ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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「もう一つの結末」も執筆予定です。


物語の終わり

▼ナラム・シンの玉座 シノ視点

 

 

 

『私、私は・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

力強く握っていた散弾銃(Eyes of Horus)の引き金から、ゆっくりと指を離す。

 

 

 

私は、銃を・・・引き金を―――引かなかった。

 

 

 

引けなかった・・・とも言えるのかもしれない。

覚悟はしていたつもりだった。

ユメ先輩に銃を向ける覚悟も嫌われる覚悟も。

 

 

でも、色々な物を秤にかけて・・・最後にユメ先輩に誰かを殺めさせるなんて事が出来なかった。

今となっては、本当に彼女を傷つける覚悟があったのかも分からない。

所詮、私は・・・肝心な所で役に立たない人間だから。

 

 

「そっか、それがシノちゃんの・・・選択なんだね。」

「私は、()()()()()()()()()()()・・・その判断を受け入れるよ。」

 

 

そう言って複雑そうな顔で、散弾銃を握っていた彼女もゆっくりと銃を下す。

静寂が響き渡る室内で、その静寂を破ったのは私でもなく、ユメ先輩でも先生でもなかった。

 

 

 

 

 

「・・・なんで。」

 

『・・・』

 

「お願い、お願いだからもう終わりに・・・!」

 

 

 

慟哭にも似た叫び、彼女もここで終わりになる事を望んでいたのかもしれない。

逆の立場だったらどうだろうか、私には分からないが・・・

 

 

それでも彼女達の事を許したわけではない、許せるわけがない。

 

 

 

『楽になるなんて、許しませんから。』

 

「そん・・・な。」

 

 

 

 

 

『だから、貴方が奪った分まで悩んで悩んで悩んで生きて・・・罪を償ってください。』

 

 

 

 

罪を償い切る事なんてできないと思う。

だからきっと終わることはないだろう・・・贖罪の旅。

 

 

 

 

「私・・・」

 

 

 

苦しいものになるだろう。

悩んで苦しんで、()()()()()()()()()()だなんて思う夜が続くと思う。

 

 

 

「償っても・・・いいんだ。」

 

 

 

それでも、そこに一筋の何かを見出した彼女。

そんな彼女をみて、何処か自分を重ねていた。

 

もしかしたら、私も・・・赦しを求めていたのかもしれない。

 

 

 

グラリと地面が揺れる。

ユメ先輩達と話したいことは・・・沢山あるが。

船の自壊は進んでいる、このままでは崩れ行く船と運命を共にすることになる。

 

 

脱出シークエンスの回数は残り・・・3回。

ユメ先輩と私と・・・それと先生の分。

 

だが、先生は自分の身より生徒を優先すると思う。

彼女の分が含まれていないのは、当然だがそれよりも・・・黒服はどうするつもりなのだろうか。

 

 

”シノ、ユメ・・・話したいことは沢山あるけど・・・帰ろうか。”

 

 

”脱出シークエンスの準備は出来ているよ、一応だけど6回分。”

 

「空間転移の調整をしたのは、一度目や二度目という訳ではありませんからね。」

「さすがにシッテムの箱が()()無ければ厳しい所ではありましたが・・・」

 

”プラナが手伝ってくれなければ、どうなっていたか・・・”

 

 

姿の見えなかった先生は、全員分の帰還の手段を用意していたらしい。

無駄になるかもしれないのに、随分とまあ・・・

 

 

たが、おそらくプレナパテスは、もう先が無いのだろう。

死んだ身体を無理やり動かしていただけのようなものだったから。

 

 

「ホシ・・・・・・ノ。」

 

 

壊れかけたプレナパテスが呼んでいる、恐らくは・・・私を。

 

 

 

『謝罪の言葉なら必要ありません、聞きたくもないので。』

 

 

「・・・」

 

 

『それと私は・・・高那シノですから。』

 

 

最期の謝罪の言葉を聞いてあげる程、暇ではないし優しくも無い。

結局、私は貴方達を許したわけではないのだから。

 

 

 

『だからその時間は、貴方の生徒の為に使えばいい。』

 

 

 

転送は着々と進んでいく。

壊れかけた船の能力を使っているので先ほどと違い一瞬という訳では無いが・・・

少しずつ視界が白み始める。

 

 

 

