飛行機雲   作:神風

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「俺はカイル。マリンフォード出身だ。葉巻2本いっぺんに吸いそうな名前だな、よろしく」

「あ゛ぁ?」

 

海軍育成アカデミーへと入り、寮の同室になったのはスモーカーだった。

漫画で見ていた"白猟のスモーカー"より幼く、ただの新しい環境に緊張した丸刈りの青年だ。

ワンピースの世界自体大人になるのが早いんだよな、10代で世界に出るなんて前世からしたら凄いことだよ。

 

なんかちょっと弟みたいで可愛いな。良き同室でいてやろう。自分からコミュニケーションとるキャラじゃなさそうだし、繋いでやるか。

 

「んはは、冗談だ。さ、入って」

 

部屋は2人部屋で左右シメントリーになっており、ベッド、クローゼット、机のみと簡素な作りになっている。荷物を片付けるときに、先輩方の置き土産か壁に小さく落書きがされてるのを見つけた。

入って左がスモーカー、右が自分と流れできまった。

 

「なんて呼べばいい?」

「……好きに呼べばいい」

「じゃぁ、スモやんでもいいのか?」

「チッ……スモーカーでいい」

「ありがと。スモーカー、部屋でまでそんなピリピリしてたらこの先つぶれるぞ?アカデミーの訓練、地獄だって聞くよ。さっき渡された座学の教本見ただけでもわかるだろ?」

「お前が変なこと言うからだろうが」

 

机の上に積み重なった教本はゆうに30cm定規を超える高さになっている。

座学は気象学に海洋学、航海学に船体運動工学、海上犯罪捜査、海難救助工学……etc見るだけでも萎えてしまいそうだ。

 

「はぁ、式典だけでも疲れたな。リハーサルで敬礼が皆揃うまで練習させるってどう思う?」

「意味がわからねぇ」

「だよね。全体行動を身につけさせるって言っても各地から集めたヒヨコちゃんだろ?初日から上手くいくわけ……」

 

ベッドに腰掛けようとした、その時だ

 

 

「新入生整列!!」

 

 

廊下に命令が響き渡る。

 

「なっ、なんだ?」

「スモーカー!早く服正せ!廊下に整列だ!遅れたら何されるかわからない」

 

何が起きているのかわからないスモーカーを連れ、慌てて廊下に飛び出し直立不動の体勢をとる。

 

「おい、なんだこれは」

「父さんから聞いたことある。入学当日、お客様意識を取り払うために扱かれるって話だ」

 

小声で話すうちに、命令を発した男が廊下をゆっくりと歩いてくる。

日に焼けた肌に紫色の髪が映える。

 

「整列が遅い!貴様らそれで海兵になれると思っているのか!」

 

腹に響く声に身体が力む。

 

「教官のゼファーだ。今日からみっちりお前達を扱いて嫌でも使える海兵になってもらうぞ。俺のことはゼファー先生と呼べ。わかったか!」

 

「「「はい!ゼファー先生!」」」

 

「整列に遅れたお前とお前とお前!腕立て伏せ60回!連帯責任として他は腕立て伏せ40回!始め!」

 

ほらな、とスモーカーと目を合わせると顔を顰め目を閉じた。

扱きが終わったのは19時、ヘトヘトになった新入生たちは食堂で黙々と飯を喰らう。

 

「これからこれが続くのか」

 

ボソッと誰かが零した一言に幾人か肩を落とす。

目の前でガツガツ食べているスモーカーは特に何も思って無さそうだ。

 

「スモーカーは海軍にどうして入ろうと思ったんだ?」

「……、ローグタウンで処刑を見た。だからだ」

 

うん、言葉が少ない。

ローグタウンの処刑をみて、沸き立つ海賊達がさらに悲劇を生むのを食い止めるためか?と自己解釈しておこう。知らんけど。

 

「ふぅん」

「お前は?地元だからか?」

「それもあるけど、海軍でやりたいことがあったから」

「やりたいこと?海賊を捕まえる以外にあるのか」

「スモーカーは脳筋だなぁ。俺は軍艦以外の移動手段を作りたいの。例えば空とか」

「空、って……おとぎ話の空島にでも行くつもりか?」

「はは、いいね。行けたら面白そうだ。黄金持って帰ろう」

 

食事の後は1グループ20分の入浴タイムだ。

所々和風作りの海軍だ、湯船があったのは前世日本人にとって有難かったがそんな短い時間で堪能できるはずもなく。

次回の入浴タイムは、1分脱衣、5分洗い、7分湯船で3分で着衣のタイムスケジュールでいこう、うんそうしよう。

 

就寝前に明日のスケジュールを思い出してアカデミー入学初日は終わった。

 

 

 

 

翌日

 

0530 起床 (起床整列・体操・掃除)

 

身の回りの支度をし、ベッドはしわ一つ無いよう整え抜き打ちの見回りを待つ。

折り目が違う、シーツがよれている、枕が数cmズレて置かれている、そんな事まで規律通りにせずとも良くないか?と思えるようなチェック項目を確認していく上官も大変な仕事だ。

 

「指さし確認〜ヨシッ」

 

変な目で見るな、スモーカー

 

グラウンドに整列し、2人1組となり体をほぐした後、割り振られた場所を掃除していく。床を決められた流れで箒をかけ、磨きあげる。

本当に細かい。嫌になる。

 

0630 朝食

プレートを持ち、一列に並び朝食を受け取るシステムだ。誰が多いとかなく、平等に食堂のお姉さま方がいれてくれる。

 

