ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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この日の出会いと別れが、運命を変える大きな一手になったのかな。
良くも・・・悪くも。


邂逅

▼とある喫茶店

 

物静かな喫茶店。

雰囲気の良いはずのこの場所は・・・

今や、一触即発と言った空気が流れていた。

 

”それで・・・どうして二人が一緒にいるの?”

 

「そちらを先に聞きますか・・・生徒の事を随分と大切に思っているのですね?」

 

”当たり前でしょ、事と次第によっては・・・!”

 

許さない。そう言いかけた言葉は意外な人物に止められることとなった。

 

 

『それに関しては、私からお話ししましょうか。』

『出来るだけ簡潔に話しますが・・・結論から言えば・・・』

 

『私と黒服は・・・協力関係にあります。それも、前の世界からずっと。』

 

”それ・・・は。”

 

驚きのあまり、頭の中が真っ白になる。

もしかして、シノは黒服に弱味を・・・?

 

『そう心配しないでください、先生。彼と協力していたのは単に「互いの利害が一致したから」・・・それだけの事です。』

 

あくまでも事務的であった、そう言った彼女は何処か感傷に浸っているようで。

 

『そして、世界を渡る装置を用意したのも・・・私を乗せたのも、彼です。』

『黙っていたことは謝ります、すみませんでした・・・先生。』

 

ゲマトリアに協力する生徒。

そしてこのタイミングで同時に現れた二人・・・もしかして。

 

”もしかして・・・シノが白鷹だったの?”

 

『ご考察のとおりです、どうしても危険な場所に行くには生徒のままだと都合が悪かったので。』

 

自分で想像して、確かにそう仮定すると納得のいく部分が多かった。

似たような戦い方をしていたのも、エデン条約編で手助けしてくれたのも・・・

結構無茶をさせていた気がする、彼女は大丈夫だったのだろうか。

 

『そこは、今回の主題ではないので・・・一旦置いておくとして。』

 

「先生が気になるのは「誰が」の部分ではなく、「どうやって」でしょうからね。」

「名づけるならその装置の名前は・・・「ジウスドゥラの小舟」。」

 

「こちらは定員は二名ほど、それに動力の無い不完全なものですが・・・その分小回りが利きます。」

 

「ここまでは、こちらの高那シノも知っている情報。」

「そして、先生が今求めている用途に耐えうるものでは到底無いでしょう。」

 

つまり、他に何か手段を知ってるって事だよね。

 

 

「えぇ。ですが、そもそも・・・これは元々、何のために設けられた場なのか・・・覚えていますか?」

 

”白いカードの・・・対価。”

 

「えぇ、そうです。情報にも契約にも・・・当然ながら対価が付き纏います。」

「それでは・・・先生。」

 

「貴方はこの情報に・・・どれだけの”対価”を払ってくれるのでしょうか?」

 

”私は・・・”

 

ゲマトリアに入っていただく・・・その為にこの場を設けたつもりでしたが・・・あるいは。」

神秘を持たないものは神秘をその身に宿すことができるのか・・・そちらの実験に協力していただくのもまた面白いかもしれませんね・・・?」

 

黒服・・・!

 

「申し訳ございません、少しばかり興が乗ってしまいまして。やはり先生とは良好な関係を築いておきたいですからね・・・」

 

”いいよ。”

 

『・・・先生ッ!?』

 

”生徒の為なら・・・私は文字通り、私のすべてを差し出す覚悟がある。”

 

「クックック、冗談ですよ、先生。ゲマトリアは未だ健在。ですが空席は既に埋まってしまっていますので。」

「ですので、私の要求は一つだけ・・・」

 

”・・・それは一体?”

 

「色彩が確保した、天井に位置する名も無き神の遺産・・・」

「その名を「アトラ・ハシースの箱舟」と言います。」

 

 

 

 

私も、連れて行って欲しいのですよ。全てが始まり、全てが終わる・・・あの地へ。」

 

 

▼アビドス砂漠

 

 

黒服を連れて、アビドス砂漠へ赴いた私達。

ズルい提案だ・・・

もしもあの提案を断れば、私達はその手段を「聞き出せない」。

だからこそ、私達はその提案を「受け入れるしかない」。

 

自分有利な二択・・・これではまるで・・・

 

「どうやら私は決して拒めないであろう提案・・・というものが好きらしいです。」

 

”お前・・・!お前の事を・・・許したわけではないからな。”

