ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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この感情は・・・「正義感」なんて言う聞こえの良い物じゃない。


「虚妄のサンクトゥム」攻略作戦

▼アビドス校舎

 

黒いドレスの女を取り逃してから数時間後。

私は、長らく帰ってきていなかったアビドスへ帰ってきていた。

少し前にキヴォトスの回線が復旧したのと同じタイミングで、私に届いたのは一通の連絡。

 

それは、シロコちゃんが・・・砂狼シロコが行方不明になったというものだった。

 

逸る気持ちを抑えて、対策委員会の部室の扉を開ける。

部屋を開けると全員揃っている・・・私か先生を待っていたのだろうか。

 

 

『すみません、遅くなりました。』

 

「シノちゃん!」

 

『ただいま帰りました、状況は聞きましたが。』

 

「遅い!今までどこをほっつき歩いてた訳・・・って!?ボロボロじゃない!?大丈夫なの?」

 

そう言えば、急いでいて服を着替えていなかった。

皆にあまり心配させたくはなかったんだけど。

 

 

『最低限の止血はしてあるので問題ないです。それよりシロコちゃんが居なくなったって話を聞いても良いですか?』

 

「だ・・・大丈夫なわけないじゃないですか・・・!今治療するのでとりあえず座ってください!」

 

 

 

アヤネちゃんに包帯を巻いてもらいながらも、話を聞いたところによるとカイザーPMCの不審な動きを察知して、砂漠方面に向かったシロコちゃんは突如現れた「謎の光」とともに消えてしまったらしい。

 

 

「あのさ、シノちゃん。あっちでは・・・シロコちゃんは・・・」

 

『えぇ、ホシノ先輩。前話した通り・・・少なくとも私の知る限りでは「砂狼シロコ」と言う人物はアビドス高校には「存在しません」。』

 

それどころか私もユメ先輩も前のキヴォトスではその名前の生徒を聞いたことすら無い。

辛うじて聞いたことのある名前が「十六夜ノノミ」・・・ノノミちゃんだけだ。

私の知るノノミちゃんは、まるで微笑を顔に張り付けたような女の子だったし。

 

 

「そうだよね・・・シロコちゃんはね。私とノノミちゃんが拾って来たんだ。アビドスの前で倒れてるのを・・・見つけて。だからキッカケがなければ別の道を行くのかもしれない。セリカちゃんやアヤネちゃんは当時は中学生だったとして・・・ノノミちゃんもいなかったんだよね?」

 

「えぇ、「アビドスには」いませんでした。なので、シロコちゃんの所在に関して役立ちそうな情報は・・・」

 

先ほど戦った、黒いドレスの彼女。

彼女はシロコちゃんが、変容してしまったものだったのだろうか?

一瞬、嫌な想像が頭を過ぎって・・・そんな筈はないと思い返す。

 

彼女は、小鳥遊ホシノを知っていて・・・高那シノを知らないようだった。

記憶の混濁等が起きている線はあるが、そうでもなければ彼女は別人であると置いていいだろう。

 

 

「シロコちゃんと出会った当初はさ・・・冬だって言うのに随分薄着で、名前以外何も分からないって言っててさ・・・通っている学園どころか電話番号もメールアドレスもわかんないって。」

 

 

記憶喪失の線も捨て辛くなった。

でも・・・あれはまるで・・・いや、推測で物を語るべきではないだろう。

 

 

「ねえ、シノちゃん。シロコちゃんは・・・無事だよね?」

 

 

普段の気丈さも表票差も無く、消え入りそうな声で尋ねているホシノ先輩。

誰かに聞いても分かる訳がない事は彼女自身も理解はしているだろうが、何もできない現状にどうしようもなく居た堪れなくなっているのだろう。

 

私は、なんて声を掛けてあげれば良いのだろうか。

嘘でもいいから励ますべきなのか、分からないと正直に言うべきなのか。

私、私は・・・

 

 

「大丈夫だよホシノちゃん!きっと先生ならシロコちゃんを見つけてくれるはずだから!」

 

「ユメ・・・ちゃん。」

 

「そ・・・そうですよね。きっと先生なら・・・!」

 

 

タイミングよく室内に、モモトークの通知音が響く。

アヤネちゃんが内容を確認しているが・・・少しして私とユメ先輩の携帯にも通知が来た。

 

「モモトークが・・・これは先生からの・・・招集みたいです。良かった、先生は無事だったんですね。」

「どうやらアビドスのオペレーターとして私。それと・・・シノ先輩とユメ先輩に来て欲しいと書いてあります。」

 

『少しこちらでも情報を集めてみますが・・・伝えてある通り、前回と同じなら・・・あの塔を折りきらないとキヴォトスは凡そ2週間後に滅びの運命を迎えます。』

『シロコちゃんが姿を消したのも、タイミング的に今回の件の「黒幕」と全くの無関係と言うことは無いでしょう。つまり・・・』

 