見殺しにした私と、世界を滅ぼした彼女達。

 

 

人を殺したものは、許されるべきなのか。

 

 

結局の所、先生も私もその問いに答えを出す事は出来なかった。

それは7つの古則のように、答えの出ないものなのかもしれない。

 

 

私は彼女達を許したわけじゃなくて。

私が引き金を引かなかった・・・引けなかったのは。

天秤が傾いたから、それだけのこと。

 

 

色々なものを天秤に乗せていった。

補習授業部の皆、こちらのアビドスの皆。

そして、もう一人のシロコちゃんの境遇や事情。

そう言ったものを乗せて、ノセテ、載せていって―――

 

最後にユメ先輩を載せて・・・天秤が傾いただけ。

世界とユメ先輩を天秤にかけて、先輩を取った私には初めから無理な話だったのかもしれない。

 

 

そうして私の復讐は終わった・・・()()()()()()()()

 

 

今でもあの時のことを夢に見る。

引き金を引けばよかったと思った事も、一度や二度じゃない。

 

復讐は何も生まないなんてよく言うけど、それは綺麗事だ。

そうする事でしか、前に進めない人だっている。

 

本当にあの時の選択が正しかったのか。

そして、この世界に来る事になった選択は正しかったのか。

私には分からない、そして分かる事も無いだろう。

その事について、きっとこれから先も悩んで・・・苦しみ続けるのだろう。

 

 

 

 

 

 

▼とある少女の独白

 

 

あれから数日、未だにシノちゃんは目を覚まさない。

黒い服の人は、問題は無いはずなんて言っていたけど。

 

 

結局あの日、シノちゃんは引き金を引かなかった。

もし、私が立ち塞がるだけだったら・・・シノちゃんは引き金を引いていたのだろうか。

 

 

私の感情的には、シノちゃんを止めたかった・・・訳ではなかった。

正確には、止めたい気持ちと止めたくない気持ちが半々といった所で。

 

でもシノちゃんを一人にだけはしたくなかったんだ

それが結果として、彼女にとっての重荷になってしまった。

 

 

結局の所、シノちゃんにとって私はあくまで守るべき存在で・・・

隣を歩きたいのに、離れていく一方に感じる。

私は、お姫様扱いしてほしい訳じゃないのに・・・

 

 

 

それでも、シノちゃんが誰かを殺めることが無かったことに安心している自分もいる。

 

でも、それはきっと・・・私のせいで。

私のせいで・・・彼女の人生を歪めてしまったという事。

 

 

 

 

・・・その責任は、私が取らないと。

 

 

 

 

 

 

 

▼アビドス高校にて

 

 

 

 

 

アトラ・ハシース占領戦から、一ヶ月が経った。

シノちゃんとユメちゃんは、未だにこのアビドスに帰ってきてはいない。

 

先生の話だと、二人とも無事ではあると聞いたけど。

もしかしたら、このまま帰ってこないのかもしれないなんて。

そんな事をどうしても思ってしまう。

 

 

そんなある日、先生が久しぶりにこっちに顔を出すとの連絡が来た。

あの事件の後処理に追われていて忙しそうだったのだが・・・

何故か当番は必要無いの一点張りで。

 

 

”お待たせ、ホシノ!”

 

「ただいま~!一か月ぶりだねホシノちゃん!」

 

 

「せ、先生と・・・ユメちゃん!?」

 

 

そう言って私の前に現れたのは、何故か大きな台車を引いてきた先生とユメ先輩。

その上には大きなラッピングされた箱がガタガタと揺れている。

 

 

「い、一体どこに行ってたのさ!?それにこれは・・・?」

 

”とりあえずみんな集まってるって聞いてるし、部室で話そっか。”

 

 

 

急ぎ足で、廃校対策委員会の部室に向かう。

部室には全員揃ってはいたのだが・・・

 

 

「わぁ~プレゼントですかぁ~?」

 

「随分と大きいですね、何が入っているんでしょうか・・・?」

 

「ちょ、ちょっと。今動かなかった?」

 

「ん、多分だけど・・・」

 

 

部屋の中央に置かれた、大きな大きな箱。

その箱が、確かにガタリと動いたような気がする。

 

 

「せ、先生・・・開けても良い?」

 

”うん、良いよ。”

 

ラッピングをほどいて、箱を開ける。

ある程度予測はしてはいたんだけど。

中から出てきたのは・・・

 

