年齢を重ねると、病院に通うんだなぁ。
ストレッチは大事だね。
8歳 小学2年生
1月◯日
年が明けておめでたい日。
こたつに入りミカンを食べながら、届いた年賀状を確認してまったりしている。
休息を取るのも鍛錬の内という事で、梁山泊特製ダンベルで鍛えながら。
もう少ししたら、絶対可憐チルドレンの物語が始まる。
正確に言えば、前日譚であるザ・チルドレンと皆本さんの初邂逅からスタートするのだが。
皆本さんの前任者である須磨さんの着任をどうにか阻止出来ないかと思ったが…
歯痒い気持ちだが、チルドレンとの交流を多めに取り彼女達のストレスを軽減させる様にしよう。自己満足に過ぎないし、根本的な解決にはならないが…。
そういえば、新一君と遊ぶ事がありその時に初めて蘭ちゃんと園子ちゃんに出会った。
園子ちゃんは鈴木財閥と関わりがあるので、その関係で出会う事もあるだろうと思っていたが、財閥関係無い所だったので少し驚いた。
蘭ちゃんの方は若干怖がりな女の子という感じで、原作開始時の強気な空手ガールでは無かった。
そういえばホラー関係が苦手だっけ。
色々な話を聞けた。
バリツの完成度を高める為に脚力が鍛えられるサッカーを始めたとか、秋雨さんに教えてもらったボクシングの達人がかなり癖のある人だとか。
一応名前を聞いたらやはりジェームズ志場さんだった。
達人ってのは全員癖が凄いな。
蘭ちゃんは最近お父さんとお母さんが喧嘩してるとか。
…確か喧嘩の原因って、妃さんの料理だったよな。腕前が壊滅的だとか。
園子ちゃんは鈴木財閥での事業が忙しいらしく、大人組が構ってくれなくて寂しいと。
取り敢えずの
何処まで通用するかは分からないが、不平や不満は言わなければ分からないからな。
9歳 小学3年生
8月◯日
かなり時間が飛んだが特筆する様な出来事も無く、あいも変わらず鍛錬とアイテム開発の日々。
鍛錬の苛烈さは日に日に増しているが、実力の向上が目に見えて分かるので良し。
アイテム開発は、少し変わり種の設計図と試作品を作り上げた。
特撮作品に出てきた武器だ。
正確に言えば、少しアレンジした物だが。
仮面ライダーギーツに出てきた武器であるビートアックス等々。
振り回しても良し、音で攻撃しても良し。
まぁ、アックスとは名ばかりで刃引きはするが。
どちらかと言えば、Hi-Fi Rushの主人公であるチャイが使うギターの方がイメージしやすいか。
音の個性…
使用者の戦闘リズムに乗れば威力が増す様な機能でも付ける事が出来れば良いのだが…。
あとは、翠鎧のアップデートも進めねば。
全面戦争までに、ナノテク仕様にまで持っていければ良いんだが。
しばらくB.A.B.E.Lから音沙汰が無かったので心配だったが、先日桐壺局長から連絡が入った。
えらく長い文章だったので要約すると…
まず、連絡とチルドレンからの訓練依頼を出せなかった事への謝罪。
ザ・チルドレンの運用主任が最近省庁から派遣されて来たのだが、彼女達の服等に電撃を仕込み力で従わせようとする悪辣非道な事をされていた。
以前、次郎吉さんから説教されていた事もあり厳しく(当社比)指導はしていたが、その担当者にはお気に召さなかったようだ。
しかも、私達外部の人間に関わるとは何事かとそこでも激昂したらしい…しまったな、そこを突いてくるとは思わなかった。
そういったゴタゴタがあり、ある時超能力を制御するリミッターの開発に回っていた研究員が文句を真正面から言ったらしい。
そこからは覚えている原作通りだった。
チルドレン達が皆本さんの家に突撃してチョーカー型のリミッター(電撃機能付き)を外す様に脅す→翌日バレて皆本さんはお縄につく(笑)→チルドレンは未来予知で察知した工場での爆発火災に行くがヘリが墜落→そこに桐壺局長と皆本さんが駆けつけて何とか救助&消火→後日チルドレンの担当になる事を
皆本さん…ご愁傷さまです。
運用主任が変わり、以前までの環境に戻った事により早速チルドレン達から訓練の
心配だったから生存報告的な感じが来て良かったという気持ち半分、絶っっっ対に今までよりも攻撃が苛烈になるという確信があるから行きたくない気持ち半分。
グダグダしてても解決しないので、この前の
桐壺局長に挨拶をしたら、熱烈な歓迎を受けた。号泣しながら私達全員まとめてハグしようとしてきたのだが、女性陣が蹴りとばして壁にめり込んだ。
取り敢えず引っこ抜き、恵君が出した円鹿で軽く治療。
例のチルドレンの前任者が苛烈な事ばかり言ってきて、鬱憤が溜まっていたらしい。
ザ・チルドレンの皆は既に訓練場でウォーミングアップをしてるとの事。新しい運用主任と居るらしい。
移動しながら何時でも動ける様にしていると、ドッカンドッカンと爆発音が。あぁ…今日が命日かな?
