ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼シャーレ裏口付近
普段見慣れた仕事場のシャーレの筈なのに、警備が多いせいか空気に緊張感が走っている。
色んな子が利用しやすいように、少し人気のない道に隣接しているシャーレの裏口。
表より警備は少ないものの、ここにもPMCが配置されている。
表の道よりも狭い分制圧射撃をされやすいので、一概にどちらが安全とも言えない。
「・・・それではシャーレ奪還作戦を開始します。各員、全力を尽くしましょう。」
「戦闘は最低限に、目標は地下のクラフトチェンバーの確保並びにリン元行政官の確保です。」
大きな爆発音が、聞こえた。
恐らくは戦車の主砲が発射された音。
つまり、カンナが陽動を始めたという事だろう。
増援の為か、裏口で警戒していたPMCの内半分ほどが入口の方へ増援に回っていく。
「陽動部隊も順調のようですね、この機に乗じて裏口から突入しましょう。」
”カンナの為にもリンちゃんの為にも、出来るだけ早く制圧しないとね。”
少しだけ待ってみたが、どうやら見張りが4人程残っている。
何とか突入までは発覚したくないところだけど・・・
”それじゃあミユと・・・”
「先生、作戦中は相手の通信の傍受のリスク等を考えてコードネームで呼んでください。」
”・・・うん。
「は・・・はい!いつでも・・・いけます・・・」
”残った見張りは
「ちぇ~つまんないの・・・了解。」
”そろそろ頃合いかな・・・それじゃあ狙撃お願い!狙撃5秒後攻撃開始で行こう。”
「りょ、了解です・・・!」
姿も見えない程遠くから、一番後ろにいた見張りのPMCの頭部を狙撃するミユ。
一言も発させることなく、敵を一人無力化する事に成功した。
腕の良いスナイパーがいると、一気に戦略の幅が広がる。
立っている事も出来ずに、膝から崩れ落ちる後衛のPMC。
前にいたPMCは後ろでいきなり何かが倒れた音がしたからか、後ろを振り返る。
そこには気を失った味方・・・困惑からか一瞬彼らの動きが止まる。
そこで・・・
「これは痛いぞ!」
無防備になった所を、ミヤコとサキが叩く。
一気に3人を落とすことに成功した。
しかし、彼らも流石にエリートと言うべきか咄嗟に状況を判断して・・・次にとった行動は。
「・・・なっ!?て、敵襲!本部に連絡を・・・!」
上に襲撃の報告、定石通りの良い一手だけど。
「・・・通信機器のハッキングに成功しました!これで誰にも通信は届きませんよ!」
こちらには電子戦では敵無しのアロナがいる、相手の通信網の遮断くらいは容易い。
相手が反撃ではなく、連絡を取った時点でミヤコとサキを止めようがない。
そのまま、ミヤコが組み付いてPMCを機能停止に追い込むことに成功した。
「・・・こんな所でしょうか。見事な指示でした、先生。このまま中に突入しましょう。」
”うん・・・リンちゃんが何処にいるのか分かればいいんだけど・・・”
「それについてはたった今、連邦生徒会のモモカさんとアユムさんから連絡がありました。今繋ぎますね・・・!」
空間にホログラムが投影されると同時に、明太子チップスを持った桃色のショートカットの女の子と、膝ほどまである金髪の真面目そうな子が映る。
「あーあー、聞こえてる?聞こえてるみたいだね、先生。こちら連邦生徒会の交通室所属、由良木モモカだよ。」
「ご無沙汰してます、先生!繋がってよかったです、どうしてもお伝えしたいことがあって・・・!」
”モモカ、アユム・・・!無事だったんだね!”
「うん。サンクトゥムタワ―の地下通信センターから通信してるんだけど・・・いやぁ、監視を避けてここまで来るのはほんと大変だったよ・・・」
「時間もないし、本題に入ろうか。リン先輩はシャーレ居住区の北部にある・・・三番目の部屋。そこにいるよ。通信ログから割り出したから間違いないはず。マップも今送信するね。」
「・・・先生。どうかリン先輩を・・・助けてあげてください。」
”うん、任せて。絶対に助けて見せるよ。”
「いつ見つかるかもわからないから・・・ここで通信を切るね、じゃあ先生。くれぐれも・・・気を付けてね。」
”うん、ありがとう!二人も気を付けてね。”
”・・・という訳みたい。とは言え敵の指揮官も倒さないとだよね。”
「ここは・・・二手に分かれましょうか。人質であるリン行政官の救出と敵指揮官の撃破。」
「人質の確保は、先生と
”ミヤコ一人で大丈夫?”
