人生ドロップアウトTS娘は今日も飯を食う 作:てぬてぬ@TSF
定期検査の度に送られてくる診断書。細かい数値や項目は全然分からないけど、それでも理解出来る部分もある。つまり身長や体重、スリーサイズ等だ。
「うーん・・・・・・」
結構体重が増えている。ジョギングやジム、素振りとかで鍛えているから当然と言えば当然だ。医者の先生も「健康的な体重増加ですね。気にする必要はありませんよ」と言ってくれている。だからまぁ、気にする必要は無いんだけど・・・・・・。
最近色々と食べ過ぎているのもあって、中々考えてしまう。と、言っても食事量を制限するつもりはあまり無い。今の所健康に影響は無いらしいし、単純に俺の気持ちの問題だ。
「うぅーん・・・・・・」
なんとなくもやもやしている気分をどうするか。考えているけど解決策は浮かんでこない。むむむむ・・・・・・。腕を組んだままうんうんと唸る。既に時刻は夕方、そろそろ夕飯の準備をしないと。だが、今のままだと手が付かなさそうだ。
「ううぅーん・・・・・・」
横になってごろごろと転がる。別に大層な悩みじゃないのに、何故か引っかかっていた。これを解消するには何か閃きが必要だ。とりあえずスマホを手に取って、適当に検索をかけてみる。ダイエットするわけじゃないけど、それ系のワードを中心に。すると、とあるものが目に入った。
寒天ゼリー。低カロリーかつお腹の調子を整える効果があり、小腹が空いた時に食べると満足感を得られる、と。いいかもしれないな、これ。ヘルシーで食べ応えもばっちり、今の俺にはぴったりだ。
早速レシピを調べ始める俺。えーっと、材料は明日に買えばいいか。せっかくだしちょっとしたアレンジも・・・・・・時間が過ぎる中、結局夕飯のことは頭から抜けてしまい、仕方なくレトルトのカレーで済ませるのだった。
「さて・・・・・・」
午前中の間に買い物を終わらせ、手作りのサンドイッチで昼食を済ませた昼下がり。俺は寒天ゼリー用の材料を台所に並べ、準備を整えていた。今回は砂糖抜きにする代わりに、缶詰のフルーツを入れるつもりだ。
寒天ゼリーを作るのは初めてなので、量は控えめに。上手くいったら多めに作り置きしておくのもいいかもしれない。ともあれまずはやってみよう。ミックスフルーツの缶詰を開け、中のシロップを計量カップに分ける。中身のフルーツはタッパーの方に入れておいた。
シロップに水を入れて量を調整。そのまま鍋に入れて、粉末状の寒天を投入する。コンロを点けて沸騰するまで火にかけた。沸騰してからは中火で2分程待ち、さっきフルーツを入れておいたタッパーに移し替える。
「よし」
熱が冷めたらタッパーの蓋を閉め、冷蔵庫で固まるまで放置したら完成だ。・・・・・・滅茶苦茶簡単だな。多分自炊初心者だった頃の俺でも作れるぞ、これ。よし、とりあえず固まるのを待ってる間にジョギングに行くか。早速スポーツウェアに着替え、ストレッチをした後日焼け止めを塗り外に出る。
まだまだ気温も日の光も夏って感じだ。でも、猛暑とまではいかない程度。いつものペースでいつものコースを走りながら、俺の気分は晴れやかだった。季節の移り変わりを感じられる心の余裕が出来たのは、1年と少し前に比べて明確な成長である。
徐々にペースを上げると流れる汗も増えていく。気持ちいいな。心臓の鼓動も、熱い吐息も、男だった頃と最近の日常の両方で慣れ親しんだものである。肉体が変化してしまっても、やっぱり俺は体を動かすのが好きだ。
「到着、っと」
折り返しになるいつもの公園で一旦休憩。携行していたボトルから、薄めたスポーツドリンクを飲む。これもいつもの味だ。ルーティンが完全に日常として馴染んでいる。悪くない。うん、悪くない。ベンチに座りながら息を整え、タオルで汗を拭きつつ空を眺めた。いい天気だ。
公園では、何組かの親子連れが遊具で遊んでいた。牧歌的な雰囲気で落ち着く。他人を見てそう感じるのも、一応成長と言えるんだろうか。強い日差しが全身に降り注いでいるが、日焼け止めがブロックしてくれているのは知っていた。
短い休憩を終えて、俺はスローペースでジョグングしながらアパートに戻っていく。到着し部屋に戻ると、まずは全身の汗を拭ってからストレッチ。疲労と乳酸の溜まった筋肉をじっくりとほぐした。そしてシャワーで全身を洗い流し、部屋着に着替えて一息つく。
「ふぅー・・・・・・」
心地良い倦怠感。ぼんやりと寛いでいると、寒天ゼリーを冷やしていたのを思い出した。よっこらせと立ち上がり冷蔵庫の中を確認する。タッパーの中の寒天ゼリーはきっちり冷えて固まっているようだ。
一旦タッパーから取り出して包丁で切り分ける。その内の一つをつまみ、試食してみた。思っている以上に甘酸っぱい。しっかりと味がついている。ぷるんとした寒天の食感と、ミックスフルーツのジューシーさがベストマッチだ。
こういうスイーツみたいなのを作ったのはキウイのジャム以来か?それにしては上出来というか、そもそも簡単過ぎたというか。ま、美味しいことに変わりは無いし別にいいや。これなら大量に作り置きしてもいいかもしれない。
「あ、そうだ。お姉さんや大家さんにおすそ分けしようかな」
いい考えだ。まだ日も暮れてないし、そうと決まれば用意しよう。小さめのタッパーを2つ用意して寒天ゼリーを半々に分ける。自分の分は残さなかった。明日フルーツの缶詰を買いに行って、改めて作り置きするつもりだからだ。
「よし」
2つのタッパーを持って部屋を出る。どこかうきうきした気分で、俺は隣の部屋のチャイムを鳴らした。
寒天はヘルシーかつ整腸にも有用な素晴らしい食物です。だけど作者は牛乳寒天だけ苦手。好みの問題ですね。