訓練場の自動ドアを潜る前に、深呼吸。
腰に下げた陰鉄の鯉口を切って、扉が開く。
岩や様々なスクラップが飛んできた。
『わ゛あぁぁぁぁぁー!やめろ!君達と同じ子供だ!』
原作で何度も見てきた濁点が付くほどの叫び声。
内心感動しつつ、抜刀。
次々に飛んでくる物を切り飛ばし、瓦礫の山を作り上げる。
手荒い歓迎が終わった所で、瞬間移動の兆候を感じ取る。
視線を移すと、刃引きした剣を持った紫穂ちゃんとナイフを持った葵ちゃん。
陰鉄と鞘で受け止め、猛スピードで突っ込んで来た薫ちゃんにさっき切ったスクラップを蹴り飛ばしプレゼント。
紫穂ちゃん達に攻撃しようとしたら、瞬間移動。
2人の位置が入れ替わった。
『もらった!』『くらえっ!』
だが、打開策はある。紫穂ちゃんの剣を陰鉄で反らしつつ、葵ちゃんのナイフを蹴り飛ばす。
『ナイフの持ち方が不安定だよ!』
飛んでいったナイフに気を取られた葵ちゃんの腕を掴み、紫穂ちゃんに投げる。
2人仲良く飛ばされる中、薫ちゃんがスクラップを突破。
こちらに向かってきていたので、取り出したのはイレイザーヘッドやナイトハイド御用達の捕縛布を縄にした物。
紫穂ちゃんと葵ちゃんを纏めてぐるぐる巻きにして、薫ちゃんにプレゼント。
『葵ちゃん!脱出して!』
紫穂ちゃんが呼びかけるが、少し厳しいだろう。
投げる前に陰鉄で少しだけ深く斬って体力を削ったのだ。
そのまま3人まとめてボウリングのピンの様に吹っ飛ぶかと思ったが、流石は薫ちゃん。サイコキネシスを利用してビタっと止まった。
『まだm『ストップストップ!!』わっ!』
手元のリミッターのスイッチを起動した皆本さん。
少しだけ浮いていた皆が地面に落下する。
『何すんだよ!』
『それはこっちのセリフだ!指示も聞かずに飛び出して!あの子が怪我したらどうするんだ!』
そのままギャンギャンと口喧嘩を始めた。
『ごめんね、2人とも。今解くよ』
捕縛縄をスルリと解き、手を貸してあげる。
『良い手やと思ったんやけどなぁ…入れ替わるの』
『びっくりしたけどね。葵ちゃん、まだ接近戦は苦手でしょ?ナイフの持ち方が不安定だったし』
『うわっ、そんな細かい所良く見てたわね。私を狙わなかったのは?』
『紫穂ちゃんは皆が危険な目に遭ったらそっちに気を取られるでしょ?だから、最初に葵ちゃんを狙えば、隙が出来るからそこを突いただけだよ』
うぬぬ…と悔しげに唸っている2人を尻目に未だに言い争っている薫ちゃんと皆本さんを見る。
『まぁまぁ、2人とも落ち着いて』
『出久…何で来なかったんだよ!』
『えーっと…前の運用主任さんが僕への訓練依頼を止めてたみたいで連絡が来なかったんだよ。この前局長さんから連絡が入って、その経緯を知ったんだ』
『ちょ、ちょっと待ってくれ。じゃあ君はもしかして…』
ガルル…と噛みつきそうな勢いの薫ちゃんを落ち着かせつつ、理由を説明。
『はじめまして、緑谷出久と言います。
『君が…!こちらこそはじめまして、ザ・チルドレンの運用主任に配属された
『以前、薫ちゃん達から要望がありまして私以外とも訓練がしたいと。僕の普段の訓練相手に相談してみたら、承諾してくれたのでそれ以来予定が合えば来てくれるようになったんです。体格が良い人は、保護者代わりで来てくれた僕の師匠ですね』
私とチルドレンの
その間男性陣は挨拶をして少し駄弁っていた。
『局長さんからのメールを見たんですけど、元々研究局にはいってたんですね』
