ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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―――主よ、憐れみたまえ。


憐みの賛歌

▼アリウス・カタコンベ内

 

動き出した「虚妄のサンクトゥム」攻略戦。

 

ミレニアム郊外の「ケセド」討伐には、C&Cと正義実現委員会とレッドウィンターが。

遊園地の「シロ&クロ」討伐にはゲーム開発部とRABBIT小隊が。

トリニティの「ヒエロニムス」討伐には、シスターフッドと風紀委員会が。

ミレニアム近郊の都市の「ホド」討伐にはミレニアム全体と温泉開発部が当てられた。

 

そして「ビナー」の討伐には、ホシノ先輩と私を除いたアビドスのメンバー。

そして便利屋68のメンバーが向かうという話だ。

 

そんな中、アリウスのタワーへと一足先に向かったのは・・・

 

 

『そろそろカタコンベを抜けて、アリウス自治区に突入します。ここからは相手の掌の上と言っても過言ではないです。準備は大丈夫ですか、皆さん?』

 

 

「うへ~久しぶりにフル装備だからちょっと疲れたな・・・もちろん準備は何時でも大丈夫だよ。こんな場所で気を抜く程・・・おじさんも肝が座ってないんだよね。」

 

いつもとは違い、大きな盾にアーマーを装備したホシノ先輩。

 

 

「・・・確かに、アリウスの案内役が必要だという意見は分かるが。本当に私に背中を任せていいのか?」

 

『道案内もそうですが戦力に期待してます。それに裏切るつもりは無いんですよね?ならそれでいいんじゃないですか?』

 

戦闘場所がアリウスと言う事もあって、アリウスに詳しく戦闘の勘が良いアリウススクワッドのリーダーサオリ。

 

 

「・・・戦力としては過剰も良い所ね。話を聞く限り判断は妥当だとは思うけれど。」

 

「風紀委員長ちゃんもいるなら、おじさんも安心だなぁ。」

 

ゲヘナの風紀委員長ヒナちゃん。

 

 

アビドスの小鳥遊ホシノ・ゲヘナの空崎ヒナ・アリウススクワッドの錠前サオリ・・・そして、私。

 

 

”それじゃあ、行こうか。”

 

 

そこに、指揮の「先生」を加えた5人が今回のアリウスの虚妄のサンクトゥム及び、その守護者の攻撃メンバーだ。

戦力過剰に見えるかもしれないが、用心するに越したことはないだろう。

なにせ・・・”あれ”は。

 

 

唯一、私が「敗北した」守護者なのだから。

 

 

 

カタコンベを抜けると、聞こえてくる何処か歪なKyrie(キリエ)

胃液が喉元までこみ上げるのを必死に抑える、銃を持つ手が震える。

大丈夫、前ほど状況は悪くない。勝てる・・・はずだ。

だからこれはきっと、恐怖から来るものではなく・・・武者震いのはず。

だって・・・恐れは動きを殺すから。

精細さを欠いた行動は敗北を招くから。

 

 

「大丈夫そ?酷い顔だけど。」

 

『そんなに、分かりやすい顔してましたか・・・?』

 

天狗の仮面をつけているというのに、それを介さず私の心配をしてくれる。

心配は有難いが、そんなに分かりやすい顔をしているだろうか。

 

 

「あのさ、此処で何があったか・・・詳しくは聞いてないけどさ。あんまり、一人で背負いすぎないでもいいんだよ?私も・・・それに、先生もいるんだからさ。」

 

 

『そう、ですね。私は一人じゃ・・・ない。』

 

 

だからこそ・・・怖い。

 

そうか、私は負ける事が怖いんじゃなかった。

「失う」事が怖かったんだ。

大切な仲間を、友達を・・・先生を・・・

 

でも、此処で勝てなければ・・・どの道キヴォトスは終焉の路を迎える。

だから、誰の犠牲も出さずに勝つ。

その為なら、どんな道だって進んでみせる。

覚悟は・・・決まった。

 

 

『お手数をおかけしました、ホシノ先輩。行きましょうか。』

 

「うん、そうしよっか。」

 

 

 

▼第一サンクトゥム「守護者・ビナー」付近

 

 

「・・・見えました!あれが、第一サンクトゥムとその守護者・・・「ビナー」です!」

 

「改めてみると、すっごい大きいわね・・・」

 

 

「なんてことは無いわ、私達が手を組めば最強・・・そうでしょう、小鳥遊ホシノ?」

 

「ア・・・アル様・・・ホシノさんは別動隊として動いているので此処にはいません・・・」

 

「も・・・勿論知っているわ!今のは・・・そう、試しただけよ!良く情報を集めているわねハルカ。」

 

「こ・・・光栄です!アル様!」

 

 

「・・・本当に大丈夫なのよね?」

 

「うう・・・ホシノちゃん程頼りにはならないけど・・・危ない攻撃は全部防いで見せるから任せてよ!」

 

「あの・・・ユメ先輩?銃もホルダーも見当たらないように見えますが・・・」

 

「ユメ先輩は防御だけに専念した方が強いって言われたから・・・置いてきた!」

 

「せめてハンドガンくらいは持ちなさいよ!?」

 

「えへへ、冗談だよ。懐には入れてるけど・・・両手で盾を持つ以上・・・おそらく使わないんじゃないかな。」

 

「全くもう・・・ノノミ先輩も何か言ってあげてよね。」

 

 

心ここにあらず、と言った様子で今回の作戦の要とも言える鉄道列車を見ていたノノミちゃん。

 

 

「えっ?あ、あぁ・・・そうですね☆」

 

「今見てらっしゃったのは・・・列車・・・ですよね?何か思い入れが・・・?」

 

