Infinite Stratos ~Without journey end~《終わり無き旅》   作:ぬっく~

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電脳ダイブ

「では、状況を今から説明する」

 

IS学園地下特別区画のオペレーションルームに現在学園にいる専用機持ち全員が集められていた。

本来なら生徒の誰一人として例外なく知ることのない場所。

箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、楯無、エレンが立って並んでいた。

その前には、千冬と真耶、そして一夏に簪がいた。

このオペレーションルームは完全独立した電源で動いている。

ディスプレイはちゃんと情報を表示していた。

ただし、空間投影型ではない旧式のディスプレイだった。

 

「こんなエリアがあったなんてね…………」

 

「ええ」

 

それとなく室内を観察しながら鈴とセシリアがつぶやくと、すかさず千冬から注意を受ける。

 

「凰!オルコット!静かにしろ!|今は状況説明の途中だぞ!」

 

「は、はいぃっ!」

 

「も、申し訳ありません!」

 

千冬の怒号で、鈴とセシリアの話は中断する。

それから改めて、真耶が表示情報を拡大して全員に伝えはじめる。

 

「現在、このIS学園では全てのシステムがダウンしています。これはなんらかの電子的攻撃…………つまり、ハッキングを受けているものだと断定しています」

 

真耶の声は、いつもより堅さがあった。

どうやら、この特別区画に生徒を入れることは、かなりの緊急事態だったらしい。

 

「今のところ、幸い生徒に被害は出ていません。防壁によって閉じこめられることはあっても、命に別状があるようなことはありません。さらに全ての防壁を下ろしたわけではなく、どうやらそれぞれ一部のみのようです」

 

だからトイレにも行けますよ、と言ったが、誰一人と笑わなかった。

 

「あ、あの、現状について質問はありますか?」

 

「はい」

 

ラウラが挙手する。

相変わらず、現役軍人は有事の際に行動が機敏なのだ。

 

「IS学園は独立したシステムで動いていると聞いていましたが、それがハッキングされることなどあり得るものなんでしょうか?」

 

「そ、それは…………」

 

困ったように真耶が視線を千冬に動かす。

それを受けて、千冬が口を開いた。

 

「それは今の問題ではない。今の問題は、現在なんらかの攻撃を受けていると言うことだ」

 

「敵の目的は?」

 

「それがわかれば苦労はしない」

 

確かにそうかと、ラウラは質問を終えた。

他に挙手する者がいなかったので、真耶は作戦内容の説明へと移行する。

 

「それでは、これから篠ノ之さん、オルコットさん、凰さん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさん、エレンさんはアクセスルームへ移動してください。そこでISのコア・ネットワーク経由で電脳ダイブをしていただきます。更識簪さんには皆さんのバックアップをお願いします」

 

すらすらと真耶が告げる。

しかし、それに対する専用機持ちたちの反応は静かなものだった。

 

「……………………」

 

「あれ?どうしたんですか、皆さん」

 

きょとんとしている真耶の前に、楯無とエレン以外の全員がぽかんとしていた。

 

「「「電脳ダイブ!?」」」

 

「はい。ISの操縦者保護神経バイパスから電脳世界へと仮想可視化しての進入ができます…………あれは、理論上だけではないんです。実際のところ、アラスカ条約で規制されていますが、現時点では特例に該当するケース4であるために、許可されています」

 

「そう言うことを聞いてるんじゃなくて!」

 

鈴は握り拳を縦に振る。

 

「そうですわ!その電脳ダイブと言うのは、もしかして、あの…………」

 

セシリアが困惑気味に喋ると、それに続けてシャルロットが喋る。

 

「個人の意識をISの同調機能とナノマシンの信号伝達によって、電脳世界へと進入させると言う---」

 

「それ自体には危険はないが、まずメリットがない。どんなコンピュータであれ、ISの電脳ダイブを行うよりもソフトかハード…………あるいはその両方をいじった方が断じて早い」

 

ラウラの後に、簪が付け加える。

 

「しかも…………電脳ダイブ中は、操縦者が完全に無防備なる…………。何かあったら、困るかと思うんですが…………」

 

最後に箒が全員の意見をまとめる。

 

「それに、一箇所に専用機持ちを集めるということは、非常に危険なのではないでしょうか?」

 

それらの意見をすべて聞いて、千冬はすっぱりと言い切る。

 

「ダメだ。この作戦は電脳ダイブでのシステム侵入者を排除をすることを絶対とする。それに異論は聞いていない。嫌ならば、辞退しろ」

 

その迫力に、全員が気圧される。

 

「い、いや、べつに嫌とは…………ね?」

 

「ただ、ちょっと驚いただけで…………して」

 

「で、できるよね。ラウラ?」

 

「あ、ああ。そうだな。シャルロット7」

 

「ベストを尽くしてみます…………」

 

「や、やるからには、絶対に成功させてみせましょう」

 

それぞれの同意を得たところで、千冬は手を叩く。

 

「よし!それではこれより、電脳ダイブを始める。各人はアクセスルームに移動!今から作戦を開始する!」

 

その命令を受けて、箒たちはオペレーションルームを出た。

後に残ったのは、千冬と真耶。それに楯無と一夏に簪だった。

 

「さて、お前たちには別の任務を与える」

 

「なんなりと」

 

「なんだ?」

 

「…………」

 

いつものおちゃけはゼロで、楯無は静かにうなずき、一夏と簪に関しては一切の隙が無かった。

 

「高確率で、このシステムダウンとは別の勢力が学園にやってくるだろう」

 

「敵---、ですね」

 

「やっぱりか…………」

 

この混乱に便乗して、介入を試みる国は必ず存在する。

 

「そうだ。今のあいつらは戦えない。すまないが、頼らせてもらう」

 

「わかりました」

 

「いいですが、俺は彼女たちの方に行く」

 

「なら、私がやるわ」

 

「わかった。楯無、簪には厳しい防衛戦になるが…………」

 

「ご心配なく。これでも私は、生徒会長ですから」

 

「同じく、元生徒会長として」

 

そう言って2人は不適に微笑んでみせるが、千冬の顔色はかわらなかった。

 

「しかし、簪はいいとして、お前のISは先日の一件で浅くないダメージを負っているだろう。まだ回復しきってもいないはずだ」

 

「ええ。ですが私は更識楯無。こういう状況下での戦い方も、わかっていますわ」

 

生徒の長として、一歩たりとも引けない。

その強い決意が双眸の奥に見え、千冬はため息をつく。

それから真っ直ぐに楯無を見つめ、一言告げた。

 

「では、任せたぞ。お前たち」

 

「「はい!」」

 

楯無と簪はぺこりとお辞儀をして、オペレーションルームを出た。

その姿が見えなくなってから、千冬と真耶は重い口を開いた。

 

「私たちは何をしているんだろうな…………。守るべき生徒たちに戦わせて、私たちは…………」

 

「織斑先生…………」

 

仕方ない、と言わない。いや、言ってはいけない。

生徒を…………子供を戦場に立たせるなど、どんな事情であっても決して許されない。

それは千冬、真耶にとっても譲れない一線。

 

「さあ、ぼんやりしている暇はないぞ。我々には我々の仕事がある」

 

「はい!」

 

そうして千冬と真耶は、ある準備へと取りかかった。

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