ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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なんでもないはずの、戦いの間の日常の1頁


箱舟での一幕

第1次元エンジンの破壊に成功したらしい。

しかし当然ながら、推定シロコの妨害を受けたようで・・・

彼女は逃げるように去っていったという。

 

それは彼女に残った情によるモノ・・・本当にそうだろうか?

色彩が世界の破滅を引き起こせば、遅かれ早かれ皆死んでしまうというのに。

ただ、引き金を引く覚悟が足りなかっただけにも思える。

 

 

拳で殴りつけるより、ナイフで突き刺す方が。

ナイフで突き刺す方よりも、銃の引き金を引く方が。

銃の引き金を引くより、核のボタンを押す方が。

 

そして、核のボタンを押すよりも、見捨てて逃げ出す方が。

 

ハードルは低くなる・・・言ってしまえばある種の逃げ。

彼女が何を考えているのかは分からないけど、決戦の時は近い。

そこで否が応でも物語の決着はつくのだから。

 

 

 

 

 

 

ゲーム開発部のメンバーは作戦のほうに戻っていったらしい。

次の休憩はアビドスのメンバーなのだろう。

補習授業部が来てくれたのと、箱舟の4分の1を占領したおかげでシフトが組みやすくなったようで・・・余裕を持って占領を進められている。

これなら、たとえ誰かが怪我をしたとしても・・・

戦力不足でどうしようもなくなるという事もないだろう。

 

 

「シノ先輩いる~?」

 

『はいはい、ここですよ。アリスちゃんが寝てるので少し声量控えめでお願いします。』

 

「わぁ~寝てるアリスちゃんも可愛いですね♧」

 

「凄い光でしたもんね・・・疲れて寝てしまうだけで済んでいるのが異常と言いますか・・・」

 

休憩に来たのは、ノノミちゃんとセリカちゃん。

そしてオペレータとして頑張っているアヤネちゃんの3人だ。

 

 

「それにしてもあんな事ができるなら、最初に言っておきなさいよ・・・!」

 

「まるで消えたようにテレポートしてましたもんね~ビックリしました♧」

 

『それは・・・そうですね。ごめんなさい。』

 

実際にあれは賭けのようなモノだったから、あまりアテにして欲しくなかった。

何かしらの想定外により、箱舟の演算処理が小舟を上回れば・・・

どうなるかは想像に難くはないのだから。

 

「秘密主義なのは一体・・・誰に似たのかしらね?」

 

「まあまあ、セリカちゃん・・・シノ先輩も反省してるみたいですし・・・」

 

医務室の空いているベッドに腰掛ける3人。

少ししたら、またこの船の防衛に戻るのだという。

 

 

「それで、体調は大丈夫なの?」

 

『疲れただけなので大丈夫ですよ。戦おうと思えば戦えますが・・・』

 

「管制室には何が待ち構えているか分かりませんから、体力は温存した方が良いですよね。」

 

『そう言う事です。』

 

「先生達は現在、第二次元エンジンの攻略を開始しています。」

「物量こそ多いですが、防衛戦力の個の戦力としては想定よりも低いので安定して攻略出来ているみたいですね。」

 

「ノノミ先輩のミニガンなんてすごい活躍だったんだから!」

 

「タイミングが良かったんですよ~☆」

 

確かに純粋な物量相手には相性の良い武器と言えるだろう。

その銃、100㎏はある筈なんだけど・・・どうやって射撃を安定させているのだろうか。

やはり身長・・・身長なのか?

 

 

休憩の時間が終わったらしく、管制室に戻っていった3人。

入れ替わるように、部屋にはユメ先輩とホシノ先輩が入ってくる。

 

 

「おつかれ~シノちゃん!体調は大丈夫?」

「やほ~元気してる?シノちゃん。」

 

『お二人こそ、お疲れ様です。』

『私の方は疲労感はありますけど、体調は大丈夫ですよ。』

 

「なら良かった!差し入れここに置いとくね?」

 

『えぇ、ありがとうございます。』

 

 

ユメ先輩が手提げ袋から取り出したのは。見るからに甘そうなコーヒーゼリー。

おそらくはアズサちゃん辺りが気を利かせてくれたのだろうか。

糖分は実際大事だ。

いつ戦闘が起こるのか分からないからお腹いっぱいに食べるわけにもいかないけど、失ったカロリーは補充しておく方がいいだろう。

 

