ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ 作:天野ミラ
▼ナラム・シンの玉座 先生視点
ヒマリやアヤネといったサポートに回っている生徒も併せて、脱出シークエンスの残り回数は28。
そして味方陣営の数はここからシノの1を引いて27。
この27人でシノを止め切らなければ、最悪の事態を迎えかねない。
補習授業部のヒフミ・アズサ・コハル。
美食研究部のハルナ・アカリ・ジュンコ・イズミ。
ゲーム開発部のモモイ・ミドリ・ユズ・アリス。
廃校対策委員会のホシノ・ノノミ・セリカ・シロコ。
前線を張るのはその中の15人。
おそらく決定打になり得るのはアリスの光の剣。
他にダメージを通せそうなのは貫通力に優れたアズサとハルナ。
そして、ノノミとホシノだろうか。
彼女達を守りつつ戦わなければ、シノを止めれるだけのダメージを出せなくなる。
一斉にこれだけの生徒を指揮する経験は初めてだ、基本的には生徒はオペレータの指示に従ってもう形にはなるが・・・
それぞれ生徒の役割をしっかりと把握しないといけないので非常に難しい指揮になる。
”行こう、皆!”
「「「はい!」」」
その上で戦闘不能な一撃をもらう直前に、帰還モジュールを使って生徒達を地上に帰さなければいけない。
シノの攻撃をまともに喰らえば、後遺症が残りかねない。
私のキャパシティが足りればいいが・・・なんて弱気な事は言えない。
絶対に成し遂げて見せる・・・!
▼シノ視点
終わってしまった後の世界は、どう見えるんだろうか。
苦しかったのかな、寒かったのかな。
それとも、何も感じないのかな。
そんな
・・・皆が私の邪魔をする。
私がどんな覚悟を持ってこの場にいるのかを知りもせずに、知ろうともせずに。
身勝手で独りよがりなエゴを押し付けようとしてくる。
私には、他の一切を捨てる覚悟がある。
ただ・・・私を止めようとする皆の中に、ユメ先輩の姿が無い事に安堵を覚える。
私も、先輩に銃口を向けるのは・・・覚悟がいるだろうから。
それに私は独りじゃない、私の後ろには。
<負けないで、ホシノ先輩。>
全てが終わったら、
▼美食研究部 ハルナ視点
アリスさんが光の剣のチャージを始めましたわね。
私達のやるべきことは敵の攻撃を避けつつ、攻撃を当て続けるだけ。
言葉にしてしまえばシンプルだが、全くもって・・・
「簡単じゃありませんわね・・・!」
「なんで私が美食研究部のサポートを・・・ジュンコさん、右に避けてください。」
「無駄口をたたいてる暇はないと思うよ、アコ。」
「分かっています・・・!」
不満そうではあるものの、的確なサポートをくれるオペレータには感謝しなくてはいけませんね。
隙を見て、狙いすました一撃を額に向けて放つ。
「これは・・・自信を無くしますわね。」
ガキンと硬質な音と供に直撃したそれに対して・・・鬱陶しそうにこちらに視線を向けるだけ。
一応アイディールは狙撃銃なのですが・・・ヒナさんと言いシノさんと言いどうしてこうも・・・
いえ、足りないものは仕方ありませんものね。
「とはいえどうしたものでしょうか・・・」
「はい!良い案があるよ!」
「・・・お聞きしましょうか、イズミさん。」
「それはね・・・ゼロ距離で当てちゃえばいいんだよ!それならきっと弾かれないよ!」
「うーん、妙案・・・ですね?」
「ほ、本気!?」
確かにこのままではここに居る意味すらない、立っているだけの置物。
ただ立っているだけと言うのも気に入りませんものね・・・
「ちょ、ちょっと正気ですか!?あそこに近づくなんて・・・!」
「私達のモットーはEAT or DIE・・・ここで指を咥えて待っているだけなんて、死んでいるのと同じですわ。」
「はぁ・・・全く。道筋はこっちでサポートするから・・・」
是が非でも、あの喉元に食らいつく。
それに食事がつまらないモノであるなんて、許せませんもの。
隙を見計らって広場の中央にいるシノさんに急接近をします。
飛び交う弾丸は、フロントの方に受けてもらうことにしましょう。
部員を盾のように使うのは少し心が痛みますが・・・同じ目的を持つ同士です。
此処は遠慮なしで行きましょう。
「もう少し引き付けてから避けよう、距離がありすぎる。」
「ちょ、ちょっと・・・痛い!私は良いなんて言った覚え無いんだけど!?」
「少しだけ我慢しましょうね、ジュンコちゃん?」
「分かった、分かったから・・・!ぐぇっ!?」
アカリさんやイズミさん達程、体が丈夫という訳でもありませんので。
『・・・中々頑丈ですね。』
こちらに近づいてくると見て、散弾の攻撃がビームのようなものに切り替わる。
それはとっておきのデザートとお聞きしていたのですが、連射できますの・・・!?
