ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼トリニティ教室 ハナコ視点
「それじゃあ・・・行ってきますね?ヒフミちゃん、アズサちゃん、コハルちゃん・・・」
「ああ、私達はトリニティの治安を守る。ハナコも・・・気を付けて。」
私はオペレーターとして、ウトナピシュティムの本船に乗る。
だからこそ、ここで補習授業部の皆とは一度お別れになると・・・そう思っていた。
「やあ、皆。揃っているかな。」
「セ・・・セイアちゃん?何故ここに・・・」
「時間も無いから、端的に言おう。」
「今から話すのは、未来視を失った私の・・・根拠のない不確かな「直感」でしかない。」
「もし未来視を持っていたとしても・・・かの空間は未来と過去とが複雑に入り混じっていて、正確な未来を観測する事はもはや不可能だっただろうけどね。」
「結論から言うとだ。君達、補習授業部は・・・」
「あの船に・・・乗るべきだ。そう私の直感が告げている。」
「危険な旅になるだろう。勿論信じるのも信じないのも自由だが・・・「選択」は君たちがするんだ。」
「少しだけ・・・考えさせてくれませんか?。」
「ああ、すぐに決められる問題じゃないと思う。でもあまり時間の方もないんだ。よく話し合って決めるといい。」
▼ウトナピシュティムの本船 シノ視点
ついに・・・ついに出発の時がやってきた。
「それでは―――点呼を取ります。」
「オペレーターとして浦和ハナコ・天雨アコ・奥空アヤネ・早瀬ユウカ・鬼方カヨコ・明星ヒマリ・由良木モモカ・岩櫃アユム・そして統括責任者である私、七神リン。以上の9名が乗船します。」
「地上での航空管制及び技術支援を担当するのはミレニアムよりヴェリタスの音瀬コタマ・小鈎ハレ・小塗マキ・各務チヒロ。エンジニア部の猫塚ヒビキ・白石ウタハ・豊美コトリの両部7名が受け持ちます。」
「実働部隊はアビドス対策委員会より、小鳥遊ホシノ・黒見セリカ・十六夜ノノミ・梔子ユメ・高那シノの5名。ゲーム開発部より天童アリス・才羽モモイ・才羽ミドリ・花岡ユズの4名。」
「そして、皆さんの食事を担当するゲヘナ給食部の愛清フウカと美食研究会・・・」
「以上30名・・・そして「シャーレの先生」を含めた31人が・・・このウトナピシュティムの本船に携わるメンバーになります。」
懐かしいメンバーを見た。あの後無事に逃げおおせたのか。
食事を用意する為の給食部は理解できる。
だがしかし、美食研究会は必要なのだろうか・・・?
「ちょ・・・ちょっと待って下さい!」
入口の方から走ってくる・・・あれは。
「トリニティの・・・ヒフミさんですか?どうしてここに?」
「ご迷惑は承知の上です・・・!私達も連れて行ってはくれませんか?」
「・・・しかし、メンバーの決定は。」
「良いのではないでしょうか?ここに来る事を決めたという事は、おそらくは予言の大天使の口添えもあってのものでしょうから、悪いようにはならないのでしょう。」
急な増員だが、確かに彼女達がいるのなら心強いと思う。
それと同時に、安全な場所にいてほしかったという気持ちも強い。
どのみちこのままだとキヴォトスが滅ぶことになるとはいえ。
「ヒフミちゃん。そうですか、来ることに決めたんですね。」
「ハナコちゃん、危ない事も沢山あると思います。それでも、これが私の・・・「選択」です。」
”補習授業部の皆がいるなら心強いよ!よろしくね、皆。”
『えぇ、本当に・・・頼りにしてますね?』
「まっ・・・まあ?トリニティの正実を代表して頑張るわ!エリートとしてね!」
「電撃戦なら得意とするところだ、よろしく頼む。」
「・・・以上34人が、アトラ・ハシース占領戦のメンバーとなります。」
本当はもう一人、黒い服の異形が乗っているのだが・・・その事は私と先生。
そして、一部のメンバーにしか知らされていない事だ。
それと、ドローンと言う形ではあるものの調月リオがサポートしてくれる。
「それではウトナピシュティムの本船・・・出発します!」
強い衝撃に備える、先生は平静を装っているが・・・
顔色が悪いし、良く見れば手元が震えている・・・苦しくて、怖いのだろう。
当たり前だ、誰だって死ぬかもしれない状況に置かれれば・・・怖い。
『先生、気を失っている間の事は・・・私に任せて下さい。だから・・・』
『出来るだけ、早く戻ってきてくださいね?信じてますから。』
”う、うん。ありが・・・と。”
椅子に深く腰掛ける形で、意識を失った先生。
ここからは私の出番だ。
ある程度のアクシデントに対応できるように、用意はしてきたが。
何が起こるか正直、想像もつかない。
「計算完了、多次元解釈システム起動します!」
「高度75,000mまでの航路を計算・・・設定完了。」
「最大出力まで加速します・・・!衝撃に備えてください!」
ぐんぐんと見える景色が高くなっていく。
先ほどまで土色の世界が広がっていただけあって、眩しさを感じる。