『そうなんだよ。前任者…須磨っていう人が彼女達に対して電撃を放っているのを見たり、使用者の事を一切考えてないリミッターを創れと命令してきたから断ったんだ。そこから色々あって、強制的に主任に任命されてね…』
煤けた様な姿の皆本さん。
『成る程な、今はあのガキ共に振り回されてんのか』
ズバッと斬り込むパパ黒。
『物理的にも精神的にもが付くんじゃね?』
『明石とか振り回す筆頭だろ』
『そう?皆同じ様な感じだけど』
上から順に燈矢君・恵君・焦凍君。
男性陣が思い思いの事を言っていると、女性陣の方が一段落ついたようで、こちらに移動してきた。
…若干目が赤いし、鼻を啜ってるからヒミコちゃん達と久しぶりに会えて泣いちゃったのか?
『あたしらの悪口言ってたんじゃないだろうな?!』
『言う訳ないよ。はい、これ』
ポケットティッシュを3人に渡すと、涙を拭いたり鼻をかんだりしていた。
『出久君、そっちの眼鏡の人は?』
ヒミコちゃんが聞いてきた。
『はじめまして。ザ・チルドレンの運用主任になった皆本光一です。よろしくね』
『…ヒョロっとしてるな。鍛えた方が良いんじゃねえ?』
『…頼りなさそうね』
…禪院家ってズバズバと物を言う家系なの?
『うぐっ…仕方ないんだよ、元々そんなに運動しないし』
『…一応鍛えておいた方が良いかもしれませんね。運用主任になったって事は、現場に出ることも増えるでしょうし、いざと言う時に動けた方が良いでしょう』
真希ちゃんや真依ちゃんからのキツイ一言に若干ダメージを受けている皆本さん。
『そうだね…鍛えようかな。何度か薫からのサイコキネシス受けてるし』
『大丈夫なんですか?多分手加減してくれてるとはいえ、レベル7の攻撃なんて受けたら下手すれば骨折は免れないでしょう』
『あはは…大学の友達がここに居て、医者をやってるんだけどね。ヒビも入ってないってさ』
『あのなぁ…出久と訓練してきて大体の力加減位は覚えてきてんだよ。怪我しない位の感覚は分かるっての』
力任せに放つのではなく、コントロールした攻撃を覚えてきている様だ。まぁ危険な訓練は皆本さんが止めてくれるだろう。
『んじゃ取り敢えず…ザ・チルドレン対俺と出久と真希でやるか。お前らも久しぶりに全力で暴れたいだろ』
『それに巻き込まれる僕達の事を考えてよ…まぁ良いけど』
パパ黒が音頭を取るとそのまま訓練が始まった。
真希ちゃんはパパ黒が持ってた遊雲を使っていた。
使用者の膂力が強い程威力が上がる遊雲は、フィジギフにとっては鬼に金棒。飛んできた岩なんかが砂糖菓子の様に粉砕されて辺り一面に散らばる。
『良いなぁ、これ。なぁおっさん
『おっさんって言うなっての…俺の商売道具だぞ?やらねえよ』
『頑丈な三節棍なら作ってみようか?そろそろ新しいアイテム作りたかったし』
『マジ?ありがとうな、出久〜!』
飛び交う岩やスクラップを粉砕し、瞬間移動で私達の位置を入れ替えても冷静に対処、近距離じゃ埒が明かないと判断した紫穂ちゃんの銃撃も避けるか弾くか斬り落とす。
『クッソ、これだけやっても世間話する余裕あんの!?』
『瞬間移動で揺さぶっても全然動揺せえへん!』
『ガトリングかグレネードランチャー持ってきてくれない?全て制圧してあげるわ…!』
苛ついて少しずつ気勢が削がれている3人。
フィジギフジェットストリームアタックはやりすぎだった様だ。
3人が体力と超能力を使い果たし、地面に大の字になった。
私達はまだ余力を残している。
一番息が上がっている紫穂ちゃんに近付く。
手を貸して、座らせてあげる。
『ちょっとはスッキリした?』
『…分かってたのね。薫ちゃんは