「いえ、むしろ逆なんです。そこの列車こそが・・・アビドスの衰退に拍車をかけたものですから・・・それがアビドスを、キヴォトスを救う一手になるんだと思ってですね。」

 

 

「ノノミちゃん、あのね・・・ノノミちゃんは悪くないと思うよ。あくまでこれはネフティスのお偉いさんが下した決断だし。それに「あの鉄道が上手くいった未来」だってあったんだから。」

 

「ユメ先輩・・・」

 

「あっ、あんまりこの話しない方が良いんだよね。ごめんね・・・」

 

「いえ、良いんです。私自身が向き合わないといけない事ですから。」

 

 

どんどんと、ビナーとの距離が近くなる。

 

 

「そろそろ・・・作戦区域に入ります、皆さん準備は大丈夫ですか?」

 

 

「くふふ、こっちはいつでも大丈夫だよメガネちゃん!」

 

「それでは、ビナー攻略作戦・・・開始します!」

 

 

 

 

 

▼アリウス自治区・バシリカ前

 

 

「でも大丈夫かな・・・アビドスの皆。あっちも強敵なんでしょ?」

 

『問題ないと思いますよ。確かに「ビナー」は強力ですし・・・ユメ先輩の攻撃力は貧弱も貧弱。どころか、誰かを傷つける事に対して非常に強い抵抗感を感じています。』

 

『秘めた神秘も多いわけじゃない、「硬さ」と言う観点ではヒナちゃんに到底敵わないですし・・・「回復力」と言う観点では正実のツルギの足元にも及びません。ですが・・・』

 

 

『梔子ユメは間違いなく、最も優秀な「シールドマン」です。誰かを守る事に・・・彼女以上に秀でている人間は・・・居ないと言って良い。』

 

 

『正直これだけのメンバーをそろえても、こちらの方が不安な位です。本当はユメ先輩をこちらに持ってきても良いんですが・・・相性が悪いんです、根本的に。』

 

・・・それは、私にも言えることかもしれないが。

 

 

「そう?ならあっちは皆を信じて、おじさんも気張っていくとするか~」

 

「まもなく、作戦区域に入る。ポイントマンは私が務めよう。」

 

”フロントはホシノが。メイン火力としてヒナ。シノは臨機応変に動かすけど・・・私の指示についてこれる?”

 

 

普段とは、随分と違って挑戦的な物言いをする先生。

おそらくは、緊張気味な私を気遣ってくれたのだろう。

 

 

『誰にモノを言ってるんですか。私の”視える”世界に置いていかれないでくださいよ、先生。』

 

 

”よし、それじゃあ突撃・・・の前に。名前とかどうする?”

 

「うへ~今更・・・?」

 

「第7サンクトゥム攻略部隊・・・はどうだろうか。」

 

「・・・少し、長いわね。」

 

”7番と言いつつ、一番最初の決戦なんだよね・・・?ならさ・・・だ・・・第0分隊・・・いや、第零分隊とかどうかな・・・!”

 

 

『それで良いですけど・・・本当にそう言うのお好きですね。』

 

「先生が気に入ったなら、私もそれでいい。」

 

「お、おじさんはちょっと恥ずかしいかな〜」

 

 

AH(アーマードホシノ)分隊でも良いよ。”

 

「だ・・・第零分隊がいいと思うな~!うん、それがいいと思う!」

 

 

 

「全く・・・先生はこんな時でも変わらないんだな。見ていて安心する。」

 

”それ・・・褒めてるんだよね?ま、まあ・・・ここからは何が起こるか分からないから気を引き締めていこうか。それじゃあ・・・第零分隊・・・進行開始!”

 

 

バシリカの内部に歩を進める私達、前来た時よりも荒廃していて・・・

聞こえる歪なキリエと赤い塔が相まって、一層不気味さを感じさせる。

 

大きな朱い塔の前に立っている、真っ黒な墓とまるでヘイローのような沢山の光輪。

神を崇めるはずの、教会と讃美歌を異質に染め上げる異物。

 

その大きな墓の前には、人影が見える。

あれが奴の、能力の一つ。

”自身”を構成する「犠牲者」の一つを使った”幻影”を見せる事。

 

 

 

「対象を発見、足元にいるのは・・・そう言う事か。聞いてはいたが悪趣味だな。」

 

 

アリウスの生徒らしき子が、何かをするわけでもなく・・・ただ、ぼうっと立っている。

 

 

『サオリさん。一応、聞いておきますが・・・』

「問題ない、彼女とは何度か話した事はあるが・・・まだ我を失う程ではない。」

 

 

「・・・とは言え、腸が煮えくり返りそうだ。予め聞いていなければ危なかっただろう。」

 

確かに彼女の苛立ちを感じる。

知り合いの姿がああも利用されていれば、良い気持ちはしないだろう。

 

そんな中でフラフラと立っている彼女の・・・帽子がパタリと地面にずり落ちて音を立てる・・・音を立てる?

 

 

『・・・妙ですね。』

「何が・・・?」

 

 

すっかり・・・簡単な事を忘れていた、私達が対策をするように―――

 

 

 

 

 

『ッ!?彼女、幻影なんかじゃありません・・・生きてます!』

 

”シノ・・・っ!”

 

 

 

 

 

―――彼等もまた、私達を対策している事に。

 

 

 

 

最善はここで静観する事、手段を選ぶべきじゃなかった。

それでも、居ても立っても居られなかった。

 

勢いよく飛び出した私と時を同じくして・・・地面が割れていく。

 

・・・悪意がその口をゆっくりと開く。

 

 

 

 

 

 

第七サンクトゥム・守護者Victim」。

語られなかった者たちが今・・・私達にその牙を剝く。




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更新告知とか小ネタのまとめとかするかもなのでよければ見てってね。

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