「これは・・・流石に堪えますね。」
「うぐっ・・・!後は決めてきてハルナ会長!」
彼女達の背中を蹴り、空を飛ぶと同時にビームが・・・来る前に皆が消えていくのが見えました。
恐らく先生が転送してくれたのでしょう、後は
とは言え、距離が足りない。
空中で逃げ場も無い、本来であれば・・・
『なっ・・・!』
綺麗なドリフトを決めて、
車に穴こそ開いてしまったものの、何とか動かしているあたり流石ですわね・・・
「ふふっ、流石ですわフウカさん。」
「ふふっ、じゃないのよ・・・!ああああぁぁ!なんでことに・・・!」
「もう、こうなったからにはきっちり決めなさいよ、ハルナ!」
「えぇ、優雅に参りましょうか!」
散弾銃の二度目の射撃が繰り出されると同時に、またしても宙を舞う。
フウカさんの姿が消えた後に、車が爆発を起こしますが・・・
距離を詰めるにはちょうどいいですわね。
皆が皆、自分のエゴの為に戦っているだけ。
それなのに、先ほどから・・・誰かの為の復讐みたいな顔をして動く彼女に納得がいかない。
空中で
狙うは額、彼女も散弾銃を構えますが・・・
「せめて!好き嫌いくらいは、自分自身でお決めになりなさいッ・・・!」
ゼロ距離で引き金を引くとほぼ同時に・・・反撃の代わりに視界が真っ白に染まります。
先生が帰還させてくれたのでしょう。
私の一撃は・・・彼女に届いたでしょうか。
「私達も・・・脱出だね。転送にもクールタイムがあるから。」
「最後まで見届けられないのは残念ではありますが・・・信じる事にいたしましょう。」
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼補習授業部 コハル視点
狙撃銃によるゼロ距離の射撃により、シノが大きく体制を崩す。
美食研究会の人たちの、決死の想いの突撃は確かに有効打を与えたみたい。
それはつまり、シノが傷ついているという事なんだけど。
シノを傷つけたくない、傷ついてほしくないけど。
エデン条約で私達を助けてくれたシノとユメと先生。
シノ達が困ったときは私が助けに行くって約束したのに、シノの前に立ち塞がってしまっている。
でも・・・繋ぎ止めないと、いなくなってしまう。
「それは・・・嫌だ。」
シノと色んな事がしたい、海だって行きたい。
可愛いペロロのグッズのありそうな小物屋さんにだって買い物にいきたい。
アビドスを案内してほしい、トリニティをもっと案内してあげたい。
私は、シノとまた・・・青春の日々を歩みたい。
だから、立ち上がらなきゃ・・・
「大丈夫ですか、コハルちゃん。無理はしない方が・・・」
「ううん、大丈夫ハナコ。それに私・・・頑張りたい!」
「・・・分かりました、精一杯フォローしますから。」
先ほどの戦いの影響で、まだ少しフラフラする。
だけど、シノはもっと辛い思いをしているはずだ。
「とは言え、どうすればいいんでしょうか・・・」