 

「そう、怒らないでいただきたい。これは私なりの・・・そう。ジョークと言う奴ですから。」

 

やはり、私と彼らゲマトリアでは分かり合えない生物だと再認識した。

私は・・・私の生徒を傷つけるような奴を・・・許せない。

 

『致命的にセンスがないですよ、ブラックなのは顔とコーヒーだけにしておいてください。』

 

「クックック、これは手厳しい。ですが楽しい歓談の時間も・・・これで終わりのようですね。」

 

 

 

私達の前に現れた、砂漠にポツリと存在する建造物。

数か月前に来た此処は・・・カイザーPMCが所有する軍事基地。

そして、ホシノが囚われていた場所でもある。

 

だが、今までの騒動もあってか既にカイザーの私兵は基地にはおらず・・・

人っ子一人いない、もぬけの殻だった。

 

「それでは進みましょうか。足元が悪いのでお気を付けください。」

『一応ですが、私が索敵します。後ろについて来てください。』

 

軍事基地の・・・ホシノが捕らえられていた付近の・・・更に地下。

妙に近未来間のある通路を抜けた先に待ち構えていたのは・・・

 

「これが・・・カイザーが必死になって探していた「お宝」の正体。」

 

そこにあった巨大な建造物、これは・・・まるで・・・

 

”宇宙戦艦・・・!?”

 

「成程、宇宙戦艦ですか。言いえて妙ですが・・・ええ、概ねその通りでしょう。」

「古代文明が作り出した遺産・・・この船の名前は、「ウトナピシュティムの元船(もとふね)」。」

「この船の本質は先ほどの「ジウスドゥラの小舟」と同一のモノです。」

 

「ですが動力もあるこの船には一つ・・・致命的なものがないのです。」

 

”それは・・・?”

 

資格と言うべきでしょうか、と言うべきでしょうか・・・いえ、それらはあくまでも必要なものであって・・・その本質ではない。」

 

「ああ・・・一つピッタリなモノがありました。ククッ、これも因果と言う奴でしょうか。」

 

「この船を動かすために足りない物、それは・・・「対価」です。」

 

「この船を動かすにあたって・・・「シッテムの箱」の所持者である貴方は・・・」

 

 

その命を「対価」に賭けなければいけない。

 

 

「とても分の悪い・・・悪辣な賭けです。」

「それこそ、命が無事でも後遺症が残るかもしれない。」

 

「もしくは、貴方の愛する生徒を薪にくべる・・・と言う手法もありますが、貴方は選ばないでしょうからね。」

 

 

”分かった、それならまずは船に乗せるメンバーを選定しないとね・・・”

黒服の提案を受けた、私。

 

 

『正気ですか、先生。確率は高くないんですよ・・・!』

 

”うん、私はきっと・・・この為にいたんだ。”

 

『そんな訳・・・』

 

 

『そんな訳がないでしょうッ!死ぬために生まれた人間なんていて良いはずが・・・』

 

”シノ・・・あのね。”

 

『なん・・・ですか。』

 

”ごめんね、もし私に何かあったら・・・後をお願い。”

 

『なんですかそれ!?ば・・・馬鹿馬鹿しい・・・!』

 

”シノだから・・・いや、シノにお願いしたいんだ。”

 

『先生なんて・・・知りませんッ!』

 

そう言って走り去って行く、シノ。

彼女には酷な事を頼んだかもしれない。

それでも、私が居なくても場を取りまとめる人間が必要だ。

その為には、全てを知っているであろう彼女が・・・

心優しい彼女が相応しいと・・・そう思った。

 

「追わなくても・・・よろしいので?」

”彼女は、強い子だから。その時が来たら・・・うん。きっと大丈夫だよ。”

 

 

 

「クックック・・・何とも厚い信頼だ。少し・・・妬けてしまいますね。」

 

”ふふっ、今の冗談は・・・ちょっと面白かったよ、黒服。”

 

「・・・それは光栄です、それでは準備の方を進めるといたしましょうか。」

 

 

エンジニア部の皆に連絡して、船の解析を進めてもらう、

全ての決着がつくまで、後一日。

 

今まで積み重ねてきた私たちなら、きっと何とかなるだろう。

そんな楽観的な事を、その時の私は考えていた。

 

 

先生は、あの時の問いに・・・答えは出せたかい?

 

 

分からなかった事に、蓋をしたままにして。




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