飛行機雲   作:神風

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 アイツと同室になって早数ヶ月、分かってきたことがある。

 

 まず1つ。あいつは空に並々ならぬ執着を見せる。

 部屋には同室に迷惑をかけず、華美でない程度であれば個人の好きなものを配置できる。

 最初は殺風景な部屋だったが、今や壁には乗り物だろうか、デッサン図に机には模型が飾られている。

 

「これ、なんの絵だ?」

「気になる?これは、フロート水上機。この翼で風を捉えて、空を飛び、このタイプは海にそのまま着水もできる。まだデッサンと簡単な模型しか作ってないけど数年のうちに実際に乗れるようになる!でも、動力の仕組みがまだ上手くいかなくてさ。ダイアルを円形に設置して半永久機関なんてのも考えたけど、手に入りにくいしな。ま、完成したら乗せてやるよ。空を飛ぶって気持ちいいぞ〜」

「飛んだ事あるのか?」

「いや、厳密には無いけど、きっと!気持ちいい!」

「ないんだな?」

「あるにはある!」

「どっちだ」

 

 俺が悪魔の実の能力者だと知った時もそうだ。

 

「スモーカー、"煙になれる"んだよな??」

「だからなんだ」

「煙っていやぁ、空、浮かぶよな?」

「……まさか、お前」

「後生だ、俺抱えて空飛んでくれ!な?ちょっとだけ!ちょっとだけだから!」

「変な言い方するな!人なんざ抱えて飛んだことねぇぞ」

「なら、俺で練習して!ほら、戦闘の役に立つかもしれないじゃん!?お前と同じぐらいの身長のやつ、抱えて飛べるならか弱い女の子とかも余裕だろ?救助にも役立つ!」

「テメェが飛びたいだけだろうが!」

 押しに負けて抱えて飛んでやったら、興奮して飛んだー!なんて叫んで涙目になってやがった。

 確か、バカは高い所が好きだったな。

 

 

 

 

 2つ目に。あらゆる知識を持っていやがる。

 実際に沖へ出る、乗船実習。

 今夜は星の配置から現在地を推測する訓練が行われた。

 

「この海域ではまず、北極星を探せ。北極星がわからんバカはここにはいないと信じたい。大海原のド真ん中で頼りになるのは天体だ。お前たちには今から現在地の推測を行ってもらう」

 

 ゼファー先生の声を聞きながら夜空を見上げる。

 あたりに島はなく、実習船の明かりを消せば頭上の光だけが頼りだ。

 

「知ってるか、スモーカー。あの星の光はずっと昔の光だ。俺たちが産まれる前のずっとずっと前の光だ」

「あぁ?どういうことだ、ただの光だろう」

「あの星から俺たちの住んでる星まで、とてつもない距離だ。光は約30万km/秒、そんなスピードでもたどり着くまで何万年とかかる。何万年前の光が俺たちに届いて、こうして道標になってる。もし今、あの星が爆発して消え去っても、分かるのは数万年後。そう考えると、凄いよなぁ」

 

 同じ夜空を見上げても、俺が見ている景色とは違うものを奴は見ている。

 

 その豊富な知識、視点の違いからか、アカデミーにはこいつに用があると外部の人間が時々訪ねてくる。

 あいつは親父が海軍工廠勤務だと言っていた。おそらくその職場の奴らだったり、白衣を着た男が訪ねてくる。

 ゼファー先生もそれを容認していて、おそらく本部の意向でもあるのだろう。

 同期の中でもあいつは科学部隊に配属されるんじゃないか、と噂が流れてる。

 

「お前は、卒業後何がしたい」

「唐突だな、どういうこと?卒業後は皆海兵だろ」

「そういう事じゃねぇ。海兵でもやるこた色々あるだろうが。卒業した時点で俺らは普通に入るより上の階級が用意されてる。雑用より配属先の種類は多いだろう」

 

 星を読み、測定を終えたカイルは耳にペンを挟む。

 こいつの癖だ。

 