「少しでも時間を稼いで、ダメージを蓄積させるしかないだろう。しかし、連携の取れていないメンバーで集団戦を起こすのは恐らく難しい。つまりは・・・」
「アズサちゃんの得意なゲリラ戦と言う事ですね?サポートは任せてください!」
しかし、遮蔽の無いこの空間で。
「うぐっ・・・!」
「デコイを作動させます・・・!」
赤い光が地を走る。
・・・遮蔽があっても遮蔽ごと貫通するような攻撃を前に。
そう簡単に時間が稼げる訳もなく、攻撃を片手間に捌かれて・・・私達のダメージだけが増えていく。
「アズサちゃん・・・これ以上は流石に・・・!」
「まだ・・・まだ足掻ける。」
「Vanitas vanitatum・・・!」
アズサが放った射撃が、シノに当たってよろめく。
しかし、止まったのは一瞬。
反撃と言わんばかりに、拡散する散弾銃の弾が飛んでくる。
「アズサちゃん・・・!」
庇うようにアズサの前に立ちふさがったヒフミとアズサに弾が当たる前に、二人の姿が戦場から消える。
先生の転送が間に合ったのだろう、良かったと思う。
でも、残された私に何ができるのだろうか。
アズサみたいに強くなくて、ハナコみたいに頭が回る訳じゃない。
ヒフミのように強い理想がある訳でも・・・無いと思う。
でも。
「ハナコ、私・・・行ってくる!」
「はい、見届けますよ・・・コハルちゃん。」
こんなやり方しかできないけど、伝えなきゃいけない事がある。
シノの前に両手を広げて立ち塞がる。
少しだけ・・・怖いけど。
それでも、きっと立ち止まってくれると信じて。
それに、この気持ちを伝えられないまま終わってしまう方が何より怖い。
『・・・なんのつもりですか。』
「わ、私・・・!」
困惑しつつも、歩みを止めてくれた彼女。
思った事を言葉にするのは、何時だって凄く難しいけど。
「シノの事・・・待ってるから!いつまでも!」
『・・・そう、ですか。』
発砲音が鳴るとと同時に、視界が切り替わっていく。
直接的な力をあまり持たない彼女の勇気は。
確かに、この戦場に少しの時間を作り出した・・・と思う。
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼廃校対策委員会 シロコ視点
ホシノ先輩はさっきの傷を治療している、ユメ先輩も動けそうにない。
なら、私達で時間を作るしかない。
「シロコ先輩・・・!射撃が来ます!」
「ん、分かってる。」
耳元を物凄い速度で通り過ぎる弾。
もし当たれば耐えられそうにない。
「一体どうやったらあんなに強くなるのよ・・・!」
「まるで別人みたいですもんね・・・」
確かに別人・・・別人みたいだ。
ずっと抑えてきた・・・というには少し引っかかる。
さっきまで一緒に戦っていた時とは少し違う気がする。
まるで、何か混ざっているような・・・そんな違和感。
もう一人の私が神秘の・・・死の神の”本質”とやらに抗えなかったように。
キヴォトスの人の持つ神秘は、あくまで純粋な力じゃない・・・?
