ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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どうして、私はヒーローに憧れたんだっけ。


決戦!ペロロジラ? 後編

▼D.U.オフィス街 カイテンレッド視点

 

上空のヘリ・・・おそらくはクロノスの報道部らしき褐色肌の少女がこちらに指をさしてマイクに向かって喋り続けている。

 

我々の雄姿を全国へ広める手伝いをしてくれるというのか・・・!

 

 

「あ、あの!悪名高い指名手配犯!カイテンジャーが、突如現れた巨大なペロロのような怪獣と戦闘を始めました!一体キヴォトスはどうなってしまうのでしょう!」

 

 

にしても、先ほどのキック。

勢いがついていたとはいえ、物凄い跳躍力と破壊力だった。

 

 

「すごいパワーだな・・・我々が作ったMk.1に比べても10倍以上の出力・・・!」

 

「当然だろう、我々より使える技術もコストも断然上・・・!ふふっ、素晴らしいな・・・!」

 

「今日も成果給ですよね?時間も限られていますし、時短で決めましょう。」

 

先制で綺麗な蹴りを決め、順調な滑り出しとなったペロロジラとの戦い。

しかし、相手もやられるばかりでは無い。

 

 

その巨体でもって、我々を押しつぶそうとタックルを仕掛けてくる。

確かに、元のカイテンロボならば一溜まりも無かったのだろうが・・・

 

 

「力比べがお望みという訳か・・・!受けて立とうではないか!」

 

 

カイテンロボの両の手で、突進してきたペロロジラを受け止める。

衝撃で機体が揺れるが・・・この程度で、我々の歩みを止める事は出来ない・・・!

 

ペロロジラを押し返すことに成功する、全体重の行き場を無くして・・・その場によろめくペロロジラ。

 

「行くぞ、ピンク!」

「この機は逃さない!喰らいなさい、SUPER海老マシンガン∞・・・!」

 

右の腕部に取り付けられた海老が開き、大きな機関銃がその姿を現す。

体勢を崩して身動きの取れないペロロジラに、マシンガンの連射が突き刺さる・・・!

 

ズドドドドという地響きのような弾丸の嵐の前に、後退し続けるペロロジラ。

やがて、先ほど吹き飛ばされたビルまで押し戻される形になる。

 

 

「決めるぞ!カイテン―――」

 

器用に片足で姿勢を制御しつつ、遠心力を加えた強烈な回し蹴りがペロロジラに突き刺さる。

 

「―――ウナキック!!」

 

 

大きな倒壊音と共に、ペロロジラはビルを突き抜けて交差点の真ん中に倒れこむ。

そのまま追撃を決めようとして、ペロロジラの様子がおかしい事に気づいて接近を止める。

 

 

「ペロロ様ァ!?あ・・・えっと、違くて。その・・・見た目の割に強いですね、彼ら・・・このままならきっと・・・!」

 

「ヒフミ・・・」

 

『アズサちゃん、本人に悪気はないと思うので今回は不問としましょう・・・』

 

 

 

その直後、怪しく光ったペロロジラの目から放たれた3発の光条・・・!

回避は・・・間に合わない。

しかし、左手のシールドが緑色の光を放つ・・・!

皿シールドによって、ビームは遥か上空へ飛んでいく。

 

 

「流石はグリーンだ!抜け目がないな!」

 

「成果表には記載しておいてくださいね。」

 

「・・・そこもまた、抜け目がないな。」

 

 

厄介な、ビーム攻撃は直撃を受ければ大ダメージは免れないだろう。

奴の目元には十分に注意しておく必要がある。

 

 

一通りの攻防を終えて、確信する。

機体性能も戦略も我々の方が上。

その上こちらは五人のメンバーがお互いに足りない部分をカバーすることが出来る。

 

我ら五人の力を合わせれば、正しく向かう所敵なし。

 

 

「押している・・!この調子で勝つぞ、皆!」

 

 

カイテンジャーの皆と一丸になって巨大ロボットに乗り、倒すべき悪を打倒する・・・

小さい頃からずっと夢見てきたスーパーヒーローになれた事が凄く嬉しい。

 

 

・・・それでも、何処か満ち足りない気持ちがあるのは・・・どうしてなんだろうか。

小さい穴が開いたような。

大きくなって純粋に物語を楽しめなくなった、あの時のような気持ち。

 

 

 

 

「そろそろ3分だ・・・!決めるぞ皆!」

 

必殺技の為に、お互いに立ち止まって牽制し合う形で止まった戦況。

エネルギーの奔流が、視認できるレベルまで高まって大きな風が吹き始める。

相手もここで決めるつもりなのだろう、瞳から目映いばかりの極光が漏れ出ている。

 

 

「行くぞ・・・必殺!無限回転・・・」

 

「レッドッ!」

 

 

