ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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―――どれも、有り得たかもしれない未来だから。



お待たせしました、もう一つの結末になります。
流血表現等が含まれるので、苦手な方は閲覧をお控えください。



IF~もしもの話~
IF 物語の終わり


▼ナラム・シンの玉座 シノ視点

 

 

 

 

 

『私、私は・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散弾銃(Eyes of Horus)の引き金を・・・引いた。

 

パァンと言う乾いた音が響き渡る。

打ち出された弾丸は、もう一人のシロコの腹部を貫き、鮮血が頬に飛び散る。

出血量も多い、この傷なら・・・助かる事は無いだろう。

 

 

「あぁ・・・やっと・・・()()()()んだ。」

 

黒い床に真っ赤な花を咲かせた彼女は、ゆっくりとプレナパテスに近づいていく。

()()()()()()が、生暖かくて・・・それが自分の()()()()を裏付けるようで。

 

 

「ごめんね、先生。私―――悪い・・・子で。」

 

「わたし・・・は。」

 

「もういいの、良いんだよ・・・先生。ほら・・・」

「皆が・・・待ってるから。」

 

「シロ・・・コ・・・」

「私、先生の・・・生徒で―――」

 

 

重なり合うように倒れた2人は、そうして動かなくなった。

 

 

私は、銃を・・・引き金を―――引いた。

覚悟はしていた。

少なくともそのつもりではあった。

 

 

それでも確かに私が・・・私達が引いた引き金は誰かの命を奪った。

その事実に、少しだけ言葉で言い表せないような感情を抱いている事も確かだった。

 

 

でもこれで、復讐は終わった。

復讐を終えた感想は・・・

 

 

背負っていた荷物が無くなったかのようなそんな感覚。

 

 

握っていた散弾銃を、ゆっくりと下ろす。

重なり合うように絶えた2人を、これ以上辱めるつもりもなかったから。

 

 

 

私は色んなものを天秤に乗せていって、最終的に復讐する事を選んだ。

そこにあるのは、何を捨てて何を取るか。

 

 

 

「そっか、それがシノちゃんの・・・選択なんだね。」

「私は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・その判断を受け入れるよ。」

 

 

「・・・帰ろうかシノ、ユメ。」

 

『・・・えぇ。』

 

 

そう告げた、先生の顔を見るのが怖くて。

私は振り返らずに返事を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼とある少女の独白

 

 

 

 

 

あれから数日、未だにシノちゃんは目を覚まさない。

 

黒い服の人は、問題は無いはずなんて言っていたけど。

 

 

 

 

 

結局あの日、シノちゃんは・・・いや、()()は引き金を引いた。

確かに、あの日私達は一線を越えたんだ。

 

 

 

 

私の感情的には、シノちゃんを止めたかった・・・訳ではなかった。

正確には、止めたい気持ちと止めたくない気持ちが半々といった所で。

 

 

でもシノちゃんを一人にだけはしたくなかったんだ。

 

 

 

時折、自分がやった事を思い出して吐きそうになる。

私の根底にあったものに、ポッカリと穴が開いてしまったような・・・そんな感覚。

言葉にするのは難しいけど・・・

私はもう昔みたいにきっと、綺麗な綺麗な理想論を語ることは出来ないのだろう。

 

 

皆と同じ陽だまりを歩くことは・・・出来ないのだろう。

 

 

 

 

 

それでも、あの時・・・シノちゃんは私の事を初めて対等に見てくれた気がする。

守らなきゃいけない人じゃなくて、隣を歩む人として。

 

 

たとえ暗い道を歩くことになるとしても、私達は独りじゃない。

私が、シノちゃんを一人にはしないからね。

 

 

 

 

 

▼???