『…よく頑張ったね、紫穂ちゃん』
『気休めは良いわよ。何も出来なかったのは事実なのよ』
『気休めなんかじゃ無いよ。2人が頑張れたのは紫穂ちゃんが居たからだ。良く頑張ったね』
頭を撫でながら言葉を掛けると、罪悪感やストレスを抱え込んでいたんだろう。じわっと目尻に涙が滲み出し、大粒の涙を流し始めた。
大声で泣く事はせず、すすり泣いている。
幸いにも薫ちゃんと葵ちゃんは若干復活して、皆本さんに総評やらを聞きに行ったようだ。パパ黒達も移動していた。
泣き顔を見られたくないだろうと思い、背を向けたら袖を引かれて背中に抱きつかれた。
思考が停止した。
いや、あの三宮紫穂ちゃんだぞ?
将来、
と思ったが、私が知っているのはあくまでも原作の話。
ここは色々混ざった世界だという事を失念していたな。
『えーっと…紫穂ちゃん大丈夫?』
『…まだ』
『そっか…落ち着いたら言ってね。僕の背中なんかで良かったらいつでも貸すよ』
中々来ない私達に疑問を持ったのか、薫ちゃんがこっちに来そうだったが何かを察した様な姉妹に止められていた。
『…ありがとう、みっともない所を見せたわね』
『何の事?そっぽ向いてたし、分からないよ』
『…優しいのね、女誑しの素質あるんじゃない?』
『誑してるつもりは無いんだけど…ほら行こう?行かないと薫ちゃんが突撃してきそうだ』
『私疲れたから、おぶって行ってよ』
我が儘な
『しっかり捕まってね』
『はいはい』
徒歩で薫ちゃん達の方へ向かう。
『…ねぇ。重くない?』
『全然。ちゃんとごはん食べてる?軽すぎて心配なんだけど』
『野菜…嫌いなの…』
『まぁ、好き嫌いは誰にでもあるけど…ちゃんと食べなきゃ』
耳元で聞こえる声が寝息に変わるのはそう長くなかった。
お疲れ様と呟いて、皆の元へ向かう。
『紫穂〜って寝てるの?』
『疲れが溜まってたみたい。訓練はまた今度にしてあげて下さい』
『うん。あれだけ暴れれば疲れも溜まるからね…悪いんだけどテントまで連れて行ってあげてくれるかい?』
はーいと返事をして、休憩所も兼ねているテントに移動。
設置されているベンチに寝かせてあげて、移動しようとしたら服の裾が引っ張られる感覚が。
『紫穂ちゃん?訓練に戻りたいんだけど…?』
『…やだ』
…思ったよりも甘えん坊の様だ。
まぁ、良いか。サイコメトラーの力を持ってると、人に触れてその思考等を明確に感じ取る事が出来てしまう。
当然、秘密にしている事や墓場まで持って行きたい様な情報…人間の悪意や闇を濃縮した物を嫌でも感じ取ってきたのだろう。
実際、作中の紫穂ちゃんの母親は関わり方が分からず、一時はノイローゼ気味になったとか。
愛情は受けている事は分かっていても、自分から甘えるという事が出来なかった反動かな。
『分かったよ、気が済むまで居てあげるから』
声を掛けて隣に座ると、私の膝を枕にして寝始めた。
テントの下は日陰で、ミスト付きの扇風機が回っており十分に涼しい。
訓練を開始した皆を見ながらアイテムの構想を考えたりしていると後ろに気配を感じた。
首を後ろに回すと、ナオミちゃんが居た。
『お久しぶりです、ナオミさん』
『久しぶり、元気だった?紫穂ちゃんは…寝てるの?』
以前よりも背が伸びたナオミさんが居た。
紫穂ちゃんを起こす訳にもいかないので、小さな声で話す。
『私も訓練してたんだけど、帰る途中で凄い音がしたから気になって来ちゃった』
私達の訓練の轟音は思ったよりも響いていたようだ。
『あはは…さっきまで僕と真希ちゃん、甚爾さんでチルドレンと訓練してたんでその音ですね。その後、紫穂ちゃんが寝ちゃったので一緒に居てあげてるんです』
