ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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数多の選択が、結末と言う名の実を結ぶ。


占領戦の始まり

▼アトラ・ハシース外郭

 

 

皆を乗せたウトナピシュティムの本船が、凄い速度でこちらへ突っ込んでくる。

あちらはおそらく大丈夫・・・大丈夫だろう。

直近の問題は・・・

 

 

「うわぁ~!?まるで遊園地みたいですね!」

『動力を失った以上、自由落下(フリーフォール)は必然ですからね!命綱はありませんが!』

 

このままでは地上に向けての、自由落下を決行する事になるという事だが。

 

 

「二人とも・・・このドローンにつかまって頂戴・・・!」

 

 

ドローンからフックのようなものが射出されて、箱舟の外壁に引っかかる。

あ、危なかった・・・!直近で一番死を意識したかもしれない。

 

 

「・・・念のために備えておいてよかったわ。」

 

 

私達の乗っていた、ジウスドゥラの小舟が落ちていく。

この高度だからある程度頑丈と言えど・・・もう再利用することは出来ないだろう。

 

 

轟音と共に、アトラ・ハシースの箱舟に突き刺さったウトナピシュティムの本船。

箱舟が大きすぎて、まるで林檎に爪楊枝が刺さったようなものだが。

あちらも何とかなったようで何よりだ、しかし・・・

 

 

『で、どうしましょうかね・・・これ。』

「ここまでやって王女を無事に帰せなかったら・・・許しませんからね!?」

 

 

必死に外壁を登ったはいいものの、入り口らしきものが見当たらない。

かなり遠いが本船と合流するしかなさそうだ。

 

 

 

命辛々、本船のメンバーと合流した私達4人・・・?2人と2台だが。

本船の周囲では偶発的に戦闘が起きていた、アトラ・ハシースの防衛機構によるものだろう。

私はともかく、アリスちゃんの消耗が激しいので合流を優先する。

とは言え、少し休めばまた戦えるだろう。

私の方も少しばかり消耗が激しい、少し休息を取りたいところだ。

 

「おかえり!シノちゃん、アリスちゃん!」

 

「はい、アリス!クエスト完了です!」

 

”本当に無事でよかった・・・”

 

『ただいま帰りました、他のメンバーは・・・防衛ですか。』

 

船内に戻ってきた私達だったが、何とも言えない雰囲気が広がっている。

先生も意識を取り戻したようだが・・・一体何があったのか?

 

「それがね、黒いドレスを着たシロコちゃんがいきなり現れて・・・」

「少しだけ戦ったんだけど・・・彼女は一体何だったのかな・・・」

 

 

黒いドレスのシロコ・・・随分大人びていたが、私があの場所で取り逃した”彼女”の事だろう。

私がいない間に先生を狙ったのだろうか?

一種のテレポートのような技術を、アトラ・ハシース側はコンスタントに使える事を作戦の念頭におかなければならない。

つまり・・・

 

『この箱舟に安全な場所はないと思わないといけませんね。』

「うん、そうなんだけど・・・ううん、なんでもない。」

 

 

「テレポートに関してはアトラ・ハシースの箱舟の演算機能を使っているという事でしょうね、つまり・・・」

 

「我々が掌握する事が出来れば、地上への帰還方法になり得ると。」

 

「最悪の事態を想定しておくべきよ、ドローンに付けたフックが役に立つことだってあるのだから。」

 

「リオ、貴方の事は嫌いですが・・・その考え方自体は賛同できる部分もあります。」

「エンジニア部も心強いでしょう、ですから・・・その。」

「ありが・・・いえ、感謝の意を伝えておきます。この超天才清楚系ハッカー自ら。」

 

 

「・・・えぇ。」

 

見ての通り大破しかけているこの船を修理しない事には、「帰り道」がない事になる。

つまりは、高度75000mから地上に向かって落下するという事。

ヘイローを持つ持たないに関わらず、まず助からないだろう。

帰還の為の手段が増える事は大切な事だ。

 

 

 

「・・・コホン、話を戻しましょうか。」

「このアトラ・ハシースは言うなれば巨大な量子コンピューターです。」

「多次元解釈の為の巨大な演算装置であるこの船をそのままにしておけば・・・キヴォトスは再び崩壊の道を辿るでしょう。」

 

 

「最終的に、管制システムを掌握して自爆シークエンスを作動させてアトラ・ハシースの箱舟を破壊する事が目的となる訳ですが・・・船内にある4つの次元エンジンがそれを阻んでいます。」

「それまでに、箱舟が本来の機能を取り戻せば、箱舟は再び多次元の中に消えて二度と干渉できなくなる。」

 

「それがこの作戦のタイムリミットになります。」

 

 

「ここまでの話も含めてタブレットに送信しておきますが・・・」

「お二人は一先ず休憩を取った方がよろしいかと、医務室までの案内は必要ですか?」

 

『いえ、ここの施設は頭に入れてるので大丈夫です。」

「行きましょうか、アリスちゃん。』

 

「しっかり休んでね!防衛は私達に任せて!」

 

「はい!早く宿屋に向かいましょう、シノ先輩!」

 

 

勇者と言い宿屋と言い・・・独特の言い回しが目立つ子だ。

RPGが好きなのだろうか?そう言えばこのフィジカルでゲーム開発部だもんなぁ・・・

C&Cあたりにいても全然違和感のない戦闘センスだが、強いからと言って治安維持組織にいなければいけない訳でもないからそれでいいのだろう。

()()聖園ミカもティーパーティ所属だし。

 

 

