飛行機雲   作:神風

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 クザン中将がやってきたことは同期達には知られずに済み、平穏な日々を暮らせていた。

 スモーカーは言いふらすようなやつじゃないし、もう少しすれば卒業試験があるので他人の進路に構ってる暇など無いのだろう。

 

 卒業試験まであと少し。

 かく言う自分も武器の整備や練習に勤しんでいる。

 はるか遠くに設置された人型の的、息を整え引き金を引くと頭に穴が空く。

 

 

 能力者達は能力の使い方を模索し身につけ、無い者は無いなりの戦い方を身につける。

 メジャーな武器と言えば刀や銃が挙げられる。

 昔から竹刀を振っていたし、刀は使いやすいと言えば使いやすいが秀でているかといえば首を傾げるレベルだ。

 ロロノア・ゾロやミホークみたいな怪物と比べることさえ烏滸がましい。

 自分に合った武器はなんだろうかと入学当初、迷っていた頃だ。

 

「カイル、お前は他に比べれば力は弱いが技術はある。それに分析力も申し分ない」

「ゼファー先生。……光栄です。ですが、現場で通用するものとはとても。それに、誰かを傷つける感触がどうにも……」

「そうか、なら銃はどうだ。肉を切る感触も殴りつける感触もない。ただ引き金を引くだけだ。神経を研ぎ澄ませ、風を読み、撃ち抜く。練習してみるといい」

 

 そう言って渡された銃での戦い方を磨いてきた。

 遠隔援護としての戦い方、近接戦での戦い方、アカデミー内に保管されている過去の戦闘資料をさらってあらゆる戦闘を想定して様々な銃を試し、腕を磨いた。

 前世の映画でみた戦い方も参考にもしてみた。

 戦闘には巻き込まれたくないが自分の身を守る為だと思えばなりふり構ってられないだろう。

 

 ガン=カタみたいなことできたらカッコイイな、魚人空手なんてものがあるんだ、空手の文化はある、何とか融合させてガン=カタ、習得してやる……

 

 とかなんとか思って空手もやってた時期もあったけど、映画は映画なんだよ。

 Load Aim Shootこの3つを滑らかに行えるよう、基本に忠実に。整備はしっかり、ジャムってもすぐに回復出来るように。

 空へ飛ばした的を撃つ訓練などしていた。まぁ、弾が切れりゃただの棒みたいなものだフルスイングする気持ちで戦うさ。

 海楼石で作った弾丸でも用意してもらうかな。

 

「カイル、そろそろ飯行くぞ」

「あぁ、すぐいく」

 

 

 ────

 

 

 とある大将執務室ではおかきをかじる音が響いていた。

 

「結局、あの子を誰の下につかせるか決まったのか?」

「まだだ。卒業試験の後に考える」

「なんじゃ、悠長な事を。可愛いわしらの孫みたいなもんだぞ?」

「孫だけならこんなに頭悩まずに済むんだがな。クザン曰く誰の下でもいいと言っていたそうだ。上に目をつけられていても、力をつけてお前みたく制御不能になってやると言っていたそうだ」

「わしみたく、か。ぶわっはっはっは!そう来なくちゃな!あの子は海兵を目指す時もわしに宣言してきよった、わしに憧れとるんかのぉ」

 

 センゴクの言葉にガープは豪快に笑い、そばに控える副官ボガードに昔話を言って聞かせる。

 

「カイルは、何故目をつけられているので?ガープ中将が可愛がっているのは知っていますが」

「ボガード、お前水上バイク知っとるか」

「えぇ、10年程前から普及した乗り物ですね。我が海軍で開発されたものだとか」

「それを構想、開発したのがカイルだ。それも当時10代前半だ」

「な……」

「そいつが今度は空を目指しとる。海と空を握れば、この世は世界政府の思うままだろうよ」

 

 上官達の眼差しは厳しく、机の上に広げられた彼の資料を見つめる。

 昔、暇つぶしに剣術の稽古をつけてやった子供がこうなるとは思ってもみなかった。

 

 早く力をつけろ、カイル。

 時は待ってくれないぞ。

 

 

 

 ────

 

 

 