「・・・今のシノは自分を見失いかけている?」
「成程、何かきっかけがあればいいんですが・・・」
とはいえ、今の彼女に話して聞いてもらえるとは思えない。
それに足止めもしないといけない。
「つまり出来るだけシノ先輩を消耗させつつ、声もかけるという事ですか・・・?」
「だ、大分無茶な注文ね・・・まあやるしかないなら覚悟を決めるわよ。」
「ん、出来るところまで・・・やってみよう。」
私を助けに皆が来てくれたように、シノの事を思って沢山の人間が頑張っている。
その事をシノに伝えないと。
「・・・っ!」
先ほどまで顔のあった部分に、弾丸が通過する。
数分しか時間は経ってないはずなのに、まるで何時間も戦っているかのような緊張感を感じる。
針に糸を通すような、そんな戦闘。
それでいて・・・
「全弾発射します・・・!」
「覚悟しなさいよ・・・!」
ノノミのミニガンの掃射とセリカの射撃を、その身で受けきったシノ。
ダメージがないわけではない、それにしても硬すぎる。
「シノちゃん・・・!どうかちゃんと私達を見てください・・・!」
「どうしていつも一人で突っ走るのよ!?相談は無理だとしてもせめて一言くらい・・・ああぁ、もうっ!」
『話したところで何になるって・・・』
「わっかんないわよ!」
『なっ・・・』
「分かんないけど!皆必死に考えるわよ!その結果が”これ”しかなかったら・・・その時も止めると思うけど!」
『そんな無茶苦茶な・・・』
「
無防備なシノにセリカの右ストレートが突き刺さる。
何時の間にそんなに距離を・・・
気を持ち直したシノが振り払った散弾銃の銃身が直撃し、吹き飛ばされたセリカの姿が消える。
「確かに・・・私達に出来る事は少ないかもしれません。」
「辛くて苦しい時は・・・傍にいてあげるくらいなら・・・出来るんですよ?」
『・・・』
ノノミに弾が当たる直前に、姿が掻き消える。
残ったのは私とアヤネだけ。
「ん、例え何があったとしても・・・シノの居場所はここにある。」
「帰ったら反省書ですから覚悟しておいてくださいね・・・!」
『・・・あぁ。あったかいね。でも・・・』
『そんな未来は来ないよ、ごめんね・・・
私達を見る目が、少しだけ何時ものシノに戻った気がする。
なら、後は少しでも長く時間を稼ぐ・・・!
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼ゲーム開発部 モモイ視点
「うわぁぁぁぁ!?」
まるでビームのような弾丸が、鼻元を掠める。
あ、当たったら首でも飛んでいくんじゃ・・・!?
「アリスちゃんを守らなきゃいけないのは当然だけど、無理だけはしちゃダメよ・・・!」
「わっ、分かってるって大丈夫だよ・・・!ユウカは心配症だなぁ・・・!」
虚勢を張った。
仲間が一緒なら怖くない、そう思っていたけど。
実際に今のシノ先輩を見ると正直、怖くて仕方ない。
アリスが船に乗ると言わなければ、この場所に私達はいなかったかもしれない位だったから。
休憩室で見た時とはまるで別人。
どちらが・・・いや、どちらもシノ先輩の本当の姿なんだろう。
楽しそうに私達のゲームの話を聞いてくれた彼女も、アリスとケイを助けてくれた彼女も。
・・・そして、今復讐に取りつかれている彼女も。
場違いにも程があるよ、私達・・・ゲーム開発する部活の筈なんだけどな。
「お、お姉ちゃん・・・?」
「モモイ?大丈夫・・・?」
妹とユズが心配そうに私を見ている。
先生とアリスが必死になって頑張っているのに、私が腰を抜かしていてどうする。
「ふふっ、大丈夫だよ。それにまだ聞いてないでしょ?」
「な、何を?まさか・・・」
「私達の作ったゲームの感想、だよ。」
虚勢でもいい、私は私に出来る事をしよう。
それが、きっと私の役目だ。
光の剣をチャージしている間、アリスは動けない。
つまり、あの攻撃を回避できない。
とは言え、アリスの光の剣が有効打になる以上は、アリスの事を狙ってくるだろう。
だから、何とかしてあれを相殺しないと・・・!
”来るよゲーム開発部の皆・・・!”
「うん、任せてよ!」
ユズもミドリもそれぞれの銃を構える、アリスの元には弾の一発すら届かせやしない・・・!
私とユズが散弾をある程度破壊し、撃ち漏らしは・・・
「ドットを撃つように緻密に・・・!」
ミドリが抑えてくれる。
「ナイスだよ2人とも!」
「・・・でも、ビームが来る。」
真っ赤に染まった銃身がこちらに向けられている。
先ほどと同じようなビームを放つつもりなんだろう。
背丈よりも大きな赤い光束が、私達とアリスの方向へ向けて放たれた。
「行きます・・・!」
ユズのグレネードが、私の掃射が、ミドリの狙撃が勢いを殺す。
それでも、まだ足りない。
”転送を・・・”
「待って、先生・・・!私達を信じて!」
目の前まで赤い光が迫っている。
でも、後ろにはアリスが私達を信じて待っている。
もうリロードをしないと弾は出ない。それならもう後は・・・
「この身体で止めるっ・・・!」
”モモイ!?”
