ユメ先輩のいないホシノvsユメ先輩しかいないホシノ   作:天野ミラ

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書きたい後日が多すぎたので三本構成です


後日談 アビドス砂祭り 中編

▼とあるオフィス街

 

 

『ふぅ〜これで最後ですね。お疲れ様でした先生。』

 

”いやいや、私なんて殆ど立ってるだけだったよ。シノこそお疲れ様。”

 

至らないところも多かったとは思うが、あくまで先生は生徒の自主性を重んじて見に徹してくれていた気がする。

 

 

フロントを出て外に出ると、辺りはすっかり暗くなっている。

こんな時間まで付き合わせてしまって申し訳ないとは思うが、砂祭りを間近に控えた今・・・どうしても今日の内に企業との会議は済ませておきたかった。

 

夏至を過ぎたとはいえ、この時間は少し冷える。

歩き始めてから、数分後・・・そう言えば夜ご飯を食べていなかった事を思い出す。

そんな事を忘れていたなんて、思ったよりも緊張していたらしい。

 

 

『夜ご飯・・・まだでしたね、柴関でいいですか?』

 

”あっ、そういえばまだだったね。それじゃ行こうか。”

 

 

10分ほど歩いて、目的の屋台の前に辿り着く。

空腹を自覚すると、先ほどまでは何ともなかったというのに・・・

誘惑が街中に溢れていて大変だった。

 

 

「おう、シノの嬢ちゃん!昨日ぶりだな。砂祭りに関してか?」

 

『いえ、今日はプライベートでラーメンを食べに来ただけですよ。』

 

「そいつは嬉しいな、腕によりをかけて作るからちょっと待ってな。」

 

 

屋台に入ると何時もと同じように柴の大将が迎え入れてくれる。

砂祭りへの参加もいの一番に表明してくれた彼には頭が上がらない。

彼の人柄の良さも、商店街の皆様が砂祭りに参加をしやすくなった一因だと思う。

 

注文をしてからラーメンが届くまでに一つ、疑問に思っていたことがあるので聞いてみる。

 

 

『そう言えば先生は、砂祭りを誰と回るとか決めてるんですか?』

 

”うーん、当日はスタッフとして参加しようと思ってるよ。”

 

『それはいけませんよ先生・・・あくまで先生はシャーレの所属なんですから。』

 

 

とは言ったものの、別に先生がスタッフとして参加する事に問題がある訳では無いのだが・・・

流石に当日くらいは先生にも砂祭りを楽しんで欲しいと思う。

私達も何日かはスタッフを雇って参加者に回る予定もあるし。

 

 

”今のところ予定はないかなぁ・・・”

 

『それならホシノ先輩と一緒に回ってあげてくれません?』

 

”えっ、良いけど・・・どうして?”

 

『・・・最近、皆の尻に敷かれてて少し不憫なんですよね。自業自得ではあるんですが。』

 

 

正直、見ていてかなり複雑な気分だ。

ホシノ先輩の首に輪をつけていたい気持ちもわかる。

彼女自身もそれを受け入れているのは分かるのだが・・・

 

 

『分かります・・・?顔も声もそっくりな並行世界の自分が、後輩たちにお説教を受けているのを見る私の気持ち・・・最近身長が更に小さくなった気すらするんですよ。』

 

”あ、あはは・・・”

 

『なので、お祭りくらいは羽を伸ばして欲しいなって思う訳です。先生が一緒ならホシノ先輩も自然体でいられるかなと思うので・・・パトロール仲間らしいですし?』

 

”うっ、その件に関しては黙ってたのは悪かったって・・・”

 

 

タイミングよく山盛りのもやしが盛られたラーメンが姿を表す。

 

 

「はいよ、シノの嬢ちゃん。柴関ジャンボラーメンのトッピング全マシお待ち!」

 

『ありがとうございます、大将!』

 

 

 

”け、結構食べるね・・・”

 

『食べなきゃやってられませんからね、全く・・・』

 

 

味覚が戻ってから初めて食べた柴関ラーメンは、夢で食べたそれより格別に美味しくて。

感動のあまり、涙腺がうるんでしまったのを・・・今でも覚えている。

 

美味しそうなラーメンの香りが、鼻腔をくすぐる。

山盛りにされたもやしと、厚切りの豚バラチャーシューと煮卵が所狭しと並べられたそれを見ると・・・食欲と一抹の罪悪感が沸き出てくる。

スープと共に麺を啜ると、醤油ベースのスープの香りが口いっぱいに広がる。

 

この時間に食べるラーメンって、どうしてこんなに特別感があるのだろうか?

 

 

『ふぅ、美味しい・・・最高ですね!』

 

”よ、良かったね・・・”

 

 

ラーメンを食べて、解散した私達。

この時の会話があんな事態を引き起こすとは・・・想像もしていなかった。

 

 

 

 

 

次の日、登校したはいいものの、私しかいなかったのでテレビをつけて待っていた。

 

 

<皆さんこんにちは!クロノススクール報道部の川流シノンです!>

<この時間はクロノススクールからニュースをお送りします!>

 

<来週は数十年ぶりにアビドス砂祭りが開催される予定ですよね!>

 

テレビで、アビドス砂祭りの特集を組んでいた。

こういうニュースを見ると、開催が間近に迫っていると思う。

 

 

<ここで、アビドス砂祭りとは何なのか・・・過去の事例からおさらいしていきましょう!>

あまり資料も残ってないはずだが・・・どこかに残っていたのだろうか。

 

<何でも、例年通りなら・・・最後は大きな大きな花火が打ち上げられる予定だとか・・・!>

確かにその伝統と予定はあるが、耳が早いな。

流石はジャーナリストといったところだろうか。

 

<なんでも、その花火を想い人と見ると・・・恋が叶うと言われているそうです!!!>

『げふっ、げふっ・・・!?今なんて?』

聞いた事も無いが?そんな話は?