 

 

アトラ・ハシース占領戦から、一ヶ月が経った。

 

シノちゃんとユメちゃんは、未だにこのアビドスに帰ってきてはいない。

 

 

 

先生の話だと、二人とも無事ではあると聞いたけど。

 

帰ってくるかは・・・分からないって。

 

もしかしたら、本当にこのまま帰ってこないのかもしれないなんて。

そんな事をどうしても思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

『ここは・・・あぁ。』

 

「おや、目が覚めたのですね・・・それは良かった。」

 

 

何時の日か見たオフィスの簡素なベッドで、私は眠っていたらしい。

腕にはよく分からない器具が巻いてあるし、点滴も刺さっている。

 

 

「点滴はあくまで栄養補給のための物ですので、ご心配なく。」

 

『聞いても無い事をわざわざどうも・・・いえ、流石に失礼でしたね。』

 

 

『ありがとうございます・・・助けてくれたんですよね?』

 

「・・・おや、珍しい事もあるものですね。」

「ですが、これもあくまで契約の範疇ですのであまりお気になさられずに。」

 

「それでは私は用事がありますので・・・ああ、そうです。」

「こういう時は、こう言うべきだと聞きました。」

 

 

 

 

「おかえりなさい、シノさん。」

 

『・・・柄にもない事を言いますね。一応、ただいまと言っておきます。』

 

 

「ククッ、あなたの面白い顔を見る事が出来ただけ収穫と言えるかもしれませんね。」

 

 

 

荷物をまとめる、いつまでもここに居る訳にも行かないから。

外は真っ暗で、時計を見ると午後の3時と表示されている。

 

ここを出て、それから・・・それからどうしようか。

私は、生きていても良いんだろうか。

もし、()()()()()なら・・・せめて()一番近い所(アビドスの砂漠)で・・・

そんな事を考えながら、ドアを開けたその時だった。

 

「何処に行くつもりなの?シノちゃん。」

 

『ユ・・・ユメ先輩!?どうしてここが・・・』

 

「そりゃあ私もシノちゃんの看病してたから。目を離したらすぐ何処か行っちゃうんだから。」

 

彼女には、告げずに何処か行こうと思っていた。

決意が揺らいでしまいそうだったから。

 

「もしシノちゃんが()()()()()()っていうのなら、私も着いていくからね。」

 

『・・・なんで。』

 

「たった一人の大切な後輩の考える事が・・・分からない訳ないでしょ?」

 

『先輩、私は・・・』

 

「・・・少し歩こうか。あの時みたいにさ?」

「その方が・・・話しやすいでしょ?」

 

 

 

 

 

 

▼アビドス市内にて

 

 

 

話そうと言った割には、互いに口を開かないままゆっくりと街を歩く。

ユメ先輩は何も言わない、私が話すのを待ってくれているのだろう。

 

 

『私は、ユメ先輩には生きてほしくて・・・』

 

「だから、一人で行こうとしたの?」

 

 

「私を一人っきりにして。」

 

 

『・・・それは。』

 

考えていなかった訳では無かった、考えないようにはしてたかもしれないけれど。

 

 

「引き金を引いたのはシノちゃんじゃなくて・・・()()なんだよ。」

「だから、陽だまりに戻れないのは私も・・・同じ。」

 

『それは・・・』

 

 

違う、とは言えなかった。

確かにあの時引き金を引いたのは・・・私達だ。

 

 

「折角あの時、対等に見てくれたと思ったのに・・・私の事はそんなに信用できない?」

 

『そんなことは無くて・・・!』

 

「一緒だよ。シノちゃんがやろうとしてたことは・・・そう言ってるのと同じ。」

 

 

「確かに、私達は陽だまりには戻れないかもしれない。」

 

 

「でもさ・・・世界には、陽だまりだけじゃないんだよ。」

「日の当たらない路地裏にだって、花は咲く。」

 

 

「これからの人生はきっと罪の意識とか、奪ったものの重さとか・・・色んな物に苛まれて生きていく事になるとは思うよ。」

 

本当にあの時の選択が正しかったのかなんて悩むことも沢山あると思う。」

 

 