「わわっ・・・シノちゃんは大丈夫?」
『私は大丈夫ですが・・・』
凄い重力だ、それはつまり順調に加速で来ているという証拠でもある。
このまま何事も無ければいいのだが・・・相手もそう黙って見ていてはくれないようで。
「多次元解釈システムにエラー発生!対象との計算に乖離が・・・!?」
「システムの故障・・・?でもそんなはずは・・・」
「違うわ、アトラ・ハシースの方が・・・対象にする次元を変えたのよ!」
「あれは私達では認識できない次元・・・2次元から3次元を認識できないように・・・」
「私達にあれを観測する事は不可能・・・!」
「手詰まりだと・・・言うのですか。」
「アトラ・ハシースの箱舟の基本概念は・・・「周りのデータ」を「収集し」、「変形」させること。」
「あれに外から干渉できるのは・・・それこそ同一の箱舟のみ。」
「だからこそ・・・一つだけ・・・方法はあるわ。」
「まさか・・・貴方はまた同じ過ちを―――!」
「喧嘩してないで、どうするかを決めてください!衝突まで6分も無いんですよ!!」
「同じ、同一の存在である箱舟なら―――」
「えぇ、だからこそ一つだけ方法がある―――」
突如として現れた黒色の異形。
外に出てくるなとあれだけ言われていたのに・・・
「お前は・・・!こんな所まで来て一体何を・・・!」
「おやおや、そう警戒しないでいただきたい・・・小鳥遊ホシノ。」
当然だが、ホシノ先輩が今にも掴み掛かりそうな剣幕で腰元の散弾銃を抜く。
透明なガラスのような物で覆われた球体と共に現れた、彼。
出てきたと言う事はそうするだけの理由がある、と言う事だ。
「挨拶はこの非常時です、省略いたしましょう。ここにあるのは「ジウスドゥラの小舟」とでも呼んでいたいただければ良いかと。」
「この舟は動力すらなく動員はたった二名。そしてその「性質」はあくまで至ってシンプルですが・・・だからこそ、その性能においてはこのウトナピシュティムの本船すら凌ぎます。」
「その性質とは何かしら?」
訝しんではいるものの、話を聞く姿勢は崩さないドローン。
病的なまでの合理主義が彼女の本質・・・
彼女はトロッコ問題に直面すれば、迷いなく大多数を救うためにレバーを引くだろう。
「「次元を超える事」です。世界すらわたる事の出来るこの舟は・・・その一点に限れば、かの箱舟すら凌ぐでしょう。起動は・・・出来て一度、二度が限度でしょうが。」
「つまり、内側から破壊するという事ね。」
「えぇ、かの箱舟の権能はあくまで「周りのデータ」を「収集し」、「変形」させること。あのバリアも内側からの攻撃は想定されていないと言える。」
「でも・・・あれだけのバリアをどうやって・・・」
例え、内部からならば脆いのかもしれないが、防壁はあの大きな箱舟をすっぽり包めるサイズ。
そこに、この大きな船が通過できるほどの大穴を開ける事のできる人間は限られる。
「アリスが・・・行きます。」
「アリスちゃん!?」
「あ・・・アリスちゃん!?危険よ・・・!」
「でもこのままだと皆が・・・アリスは皆を守りたいんです!」
「アリス・・・」
それこそ、宇宙船の主砲になり得るスペックの武器を扱える人間。
「リオ先輩・・・そこにいるんですよね?」
「えぇ。私は貴方に・・・」
「良いんです、リオ先輩・・・仲間同士は多くを語らない物です。」
「仲間・・・?」
「リオ先輩は誰よりも世界を救おうと頑張っていました、誰よりも頑張っていました!」
「そして今も・・・世界を救うために皆を助けてくれています。」
「リオ先輩はもう・・・アリス達の仲間です!」
「・・・アリス。」
「だから・・・見ていてください!アリスが何になるかは・・・アリスが決めます!」
「アリス・・・えぇ、分かったわ。」
『動力等の都合上、もう一人は私で確定です。すみませんアリスちゃん。』
「ホシノさんの妹さんならきっと心強いです!アリスと一緒に魔王城をぶっ飛ばしましょう!」
この舟を動かして、目標通りの座標に跳ぶには私が搭乗する必要がある。
とはいえ、船の維持にかかりきりになるので戦闘行動は厳しいだろう。
「高那シノ、貴方は・・・」
「いえ、この際それは・・・重要な問題ではないわ。」
「頼んだわ、勇者たち・・・世界を・・・キヴォトスを救ってみせなさい。」
「はい、アリスは・・・勇者ですから!」
先生もきっと今も戦っている・・・さあ、私も私に出来る事をしよう。
「ここからは・・・
何時の間にか退散していた黒服を尻目に、準備自体は着々と進んでいる。
衝突まで残り・・・4分といった所か。
「本当に良かったんですか、あの胡散臭い黒い服を信じるのもそうですが・・・」
「アリスが・・・あの子が出来ると言ったのだもの。私はその選択を・・・信じるわ。」
「変わりましたね、ビッグシスター。今は池の水くらいの女になったと思いますよ。」
「それは・・・いえ、無駄口をたたいている暇はないわ。出来る限りのサポートを。」
透明な半球の中に乗り込む私とアリスちゃん。