「あぁ、希望配属先ってこと?スモーカーは?」

「俺は海賊を捕まえられるならそれでいい。上に馬鹿な上司がいなけりゃもっといい」

「上司については俺もだよ。海賊を捕まえるってのはまぁ、やれって言われたら、ぐらいかな。裏方で役に立つってのもいい。でも、現場も経験して世界を見てみたい。この島から出た事少ないし」

「噂じゃ、お前科学部隊に行くんじゃないかって言われてるぞ」

「えぇ?誰が言い出したんだよ、それ」

「同期がな。外部からお前を訪ねてくる白衣連中見てだろうが。部屋の模型に関してか?」

「まぁ、小さい頃からお世話になってる人だし、部屋のとは別件だよ。彼らに比べりゃ俺のしてることなんてお遊びだ。それに、"たまたま"本部の研究者が"たまたま"休憩中に会った俺とお話しただけだ。とりあえず、俺は1度は海に出て世界を回りたいって所かな。入学当初よりは強くなったろ?」

 

 力こぶをつくるカイル。確かに前よりは筋肉はついたが……

 

「まだまだだな」

「やかましい、筋肉雄っぱい」

「あぁ゛?」

「あぁん??」

 

 

 そして最後に。

「スモーカー君。少しいい?」

「……俺に、用か?」

 

 何故こうなった。同期のヒナと食事をすることになった。

 こいつとはあまり接点はなかった。あるとすればカイルの方が多い。入学直後の授業から、カイルとヒナはよく話していた。授業で分からなかったことや課題に対する自論、この島の観光地なんかを話し合う姿をよく見かけていた。

 

「同室の貴方ならカイル君の事、よく知ってるでしょう?」

「バカだってのは知ってるな」

「カイル君がバカ?ヒナ困惑」

「アンタの前じゃ本性ださねぇんだな。で、カイルについて知ってどうするんだ。こんな回りくどい事せずに直接本人に聞きゃいいだろうが」

「そ、……それが出来ればここにいない」

 

 水の入ってないグラスを手にもじもじとするヒナ。

 ……帰りてぇ

 

 3つ。アイツは"外面は"いいようだ。

 

 

 

 ────

 

 

 

 スモーカーがいつ能力を得たのか知らなかったが、既に食べていたようだ。

 麦わらと戦っていた時のあの移動方法を思い返すと、結構高い所にも飛べていたはず……

 これは、ひょっとするともしかして、とごねにごねた結果抱えて飛んでくれた。

 

 アカデミーのグラウンドで、スモーカーの首に片腕をまわし、抱えられた体勢で浮かび上がる。

 

「落ちてお陀仏になりたくなけりゃ、絶対離すなよ」

「わかってるって、心配性だなぁ。ほら、はやくはやく」

 

 ゆっくりと高度を上げ、下に煌めく海と出港する軍艦、目の前にはスモーカーの煙と普段より近い空と雲がうつる。

 生身でこの高度まで来れるなんて前世も合わせたってそうないだろう。

 

「と、飛んだ────ッ!!!!」

 

 海風に吹かれ、安定はしないが愛すべき空がこうも近い。

 興奮して涙目になったのを誤魔化すようにスモーカーの腕の中で足をばたつかせる。

 

「バカ野郎!暴れ「スモーカー!すごい!すごいぞ、俺たち空飛んでる!」っから、暴れるな!」

 

 慣れていない能力の使い方にふらふらと揺れるのもちょっとしたアトラクション気分だ。

 

「もういいだろ、降りるぞ」

「もう少し!このままランチャーみたいに飛べ!いけ!ホワイトランチャー!」

「命が惜しくないようだなぁ?あぁ゛?」

「怒るなよぉ」

 

 ひしっ、と両手で首にしがみついてたらいつの間にか地に足が着いてた。

 あーあ、もう少し堪能したかったな……

 でもこれでフロート水上機を完成させるためのやる気が出てきた。

 

「スモーカー、ありがとう!飛行機完成したら安全確認してから最初に乗せてやるからな!」

 

 

 

「おいおい、カイル、最初に乗せてくれるのは俺じゃなかったの?」

 

 後ろからの聞き覚えのある、いい声に振り返るとクザンさんがいた。

「っ、クザン中将!」

 

「よ、カイル、ちょっと話せるか」

 

 

 ────

 

 