『・・・えぇ。』

 

 

「でもさ・・・シノちゃんと一緒なら、どんなに暗い路地裏でも・・・」

 

「二輪の花を咲かせられるって・・・私は思うよ。」

 

 

 

『ユメ先輩・・・』

 

 

「だからさ、シノちゃんさえよければ。これからも一緒に隣を歩いてくれない・・・かな?」

 

 

 

私は、生きててもいいのだろうか。

人を殺した者は許されてもいいのだろうか、私には分からないけど。

 

 

 

『・・・はい、私で良ければ。』

 

 

 

彼女を一人にしないために、これからを生きていこうと思う。

 

どうやらかなり歩いていたらしい、随分と高いところまで来てしまっていた。

いつの間にか昇っていた朝日が、アビドスの街を照らしている。

 

 

 

モモトークの通知が鳴る。

誰からかは分からないけど、これを見たらきっと皆に会いたくなってしまう。

私達の世界は既に分かたれたと言うのに。

 

 

だから・・・

 

 

「私のもお願い、シノちゃん。」

 

『・・・分かりました、ユメ先輩。』

 

 

ユメ先輩からスマートフォンを受け取って、散弾銃を構える。

きっと、彼女も同じ想いだったのだろう。

 

空に向けて、スマートフォンを放り投げる。

決別の意思表示を込めて。

 

そして、私は引き金を―――

 

 

 

”待って!ストップッ!!”

 

 

 

引きかけた所で、横から走って来た人物が地面に落ちる直前にキャッチする。

 

 

 

「せ、先生・・・?」

 

『どうしてここに?いや、そもそもどうやって場所を・・・?』

 

”はぁ・・・はぁ・・・ゴメンちょっと待って、走りすぎて息が出来ない・・・!”

 

『・・・』

 

 

私達のスマホを掴んでいたのは、あの日以来会っていなかった先生だった。

 

 

 

 

 

 

▼アビドス市内にて 先生視点

 

 

今日でアトラ・ハシースの箱舟の占領戦が終わってからちょうど一週間。

あの日から2人をずっと探していた。

だけど何処を探しても、シッテムの箱の機能をフルで駆使しても見つからなかった。

 

それでも、諦める訳にはいかなかった。

諦めたくはなかった。

このまま・・・答えを出さないまま終わってしまえば。

取り返しのつかない事になる気がしていたから。

 

 

 

「だ、大丈夫・・・先生?お水いる?」

 

『・・・それで、どうしたんですか先生。』

 

 

どこか気まずそうに声を掛けてきたシノと、心配そうな顔でのぞき込んできたユメ。

おそらくは、携帯の電源も切っていたのだろう・・・つい先程までは。

決定的な場面になる前に、ここに来ることは出来たが。

それでも、まだ終わっていない。

間に合っただけだ。

 

 

 

<君が答えられなかった、あの問いを覚えているかい?>

<その、答えを出す時が来る。>

 

 

何時の日か、セイアが予知していた()()

 

 

”伝えたいことがあったんだ、2人に・・・”

 

 

確かに間違えた事をした子は叱ってあげないといけない。

今回はどんな理由があったとしても、()()()()があっちゃいけないと思う。

でも、今伝えたいのはそんな事じゃなくて。

 

 

”確かに、2人がしたことは・・・いけない事だ。”

 

「うん。」

 

『今更お説教ですか・・・?許されない事なんて、私達が一番わかって―――』

 

 

 

 

 

”―――でも、私が許すから!”

 

「えっ?」

 

『な、なんで先生が・・・それに先生が許したところで何が変わるって言うんですか。』

 

 

 

例え罪を犯したとしても、赦されない事をしたとしても・・・

例え世間が許さなくても。誰かが許さなくても・・・

 

 

生徒が友情を・・・青春を捨てて生きていかなくちゃいけない事なんてあっていいはずがない。

その為なら私は喜んで矢面に立って石を投げられよう。

それが、私の責任だ。

 

 

”シノもユメも・・・私にとって大切な生徒だから!たとえ何があっても!!”

