Infinite Stratos ~Without journey end~《終わり無き旅》 作:ぬっく~
開会式
「はい、あーん」
IS学園特別医療室。そこで一夏は入院生活が長引いている楯無の世話を焼いていた。
「も、もう、自分で食べられるわよ」
そう言って唇を尖らせる楯無だったが、その頬はうっすらと赤い。
「あーん」
「あ、あーん」
一夏といえば、普段のお返しとばかりにイニシアチブを取っていることに、自然と頬が緩んでしまう。
今日も持参したのは一夏の手作り弁当で、メニューはポテトボールにアスパラのベーコン巻き、それからイングリッシュ・マフィンとサラダ。食後のデザートにはオレンジのシャーベット。どれも楯無の好物である。
ニコニコとしている一夏、照れくさそうにしている楯無。
その二人を窓の外から覗く影があった。
「……なに、あれ」
そう言ったのは、鈴だった。目が死んでいる。
「まさか……おふたりは、もう付き合って……? あぁっ……」
めまいに倒れるセシリア。その顔は真っ青だった。
「……………」
まじまじとふたりを観察しているのはシャルロットだ。その心中は穏やかではないが、いつぞやの『シャルロットにだけサービス期間』を考えると、今回もそのパターンなんじゃないかなあと思ってしまう。
「も、も、もう……」
ザッ! とふたつの影が立ち上がる。
「「我慢ならん」」
箒とラウラだった。
その手にはそれぞれ日本刀とナイフを握りしめている。
「―――すとっぷ」
ぴた、と手のひらで制止したのは簪だった。
「何をする!」
「姉の肩を持つ気か!」
怒りを露わにする箒とラウラにぷいっと背中を向けて、簪はいきなり窓を開けた。
「お邪魔、します」
いきなりの侵入者に一夏も楯無もぎょっとする。
なぜならここは三階で、ISを
「か、簪、お前っ―――いつから!?」
すっかり油断していたらしい一夏は、あたふたとしてしまう。
「か、簪ちゃん!? な、な、なな、何してるのかしらっ?」
こっちも一夏と同様で、警戒心ゼロだった楯無は大いに動揺していた。
「ふたりは、付き合ってる?」
「付き合ってるって―――」
「男女、交際」
「「!?」」
驚いてから一夏と楯無は顔を見合わせる。
そしてそれからふたりとも赤面して慌てて顔を逸らした。
「いや、俺はそう言うんじゃなっくて単に楯無さんのお見舞いに来ているだけで―――うごっ!」
ベッドの楯無から肘鉄を喰らう。
「―――ふんだっ」
腕組みをして、思い切り頬を膨らませる楯無は、不機嫌そのものだ。
このふたりの反応を見れば、いつもの一夏の朴念仁が巻き起こした『
(ああ……これは……)
箒たち以外にもう一組その様子を見ている者がいた。
未来の一夏たちだ。彼らは簪共に帚に腰をかけ、その様子を見ている。
話を戻すと、楯無は好きになってしまったのである。
一夏を。
この世界の織斑一夏という、『男子』を。
「ほらね、やっぱり」
窓の外、ISを部分展開で浮遊している五人をちょいちょいと手招きする。
「一夏、お姉ちゃんと……付き合ってないって」
それを聞いて、ずどどどどっと五人が室内になだれ込んでくる。
「ホントでしょうね、一夏!」
「ウソは許しませんわよ!?」
「ぼ、僕は信じてた……よ?」
「そうなんだな、一夏!」
「ええいはっきりしろ!」
ぎゃーぎゃーとまくし立てられて、対応に困ったのは一夏だった。
しょうがなく、ため息をついて本当のところを告げる。
「楯無さんといると楽しいのは本当だよ」
「「「なっ……!?」」」
驚愕の声を上げる一同。
「なんでよっ!?」
鈴が半泣きで睨んだ。
「だってなあ、まあ、楯無さんってスタイルいいし」
「うっ!」と、鈴。
「高飛車じゃないし」
「ううっ!」と、セシリア。
「ぶいぐい引っ張ってくれるし」
「うううっ!」と、シャルロット。
「暴力振るわないし」
「ううううっ!」と、箒。
「夜這いに来ないし」
「うううううっ!」と、ラウラ。
「明るいし」
「……地味に、ダメージ」と簪。
「でもみんなもそれぞれ魅力があると思うぞ!」
「「「フォローになっていない!」」」
こうして特別医療室棟に怒号が響き渡るのだった。