 

とある確かな筋から得た情報なので、信憑性は間違いないかと・・・あれ?誰ですかあなた達!放送中止ですか???しかし、私たちには言論の自由が──!>

 

 

テレビはプツリと途切れ、ボートが湖を渡っている動画が流れ続ける。

こちらでも、あちらの世界でもそんな事があったなんて事は聞いた事が無い。

だが、しかし・・・この砂祭りは静かには終わらないだろうという嫌な予感がした。

 

 

 

 

 

「シノちゃんはその・・・誰かと回る予定はあるのかな?」

 

『今のところ予定はありませんよ。』

 

「そ、そうなんだ〜?」

 

 

「・・・」

 

『・・・』

 

 

おかしい、いつもなら”ホシノちゃん一緒に行こ〜!”なんて言ってくるはずなのに。

・・・まさかとは思うが、あのニュースを間に受けて?

誘ったはいいものの、ニュースを思い出して気まずくなったってオチか・・・?

 

「へ、へ〜・・・そうなんだ〜?」

 

何処となく挙動不審なユメ先輩。

まさかどころか、ほぼ間違いないだろう。

 

そんな迷信、今まで聞いたことすらなかったでしょうが!?

た、単純すぎるこの生き物。

 

仕方ない、ここは私から・・・

 

『もしっ』

 

「そう言えば、砂祭りの花火に縁結びの効果があるってテレビでやってたけど・・・まぁ、眉唾ものよねぇ〜」

 

 

「ヘー?ソウナンダセリカチャンー?シラナカッタヨー」

 

 

あまりにも、間が悪い話題。

その話題が出てからでは誘うのは・・・その・・・

 

・・・まるで意識しているみたいじゃないか。

 

『あの・・・』

 

タイミング悪く部室に鳴り響く電話の音。

珍しいな、あまりアビドスに電話を掛ける人なんて多くないというのに。

 

『私が出ますね。』

 

「あっ、うん。お願いシノちゃん。」

 

 

企業は私の携帯に電話をかけてくるはずなので、もしやアビドスに興味が沸いた・・・という話だろうか。

このお祭りの最大の目標は借金の返済とアビドスの復興なのでありがたい話だけど。

 

 

『はい、こちらアビドス廃校対策委員会ですが・・・』

 

「その・・・砂祭りで恋愛成就と言うのは本当なのでしょうか・・・!」

 

『わ、ワカモさん・・・?』

 

 

話が余計な方向にこじれ始めた気がする。

 

 

『そ、そんな話は私達もさっき聞いたくらいで・・・』

 

「ふむ、そうですか。ですがこれは・・・旦那様との距離を縮めるチャンスかもしれませんね・・・♡」

 

『あっ、はい・・・』

 

「失礼しましたシノさん、それではまたお会いしましょう。」

 

 

電話が切れると殆ど同時に、再度電話が着信を告げる。

結局、午前は電話応対だけで終わってしまった。

 

今日は先生も来てくれるとのことで、午後には先生は来ていたのだが・・・代わりにホシノ先輩が何故かいない。

 

 

”ねえ、砂祭りの件なんだけどさ・・・”

 

『そういう意図でホシノ先輩を誘って欲しいと言った訳じゃないですよ・・・』

 

”でもさ、ホシノに連絡したのが今日の午前中でさ・・・”

 

『あ~・・・えっと・・・理解しました。』

 

 

そちらはそちらで中々面白い事になっているらしい。

冷静に考えて、公式としては否定はしないが肯定もしないという対応に落ち着く事となった。

俗っぽい話だが、集客効果と宣伝効果があるのは確かだし。

一体どこから出てきた話なのかは検討もつかないが。

 

「いっ、いや〜お待たせ皆〜!」

 

「ど、どうしたのホシノ先輩?」

 

「うへへ〜何でも無いよ〜うへへへへ。」

 

いつもより髪をセットしてきた満更でもなさそうなホシノ先輩と、目が合う。

こうなってはもう今更やめておこうとは言えないだろう。

 

 

『何がとは言いませんが、あとは任せましたからね先生。』

 

”・・・私はどうすれば良いんだろうか。”

 

 

話し合いの方は順調過ぎるくらいに終わった。

会場の設営も、警備も段取りも今のところ問題は殆ど起こっていない。

 

・・・無事に砂祭りが終わってくれれば良いのだけれど。

 




ミ?イ 「そう、つまりこの砂祭りには恋愛成就の効果があるんですよ・・・!」
シノン 「成程成程・・・」

ミラ? 「ただし、それはあくまで微弱なモノ・・・そこでこのゲルマニウム♡ラブ・ブレスレットを持っていれば空気中に含まれる恋愛電波を科学的に収集して・・・」
シノン「恋愛成就の言い伝えがあると・・・ありがとうございました!次の現場に向かいましょう!」

?ライ「微弱な恋愛電波を増幅して、収束させるんです。この効果は科学的に・・・あれ?どちらにいかれたんですか?」
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