『そっか、仲が良いのね。私はチームじゃなくてソロだから、ちょっと羨ましいかも』
『そういえば、お会いした事はないんですけど、ナオミさんの主任ってどんな人なんですか?』
『え?えっとね……良い人よ。基本的には優しいし、的確な指示も出してくれるんだけど…』
『だけど?』
原作で谷崎主任の事は知っていたし、パーティ会場で圧力のある視線にも気付いていたが、直接話した事は無い。
『その…ちょっと過剰に心配?してくれる所があってね。ありがたいんだけど、なんていうか…』
言葉を選んでいる様だが、この言葉に集約する気がする。
『鬱陶しいと?』
『…そうかも。事あるごとにさり気なく触ってくるし…』
拳を握り、イライラを抑えようとしている様だがサイコキネシスが若干漏れて、私の方にペットボトルが飛んできた。
難なくキャッチするが、ナオミちゃんは慌てて謝ってきた。
『わっ!ごめんね!』
『大丈夫ですよ。これくらいは薫ちゃんとの訓練で慣れてるんで』
『…実は最近少しスランプ気味でね。今みたいに暴発することがあって…』
そうしていると流石にうるさかったのか、紫穂ちゃんが起床。
寝ぼけ眼を擦りながら、むくりと起き上がった。
『おはよ、紫穂ちゃん。よく寝れた?』
『ん…って何で、訓練に行ってないの…?』
『何でって…紫穂ちゃん覚えてないの?訓練に行こうとしたらやだって言って、僕の膝で寝始めたんだけど』
頭が段々と冴えてきて、寝る前の事を思い出した様だ。
顔がじわじわと真っ赤になりつつ、両手で顔を覆いフリーズした。
『…忘れて』
『誰にも言わないよ。膝位なら何時でも貸すよ?』
『…ありがと。そういえば何でナオミちゃんがここにいるの?』
多少強引な話題逸らしだったが、スルーしてあげる。
『訓練終わって戻ってたら、凄い音が聞こえてきてね。気になってこっちに来たの』
『多分、さっきの僕達対紫穂ちゃん達の訓練の音だと思うよ。色々話してたんだけど、最近少しスランプ気味だっていう話を聞いてた』
『スランプ…私が見ようか?』
ナオミちゃんがお願いすると、紫穂ちゃんがナオミちゃんの手を握り超能力を発動。
そのまま何秒かすると離れて、私に手招きをした。
近付いてコソコソと話す。
『どうしたの?』
『…多分、無意識の内に色々なストレスを押し殺しているの。それが本人にも分からないまま超能力に影響しているのよ』
『成る程…もしかして主なストレスって谷崎主任?』
『ええ。良く分かったわね』
『さっき世間話して主任の話題が出た時に、超能力が若干漏れ出たから』
このままじゃ、ふとした時に超能力が暴走してしまい自分や周囲に被害が及んでしまう。
『…ちょっと荒療治になるけど私に考えがあるわ。今日は無理かもしれないけど』
『じゃあ任せても良い?』
『ええ、B.A.B.E.Lの仲間だもの』
ナオミちゃんにスランプから脱せるかもしれないが、また今度になると伝えて解散した。
『参加しないの?』
『そういうあなたは?何時もなら突っ込んで行くのに』
『人を戦闘狂だと思ってるの?どちらかと言えばアイテム開発の方が本業なんだけどね。武術をやってるのはフィジギフを活かす為だしね』
『ふ~ん。まぁ、そのお陰で私達が出会えたから感謝してるわ』
『どういたしましてと言うべきところかな?』
談笑してたら訓練が一段落したようで、休憩の為こちらに向かってきた。薫ちゃんや葵ちゃんが練習も兼ねてそれぞれの方法で皆を連れて飛んできた。