◇
「エレンに出会わなかっただけで、あんなにも朴念仁になるとわな……」
「逆に出会って、直るのが凄いと思う」
楯無の怪我の具合を確認終えた未来組の一夏と簪は今後のことを考えていた。
未完成だった魔法、空間移動の応用を使う事でなんと他の世界へと行くことができるのだ。
「簪には大分、頼る形になるけど……」
「大丈夫。一夏とエレンがいれば、私……どこまででも頑張れるから」
「すまねぇ……」
旅をすることになった時から決めていた事だ。
もう二度と大切な人を失いたくない! そう決めたのだから……
「そうだな……別れの前にあいつと一戦交わりたいな……」
「なら、これなんてどう?」
そう言って、簪は一夏の耳もとで呟く。
「いいなそれ!」
「でしょ?」
一夏と簪は楽しそうに何かの計画を立てる。
それが、学園史上に残る伝説になるとは誰もが思っていなかった。
◇
楯無は専用機のオーバーホールを終え、ロシアから戻ると学園は何だか騒がしくなっていた。
「何の騒ぎ?」
「あ! 生徒会長!! 実は……」
楯無が来たことに気付いた生徒は道を開ける。
その視線の先には一枚の張り紙が張られていた。
「え?」
楯無はその張り紙を見て、言葉を失う。
張り紙にはこう書かれていた。
IS武道会
2XXX年11月XX日、予選を通過した16名は第三アリーナにて決勝を行う。
優勝者にはこの学園の生徒である織斑一夏と24時間一緒になれる権利が与えられる。(デートもOK、二人で一夜過ごすこともOK)
参加制限は無し、専用機持ちも参加可能、優勝者が他者に景品を譲るのも可能。
予選は2XXX年10月XX日に全アリーナにて試合を行い、2名が本選に出れれる。
ただし、専用機持ちは一つのアリーナに2人までとする。
参加申し込みは織斑一夏先生もしくは織斑簪先生に報告すること。
提供者 織斑一夏、織斑簪
「優勝商品……織斑一夏くんと……デート!?」
騒がしかった理由はなんと、この学園の生徒である織斑一夏とデート出来ると言う張り紙だったのだ。
「て、提供者は……一夏先生と簪先生!?」
戻ってきなりとんでもない事がこの学園では起ころうとしていた。
◇
「さあ! 始まりました!! 実況はわたくし、新聞部でお馴染みの副部長の黛薫子と」
「織斑一夏です」
「同じく簪です」
アリーナの放送室で織斑夫妻は実況を担当していた。
予選は無事に終わり、本選がここ第三アリーナで行なわれる。
そして丁度、トーナメント表が発表された。
第一試合
・篠ノ之 箒 VS 布仏 虚
第二試合
・シャルロット・デュノア VS 山田真耶
第三試合
・セシリア・オルコット VS 更識 楯無
第四試合
・ラウラ・ボーデヴィッヒ VS 凰 鈴音
第五試合
・織斑一夏 VS 夜竹 さゆか
第六試合
・岸原 理子 VS 谷本 癒子
第七試合
・更識 簪 VS 布仏 本音
第八試合
・四十院 神楽 VS 鷹月 静寐
「……てか、殆ど知っている人物ね」
黛は発表された表に苦笑いする。
しかし、ここであることに気付いた。
「なんで、織斑一夏争奪戦に本人が参加しているの!?」
トーナメント表の第五試合にご本人様がいるのだ。
その質問に対して一夏は……
「実はですね。『一夏よ。このIS武道会でおまえが決勝戦まで来れたらこの景品を無効にしてやる。死ぬ気で決勝戦まで来い!!』って喧嘩腰で言っといたんですよ」
それを聞いた生徒たちは一気に喚く。
せっかくのチャンスが無効にされる可能性が出て来たことに……
「そこで! この優勝商品にさらに追加することにしたのだ!!」
そう言って、一夏は赤い玉と青い玉が入った小瓶を取り出す。
「年齢詐称薬。青いアメ玉を舐めると大人に、赤いアメ玉を舐めると子供になれるんです」
「メル○ちゃんか! メ○モちゃんか!」
思わず黛は突っ込む。
「これで織斑一夏をダンディな小父様にするもよし、小学生サイズにするのもよし、自身に服用するのもよし」
これには観客席及び参加選手も大喜びだった。
そして、その時が訪れる。
「では、第一回IS武道会を開催いたします!!」
一夏は一体誰の手に? そして、一夏は決勝戦まで勝ち進めるだろうか?