人生ドロップアウトTS娘は今日も飯を食う 作:てぬてぬ@TSF
ザァザァと音を立てて雨が降っている。ジャージ姿の俺は土砂降りの様子を窓から眺めながら、所在無く座り込んでいた。この雨じゃあジョギングに行くのは無理だな。当然アパートの庭も使えないので、素振りや壁当ても出来ない。
「暇になっちゃったな」
昼辺りから曇ってきていたのは確認していたけど、まさかここまで大降りになるとは。俺がジャージに着替えようとしたタイミングで降り出して、今ではこの有様だ。ツイてない。と言ってもまた着替えるのも二度手間だし、ジャージのままで過ごそうか。
一応ストレッチだけはしつつ、雨の音を聞く。流石にここまでの降りだと風情を感じることも無い。まぁ、時期も時期だからな。もう梅雨入りしてるんだっけ?野球関係以外のニュースは殆ど見ないので、細かい日にちまでは知らなかった。
さて、余った時間で何をしよう。今日の夕飯の準備?いや、そこまで凝ったものを作るつもりは無かったし、何より食材は冷蔵庫にある分だけだ。土砂降りの中、買い物に行くのも気が引ける。そう思いつつ、とりあえず冷蔵庫の中を確認してみることにした。
「えーっと・・・・・・あ、これは」
しまった、牛乳の賞味期限が一日過ぎている。パン食の時は一緒に飲んでるんだけど・・・・・・とにかく消費しないといけない。開封してないのでまだ大丈夫なはずだ。となると何を作るべきか。うーん・・・・・・。
ここはやっぱり、スープやポタージュ系か。問題は他に具材になるものが残っているかどうかだが、冷蔵庫を漁ってみた感じなんとかなりそうだ。玉ねぎにブロッコリー、ウインナーもある。レシピ通りとはいかないけど、まぁなんとかなるだろう。
ジャージ姿のまま台所に立つ。まずは具材を切っていこう。玉ねぎはみじん切りにして、ウインナーとブロッコリーは食べやすい一口サイズに。消費したい牛乳の量が多いから、全体的に具材も多めだ。と言っても限度があるので、明日の昼くらいまでに食べ切れる程度にしておこう。
次はフライパンをコンロにかけ、バターをしっかり熱した後切った具材を炒めていく。面倒だから全部纏めてだ。玉ねぎがしんなりするくらいまで火を通したら、鍋に移して水を投入。軽く煮込み始めた。
そういえば、自炊を始めた頃に野菜スープを作ろうとして失敗したことがあったな。あれは苦い記憶だ。幸い、今日に至るまであれ以上の失敗は経験していない。先日初めての揚げ物にも挑戦したし、あの頃とは違うのだ。・・・・・・本当にそうか?お隣のお姉さんは俺の料理の腕を褒めてくれるけど、どうにも実感が無い。
しかし、それも当然かもしれない。俺の料理の腕が向上したとしても、比べる相手がいないのだ。物差しが無ければ測ることも出来ない。飲食店の人達と比べるのは流石に失礼だし、うん。まぁ、今の所はお姉さんの言葉を信じておこう。
「っと、そろそろか」
いい感じに鍋が煮立ってきていたので、牛乳をパック丸ごと投入。塩と顆粒状の鶏ガラスープの素で味付けをする。じっくりとかき混ぜながら再度煮込み、一旦味見をしてみた。ちょっと薄いかな?調味料を追加して味を調え、とりあえず完成だ。
ある程度アドリブでやったにしてはかなりスムーズに調理出来たな。地力がついている証拠だ。と言っても、複数の料理を一食の為に作れるような手際は無いんだけど。今の所、基本的には単品だ。まぁ、一人暮らしだし別にいいだろう。
ただ、ちょっと早く作り過ぎてしまったかもしれない。夕飯までにはまだ時間がある。ちょっと早計だったか。何度も温めると傷みやすいから、これは反省点だな。
さて。ポタージュにはパンの方が合うけど、残ってたかな・・・・・・。別に白米にポタージュをかけても美味しいとは思う。だけどやっぱりパンの方が美味しい気がするのだ。棚を漁ると、幸いなことに食パンが二切れ残っているのを発見した。こっちも賞味期限が一日過ぎてるけど多分大丈夫だよな、うん。
夕飯までの時間をスマホで潰す。調べた所によれば、かつての相棒は順調に結果を残し、球団の中で存在感を現しているようだ。失点も少なく、若手の中では中継ぎのエースと言っても差し支えない。
「ほんと、凄いよな」
呟きつつハイライト動画を見て、相棒の雄姿を確認する。思わず唸る程の変化球のキレだ。高校時代からますます磨きがかかっているようで、凄いの一言に尽きる。
「っと、そろそろいいか」
気付けば結構な時間が経っていた。動画に集中し過ぎたせいかあっという間だったな。なんか前にもこういうことがあったような・・・・・・。まぁいいか、夕飯にしよう。ポタージュを温め直し、食パンはそのまま皿に乗せる。単純なメニューだけどポタージュの量はたっぷりだ。
「いただきます」
手を合わせた後、スプーンでポタージュをすくい口に運ぶ。うん、やっぱり美味しい。温かくて優しい味だ。牛乳と玉ねぎの甘みがいい感じに染み渡る。ブロッコリーとウインナーのおかげで食べ応えも十分だ。
少し品が無いけど、食パンを千切りポタージュに浸す。十分に汁を吸った所で口に放り込んだ。しっとりとした生地が旨味を吸っていて美味しい。こういう食べ方、実は結構好きなのだ。実家では母親に怒られてたけど、どうしてもやめられない。
「ごちそうさまでした」
結局ポタージュをおかわりし、食パンも二枚平らげてしまった。旺盛な食欲はジョギングに行かなくても健在らしい。このまま雨が続いた場合、太らないかちょっと心配だ。せめてもう一度ストレッチをやってからシャワーを浴びるとしよう。
明日は晴れるといいが、どうだろう。小振り程度に収まったら買い物にも行けるんだけど。そんなことを考えながら、俺はのんびりと全身をほぐすのだった。
ポタージュ系とパンの相性がいいのは歴史が証明していますからね。