ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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何かを得るためには、同等の代価が必要になる


契約

「お名前は、どうお呼びすればよいでしょうか。」

 

『・・・シノでいい。』

 

「シノ・・・シノ・・・そうですか・・・」

「私の知る限りではそのような生徒はこのキヴォトスに存在しないのですが」

「その様な事は、些事でしょう。」

「それで、どうやってここを?誰かから聞いたのでしょうか。はたまた偶然か・・・」

 

『本題に入ってもいいかな。』

 

あまり、情報を与えるべきではない

そういう戦いは彼の方が上手(うわて)なのだから

 

「おや、どうやらお急ぎの御様子。これは失礼しました。」

 

『これを渡してほしい、って』

 

そういって彼に一枚の手紙と真っ黒なスーツケースを渡す

 

「それは、誰から・・・いや・・・ふむ、拝見させていただきましょうか。」

 

 

 

彼は手紙を読んだ後、スーツケースを開かずに暫く立ち尽くしていた

まるで何かを迷うかのように

 

「クックック。成程、成程。合点がいきました。」

「それにこの用意周到さ。どうやら別世界から来たというのは嘘でも酔狂でもないらしい」

 

『・・・開けないの?』

 

「おや、中身は見ていないのですね。」

 

「どうやら、こちらは貴方宛の物のようです。」

「そちらのペンダントに関わるものだと。」

 

・・・私に?

 

 

暫くして、彼は顔を上げる。

顎に手を当てて何かを考える素振りをした後

 

「計画に支障が出るかもしれませんが、まあ、致し方ない事でしょう。」

 

そういって彼は渡した紙に、どこかから出したペンで何かを書き始める

 

 

「ふむ、これでいいでしょう。」

「小鳥遊・・・いえ、高那シノ。私は貴方と梔子ユメに敵対しないことを、ここに誓いましょう」

 

『うん、そう言うまでは発言は最小限に留めるように聞いてる。』

 

「えぇ、えぇ。これで契約は為されました。」

 

 

緊張からか、部屋にある時計の音が・・・やけに大きく聞こえる

 

 

「ただ少しお時間を頂きたい、今飲み物をお持ちしましょう。」

 

「珈琲か紅茶・・・どちらがお好みでしょうか?」

 

閉まっていたスーツケースは、いつの間にか開いていた。

 

 

 

 

意外かもしれないけど、私はコーヒーをよく飲む

理由は今は二つあるけど、内一つはこいつ・・・

いや、元の世界の黒服、か

彼が顔を出す度に出してきたからに他ならない

 

まあ、味の違いなんて分かりはしないが

 

 

 

 

「これは、これは。これはこれはこれは。クックックックッ」

「「神秘」とその事象に対する理解。「神秘」の増幅。どれも素晴らしい。」

「成程、成程。小鳥遊ホシノが協力してくれればここまで話は劇的に進むものなのですか。」

 

「惜しい事をしました。」

 

「・・・「欲しい」ですね。」

 

何時になく上機嫌だな、釘は射しておく必要があるか

 

『言っておくけど』

 

「わかっていますとも、アビドス廃校対策委員会2年所属、高那シノさん。」

「あちらに倣って、「完璧な副生徒会長」「有明のホルス」とでも呼んだ方が良いでしょうか。」

 

「貴方の所属するアビドスに手を出すとなると、確かに、敵対行為と取られても仕方ない事です」

 

「ですが、この契約の主題はあくまで、私。」

 

「他のゲマトリアが行動する事を、私は止める術を持ちませんので。」

 

「何より我々は同志ではあるものの・・・手法に関しては各々の裁量次第というところ。」

「あるいは最初から、このあたりが契約の「落としどころ」だったのでしょう。」

 

やり辛い、舌戦となると分が悪いのは理解していたが

 

『・・・こっちでは、シノで通してるから。シノでいい。』

 

 

「ええ、それに先生と敵対することになりますから。」

 

「現状でも敵対関係にある、と言えばそうなりますが・・・」

 

「其れは我々としても、好ましいものではない。」

 

 

 

あれから、暫くして。ようやくこちらに顔を向ける。

 

「大変お待たせいたしました。残りは後でゆっくり確認させていただきます。」

 