 卒業試験。

 無人島でチームに分かれサバイバルを行いながら、互いに守るフラッグを奪う。

 もちろん、行き帰りも軍艦を全員で運用し乗っていくのだ。

 勝敗が重要では無い。その間にどのような働きをしたかを審査される。

 

「試験総監督のサカズキじゃぁ。この港から試験は始まっとる。わしは甘くなぁぞ、落とすもんはしっかり落とす。せいぜい気を抜かんことじゃ」

「「「「はっ」」」」

 

 行きの気象はおだやかで、3日程で無人島に到着した。

 そこは鬱蒼と緑が生い茂り、中からは何の動物かわからないがぎゃぁぎゃぁと騒ぐ声が聞こえる。湿度は高く、まとわりつく空気が気持ち悪い。

 

 噂によるとどこで試験するか、海図ダーツで決めてるらしい。嘘だと言ってくれ。

 

「今から読み上げる者は赤組、それ以外は白組じゃ。それぞれ監督官が付くが特に助けはせん。おどれらの実力で生き抜け。こちらが危険だと判断した時にだけ動く。支給する物品は今背負ってる背嚢に入っとるだけじゃけ、よう考えて使うこと。わかったか」

 

 チームの振り分け結果は

 

 スモーカーとヒナは白

 俺が赤

 

 見事に分かれた。周りの同期をみても同室や仲のいいやつらは分けられているようだ。能力者の割合で言えば半々、公平ではありそうだ。

 分けられたあと、チームの色の旗と人数分の布を配られた。

 

「今配った布は自身の組を示すもんじゃ、腕にでも巻いておけ。旗は拠点の目につく所に設置すること。奪った旗と自陣の旗で沖で停泊しとる軍艦に信号を送れば終わりじゃ。己の組名を手旗信号で送れ。以上!」

「「「「はっ」」」」

 

 無人島はZのような形をしており、両極に拠点が置かれている。小さめの逆佐渡ヶ島を想像すればいい。

 

 赤に分けられた同期と拠点に赴くと同時に話し合う。

「まずは拠点の設営からだな。どうする?水と火とシェルターと食料。あとは旗守る為の罠でも張っておくか?」

「力仕事は俺らに任せろ。拠点の周りの環境も探索しないとな。設営はカイルたちに任せる。いい寝床作ってくれよ」

「はいはい、とりあえず水源とかあったら共有よろしく。帰りに猪でも狩ってきて」

「バカ言うなよ」

 

 設営組と探索組数班に分かれ、初日は白組と衝突することはなかった。

 自分たちの寝床をつくり、飲水を作るため濾過装置をつくり、火をおこし、人数分の食事を作っていたらいつの間にか夜になっていた。

 

 昼間の声とは違い、夜行生物が彷徨いているのだろう、低く唸る声や草の根を分ける音、虫の声が一際目立つ。

 即席の寝床に寝転がり、木々の間から星空をみあげる。

 こういう時スモーカーがいればどうでもいい話して気を紛らわすことが出来るんだが……

 

「あいつどうしてっかな……」

 

 

 翌日、探索チームが持ち帰った情報をもとに数人で水源である滝を訪れ、水を確保しにきた。

 監督官は付かず離れず、自然体の行動を見るためか姿をあまり見せなかった。

 

「でっかい滝だなぁ、この暑さもここならいくらかはマシだ」

 滝に近づき、顔を洗う。暑さに耐えきれず、滝に打たれに行くやつもいた。その中の1人がこちらに手を振っているのが見える

 

「おーい、カイル!滝の奥!お前の得意分野だ!」

 

 示された先には古びたキャラベル船が停泊していた。

 

 滝の奥で佇むキャラベル船は帆を折りたたんだ状態が長かったのだろう、鳥の巣が作られているがまだ海へ出られる状態だ。

 船の造りや木材を見るに、北の者が造った船だろうか。

 部屋には航海日誌や海図、いくつか写真があった。

 

 何故この船はここに来たのか、誰を乗せてきたのか、乗ってきた者はどうなったのか。

 読み込んでみるのも面白いかもしれない。

 

 

 

 ────

 

 

 

 卒業試験6日目。無人島到着後3日目。

 白組サイド スモーカー

 