「相手の出鼻を挫く必要があると。そうだよね、まずは目の前の問題から解決するしかないか。連れ去ったって事はおそらく利用価値があるって事だもんね・・・」

 

「とりあえずは3人ともいってらっしゃい。おじさんの方でも出来る事が無いか探しておくからさぁ~」

 

「そうしよっか、先生も待ってるだろうしね~シノちゃんは着替えてからにしよっか。」

 

『えぇ、それでは何か分かり次第連絡します。』

 

 

まずは着替えを取りに家に帰る事にした私。

・・・もし、もしもの話ではあるがあの黒いドレスのシロコが。

私の良く知る今まで過ごしてきたシロコちゃんだったとして。

 

 

私は引き金を・・・

 

 

 

▼シャーレ

 

シャーレにやってきた私達、着替えをしたことも立地的に遠い事もあり・・・おそらくは私達が最後だろう。緊急時なので、アヤネちゃんのヘリでシャーレのヘリポートを借りる事になったが。先生はヘリを見て引き攣った顔をしていた当たり、墜落がどうやらかなり応えたらしい。私もヘリが堕ちるとは思ってはいなかった。

 

それともう一人、良く見知った顔が出迎えてくれた。

 

”お疲れ様、みんな。”

 

「お待ちしていました♡・・・えっと、怪我は大丈夫なんですか?」

 

『大丈夫です、ハナコさん。掠り傷ですから。』

 

「何時見ても傷だらけな気がしますが・・・偶には健康的な太ももを見せてくださいね?」

 

『善処しますね。』

 

 

「・・・貴方が傷つくと、悲しむ人がいるという事を忘れないでくださいね。」

 

 

いつもよりワントーン低く諭すような声で呟かれた言葉。

心配させてしまったことに申し訳なさを感じる。

 

 

『すみま・・・いえ。ありがとうございます、それじゃあ行きましょうか。』

 

 

会議室に向かうと、ミレニアムサイエンススクールの早瀬ユウカやゲヘナの天雨アコといった錚々たる顔振れが揃っている。それとあれは・・・便利屋の鬼方カヨコか。確かに優秀な生徒だとは聞いたことがある。大将のお店を爆破した・・・便利屋。大将が気にしないでくれとは言っていたものの・・・いや、私が何か言うというのはそれこそお門違いだろう。

 

「お久しぶりです、シノさん。これでゲヘナ・トリニティ・ミレニアム・アビドスの代表者が揃ったという訳ですね。」

 

「あの・・・リン代行?アビドスだけ人数が多くないですか?それにあの天狗のお面の子は・・・?」

 

「ユウカさん、アビドスの代表はアヤネさんです。それと、今は行政官として権限はありませんのでリンで結構です。」

「彼女は高那シノさんと梔子ユメさん。今回の件に当たり情報を持っているとの事で同席して頂くことにしました。」

 

 

「なっ・・・!?梔子ユメ・・・!?あり得ません・・・!」

 

案の定、突っ込まれるか。

今の三年なら、いや・・・2年生でも情報を集めているところなら彼女の名前くらいは聞いたことがあるだろう。

 

『それは今回の主題から離れるので、今は飲み込んではいただけませんか?天雨アコさん。』

 

「あれ、アコちゃんって言うの?どっかで会ったっけ?」

 

「い・・・いえ、そう言う事ならわかりました。私も今日は行政官としてではなくゲヘナの代表として来ているので。委員長の顔に泥を塗る訳にはいきません。」

 

「・・・それを言うなら万魔殿じゃないの?」

 

「誰があんなタヌキ共の代理で・・・」

 

 

全員の軽い自己紹介を終えて、会議が始まろうとしている、

このキヴォトスの命運をかけた戦いの為の会議が。

 

”それじゃあ、会議を始めようか。あ・・・ちょっと待っててね、今プロジェクター持ってくるから。”

 

「私お手伝いします。何処に置いてるんですか?」

 

”助かるよ、ユウカ。えっとね・・・”

 

 

そう言って着々と会議の準備が進んでいく。

それに対して、何とも言えない表情をしているリン・・・元行政官。

 

「・・・先生がいると、こうもスムーズに事が進む物なのですね。」

 

確かに、違う学校の生徒がこうも手を取り合って進めるというのは・・・とても珍しい事だと思う。少なくとも私達にはできなかった。いや・・・しようとしなかったとも言えるかもしれない。

 

 

会議の進行は、リンさんが執ってくれるらしい。

私としても、殆ど関わりのない人達なので、どう反応を取っていいのか分からないので助かる。

 

 