 

 

『順調・・・ですね。何か突入前の不安が嘘みたいに。』

 

「順調なのは良い事だけど、何か裏がありそうで怖いよねぇ・・・」

 

「皆が居ればきっと大丈夫だよ~!」

 

『ユメ先輩はもう少し危機感を持ってください・・・!』

 

「まあまあ、そういうとこもユメちゃんの可愛い所だよねぇ~」

 

 

2人とも気取らずにいつも通りで・・・皆といると、まるでアビドスに戻ったみたいで安心する。

アビドスの皆と話していると、自分が存外に緊張していたんだなと思う。

ここの所、緊張と焦りに追われた毎日だったから皆とゆっくり話す機会が殆どなかったから。

 

 

「ついに戦いも佳境だねぇ~二人はさ、この戦いが終わったらどうするの?」

 

 

この戦いが終わったら・・・終わったらか。

終わった後の事なんて・・・考えたことも無かった。

 

 

「私は美味しいモノをい~っぱい食べ歩きたいな~!」

「前に3人で行ったパンケーキ屋さん覚えてる?あそこで苺のパンケーキやるんだって!」

 

「あ~おじさんね?実はあの時は緊張しすぎてさぁ・・・ほとんど味を覚えてないんだよね。」

 

「え~勿体ない!?あんなに美味しかったのに~」

 

『実は私も・・・どんな味でしたっけ。』

 

 

「え~!?シノちゃんも・・・!?それで二人ともあんなにくれたのかぁ・・・」

「パンケーキね・・・ふわっふわでバターがしっかり風味が効いててね~!メープルシロップが甘くて美味しかったんだよ~!」

 

聞いただけでお腹が減ってくる程に、楽しそうに味の感想を漏らすユメ先輩。

私も甘いものは好きではある。

 

「そうだ!」

 

『どうしたんですか?急に妙案を思いついたみたいな顔して。』

 

「帰ったらさ・・・アビドスの皆で水族館に行こうよ、先生も一緒にさ!」

 

『それは・・・』

 

 

それは・・・・・・それは。

 

 

『えぇ、そうしましょう。私もホシノ先輩も・・・お魚好きですからね。』

 

「うへ~なんか気恥ずかしいよ・・・」

 

「絶対!約束だからね!」

 

『えぇ、約束です。』

 

 

全員無事で帰れると良いなと思う、切実に。

その為にも・・・私が頑張らないと。

 

「第一次元エンジンの前で・・・さ。会ったよ、シロコちゃんに。」

「私の事・・・覚えてないみたいだったね。どうしちゃったんだろう・・・」

 

『ユメ先輩は彼女に・・・いえ。彼女は本当にシロコちゃんだと思いますか?』

 

「わからない・・・けど、私は・・・ううん。まずは話し合ってみないとね。」

 

「逃げ足早いからねぇ~上手く「捕まえ」られるといいんだけど・・・」

 

『・・・そうですね。』

 

「あっ、そろそろ休憩終わりだ!ゆっくり休んでね!」

「おじさん達ももうひと踏ん張りするとしますかぁ~」

 

「ああ、そうだ。おじさん・・・シノちゃんに言いたい事があったんだった。」

 

『どうしたんですか?』

 

「人に言えたことじゃないのかもしれないけどさ・・・」

 

 

「・・・辛い時は、皆を頼っていいんだからね?」

 

 

私にだけ聞こえるように耳元まで近づいて、そう呟いた彼女。

強い実感が籠ったように聞こえたそれは、彼女自身の経験から来るものだろうか。

それとも、別の世界の()だからこそ分かったことがあったのか。

 

 

『えぇ、気遣ってもらってありがとうございます。』

 

 

 

「え~ホシノちゃん今、何話してたの?」

 

「ん~なんでもないよぉ~大したことじゃないからさ。」

 

 

そう言って部屋を去って行く二人。

おそらくは第3次元エンジン攻略戦からは私も復帰できるだろう。

ただ・・・この順調すぎる戦況に、何とも言えない違和感が拭えずにいた。




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