「クザンさ、……クザン中将!どうしてこちらに」

「いや、アカデミーに入ったって聞いたからさ。どうしてるかな〜って様子見に来たのよ」

「中将ともあろう方がこんな所まで来ずとも」

「昔はクザン兄ちゃんなんて呼んでくれたってのにつれないねぇ。ほら、呼んでみろよ、兄ちゃんって」

 

 一介のアカデミー生に中将クラスが会いに来るなんてそうない事だ。人目につかない所を用意し、茶を出す。

 

「そりゃ、会いに来てくれたのは嬉しいと思ってますよ。5年前、遠征に……オハラに行ってからこうして話すこと"1度も"なかったですからね、クザン兄ちゃん?」

「まぁ、それは……ごめんって」

「それで、どうしたんですか?様子見に来た、なんて嘘でしょ。俺のやってる事が上に目をつけられでもした?」

「お前、……分かってるならもう少し上手くやりなさいよ」

 

 はぁ、とため息つくクザンさんはオハラの一件から正義を変えたらしい。

 俺と会っていた時は、燃え上がる正義。

 今はダラけきった正義。

 何があったかは詳しくは知らないが、あの日帰ってきた軍艦達の顔を見れば少し思うところはあった。

 

「海軍を利用したくて、俺は入ったんだよ。誰かを守るため、なんて大層な正義持ち合わせていない。全ては俺の私利私欲の為。知ってたでしょ?」

「利用するつもりで食い潰されるなって話だ。親父さんと作ってた水上バイクとか色々あるだろ、あれでお前は使える奴だって認識されてる」

「クザンさんの所で囲えとでも命令された?」

「そうだったら良かったんだけどねぇ。ま、監禁されて研究地獄、なんてことはならないだろう。お前いつの間にか海軍のお偉いさん達に好かれてるからなぁ」

「小さい頃から父親に連れられて色々な人に挨拶してたからね。どう?センゴクさん元気にしてる?」

「ピンピンしてるよ。おかき食いすぎて口内炎出来たってよ」

 

 頬杖をつき、面白くなさそうな顔をするクザン。

 なんだかんだ可愛がってくれてるのがわかり、こそばゆい気分だ。

 

「力をつけられるなら、俺は誰の下でも頑張るよ。自分の好きな事をするにはやるべき事はやらなきゃね」

「耳に痛いこというねぇ」

「そうして、力をつけてガープさんみたいな制御不能になったら、上に囲われなくて済むよね」

 

 ニヒ、と笑えばクザンは空いた口を隠しもせず、遂には笑っていた。

 

「く、……はは!ガープさんか、そりゃいい。英雄を目指すのか?」

「ううん、俺が目指すのはトップガン」

「トップガン?」

 

 

 ────

 

 

 なーんて、大口叩いたはいいけどマジで誰の下につくんだ。使えないやつの下はいやだし、厳しすぎる人も嫌だ。

 クザンさんが帰ったあと自室のベッドでごろごろ自分の発言の痛さに悶え苦しんでるところだ。

 

「おい、なにしてんだ」

「この歳になって厨二病みたいなこと言う俺を殺してくれ、スモーカー」

「はぁ?それより、クザン中将はなんの用だったんだ」

「んー、なんか、進路の心配してくれるお兄ちゃんだった」

「お前の交友関係どうなってんだ」

「俺のことはいいんだよ。聞いたぞ、スモーカー、ヒナ嬢と飯行ったんだって?やるねぇ」

「ただの飯だ」

「ふぅん?」

 

 




男主
ちょっとだけだが空をとべた。
一緒にいるからスモーカーと似た匂いになってきた。

スモーカー
ちょっとだけだが人を抱えて空を飛んだ。
ヒナにカイルの吸ってるタバコの銘柄聞かれた時は流石に止めた。まだ早い。

クザン兄ちゃん
胸か尻かの論争した仲なのにオハラ以降会わなかった。覚えてたカイルより大きくなってて時の流れを感じたし、ガープさんみたく、と宣言されて心配半分面白半分。

ヒナ
カイルに教わっているなかで少し心が動いてきた。
癪だが知ってそうなスモーカーに色々聞いた。


次回
アカデミー卒業試験
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