「陽動に釣られて、内部の警備も大分薄くなっているようなので問題ないと考えます。それに・・・」
「私にはバックアップしてくれる頼れる仲間がいるので、一人ではありませんよ。」
”うん、それじゃあ各自・・・目標を達成したら連絡しよう!”
「了解です、先生。それではお気をつけて。」
「・・・無理だけはするなよ、
「えぇ、自分の力量は把握しているつもりです。」
▼ミヤコ視点
シャーレの執務室に当たる場所、情報では敵の指揮官はここにいるらしい。
ドアを蹴破る形で、中に突入する。
中にいたのは、軍服を着たロボット。
「・・・なっ!どうやってここまで・・・!見張りはどうした!?」
発砲しようとして、何かを握っているのに気づいて止める。
・・・あれは、スイッチだろうか?
不自然に部屋の外にコードが伸びている。
「・・・だが、貴様らが来る事自体は想定済みだ。これが何かわかるだろう?」
「・・・爆弾のスイッチですか。」
「ご名答。この爆弾が爆発すれば、先生も、貴様らも・・・シャーレ諸共木っ端みじんだ!分かったら下がりたまえ・・・!」
爆弾の規模も、位置もわからない。
先生を巻き込みかねない以上、大人しく銃を下す。
撃ちぬく自信はあるが、万が一と言う事もある。
「貴様らが電子戦に通じているのは知っている!だからこそこの爆破装置は有線接続・・・!物理的に作動する爆弾の前ではどうしようもあるまい・・・!」
「追いつめられているせいか、随分とお喋りなんですね・・・助かります。」
「な、なにが助かるというのだ・・・!有利なのは私の方だという事が分からんのか!分かったらさっさと・・・!」
「油断してくれて助かりますという事です。」
突如として、大きな音と共にシャーレの窓ガラスが割れて日の光を反射しながら散らばる。
相手の注意をこちらに向けての、ジェネラルの起爆装置を持った手元を狙った狙撃。
追いつめられると人は視野が狭くなるというが、彼らもそうらしい。
「流石です、ミユ。」
取り落とした起爆装置を、拾おうとするカイザーPMCのジェネラル。
「なっ・・・しま・・・!」
「わざわざ拾わせると、お思いですか。」
彼の手元から3m程先にある、起爆スイッチを拾おうとしたジェネラルの手を蹴り飛ばす。
彼は悔しそうに、懐に手を伸ばそうとしたが・・・
これ以上相手のペースに乗る必要もないだろう。
RABBIT-31式短機関銃の銃口を、ジェネラルに突きつける。
「ま、待て!見逃してくれ・・・!」
「今見逃してくれれば、代わりに捕らえている行政官殿の身柄も引き渡す・・・!SRTの再設営に手を貸したって良い!ア、アビドスの借金だって帳消しにしてもらえるようプレジデントに融通してやる!」
「魅力的な提案です、先生なら生徒の安全を第一にして見逃すかもしれませんね。」
先生は絶対にリン行政官を見つけ出すという自信はあるが、万が一を嫌って先生なら生徒の安全を第一に動くかもしれない。
「あ、ああ!そうだろう!賢い者ならそうするべきだ!」
31式短機関銃のトリガーを、引く。
「あっ、ぐぁ・・・!」
そもそも彼が約束を守るようなタイプにも見えない。
それに、あまりにも自分勝手な命乞いを聞くに堪えなくなってきた所だった。
「ですが、私は先生ではないので。」
「・・・それに、
「きっと・・・そこに正義はありませんから。」
動かなくなったジェネラルを縛り上げる。
あちらも片が付いただろうか・・・?とりあえず、作戦目標を達成したので連絡を取ろう。
「先生、カイザーPMCの指揮官を鎮圧完了です。引き続き任務に当たります。」
”うん、こっちでもリンちゃんを見つけたから・・・とりあえず合流しようか。”