銃を前面に出して、身体で受け止める。
熱い、熱すぎて意識が飛びそうになる。
「私達のぉ!冒険はっ!!」
でも、耐えられない程じゃない!
「ここからだぁあああ!!!」
真っ赤だった視界が開けると同時に思わず倒れこむ、それとともに視界が切り替わっていく。
ここまでか・・・でも。
後はきっと、勇者が決めてくれる。
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼アリス視点
「モモイ、ミドリ、ユズ・・・!」
「彼女達は無事だから、落ち着いてアリス。貴方ならきっとできるわ。」
「根拠のない激励、貴方らしくはありませんが・・・私は嫌いではありませんよ。」
「この超絶美少女天才ハッカーがサポートするのです。」
「万に一も外すことはありませんから安心してください!」
「分かりましたリオ先輩、ヒマリ先輩・・・!」
「エネルギー充填95・・・100%・・・!」
光の剣が青い光を放っている。
「もう砲身が限界よ、これ以上は・・・」
「まだです・・・!ケイ!力を貸してください!」
紫色の光が混ざり始める、もっと・・・もっと!
「エネルギー充填率105・・・110・・・120%!」
「決めましょう、アリス!」
「はい!この一撃で止めて見せます・・・!」
皆が繋いでくれたバトンを、皆の想いをこの一撃に乗せます・・・!
「「光―――よ!!!」」
青と紫の奔流が、シノさんを包み込んでいく。
余りにも大きなエネルギーの余波で立っていられない程の一撃。
辺り一面を覆う煙が張れ、何かがぽろぽろと崩れていく。
まさかシノさんを・・・いや、これは・・・
「赤い・・・茨?」
「アリス、後ろですッ!!」
背中に強い衝撃を受けて体勢を崩して。
地面から見えたのは、ボロボロになった彼女の・・・足元でした。
「まだ、立って・・・?」
「来ると分かっていれば、防御に注力するだけです。」
当たりはしたのだろう、でも茨で直撃を反らされて・・・!
『皆の想いは確かに受け取りました・・・が。』
『感情や想いの強さなんかで強くなれるのなら、あの世界は滅ばなかったはずなんです。』
視界が切り替わっていく、帰還用モジュールを先生が発動させたのでしょう。
後一手・・・届かなかった。
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼シノ視点
何時の間にか、声は聞こえなくなっていた。
思考が酷く澄んでいる、憑き物が落ちたとはこの事だろうか。
間違いなく・・・私は今、
これは誰のものでもない、
私が許せないから行う、自己満足。
そこに、皆の遺志も・・・りょーちゃんも関係無い。
そんな私の前に立ちふさがる、彼女。
「行かせない・・・!」
『どいてください、ホシノ先輩。』
「まだ負けてないから・・・!」
『その足でですか?』
先ほどの戦いのせいで、大きく機動力が削がれた今。
戦いにならないのは彼女が一番わかっているだろうに。
私には勿体ないくらい、良い先輩だ。
左手に持った散弾銃を撃つ。
盾で防がれるものの、勢いを殺しきれず盾が仰け反る。
右手に持った散弾銃を撃つ。
受けきれずに盾は宙を舞う。
左手に持った散弾銃の先を・・・突きつける。
戦闘はあまりにも防戦一方で、決着はあまりにも一方的だった。
もしも怪我がなければ。もしも準備が出来ていればなんてものは・・・所詮たらればでしかない。
「まだ・・・まだ・・・!」
”ホシノ・・・”
『ごめんなさい、ホシノ先輩。』
「まだ終わって・・・!」
『後の事は・・・よろしく頼みます。』
「や、いやだ・・・待ってよ・・・!」
”後は・・・私に任せて。”
「待って、せんせ―――!」
銃口の先のホシノ先輩の姿が霞のように消えさる。
引き金を引くことにならなくて良かった。
脱出シークエンスの回数は残り・・・
▼先生視点
”もう危険だから、リンちゃんもアユムもモモカも・・・先に戻っていて。”
「・・・先生、正気?」
”うん。やっぱり・・・諦めたくないから。”
「なっ・・・!私達も最後まで先生をサポートしま―――」
リンちゃん達を脱出させた。
”・・・身勝手な事ばかりして、ごめんね。”
いつ崩れるか分からない船に、何時までも彼女達を残しておくわけにはいかないから。
脱出シークエンスの回数は残り・・・
ユメも先に帰すべきだ、ここから先は彼女のこれから起こるかもしれない事はきっと・・・
彼女に深い傷を残してしまうから。
”ユメ・・・ユメ?”