突如として虚空から現れたのは黒色の・・・二体目の怪物。

 

その下には、避難し損ねたのだろう。

クマの人形を握りしめた・・・小さな子供がいた。

 

 

どうする事が正しいかなんて、分かってる。

分かってる・・・筈だ。

 

 

 

 

 

だから、分かっている。

今から行おうとしていることが・・・正しくない事も。

 

 

 

渾身の必殺技を・・・二体目の怪獣に向けて放つ。

大きな閃光と共に、怪獣は吹き飛ばされて・・・

彼女は、下敷きにならずに済んだようだ。

 

 

ただ、”それ”は無防備にペロロジラの攻撃を受ける事を意味している。

放たれた二条の雷撃が・・・私達を捉える。

 

 

「ぐっ・・・がぁ・・・!」

 

 

機体が制御を失う・・・おそらくは時間切れ。

身体に流れる強い電撃によって・・・私達は意識を手放した。

 

 

 

▼D.U.のオフィス街にて

 

 

燃え盛る街を、一台のヘリが飛んでいる。

側面には、クロノスジャーナリズムスクールのロゴ。

このキヴォトスにおける、学生が運営する報道に特化した学園のモノ。

 

 

「た・・・大変です!おそらくは少女を庇おうとして・・・カイテンロボが大破・・・!これでは戦闘は厳しいでしょうか・・・!?何ですか?逃げるべき・・・?いえ、我々は此処でこの戦いを皆様にお届けする・・・義務があります!」

 

 

倒れ伏した、カイテンロボからは黒煙が上がっている。

先ほどの電撃で蒸し焼きになっていなければ良いのだが・・・

いつ爆発してもおかしくない、早急な救助が必要だろう。

とは言え、二体の怪獣も対処しなければならない。

 

 

それにしても突如として飛来した、二体目のペロロジラ・・・

いや、真っ黒に染まった合金の身体。

あれは・・・まるで・・・

 

 

「幻のメカペロロジラ様ですか・・・!?で・・・伝説には聞いたことがありましたが・・・!こんなタイミングでもなければ素直に喜べたのですが・・・!」

 

 

インカム越しに通信が聞こえる。

先生や、サポーターの皆が必死に呼びかけているが・・・

彼らの反応は、無い。

 

 

「これで、三分。これ以上は戦闘の継続が不可能・・・それどころか、いつ爆発してもおかしくない。今すぐ、そこから退避して・・・カイテンジャー!」

 

”お願い、カイテンジャー・・・!返事をして・・・!”

 

 

ペロロジラとメカペロロジラは破損したカイテンロボを尻目に争いを続ける。

どうやら幸運にも、あれらは仲間という訳ではないのだろう。

しかし、その戦いの余波で街はどんどんと崩れていく。

 

 

 

「怪獣とヒーロー・・・英雄劇の「テクスト」を打ち破るべく・・・相手方も策を講じていたという訳ですか。確かに、怪獣vs怪獣の「物語」に人の持つ防衛機構が敗れるのはもはや・・・お決まりのテンプレートとも言えますからね。」

 

 

 

「これは・・・ここで結末でしょうか・・・おや。」

 

 

 

▼???

 

何かが燃えているようで、身体が酷く熱い。

何か、幸せな夢を見ていた気がする。

このまま、何もしなければまた・・・夢の続きを見れるのかな。

 

そう思って意識を手放しかけたその時、何かが聞こえた。

 

 

 

「―――ないで!」

 

声が、聞こえたんだ。

 

 

「――けないで!!!」

 

誰かの声が―――聞こえる。

 

 

 

「我々も、応援しましょう!テレビの前の・・・貴方も!」

「私達にも・・・彼らを信じて応援する事は出来ます!その気持ちは・・・きっと届く筈です!」

 

 

 

 

「「「負けないで!カイテンジャー!!!」」」

 

―――助けを求める、彼らの声が聞こえる。

 

 

 

「・・・これは、キヴォトスのみんなの声。」

 

 

 

 

 

非常な現実として・・・気持ちや気概だけで敵は倒せない。

まして、気持ちが強い方が勝つなんて言うのはまさに・・・夢物語。

 

 

 

 

 

『負けないでください・・・カイテンジャー!』

 

 

 

 

 

・・・ただ、折れた心に火をつけるには。

そして、彼らが立ち上がるには十分すぎた。

 

 

―――足は動く。

だから、また立ち上がれる。

 

―――腕が動く。

だから、銃を握れる。

 

―――頭だって働く。

だから、作戦を考えられる。

 

だから・・・これくらいの事は諦める理由にはならない。

 

 

「まだ・・・!」

「レッド・・・!そうだよね・・・!」

 

 

 

「「「「「まだ私達の「物語」は終わってなんかいない!」」」」」

 

 