所々、焼け煤けている船内を歩く事、数分。

医務室のあるエリアまでやって来た。

船内とは思えない程に、しっかりとした医療設備とベッドがある。

少なくとも、アビドス分校よりは設備が良い。

 

皆が頑張っている中、私達だけが休んでいることに罪悪感が沸く。

だからこそしっかり休んで、一刻も早く前線の皆に合流する必要があるのだが。

ベッドに横になる・・・しかし、敵の襲撃があるかもしれないので完全に気は抜けない。

そういえば、アリスちゃんと話すのは初めてだが・・・

あまり接点がないので何を話していい物か悩み所である。

 

「あの、シノ先輩はまだ何処か痛むのですか?」

 

『いや、体力を消耗しただけで何処か痛むとかは無いんだけど・・・どうしたの?』

 

「ずっと難しい顔をしていたので・・・何処か具合が悪いのかと思ったんです。」

 

 

良く見ている―――そして、答え辛い質問だ。

こんなに小さい・・・と言っても私より一つ下だが。

そんな子に聞かせるべき話でもないと思うし、教えるべきでもないと思う。

 

『少しばかり因縁のある相手がいて・・・アリスちゃん風に言えば”魔王”って言えば良いかな?』

『そいつが近くにいると思うと・・・なんだか落ち着かないんだ。』

 

「そうですか・・・シノ先輩ならきっとラスボスも倒せます!アリスも頑張ります!」

 

『倒す・・・うん、そうだね。』

 

 

そんな中、医務室のドアが勢いよくガラリと開く。

元気なのは素晴らしい事だがもう少しゆっくり・・・

まあ、心配で駆けつけてきてくれたのだろうから細かい所に目くじらを立てる事も無いか。

 

 

「アリス~!おかえり!」

「アリスちゃん!体は大丈夫なの!?」

 

「モモイ、ミドリ!アリスは大丈夫です!」

 

「本当にアリスちゃんが無事でよかった・・・」

 

 

ゲーム開発部の三人がお見舞いに来てくれた、恐らくは彼女達の休憩も兼ねて。

防衛も占領も進めなければいけない以上は、全員一緒に休めないのでこうして数人ずつ休みに来ることになるだろう。

 

「シノ先輩もアリスちゃんを助けてくれてありがとうございました!」

「ほんともう・・・すっごかったよ!ピュンと消えたと思ったら紫の光が・・・ズバーって!」

 

興奮冷めやらぬ、と言った様子で身振り手振りで教えてくれようとしているのは助かるが・・・

擬音ばかりで何とも伝わり辛い、でもとっても元気で面白い子だな・・・ゲーム開発部か。

 

『私一人じゃどうしようも無かったから助かったよ、それにしても・・・ふふっ。』

 

「あはは・・・こういう人なんですお姉ちゃんは・・・」

 

「モモイ!何を言ってるかさっぱりわかりません!」

 

「えぇ~!?こう・・・ピューンってなってズバーン!なんだよ!」

 

「えっと、のども乾いたと思いますし・・・お茶淹れてきますね。」

 

『あ、ユズさん・・・でしたよね。ありがとうございます。』

 

 

ユズちゃんが淹れてくれたお茶を飲みながら、先ほどまでの事の話になる。

あちらからすれば、急に私達が消えたようにしか見えなかっただろうから。

 

 

「それはもう・・・凄かったんですよ!世界が一瞬で切り替わって・・・!」

「それに、ケイと一緒にビームを撃ったんです!・・・もう喋ってはくれないんですか?」

 

『彼女も疲れているんでしょう、少しだけ休ませてあげてください。』

 

実際の所はアリス(王女)の事は大切でも、他のゲーム開発部との距離感を図り損ねているのだろう。

何と言うか・・・うん。これ以上は本人の為にも言及するのはやめておこう。

 

「それにしても・・・見たかったなぁ!こう・・・プロジェクター!みたいな事出来ないの?」

 

「それは・・・でき・・・いえ!あの経験は私達四人だけの思い出です!」

 

「え~!アリスだけずるい~!私もビーム放ってみたいよ~!」

 

「お姉ちゃん・・・!一応病室だから声を静かに・・・!」

 

『私は気にしないので大丈夫ですよ。』

 

「そういえば暇だと思って、ゲームとお菓子を持ってきたの!良ければシノ先輩もどうぞ!」

 

『あ、ありがとう・・・ございます?』

 

「テイルズ・サガ・クロニクル2って言うの!もし欲しければソフトは上げるから!」

「わ・・・私達が作ったゲームなんです。」

 

『流石にこの場じゃ出来ないですかね・・・無事に帰れたら遊んでみますね?』

 

「こんな所でも布教とか・・・商魂逞しいねお姉ちゃん・・・」

「面白かったら1もあるから、是非遊んでみてね!」

 

 

本当に元気で優しくて・・・とてもいい子達だ。

彼女達といるとたまに・・・自分が何者なのか忘れてしまいそうになる。

 

私の過去は・・・どうやっても消えないというのに。

 




ミカ「くしゅん!」
セイア「おや、ミカは風邪を引かないと聞いたのだが・・・そういう訳でもないらしい。これに懲りたらあまり涼しげな恰好で寝てはいけないよ?とりあえずこの毛布を使うと良い。」
ミカ「それってどういう意味??いや、違くて・・・誰かが私の噂をしてるんだよ。」
ナギサ「噂ですか・・・心当たりはあるのですか?」
ミカ「ありすぎて困るじゃんね・・・人を重機扱いしてくる女とか・・・?」
セイア「これは傑作だ、次から土木工事の時は呼ばせてもらうとしよう。」
ミカ「殴るね?」
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