今日の献立はサラダ、パン、スクランブルエッグ&ソーセージ、ミネストローネスープ、牛乳と割と普通の献立だった。量が多いけど。

 

0650 課業整列

0700 ~1150 課業

 

1200〜1240昼食

何食べたか忘れた。パサパサしてたのは覚えている。

 

1250〜1750 課業

 

ほとんどの座学はオリエンテーションからはじまるか、実力テストなるものを受けさせられた。

前から勉強していたのでマシな点数を取っていたが、周りを見ると悲惨な者の方が多いようだ。

 

「ヒナ最悪」

 

聞き覚えのあるセリフに顔を向けると目が合ってしまった。うわ可愛い

 

「あなた、どうだった?あんなの分かるわけない」

「確かに、新入生に対してのテストではなかったかな」

「そんなこといいつつ、お前8割とってるじゃねぇか」

いつの間にか覗き込んできた同室を押しやり、ヒナ嬢の機嫌を伺う。嫌味に聞こえてなけりゃいいんだが

「8割?ヒナ感激、あなた勉強が出来るのね。今度分からないところ教えてくれる?」

「俺でよければ。俺、カイル。こっちは同室のスモーカー。ヒナさん、であってるかな、よろしく」

 

差し出した手にワンテンポ遅れて彼女は握手に答えてくれた。海軍自体、女性隊員が少ないので、細い腕と小さい手にそわりとしてしまったが平静を保てたのは30数年+17の年の功だ。

 

 

体力育成は、ゼファー先生の激が飛ぶ中の持久走だった。

 

「なにをチンタラ歩いてる!そんな事じゃ極悪人を捕まえられるものか!仲間を助けられるものか!死ぬ気で走れ!」

 

も、むり……死ぬ、口の中が血の味する……

 

「は、なんだカイル、もう限界か?」

「うる、せ……お前、と 俺の、筋肉量、ちが、だろ……なんで、喫煙、者が、走れんだよバカか」

「お前の前で吸ったことねぇだろ」

「身体から煙草の匂いさせてんだよ、後で俺にもくれ!」

「その肺で吸ったらお前死ぬぞ」

「そこォ!喋る元気あるなら10周追加するかぁ!?」

「やめてください!死んでしまいます!!」

 

 

1800〜1850 夕食

 

今日は金曜日、海軍カレーの日。シーフードの旨味が溶けこみ、空腹がさらにうまくさせる。

「お前のせいで10周追加になっただろうが」

「騒いでたのはお前だけだろ」

「うるせぇ、煙草よこせよ吸い付くしてやる」

「入寮の時に上級生に没収された」

「くそっ」

「猫被らなくなったな、そっちの方が接しやすいからもう猫被るな」

「お前の為に被ってたんだろうがよ」

「あぁ?余計なお世話だ」

 

凄むのはいいけど、口の端に米粒くっつけても迫力ねぇよバカ

 

1900〜2000 入浴

計画通りに入浴できた。

2000〜2200 自習時間

飛行機について調べてた。今日の復習とかしたくない。自分のやりたいこと優先だ。

2300 就寝

真っ暗な部屋の中、背を向けて寝るあいつに声かける。

「なぁ、スモーカー起きてる?」

「……うるせぇな、寝ろ」

「明日休みだろ、この島の煙草屋教えてやるから行こう」

「寮に持ち込みできんのか」

「先輩ら見てみろ、隠れて吸ってんだろ。どうせお前の煙草没収したのも吸いたいがために没収したんだよ」

「くそ、顔覚えておくんだった」

「だはは、もっといいやつ吸ってやれ。いっそ葉巻でも買うか?そうだ、いっそ島の案内もしてやるよ。美味い店があるんだ」

 

 

 

 

 

同室になったのは自分とそう身長は変わらないが、痩せた奴だった。

にこにこと何考えてるか分からない顔して、葉巻2本いっぺんに吸ってそうな顔だとか意味わからねぇことをほざく男。

 

はずれをひいたかもしれない、そう思った。

 

ペラペラ喋る男を聞き流し制服を着崩した時だ、腹に響く声が廊下から聞こえた。

男の言うままに服を正し、部屋を出ると既に数人部屋の前で整列していた。

同室が言うには洗礼のようなものらしい。

 

名前はカイルと言ったか、この島出身らしく海兵育成アカデミーの規則や噂をよく知っているようだ。

ポケットに手を突っ込んで歩くな、口笛を吹くな、等海軍独特の文化があるらしい。

 

細すぎる規則に顔を顰めながらも真面目に指さし確認してるアイツを時折見る。これも海軍独特の文化なのだろうか。

アカデミーで学ぶことはいつか悪を追い詰める為に、自分の命を守るために必要になる。と口酸っぱくいう教官。

言うことはわかるが、ここまで細かくなくてもいいだろうが。

 

座学ではカイルは1番の成績をとっていた。

マリンフォード出身だから、海に関しての資料が手に入りやすかったのだと後で言っていたがそれでもだ。

女と握手する時もなんとも思っていません、なんて顔をしやがる。

だが、それに対して体力育成では死にそうな顔をする奴に笑ってしまった。得意不得意があるのは普通だが、何を考えているかわからないやつがあぁもさらけ出していたのは愉快だった。

俺の為に猫を被っていた、と言う奴の考えはわからんが気持ち悪いからやめて欲しい。

 

消灯後、煙草屋に案内すると誘ってきた。

葉巻か……1度試してみるか

 

案外ハズレくじを引いたわけでも無さそうだ。

 

 

次の日、アカデミーは休みで1日カイルに連れられ島を観光することになった。

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