「結論から、申し上げます。」

「あの、七本の塔を二週間以内に破壊しなければ・・・キヴォトスは崩壊します。」

 

「・・・詳しく伺ってもいいかしら。」

 

「あの塔は、高濃度のエネルギーを持った偽物のサンクトゥムタワー・・・対策室はあれを「虚妄のサンクトゥム」と命名しました。」

 

「・・・でも、誰が一体何のために?」

 

「それに関しては、シノちゃ・・・シノさんの証言をシスターフッドとティーパーティで裏付けが取れています。今起きているこの事象は・・・「色彩」と呼ばれる存在がこのキヴォトスに足を踏み入れた故に引き起こされた現象。」

 

「つまるところ我々の敵は、「色彩」。人々を狂気に陥れる光と”それ”が引き起こす現象・・・と言う事になると。」

 

「確かに、エンジニア部の調査でもあの光が何らかの精神異常を引き起こすという解析結果は出ていたけど・・・俄かには信じがたいわね・・・」

 

 

『具体的には、今から凡そ300時間後・・・「色彩」の黒い光はまるで太陽のようにこのキヴォトスに降り注ぎ・・・全てを崩壊させます。』

 

「それを防ぐために7本の塔を破壊する・・・シンプルな話ですね。」

 

「現状塔が確認されているのは、アビドス砂漠、DU近郊の廃墟化した遊園地、ミレニアム郊外の閉鎖地域、トリニティとゲヘナの境界付近、ミレニアム近郊の新しい都市、D.U.の中心地店。そして・・・アリウス自治区。」

 

「アリウスにもあるんですね・・・」

 

「えぇ、そしてD.U.とアリウスにあるエネルギー体が一番大きいので他の5つから処理する・・・筈でしたが。」

 

『アリウスの塔を早く処理するべきでしょう。あれは、長期戦になればなるほど難しいので。』

 

「・・・との事なので、アリウスの塔を攻撃。と同時に各自治体の塔を破壊する多方面作戦を展開する予定です。」

 

「長期戦・・・?塔を破壊するだけの話ですよね?」

 

 

突如として、車椅子に乗った白い髪の少女のホログラムが投影される。

先ほどまでデータを表示していた・・・持ってきたばかりのプロジェクターから。

シャーレのセキュリティ、結構穴があるのだろうか。

 

「それが・・・そう簡単なお話でもないみたいですよ。」

 

「ひ・・・ヒマリ先輩?」

 

「えぇ、この病弱天才美少女ハッカーの私とエイミで調べた所・・・」

 

 

『塔を守護する存在がいるんですよね。どれも面倒くさい「特性」を保持しているんですが。』

『私の知る限りでの情報を資料化してあるので、ご確認ください。』

 

 

「あ・・・あの!?ここは私の決め台詞だったのですが・・・!?」

「と・・・と言うか、何処からその情報を・・・?情報戦でこの私の上を行こうというのですか。面白くなってきました・・・」

 

「部長、どうでもいいけど早くデータを確認しなよ。」

 

 

 

『私の知る限りではアビドスにいる大きな蛇のような巨体・・・「ビナー」。先日、トリニティで観測された聖職者のような怪物「ヒエロニムス」。遊園地のミューズドール「シロ&クロ」。ミレニアム近郊の兵器工場「ケセド」。』

 

『・・・そして、アリウスの地下に根を張る「墓のような怪物。」』

 

「一体、抜けていますね。そこにデカグラマトンの8番目の預言者・・・「ホド」を加えた6体の怪物がタワーを守っています。D.U.を守護する怪物に関してはその姿が確認できていませんが・・・」

 

 

「つまりそれを倒して、塔を破壊すればいいという事ですね。」

 

”うん、そう言う事だね。”

 

 

「治安維持に努めることも考えると・・・動かせる人数はそう多くはありません。なので・・・何処も少数精鋭の運用が基本になるかと。」

 

「私達に残された時間は、14日と23時間。これが我々に残された時間となります。」

 

”大変だと思うけど・・・私達なら、きっと乗り越えられると信じてるよ!”

 

「それではこれより―――「虚妄のサンクトゥム」攻略作戦を始めます。」

 




シノ『わざわざ出迎えて頂いてありがとうございます。でもどうして・・・先生だけでも道案内は出来るとは思うんですが。』
ハナコ「それはですね・・・」
シノ『それは・・・?』
ハナコ「あの・・・私だけ集まられたメンバーで場違い感が凄いというか・・・皆さん「お堅い」と言いますか・・・」
シノ『知り合いがいなくて、居心地が悪かったって言う事ですか・・・?』
ハナコ「まあ、端的に言えば・・・」

シノ『可愛い所・・・あるんですね。』
ハナコ「い・・・言わないでください!」
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