人生ドロップアウトTS娘は今日も飯を食う   作:てぬてぬ@TSF

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66.駄菓子色々

「ふぅっ。少し、寒くなってきたかな」

 

すっかり残暑も過ぎ去り、それどころか肌寒くなってきた頃。俺はジャージ姿でいつものルートを走っていた。長袖なので日焼け止めを塗る必要が無いし、気が楽だ。動いていれば寒さも感じないからな。

 

徐々にだけど、街路樹の葉も散り始めているように見える。もうそろそろ冬が来るんだろう。最近の秋は極端に短いし、折を見て炬燵を出しておかないと。

 

そういえば。かつての相棒の手術は成功したらしい。術後の経過も良好で、徐々にリハビリの予定も組んでいる、と。あまり気にし過ぎないようにはしていたけど、やっぱりほっとした。復帰までの道のりは遠いだろうけど、どうか挫けず頑張ってほしいと願っている。

 

そんなことを考えながらいつもの道を軽快に進んでいくと、急に向かい風が吹き全身に浴びせられた。落ち葉もカサカサと音を鳴らし風に運ばれていく。やはり冷たい。秋風ってやつかな。

 

「ふぃー、到着」

 

折り返しの公園まで辿り着き、いつものベンチに座りながら息を整える。薄めたスポーツドリンクをちびちび口に含みつつ周囲を眺めていると、公園内に見慣れない車が停まっているのが見えた。何かの移動販売車だろうか。

 

車の横に立てられているのぼりには、昔懐かしみんなの駄菓子屋と書かれている。駄菓子屋、駄菓子屋かぁ。正直馴染みが無い。俺が子供の頃には、そういった店はもう潰れたりしていたからだ。そもそもコンビニでも駄菓子は売ってるし。

 

好奇心が湧いたのでちょっと近寄ってみる。事前に告知か何かしていたのか、結構な親子連れで車の周囲は賑わっていた。少し前の俺なら避けたくなる程の人混みだ。人と人の隙間をそっと進み、車内の棚に並べられた駄菓子を確認する。

 

「へぇ・・・・・・」

 

ずらっと並んだ駄菓子はかなりの種類があるようだ。コンビニでも売っているやつから見たことのないやつまで。一応、何かあった時の為に多少の小銭は持っている。・・・・・・ちょっとぐらい買い食いしてもいいよな。せっかくの機会だし、うん。自分に言い訳をしつつ、気になった駄菓子を選んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

買い物を終えた俺はベンチに戻り、レジ袋の中を覗く。まず取り出したのはヨーグルト味のこんにゃくゼリーだ。棒状の包装、その上部分の切れ込みを引っ張って開ける。そのままちゅるっと吸い込むと、甘酸っぱい味が口の中に広がった。

 

「んむ」

 

よく分からないけどちょっとわざとらしい味。いかにも駄菓子って感じがする。くにゅくにゅした食感を楽しみつつ咀嚼、そのまま飲み込んだ。喉越しも良い感じだ。

 

次はコンビニでもお馴染みのやつ。魚のすり身を薄いシート状にして、色々味付けをした駄菓子だ。今回は酢だこ風味を選んでみた。これ系は子供の頃によく食べてたな。早速口に入れて咀嚼すると、なんとも言えない酸味が鼻を突き抜ける。あぁ、これだこれ。懐かしい味。酸っぱさのせいでむせる友達がいたっけ。

 

さて、次はスナック系だ。袋を開けるとソースのいい匂いが漂ってくる。丸い表面に青のりが浮いている、たこ焼き味のスナックである。一つずつ口に放り込み、サクサクと音を立てて食べていく。うん、これもいい。ちょっと濃いソースの味の青のり、後は多分鰹節の風味がよく合ってる。タコの味はしないけど。

 

薄めたスポドリで後味を流しつつ、レジ袋から取り出したのは棒状のおつまみチーズ。カマンベール入りのやつだ。先っぽからかじっていくと安っぽいチーズの味が感じられる。駄菓子はこういう味でいいんだよな。適材適所というか、イメージ通りというか。

 

さて。他にも色々と買っているけど、次辺りで最後にしよう。駄菓子はそんなにお腹には溜まらないとはいえ、夕飯もあるからな。そう思いつつ取り出したのは長方形の巨大な駄菓子。ビッグカツだ。

 

子供の頃、これの小さい版はコンビニやスーパーで買って食べてたけど、まさかこんなに大きいビッグカツがあるなんて。いや、名前にビッグって付いてる以上こっちの方が正しいのか?とにかく、スマホ三つを縦に並べたくらいの大きさがある。・・・・・・流石にこれは腹に溜まる気がするぞ。

 

まぁいいや。ここからアパートまでそこそこ距離あるし、ジョギングして戻る内に消化も進むはず。言い訳を並べつつ包装を破り、巨大なビッグカツにかぶりついた。あぁ、衣の味がする。絶対に体に悪い、油に満ちた味だ。

 

これでも中身・・・・・・魚のすり身部分は酢だこ風味の駄菓子よりは分厚い。しかし、それ以上に衣部分の主張が激しかった。表面に沁みたソースと合わせてジャンクさが爆発している。ザクザクした食感も素晴らしい。俺の中ではビッグカツこそが駄菓子の王様だ。

 

そういえば、昔は駄菓子をおかずにご飯を食べたいと思ってたっけ。母親に怒られるから実行こそしなかったけど、今ではそれが叶えられそうだ。いやまぁ、実行に移す気は無いけど。流石に健康にも悪いし、こうして普通に食べるのが一番だと思う。

 

そんなこんなで巨大なビッグカツも食べ終わり、ゴミを別のレジ袋に纏めると俺は立ち上がった。残りの駄菓子は部屋に持ち帰ってちびちび食べよう。それにしても、あぁいう移動販売もあるんだな。駄菓子屋が少なくなっているからこそ、俺や他の人にも新鮮に映るんだろう。

 

駄菓子を購入した時に渡されたチラシによると、定期的にあの辺りを巡回しているらしい。また見かけたら買ってもいいかも。値段も大したことないし、何より童心に帰れる気がする。こういう経験も、きっと悪くはないはずだ。

 

「よし、っと」

 

軽く屈伸した後ジョギングを再開する。レジ袋を持っているので腕の振りを少なくしつつ、俺はゆったりしたペースで来た道を走っていった。




駄菓子の思い出は人によって様々です。私はコーラ味やグレープ味のガムを永遠に噛んでました。
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