そんな時、壊れかけたカイテンロボの目が黄色く光った・・・気がした。

 

そうか・・・

 

「カイテンロボ、お前もまだ・・・諦めたくないんだな。」

 

 

 

 

 

「・・・成程、そういったテクストですか。あまり私好みな解釈ではありませんが。」

「まあ、偶にはこういう「試み」も面白いでしょう。」

「そういうこったぁ!」

 

 

 

 

形の無いはずの声援が、いつの間にか小さな淡い光になって壊れかけの機体に集まっていく。

最初はか細い光だったそれは・・・いつの間にか空を覆いつくすほどに大きな光の川となった。

 

 

 

「応えてくれ・・・カイテンロボッ!!!」

 

 

 

呼応するかのように突如として光と共に現れた、金色のレバー。

当然、そんな機能はこのカイテンロボに付けた覚えもなかった。

それでも、不思議と自分が何をすればいいのか・・・私達には分かった。

 

 

「この星の未来は・・・!」

「青春の物語は・・・!」

 

「「「「「私達が守るッ!!!」」」」」

 

 

勢いよく、レバーを引く。

それと共に機体が黄金色の光に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時感じた、違和感。

”満ち足りない気持ちの正体”が、今更ながらにして分かった。

私達は五人で戦っているわけじゃ無かったんだ。

 

ロボの製作に力を貸してくれた、ミレニアムの生徒達。

避難誘導をして場を整えてくれた、生徒の皆。

 

今も、各地で戦っている・・・生徒たち。

 

 

私達は、皆と一緒に戦っていたんだ・・・!

 

 

独善的だったはずの私の「正義」が、今・・・燃え上がっていくのを心で感じる。

身体は満身創痍でも、闘志は何時よりもメラメラと燃え上がっている。

 

心を、闘志を・・・燃やせ・・・燃やせ!

 

私達は・・・まだ回れるッ!

 

 

 

再び立ち上がった、巨人。

時間切れだとか、敵が多いとか・・・そんな事は関係ない・・・!

 

金色に染まったカイテンFX.Mk∞・・・否、名づけるのなら。

 

 

「カイテンFX.Mk∞∞(ダブル・インフィニティ)・・・推参!!!」

 

 

 

 

「これで決めるぞ、皆!」

 

「「「「応ッ!」」」」

 

 

<鯖ブレイド―――Unloading!>

持っている剣に、光が・・・皆の想いが募っていく。

 

 

<煎茶スラスター・・・Blaze Up!!>

スラスターが起動して、まるで流星のような速度で宙に飛び上がり・・・

 

 

 

<カイテン∞エンジン!OverDrive!!!>

集った金色の光がまるで太陽のように、このキヴォトスを明るく照らす。

 

 

 

「廻り続ける想いがッ!」

 

私達の背中にはキヴォトスのみんなの想いが乗っている。

 

 

 

「「「「「今、キヴォトスの”未来”に繋がるレールとなるッ!!!」」」」」

 

だから、負ける気が―――しない。

 

「往くぞッ!!!必殺・・・!」

 

 

 

 

「∞∞(ツイン・インフィニティ)FINAL鯖―――」

 

刹那の一閃、瞬き程の時間で振るわれた金色の剣は―――

 

 

 

「―――スラッシュッ!」

 

 

正に、一筋の光となってペロロジラたちを真っ二つに切り裂く。

 

 

切り裂かれた彼らから淡い光が漏れ出て・・・

 

 

「ペッ・・・ペロ~!?」

 

 

大きな爆発と共に、最期を彩った。

 

 

「見てください・・・アズサちゃん・・・!空が・・・!」

「ああ・・・青い空は・・・こんなにも美しいものだったんだな。」

 

 

久しぶりに現れた、太陽の光が・・・

キヴォトスと彼らを照らしていた・・・

 

 

「正義は・・・必ず・・・勝つッ!」

 

 

「敵生体反応・・・ロスト。お疲れ様、カイテンジャー。」

 

”本当にお疲れ様・・・!後は・・・タワーを・・・”

 

 

突如として金色の光を強めるカイテンロボ。

何となく・・・嫌な予感がする。

 

 

「うん・・・オーバードライブなんてさせれば。こうなる事は予測は出来てたけど・・・」

 

「ど・・・どうなるんだ?」

 

「・・・爆発するね。今からじゃ退避も間に合わないかも。」

 

「なっ・・・!?我々の夢の結晶が―――!?」

 

 

 

虚妄のサンクトゥムを巻き込み、大爆発を起こすカイテンロボFX Mk.∞∞・・・

カイテンジャーの五人は空へ飛んでいき、キランと光ると・・・見えなくなった。

 

 

心配ではあるが・・・彼らの事だから大丈夫だと思う。

最期まで締まらないのも、まあ・・・彼等らしいかもしれない。




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