前はユメ先輩と乗ったので、前回より幾ばくかスペースがある。
小舟が、発進の準備を始める。
と言っても動くわけと言うよりそれは・・・
「いってらっしゃい、シノちゃん。」
「えぇ、行ってきます。ユメ先輩。」
「アリス、絶対戻ってきてね!」
「アリスちゃん、頑張ってね!」
「はい、皆!魔王城の中で落ち合いましょう!」
場面が切り替わる・・・正しく瞬間転移。
さっきまでとは打って変わって、真っ暗で不気味な異空間に転移する。
今は宙に受けているが、そのためのエネルギーもいつまで持つかもわからない。
外壁部分を開き、辺りを見渡す。
この空間は確かに、全てが曖昧だ。
正であって負であるかのようなそんな場所。
『アリスちゃん、行けますか?』
「はい!任せて・・・ください!」
目映い光と共に、チャージを始める銃身。
その名を「光の剣:スーパーノヴァ」と言うらしいそれは・・・
人の身長ほどもある巨大なレールガンだ。
あのメンバーどころか、キヴォトスでも1、2を争う高火力。
彼女でどうにもならないのならば、他のメンバーでも厳しいだろう。
「―――貫きます!」
放たれた一条の光条は、黒い天幕に突き当たり―――穴をあける。
ただし、その穴は非常に小さく・・・そして光が収まるとともに閉じるように埋まってしまった。
出力が・・・足りない。
一人の生徒の力では限界があったか。
この状況からでも、おそらくは彼女の持つ権能を使いアトラ・ハシースを掌握すればこのバリアは解除できるはずだ。
しかし、黒服の推測ではあるものの・・・それは「アリス」と言う個人の消失を意味する。
だが、それを選ぶにはまだ早い。
それに、何よりも・・・
『惜しかったですね、もう一発行けますか?』
「はい!後何発だって撃ちこんで見せます!」
勇者が諦めていないのだ、パイロットでしかない私が諦める道理はない。
もう一度、光の剣にエネルギーが集っていく。
このままではきっと、先ほどの焼き直しになるだろう。
「だから―――力を貸してください、リオ先輩・・・ケイ!」
乗れるのはあくまで二人が限度。
だがしかし・・・ドローンくらいなら滑り込ませる余裕がある。
ドローンから伸び出たコードが、ジウスドゥラの小舟と光の剣を繋ぐ。
「ジウスドゥラの小舟に・・・接続、掌握完了よ。」
<不明なユニットが接続されました。>
「リソース領域を拡大、ジウスドゥラの小舟の全リソースを再構築します・・・」
アリスの目が紫色に輝き、どこかシステム音のようなアナウンスを伝える。
<システムに深刻な障害がががが>
小舟が浮遊の為の機能を失い、自由落下し始める。
どのみち、ここで決められなければ全てが終わりだ。
膨大なエネルギーが光の剣に集まっていくのを感じる。
この虚実の入り乱れた空間の中だからだろうか、私にも・・・
「現時刻をもって、プロトコル・ブレイバーを稼働。」
アリスちゃんが二人いるように視える。
そこに確かな気配を感じる。
「王女、私はあの大人たちの為に動いている訳ではありません。」
「ケイ・・・?」
「私はあくまで、玉座を継ぐ為の
「ですが・・・王女は勇者にジョブチェンジしました。勇者に玉座の為の鍵は不要です。」
「あの大人の言った事に乗っかるのは癪ですが・・・私がなりたいものは私が決めます。」
「私は、貴方を守る為の・・・剣になりたい。」
「ケイがアリスの・・・剣に。」
何処か怪しい紫の光を放ち始める、光の剣。
だけど、大丈夫だろうという・・・確信があった。
「鍵は剣となり―――今、勇者は剣を手にした。」
「見習い勇者、アリスが宣言します!ここに新たな
「決めて・・・アリス!」
「「―――光よ!!」」
真っ黒な空間に一条の光の奔流が煌めく。
それは・・・真っ黒な世界を切り裂いてこの空間に確かに夜明けをもたらした。
「やった・・・のね。」
『お疲れ様です。』
肺に吸い込んだ空気があまりにも冷たくて、慌てて息を吸うのを止める。
それは・・・つまり。外とこの空間がつながったという事。
数分前に見たはずの、陽光が・・・何故か眩しく見えた。
セイア「時間も無いから、端的に言おう。」
ハナコ「あの・・・セイアちゃんがそう言って端的に済んだ事がありましたか・・・?」
セイア「ふふっ、それは・・・・・・正直申し訳なかった。」
どんな描写が好きor欲しい?
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戦闘描写
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心理描写
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場面描写
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会話文
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その他