人生ドロップアウトTS娘は今日も飯を食う 作:てぬてぬ@TSF
夢を見ている。子供の頃の夢だ。俺は近所の友達と、公園の砂場で遊んでいた。砂を盛りに盛って山を作り、それを掘り進めトンネルを開けるやつ。友達と手が触れ合った時、俺達は何がおかしいのか盛大に笑い転げたっけ。
砂だらけ、泥だらけになって遊び、母親に叱られながらお風呂で洗ってもらう。懐かしいな。どこまでも単純で、自分の周りだけで世界が完結していた頃の光景。誰にでもある、ごく一般的な過去だ。
どうしてこんな夢を見ているんだろう?いや、そもそも夢に意味は無いのかもしれない。その辺り詳しいことは分からないけど・・・・・・そもそも夢の中でこんなに考えられるのがおかしいのか?まぁ、どっちにしろ酷い悪夢に比べたら全然マシだな、うん。
子供の頃かぁ。ネズミを捕まえて家に持ち込んだり、カマキリの卵を机の引き出しにしまった結果酷いことになったり色々とやらかした記憶が蘇る。まぁ、俺は大概やんちゃ坊主だったのだ。
自然が比較的豊富な地域だったのもあって、休みの日なんか昼ご飯を食べに帰る以外は朝から夜まで外で遊んでいた。たまには自分の家や友達の家でゲームを楽しんだりもしてたけど、外を飛び回ってた方が圧倒的に多い。体を動かすのが好きなのはあの頃から変わっていなかった。と、
ピピピピ!ピピピピ!
アラーム音と共に意識が浮上する。手探りでスマホの画面を押し、目覚まし代わりのアラームを止めた。上半身を起こして両手を上に背筋を伸ばす。今日は比較的眠気が浅い朝だ。起きる直前まで夢を見ていたからだろうか。
「ふぁーあ・・・・・・」
大きな欠伸をしながら洗面台に向かう。最近は残暑も随分と和らぎ、過ごしやすい気温になっていた。寝汗も少なくなったので、数日に一度はシャワーも浴びていない。どうせジョギングや素振りの後に浴びるからな。だから不潔ではない、はずだ。
顔を洗ってタオルで拭き、軽くストレッチした後部屋着に着替えた。さて、朝ご飯はどうしようかな。作り置きの寒天ゼリーはデザートに頂くとして、確か食パンが残ってたはず。鉄鍋で軽く焼いてバタートーストにしよう。
後は・・・・・・冷蔵庫を漁り適当なおかずを探すと、先日スーパーの特売で買ったウインナーが見つかった。生卵もあるし、この二つは一緒に焼いてしまえばいいか。早速俺は鉄鍋をコンロにかけ、サラダ油を薄く引く。ある程度温まった所でバターをやや多めに入れた。
焦げないように火加減を調節しつつ、溶け切ったら食パンを投入。バターを吸わせながら1分弱焼いていく。フライ返しで上から押さえつけるのはサクサクとした食感にする為だ。焼き目がしっかり付いてるのを確認したらもう片面も同じように焼き、バタートーストは完成。
さて、この鉄鍋で卵とウインナーも焼いてしまおう。油とバターも少し残っているので、そのまま生卵を割り入れる。三本のウインナーも隅っこに置いて同時に火を通した。うん、いい匂いだ。なんとなくの気分だけど、今日の目玉焼きは固焼きにしよう。
「あちち」
しっかり火が通った後、俺は鉄鍋の取っ手を持ってちゃぶ台に運ぶ。準備しておいた鍋敷きの上に乗せ、同じく皿の上に乗せたバタートーストを横に置いた。コップに牛乳をそそぎ用意は完了。うん、いい感じの朝食だ。頷きながら俺は手を合わせる。
「いただきます」
まずはバタートースト。大きく口を開けてかぶりつくと、サクサクとした表面ともっちりした内部の食感が伝わってきた。多めに入れたおかげかバターの風味も香ばしくて、他に何もつける必要は感じない。手軽に作れる割にはちゃんと美味しくて、以前にも何度か作っていた。
次はウインナー。たらりとケチャップをかけてから頬張る。皮はパリッと、中はジューシー。当然美味い。こうして食べてると思うけど、加工肉は偉大だな。適当に調理しても十分に美味なんだから。
そして、目玉焼き。固焼きのものは塩コショウで食べるのが好みだ。さっと振りかけて、まずは白身の一部を箸で切り取り口に運ぶ。うん、素朴な味でやっぱり美味しい。黄身の方はちょっとぼそっとしているけど、逆にこれがいいんだ。半熟でとろっとしてるのも好きだけど、こっちも好き。その日の気分で選べるのは、自炊故の贅沢だよな。
窓から差す日差しを浴びつつ、俺はのんびりと食べ進める。いつもはスマホを開いてるけど、バタートーストで指が脂ぎっているので今日はやめておいた。その分、どこかゆったりした気分だ。こういうのも悪くない。心にゆとりを持てているようで。
「ごちそうさまでした」
いつもより時間をかけて食べ終え手を合わせる。量はそこまでじゃないけど満足だ。鉄鍋や食器を洗いつつ、窓から外の様子を眺めた。通学か通勤か、人通りはそれなりにある。無職の俺は少し申し訳ない気分になるが、そんなネガティブな気持ちも洗い物を終える頃には薄らいでいた。これも心のゆとりなんだろう。
さてと。朝ご飯中に見損ねていた野球のニュースやら色々を見るか。スマホを操作しいつものアプリを開き、見出しにざっと目を通す。あ、応援している球団が暫定1位に繰り上がってる。調子いいなぁ、これはリーグ優勝狙えそうだ。と、
「・・・・・・え?」
別の見出しを確認した俺は、思わず声を漏らした。そこにはかつての相棒の名前。記されているのは活躍ではなく・・・・・・。
「怪我・・・・・・?」
昨日の試合で肘を負傷、緊急降板し入院した、と。容体はまだ分からないが、今期の復帰は絶望視する向きもある、らしい。衝撃的な記事に俺は暫し呆然とする。さっきまでのゆったりした気分は吹き飛び、どうにか詳細を知ろうと必死にネットを検索し始めた。
目玉焼きにかける調味料は何がいいか。きのこたけのこ戦争以上に戦国時代になる話題ですよね。