ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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本当の意味で、彼女と初めて会った日

本日二話目です


私と貴方と青春の物語

▼シノ視点

 

カーテンから射す日の光で目を覚ます。

 

「シノちゃん、おはよ。」

 

いつの間にか、彼女が顔を覗き込むようにこちらを見ている。

 

『おはようございます、ユメ先輩。』

 

今日は初登校だから・・・少し早めにいかないと

 

「朝はいつも通り、パンとコーヒーでいいかなって聞こうと思って。」

 

『はい、ありがとう・・・ございます。ん・・・』

 

「もうちょっとだけ、ゆっくりしててもいいよ。出来たら呼ぶね?」

 

昨日帰ってきたのは、結局日付を回っていたのでまだ眠い

ユメ先輩の家に泊まっているので、帰ってきたっていうのも正しくないか

それを言い始めるとこの家もこちらの世界のユメ先輩の家であるから・・・

 

流石に、家を借りないとな

 

 

 

朝食を終えて、登校の用意を確認し終えた私達

 

玄関を開けて、外に出る

空がどこまでも青く、青く澄んでいて

肺に取り入れる空気が新鮮で

新しい日常が始まる、そんな実感がわいてくる

 

「さ、行こうか!シノちゃん!」

 

『いいですけど、鍵はちゃんと閉めてくださいよ・・・』

 

「ひぃん・・・」

 

・・・まあ、締まらないところも彼女らしくていいか

 

 

 

 

「おっはよ~!」

 

『おはよう。』

 

「おはようございます!シノさん、ユメさん。」

 

「アヤネちゃん早いね~、私たちが一番乗りだと思ったんだけど」

 

「あはは、皆さんに渡す教材が揃っているか確認しておきたかったので・・・」

 

「偉いなぁ~よーしよし」

 

「あの、その・・・恥ずかしいので・・・」

 

私は二年なので同級生、というと・・・

十六夜ノノミ、砂狼シロコの二名か

 

それはそれとして、問題は・・・

 

「おはよ~うぅ、眠いねぇ・・・皆随分と早起きだぁ・・・」

 

『おはようございます、ホシノ先輩』

 

「うぇ!?せ・・・先輩・・・?あぁ、そっか。」

 

「おはよ~シノ後輩~うへへへ・・・・」

「・・・何か変な感じだね」

 

一個上の自分、というものに違和感しか感じない事だが

 

 

 

 

「ん。おはよう。」

「おはようございます~☆」

 

「おはよう・・・って私が一番遅いなんて。珍しい事もあるものね。」

 

「これで全員揃いましたね、では改めてですがお二人が転校することになりました」

 

「大変なこともあると思うけど、この七人で頑張っていこうねぇ~」

 

「それでは、早速になってしまいますが・・・」

「アビドス廃校対策会議を始めたいと思います。」

「今回は、お二人に現状の取り組みを共有する事が主題になりますが」

 

セリカちゃんが勢いよく立ち上がる

「そこは会計である。私から報告させてもらうわね。」

「現状のアビドスの主な財源は指名手配犯の捕獲・苦情の解決・ボランティアが主になってるわ」

 

「それと、セリカちゃんのバイトだねぇ~」

 

「それは言わなくていいから!ん、んん。それで毎月の800万円の返済を賄っている状態よ。」

 

「シノ先輩と、ユメ先輩は何か思いついたりする?・・・その、真っ当な手段で」

 

「はい!はい!不肖、梔子ユメ!案があります!昨日調べてみたんだけどね。」

「ずばり・・・砂祭り!お祭りで人を呼び込んで、知名度もお金もがっぽがっぽってどうかな?」

 

「・・・っ」

苦しそうな顔でホシノ先輩が俯いている

何か、嫌な思い出でもあるのだろうか

 

『ユメ先輩、オアシスが枯れてますから。』

『それに、スポンサー企業もいないので会場が用意できません。』

 