じっと戦いの行方を見ていたユメは、
「先生・・・ごめんね?私やらなくちゃいけない事が出来たから。」
”・・・うん。”
「だから何があっても・・・見守っていてほしい。」
確かにシノの意思は固いだろう、もし言葉を届けられるとしたらそれは・・・
彼女しかいない。
私は、私にしか出来ない事を・・・しよう。
▼ナラム・シンの玉座にて
動かなくなったもう一人の先生。
その前に手を広げて立ちふさがる、もう一人のシロコ。
いや、色彩の教導者達・・・と呼ぶべきだろう。
「・・・。」
『これで―――終わりです。』
「もう・・・取り残されるのは嫌だから・・・私からにして。」
長かった戦いに・・・ついに終止符を打つ時が来た。
今から私が行うのは紛れもない人殺し。
その事を実感すると、少し手元が震える。
皆の想いを聞いた。
彼女達にだって理由があった事を知った。
りょーちゃん達だって、きっと私にこんな事をして欲しい訳じゃないだろうとも思う。
この出来事に、悪意を持った黒幕が居て・・・そいつを倒して物語は終わり。
そんな、勧善懲悪の物語じゃなくて。
そこには二組の被害者がいるだけ。
それでも、私は色彩が・・・教導者達が憎くて仕方ない。
許すことができない。
だから私は引き金を引く。
「・・・シノちゃん。」
『・・・ユメ先輩。』
そんな私の目の前に立った、ユメ先輩。
きっとユメ先輩なら最後はそうするだろうとも思っていた。
私は先輩に銃を向ける事も・・・覚悟して・・・
「あのね、言いたいことは沢山あったんだ。」
「きっと皆は復讐を望んでるわけじゃないとか。」
「こんなことがあっていいはずがないとか。」
『そんなことはわかって・・・』
「でも、違うんだ。私にとって・・・一番大切な事。」
そう言って、私に盾も持たずに近づいてくる先輩。
そのまま私が構えた
振りほどこうと思えば、振りほどける。
私の方が力は強いのだから。
彼女の話に耳を貸す必要なんてない。
それでも、何故か言葉の先を聞きたいと思っている自分がいて。
「あんまり頭の良くない私なりに沢山考えたの、私はどうしたいかなって。」
「私は・・・シノちゃんを一人にしたくない。」
「シノちゃんに寂しい思いをさせたくない。」
「だからさ・・・」
そう言って彼女は、
『なにをしているんですかユメ先輩・・・その意味が分かって・・・!』
「うん、分かってるよ。」
「その十字架は、シノちゃんだけには背負わせない。」
「シノちゃんの先輩としてでも、滅んだ世界のただ二人の生き残りとしてでも・・・」
「・・・私が隣にいるよ。」
あまりの衝撃に上手く息が吸えない、呼吸の仕方が分からなくなったかのような錯覚を覚える。
手元が震える、しかしユメ先輩が銃身を掴んでいて・・・
その先にはもう一人のシロコちゃん達がいる。
『私は・・・』
「うん、大丈夫。何があってもいつまでも・・・一緒だよ。」
私は、銃を・・・引き金を―――
このアンケートはあくまで意識調査のようなものだと思っていただければ結構です。
必ずしも結果がこの物語を左右するものでない事はご理解ください。
私は、引き金を・・・
-
引いた
-
引かなかった