 

「じゃーん!ホシノちゃんの妹の小鳥遊シノちゃんだよ!」

 

『ち、違いますからね!?』

 

 

一か月前から姿を見せなかった、シノちゃんだった。

 

 

 

 

 

『あ、あの・・・ここまで来たら逃げたりしないので解いてください・・・』

 

 

丁寧にラッピングされていたシノちゃんを解いて、席に座らせる。

そんなシノちゃんだが、何処かバツが悪そうに明後日の方向を向いている。

 

 

「それで・・・何処に行ってたのよ?」

 

『それには深い理由があってですね・・・』

 

 

そう言って話し始めた彼女の言葉は・・・

 

 

『無茶をしすぎた反動で色々と治療が必要だったり・・・』

 

『迷惑をかけた皆さんの元に謝りに行ったり・・・』

 

 

何かを隠しているように、何処か歯切れが悪い。

 

 

「いや、せめて連絡くらいよこしなさいよ!?」

 

『それは・・・そうなんですが・・・』

 

 

セリカちゃんの言う事ももっともだ。

あれからモモトークも、返信が無かったし。

ずっと心配していたというのに、一体何が・・・

 

 

『あ、あれだけの迷惑かけておいて・・・合わせる顔が無いなって。』

『そう思ったら踏ん切りというか何というか・・・』

 

 

その気持ちは、痛いほどわかるけど。

私達としては、連絡くらいは返して欲しかった。

 

 

「はあ・・・今日の夜はシノ先輩の奢りだから。」

 

『そ、それだけ・・・なんですか?もっとこう何か・・・』

 

 

「言いたいことはあるけどさ、何はともあれ・・・」

 

 

聞きたいことも、話したいことも沢山あった。

それでもまずは・・・この言葉を伝えたかったんだ。

 

 

「おかえり、シノちゃん。」

 

『うっ・・・えっと。』

 

 

 

『た、ただいま・・・です。』

 

 

 

 

 

 

 

アビドスの皆と再開してから、数週間が経った。

 

 

あれだけの事があったというのに、世界は何時も通りの活気を取り戻しつつあって。

未だに、私だけが世界から取り残されたような気持ちになる。

 

 

それでも・・・例え勇者が魔王を倒しても、倒さなくても・・・お話は続いていく。

 

 

 

完璧なエンディングなんて無いんだろう。

それでもエンディングの後も私達は生きていく、明日が来る限り。

 

 

とある午後の昼下がり。

いつの日か来た、お洒落な雰囲気の喫茶店に入る。

店内は人であふれかえっているだけあって、中々人気なお店らしい。

 

 

 

「ここの苺のパンケーキ、来てみたいって言ってたけど・・・来れて良かったね!」

 

「初めて会った日以来かぁ・・・おじさん、見てるだけでお腹いっぱいになっちゃいそうだよ~」

 

『とりあえず注文しちゃいましょうか?』

 

 

 

物語(ストーリー)に結末はあっても・・・

 

 

 

「うへぇ~美味しいけどお洒落すぎるよぉ・・・」

 

『美味しいです・・・けど、かなり甘いですね。』

 

「え~?ちょうどよくない?」

 

『私には、甘すぎて・・・』

 

 

 

青春(ブルーアーカイブ)が終わる訳ではないのだから。

 

 

 

 

『甘すぎて・・・胸焼けしちゃいそうです。』

 

 





このお話を通して、一度でも・・・

誰かが心を痛めて、辛い気持ちになったでしょうか。
それとも仄暗い感情が鎌首をもたげたでしょうか。
咲いた白百合に微笑ましい気持ちになったでしょうか。

誰かの言葉が、まるで声がついたかのように再生されたでしょうか。

つまるところ、私の見た景色と同じ景色を少しでも皆さんと共有出来ていたら・・・
とても嬉しい事だと思います。


もう一つの結末や後日談を幾つか書いたり、文章の見直しをする予定はありますが
一旦、本編は完結とさせていただきます。
もう少しだけ、物語の余韻をお楽しみください。

今の所、アビドス3章を書く予定はないのですが・・・
展開が思いけば続きを書くかもしれません。


最後になりますが、完結まで応援していただいて本当にありがとうございました。
また何処かでお会いしましょう。

私は、引き金を・・・

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