『でも、アビドスの経営が軌道に乗れば悪くない案だとは思います』

『・・・ですから露骨に落ち込まないでください。』

 

「そっか・・・いい案だと思ったんだけどなぁ・・・シノちゃんは何かないの?」

 

『動かせる資金がなければ、元手に増やすのも難しいですから。』

『まずは地道に行くしかないと思います。』

 

『指名手配犯の捕獲・・・治安維持にはそこそこ自信があるので、私達に任せていただければ。』

 

 

「双子アイドル・・・ていうのはどうでしょうか~とってもいいと思います☆」

「ホシノ先輩が二人いれば、もっとセキュリティの強い銀行も狙っていける。」

 

般若の様相を呈して、アヤネちゃんが震えている

 

「ノノミ先輩もシロコ先輩も、何か・・・言いましたか?」

 

「ん・・・気のせい。」

 

アヤネちゃん・・・怒らせると怖いんだな

 

 

 

議論も佳境、といった所でホシノ先輩が立ち上がる

 

「ご、ごめんねぇ。ちょっとおじさんお花摘みにいってくるねぇ。」

「いやぁ、歳をとると大変だぁ・・・」

 

「はい~いってらっしゃい~☆」

 

『・・・』

 

 

 

アビドスの校舎、その屋上からは綺麗な湖が見えた

それはこの世界とは違う、あちらの世界での話だけど

 

今見えている地面、そして住宅街には砂が積もっているけど

ちらほらと住民が見える、確かに生活がある

そんなありふれた日常(きせき)が見え隠れして

この景色も嫌いじゃない、と柄にもなくそんな事を思った

 

青い空・・・どこまでも続くこの青い空が、愛おしい

無くなるときは、きっと一瞬だから

 

屋上のドアが、開く音がする

 

『ここは、お手洗いじゃなくて・・・屋上ですよ』

 

「あれれ、どうしてここに?いやぁ、困ったなぁ。」

 

『コーヒー、甘いのとブラック・・・どっちが好みですか?』

 

「それじゃあ甘いのをもらおうかな。」

 

冷たい微糖のコーヒーを投げ渡す

 

 

 

「いやぁ、なんでおじさんが屋上に来るのが・・・って言うまでもないか」

 

『自分なら、ここに来たと思うので。』

 

「できれば、一人にしてほしいんだけど」

 

『わかってます。』

 

「・・・意地悪。逃げても追ってくるつもりなんでしょ?」

 

『逃げたら、きっと辛くなりますよ。』

 

「・・・」

 

『時間が経てば、経つ程に』

 

だから、手遅れになる前に私が止めてあげないと

 

『今の、ユメ先輩から・・・梔子ユメから逃げないでください。』

 

「・・・って」

 

胸が、苦しい

私だってこんな事を言いたくはなかった。

でも、楽な方に逃げる事を選んだら

 

きっと、後悔する気がしたから。

 

『受け入れられないのなら、初めから突き放すべきだったんです。』

 

「黙ってよ!」

 

「わかってるんだよ、私が・・・私が!ユメ先輩とユメちゃんを重ねてるのも」

「私の理想を彼女に押し付けてるのも・・・全部、全部・・・!」

 

「でも、しょうがないじゃんか・・・!だって、だってぇ・・・」

「先輩は記憶にある時そのままで・・・!」

 

あの時、もしかしたら皆と居れるかもなんて

 

「叶わない夢を見て、何が悪いのさ!」

 

 

「それとも何?哀れな私を笑いにでも来たの?いいよね、自分はユメ先輩を守れたんだから。」

 

そんな事、言いたいんじゃないんでしょ

 

 

『ねぇホシノ、私達って邪魔かな。』

 

『邪魔なら、ここじゃない何処かに行くから。』

『私達は所詮、世界から外れた異物だし。』

 

ズルい言い方をした、彼女の優しさに漬け込んで

 

「ちがっ、ごめ。そんなつもりじゃ、なくて」

 