「それで残っていただけているということは、まだ何か要件があるという事でしょうか。」

 

 

 

 

 

『単刀直入に言わせてもらおうかな、私を買うなら幾らまで出す?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまるところ貴方という武力を買うなら幾らまで出す、という話でしたか。」

 

『今、実験体として協力するなんて言う選択肢は、まあ有り得ないね。』

 

「おや、心外ですね。」

「貴方を手に入れるためならアビドスの借金位は肩代わりする準備があるのですが。」

 

『胸に手を当てて考えてみてほしい。』

 

「ふむ、気が変わったらお知らせください。にしても直接的な武力は・・・」

「ふむ、特に今の所必要とはしてはいないのですが・・・」

 

 

「いえ、ありましたね、二つほど。」

 

 

 

 

 

 

▼DU某所

 

彼が提示した条件は二つ、一つは・・・とあるタイミングで彼の護衛として動く事。

これには他の「ゲマトリア」は含まれていない

 

そしてもう一つは、1月程前に行われたアビドスの事件で生まれた

「先生との確執」を少しでも埋める為に・・・

まぁ、有り体に言えば「恩を売りたい」との事

「あの方とは、仲間となり、互いに競い合える」らしい

 

1.ゲマトリアとして 2.黒服からの恩と認識できるように 3.武力を提供する

 

この三つを守って行動する事に報酬を発生させてくれるらしいが・・・

 

『ねえ、本当にやんなきゃダメなの?その、かなり嫌なんだけど。』

 

「おや、契約は為された。報酬は支払ったはずですよ?」

「それに、正体を晒したくないとおっしゃられていたのは貴方では?」

 

『それは、そうなんだけど・・・』

 

「なに、PMCの真似事です、何ら問題は無いでしょう。」

 

 

なるようになるか、これも皆のためだから

 

 

 

 

その日は、丸い月がよく見える夜の事で

 

『やぁ、今日は良い月だね。先生』

 

"そんな良い夜に、誰なのかな?"

 

いつの間にか窓の緑に座っていた真っ白なドレスを着た、彼女・・・だろうか

声と顔にノイズが走っていて認識することができない

 

『ふふっ、ゲマトリア・・・と言えば通じるかな?』

 

"・・・君は"

 

『私の名前は、そうだな「白鷹(しろたか)」とでも呼んでほしい。いやいやそう身構えないでくれよ』

『私がここに来たのは黒服、強いては貴方の為に他ならないんだから』

 

"生徒を傷つけるような奴らとは、分かり合えないから"

 

 

 

『なら、大人のカードでも使って追い払うかい?』

 

"・・・"

 

 

『力という観点では全てを解決し得る。銀の弾丸(シルバーバレット)。』

『当然、奇跡のようなそれには代償が付き纏う。』

 

"私は、生徒を守るためなら。使い渋るつもりはないよ。"

 

『話に聞いた通りのお方だ、何とも、まあ素晴らしい。』

 

『先生』

 

 

 

『私なら、力になれる。初回は彼の「誠意」のようなものだと思ってくれればいい。』

 

"その必要は・・・"

 

『無い。本当にそう言い切れるのかい?それで救える生徒がいるかもしれないというのに。』

 

"・・・"

 

 

『私を呼びたいときは、それを翳せばいい。貴方の持つその「カード」と同じように、ね、』

 

いつの間にか目の前に迫っていた

彼女の眼はまるで私を見通すようで

 

『また会えることを楽しみにしてるよ、センセイ?』

 

 

 

そういって、白鷹と名乗った彼女は、窓から暗闇へとその姿を消した

いつの間にか懐には無地の白いカードが一枚

そのカードを私は、捨てられずにいた




黒服「クックックッ、渋っていた割には随分と堂に入った演技でしたが。」
シノ『五月蠅い。報酬には期待してるから。』
シノ『それで・・・何を要求するつもりなの?あまり無関係の人を傷つけるような内容なら』
黒服「ゲマトリアに勧誘する機会を頂ければ十分です。」
  「つまるところ・・・お出かけにでも誘おうかと」

↓正直この小説に求めてるものって↓

  • ストーリー(シリアス)
  • 日常
  • バランス
  • その他(コメントまでどうぞ)
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