 

 

先生としても、大人としても正しいかなんて分からないけど。

でも、誰も味方のいない子供達の味方に。

そんな生徒達の味方に・・・()なってあげられるのは・・・

 

 

私・・・だけだろうが。

 

 

”だから!自分から皆と離れていこうなんてしないでほしいんだ・・・!”

 

 

『・・・』

 

 

”これでとの関係を終わりになんて・・・する必要は無いんだ・・・”

 

 

長い、長い沈黙の中で息を吐く。

1秒1秒がまるで、鉛のように重く感じる。

 

 

アビドス高校(陽だまり)に戻る気は・・・ありませんけど。』

 

”・・・うん。”

 

 

 

『スマートフォン・・・返してもらっても良いですか?』

 

”・・・えっと。”

 

『もう、壊したりなんてしませんから。』

 

 

 

『・・・それでいいですかユメ先輩?』

 

「うん、そうしよっか。私も皆に二度と会えないのは寂しいと思ってたんだよね・・・」

 

 

 

『その内、シャーレにも顔を出しますから・・・それまではお別れです。』

 

「それじゃあ、()()ね・・・先生。」

 

 

”う、うん。待ってるから・・・!”

 

 

 

そうして二人は何処かへと去って行った、本当に会えるかの確証は無いけど。

きっとまたいつの日か会えることを・・・私は信じている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼どこかの街の路地にて

 

 

 

そうして、私達の長い一週間は終わりを告げた。

 

あの日から随分と時間が経った。

私とユメ先輩は、ヘルメット団に紛れて仕事をしたりして今日の日銭を稼いでいる。

貯蓄がない訳では・・・無いんだけど。

 

 

結果として、私達はアビドスには戻らなかった。

やっぱり、どうしても()()に居るべきじゃないと思ったから。

 

それでも、定期的にモモトークで連絡は取っているし今日は・・・

 

 

 

「そろそろ行かないと、ホシノちゃん達待たせちゃうよ・・・ってどうしたのシノちゃん?」

 

『あの日の朝の事を、思い出していたんですよ。』

 

「あれから一か月かぁ・・・随分と時間が経つのは早いものだよねぇ・・・」

 

 

本当にあっという間だった、住むところを探したり慣れない仕事に手間取ったり。

それでも、私達は今こうして生きている。

 

 

例え勇者が魔王を倒しても、倒さなくても・・・お話は続いていく。

 

 

完璧なエンディングなんて無いんだろう。

それでもエンディングの後も私達は生きていく、明日が来る限り。

 

 

それにしても「2輪の花」だなんて、あの時のユメ先輩の発言はまるで・・・

 

 

『なんか・・・告白みたいでしたね?』

 

ひぃん!?そういう雰囲気じゃなかったでしょ!?シノちゃんの馬鹿!

 

 

『ふふっ、ごめんなさい。つい思ってたことが・・・』

 

「も~シノちゃんなんて知らない!」

 

『わ、私が悪かったからですから・・・』

 

 

拗ねたようにぷいっと横を向いたユメ先輩。

ただ、そんな彼女の耳が少し赤く染まっているのに気づいた。

本人の為にも、気づかなかったことにしようかな・・・なんて。

 

 

 

『・・・それじゃいきましょうか、ユメ先輩。』

 

「うん、そうしよっか・・・シノちゃん。」

 

 

 

そうして私達は歩いている、これからも歩いていく。

 

 

 

物語(ストーリー)に結末はあっても・・・

青春(ブルーアーカイブ)が終わる訳ではないのだから。

 

 




これで、もう一つの「物語の終わり」は終わりになります。

短いですがもう一話だけ、早ければ今日か明日にでも。
このIFルートの()()分岐した「あり得たかもしれない未来」を投稿予定です。

私は、引き金を・・・

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