届けたい。利害は一致しているだろう、先生?」
確かに、結果として今助けてくれたとはいえ・・・
こいつは、アビドスの皆を騙して・・・ホシノを傷つけた張本人だ。
”お前を信じられるわけないだろ。”
「ならばここから飛び降りるか?止めはせんがそちらの方が分の悪い賭けだぞ、先生。」
「貴様に選択権はない・・・諦めてこのヘリに乗っておればいいのだ。ははははは!」
「それにこのヘリはカイザーの最新鋭技術が詰まった、最新式ヘリ!」
「1時間も経たずにサンクトゥムタワ―に送り届けてくれる!」
何故か、物凄く嫌なフラグが立った気がする。
物凄く嫌な予感がする・・・!
窓の外に一際強い光が上がる、それと同時にシッテムの箱の電源が落ちる。
タイミングを示し合わせたかのように、ヘリの上部から黒煙が上がる。
「む・・・ヘリのメインローターが・・・」
おそらく、先ほどの銃撃戦の跳弾か流れ弾が・・・上手く当たってしまったのだろう。
メインの動力を失ったヘリコプター・・・つまり・・・
「つ・・・つまり・・・このヘリは・・・」
”つ・・・墜落する!?”
「ふふふ・・・ふざけるな!この距離から落ちたら二人ともお陀仏だぞ!?」
”どどど・・・どうしよう!シッテムの箱の電源が・・・!理事、どうにかできない!?”
「えぇい!ヘリの操作などやったことある訳がないだろう!失敗しても恨むなよ!」
どんどんと下方向へ速度を速めていくヘリ。
先ほどまで小さかったビルが、今ではこんなに大きく見える。
”お・・・落ちるっ・・・!こいつと最期を迎えるなんて絶対に嫌だぁぁぁ!?”
「こういう時くらい、どっしり構えていろ先生ッ!気が散るッ!いやっ、無理だ!不時着する!衝撃に備えろッ!」
視界の端に見えたのは、ヴァルキューレ警察学校の校章。
地面が、迫ってくる・・・迫ってきて・・・!?
”「うわぁぁぁぁぁ!?!?」”
強烈な衝撃と共に、私は意識を手放した。
カイザーPMC理事「温厚な私も我慢ならん・・・!」
PMC1「温厚・・・?」
PMC2「温厚・・・・・・?」
理事「貴様らっ・・・!コケにしよって・・・!」
先生 ”温厚・・・・・・・・・?”