イヤなやつだな、私。

 

『分かってるよ・・・落ち着いて?ちょっと頭を冷やして欲しかっただけだから』

 

 

 

『少し、昔の話をしても、いい?』

 

 

 

 

 

 

『私にも、ユメ先輩以外に親友・・・うん、親友と言える友人がいたんだ』

『りょーちゃん、四葉リョウコって娘なんだけど。』

 

彼女と出会ったのは、私が一年の時の冬だった。

アビドスに来て初めての雪で、綺麗に積もったのを今でも覚えている。

 

『彼女、元々ヘルメット団でさ。』

『初対面は、それはそれは噛みつかれたんだけど』

 

『色々あって、アビドスに入ることになってからは、まるで子犬みたいに後ろについてきて』

『「ホシノ先輩の第一の舎弟は私っす!」なんて認めてもないのに』

 

『それから、よく話すようになって。それで、生徒会の仕事・・・一緒にしたりして』

 

『それで、それで・・・赤い空との戦いに巻き込まれて、死んじゃった。』

 

『まるで、寝ているみたいでさ。今にも、起きて「先輩なんで泣いてるんっすか?」って』

『話しかけてきそうで、でも。そんなわけ・・・なくて』

 

「・・・うん。」

 

『今でも、受け入れられてなくて、ヘルメットの奥に彼女を探しちゃって。』

『今も、りょーちゃんを見たら、特別扱いしてしまうかもしれない。』

『面影を感じてしまうかもしれない・・・けどさ。』

 

『こっちの彼女は、りょーちゃんはさ・・・こっちできっと自分の青春を、送ってるんだよ。』

 

『だからさ、そんな、前の世界の彼女を、彼女たちを引きずってる私が、言えた事じゃないけど』

 

『どうか、今の彼女を・・・否定しないであげてほしい。』

『彼女も、ユメ先輩も今を、生きているんだから。』

 

 

 

 

「ごめん、なさい。ごめんっ・・・」

 

『いいよ、きっとユメ先輩はわかってくれてるから。』

 

「酷い事、言って・・・」

 

『私にも?大丈夫、本心じゃないことくらい、よく分かってるから。』

 

『ほら、気にしてないから、おいで?泣けるときに泣いた方がいいよ。』

 

震える彼女を抱きしめて、背をさする

私には、その痛みを肩代わりしてあげることはできないから、せめて

 

「ごめんなさいっ、ごめんっ・・・」

 

 

 

 

 

 

あれから暫くして、ようやく呼吸が落ち着いてきた、

もう大丈夫かな。

 

「うぐっ、ごめん。醜態を見せちゃった、酷い事も、言った。」

 

『私も先輩に対する扱いじゃありませんでした、失礼でしたね。』

 

「ううん、服汚しちゃったごめん。着替えの制服持ってくるね。」

 

『それもそうですが、目元腫らしたままだと・・・」

「後輩たちに心配されちゃいますから・・・一眠りしましょうか。』

 

『ほら、そよ風が心地良いですし。ね?』

 

「うん、そうし・・・よっかぁ。」

 

次に目が覚めたのは、お昼どころか三時を過ぎていて

セリカちゃんに二人して、しこたま怒られることになったけど

それもまた、青春・・・なのかな




ホシノ「なんか、シノちゃんの方が大人みたいだね、お母さんみたい。」
シノ「別の世界の自分を捕まえて、誰がママ呼ばわりですか、普通に軽蔑しますよ。」
ホシノ「ご、ごめんよぉ・・・なんでなんだろ。」
シノ「身長、私の方が2センチ高いからじゃないですか?どっちも胸は平らですが。」
ホシノ「冗談よしてよ~・・・え?冗談だよね?」
シノ「本気と書いてマジです。睡眠はしっかりとってくださいね。」

↓正直この小説に求めてるものって↓

  • ストーリー(シリアス)
  • 日常
  • バランス
  • その他(コメントまでどうぞ)
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