『さっきまでナオミちゃんが居たみたいだけど、どうしたの?』
薫ちゃんが腰に手を当てながら、飲み物をグビグビと飲んで聞いてきた。
『訓練で出た轟音が気になって来たんだってさ。世間話と最近の悩みを聞いてた』
『悩み?』
B.A.B.E.Lのエスパーの事なので気になるのか皆本さんが問い返してきた。
『最近、スランプ気味みたい。私が見たんだけど今すぐには対処出来そうに無かったから、また後日にしてもらったのよ』
何故か薫ちゃんと葵ちゃんがギョッとした顔をして、紫穂ちゃんを見た。
『…何よ、2人して』
『紫穂?!何か変な物食べた?!』
『あの紫穂が何も無しに見るなんてありえん!絶対何か企んどるやろ?!』
ピキッと言う音が紫穂ちゃんから聞こえた気がした。
そのまま私の方を向いた後、にこやかな顔をして告げた。
『出久、やっぱり気が変わったわ。訓練に付き合ってくれる?相手は薫ちゃんと葵ちゃんよ』
死刑宣告が如き言葉が薫ちゃん達に降りかかり、フリーズした。
『えぇ…僕はまぁ良いけどさ。薫ちゃん達さっきまで訓練してたから疲れてるんじゃ…』
『大丈夫よ。2人共元気じゃない。人の事を血も涙も無いって言うくらいよ?』
『『そこまでは言ってない(やろ)!!』』
ウフフと笑いながら、紫穂ちゃんはガチャガチャとゴム弾を装填したサブマシンガンを用意。
これは紫穂ちゃんからの要望で片手間に作っていたものだ。
今は筋力の問題からか一丁で使っているが、いずれはランボースタイルになりそう。
何時の間にか巻き込まれたのだが…少し動き足りなかったので丁度良い。市販のエアガンのBB弾を込めた弾倉を装備しておく。
イメージとしては、バレットの攻撃手段。
『ちょっと皆本!止めてよ!』
『今のは2人が悪い。出久君、超能力は無しでも良いかい?あまり使いすぎると体に影響が出てしまうからね』
『皆本はんのアホー!!』
あのギャグチックなやり取りが見れて少し感動した。
準備していた遠距離攻撃はしない事に。
サイコメトラーとフィジギフの遠距離攻撃から、超能力を使わない女の子が避けれる訳ないからね。
紫穂ちゃんは唇を尖らせながらサブマシンガンをしまってた。
私と紫穂ちゃん対薫ちゃんと葵ちゃんの対決がスタート。
ハンデとして私達は素手、薫ちゃん達は武器を使用する事に。
『普通に考えれば不利なんだけどね』
『そうね。万全の状態だったらっていう枕詞がつくけど…っと!』
余裕を持って避ける私と、所々当たりそうになりながらも避ける紫穂ちゃん。
全力で殴る訳にもいかないので、隙が出来たらデコピンをしていく。紫穂ちゃんは割と手加減はしつつも容赦なく蹴ったりしてる。
『ビシビシビシビシとデコピンすんなぁ!』
『隙が出来てるんだから、しょうがないでしょ?』
薫ちゃんのおでこが赤くなり、若干涙目に。
手加減したらしたでガルガルと怒ってくるので、手抜きが出来ないのだ。
『ギャンッ!紫穂〜!さっきから地味に痛い所ばっかり狙ってきてへんか?!』
『そんな事ないわよ〜ウフフフフ』
チラリと横目で確認すると、丁度紫穂ちゃんが葵ちゃんの腿辺りに蹴りを入れていた。
余裕を持って避けつつも、拙いながらもフェイントを織り交ぜて戦っている。
…意外と筋が良いな、足技中心の武術を教えても面白いかも。
訓練後、おでこを真っ赤にした薫ちゃんとお尻の辺りを抑える葵ちゃん、ムフーと満足げな顔をした紫穂ちゃんがそこにはいた。
私は苦笑しながら眺めてた。
ここからが本番。
さて、どう動かそうか。
ケンイチ達人編連載確定!!!
ありがとうございます!!!