「おい、ラワレ、人数減ってないか」

「あぁ、数人程赤組に持ってかれたんだろう」

「あ?捕虜か?たかが試験で何やってんだ」

「うちもだろう。ヒナさんのオリオリの実の能力使ったんだ。扱いに困ってる」

「働かざる者食うべからずだ。水でも運ばせて朝になりゃ解放すりゃいいだろう」

「それもそうか。旗の場所知られないように移動させてくる」

 

 その場を離れた同期を見送り、一服する。

 べったりと張り付くような空気も汗も、騒がしい深淵ももう沢山だ。

 早いところ旗を奪って試験を終わらせたい。

 

「ねぇ、スモーカー君。ラワレ君知らない?赤組の偵察にツーマンセル組んだのにいなくて」

「お前が捕まえた赤組のやつら移動させるって言ってたが」

「そう、ありがとう」

 

 数分後

 

「いなかったけど?」

「あ?そんなはずあるか」

 

 その後いくら探してもラワレは見つからず、更には食料がごっそり無くなっているのが発覚した。

 

「どういうことだ?赤組のヤツらがこんなことするはずねぇ」

「命に関わるようなことはしないはずだわ。組対抗とはいえ仲間を顧みない行動は落とされる可能性だってある」

「だろうな」

 

 ガシガシと頭をかくも、目の前の事実は変わらず。

 一旦白組総員を集め、点呼をとった結果4名の行方が知れない。

 

「どう考えてもおかしい。監督官の姿も見えない、人数も食糧も減ってる。一度赤組のヤツらにも確認をとるべきだ。赤組も被害が出てる可能性がある」

「待てよスモーカー。それが奴らの作戦だったらどうする、拠点を離れるのは得策じゃない」

「おい、テメェ本当にそう思ってるのか。たかが試験のために仲間を死に晒すようなこと、アイツらがするはずないだろうが!」

「可能性の話をしてる!俺だって信じたくねぇよ。でも現状こうなってんだ。俺たち以外に誰もこの島にはいないだろう?」

 

 這い寄る不安に皆パニックを起こし始めていた。

 ピリピリとした空気の中、口を開いたのはヒナだった。

 

「ヒナ、提案。ここで言い争いをしても解決しない。さっきまでいたラワレ君が行方不明なのよ。攫われたと仮定すればまだ犯人は近くにいる。警戒を怠らないで。

 それと、赤組の様子を確認すべきだと思うわ。赤組にもいないとなれば、いよいよ監督官の出番よ」

「赤組には俺が行く。お前は捕獲が得意だろう、まだ近くにいるはずだ、出てきたら捕まえておけ」

「言われなくても」

 

 

 

 ────

 

 

 とある航海日誌

 

 ▢▢月1日

 食糧調達の為に島へ降り立った。

 見たところ人が住んでいる気配は無い。だが、木の実や真水を調達できそうだ。

 海軍のヤツらに目をつけられている、ここらで身を隠しているのもいいだろう。海から続く水脈の先の、滝の裏手の洞窟に船を隠す。

 ▢▢月5日

 船員が1人行方不明になった。

 総出で探しても見つからず、獣にでも襲われたのかもしれない。

 ▢▢月7日

 捜索を諦めた。

 行方不明になった者が3人に増えたからだ。

 そのうち1人は私の目の前で消えた。

 アレは音もなく足元に這い寄り、人を取り込む。

 攻撃すれば分裂して増える。厄介だ。海水が苦手なのか、海まで逃げれば追ってくることはなかった。

 

 

 

 ────

 

 

 

 ○○月15日

 島に降り立ち、この船を見つけた者だ。

 勝手に書き込むのも悪いと思ったが、紙は貴重でな。

 この日誌を書いていた者が今どうなったかはわからない。船が残されているということは海には出られなかったのだろう。

 アレとはなんだろうか、安全より好奇心が勝ってしまうのは俺のいけないところだ。

 

 ○○月17日

 アレと呼ばれた物をみた。

 森の中で食糧を探していた途中、鳴き声を聞いたような気がした。少し開けた所でアレは翼を羽ばたかせ飛ぼうとしていた。

 姿形は翼をもち、細長い尾っぽをもつ生き物だ。クルーによると<マンタ>のような姿形だそうだ。

 あれが人を襲うのか?

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