私が結婚するなんて 俺が結婚するなんて   作:ピエロギ

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見合い:ソフィア・ド・ロアン視点

「ローランド様、本日はお忙しい中お時間を使っていただきありがとうございます」と目の前の陽光を浴びて光輝く黄金の麦畑の如き髪をもった、引き締まった肉体と焔のような赤い目をもつ男、侯爵家のローランド・ラ・ヴァレット様へ恭しく挨拶をする。すると

 

「本日は、ヴァレット家とロアン家の関係がより深くなるよう、このような場を設けていただき感謝致します」と太陽のような笑顔をこちらに向けてローランド様は、会釈した。

 

 ヴァレット家のローランドは貴族の子女達の間で、有名人だ。その爵位からというものもあるが、やはり彼自身の優れた肉体と容姿、そして…

 

 彼は私の方の豪奢なテーブルの下にお行儀よく、しまわれていた椅子を引いた。

 「どうぞおかけください」と彼はその荘厳な声で言う。優雅さと手慣れた所作であった。

 

 こうした、紳士然とした態度とそれを実行する決断力、優雅さから黄色い声が絶えないのだろう。

 

「ありがとうございます」と答え、大人しく厚意に甘え、席に着く。

 ローランド様も反対側の席に着き、対面する形でお話をする。ここで何か相手の機嫌を損なうわけにはいかない。この日の為にコンディションを整え、目の下の隈も薄くなっていたし、化粧で誤魔化している。

 

「さて、軽く自己紹介を。と言っても、すでに名前は互いに知っているがな。改めて、侯爵家ヴァレット家の末弟、ローランドだ。貴女の噂は聞いている。女性ながら、その優れた手腕を振るい、地方自治を行っているそうではないか」と

 

 あまり、いい噂ではないだろう。この時代に男を差し置いて、女が出しゃばるなどいい顔する人物は稀有だ。

 

「お褒め頂き恐縮です、ローランド様。貴方のような帝国を支え、誉れある貴殿から、そのようなお言葉を頂けるのでしたら、天上に上るような思いです」

 「何、貴殿の優れた手腕は聞き及んでいる。農業地を一括にまとめ上げ、共有地と荒れ地を大規模な農場として運用することで効率的な運用をするという大事業は、非常に難しい仕事だったろう」

 

(ほう、ローランド様は農業に関しては疎いと聞いていましたが、なかなか素晴らしい着眼点を持っていらっしゃいますね)

 

 「えぇ、主にそこの地主からの反発が大きかったですが、根気強く説得することで少しずつ受け入れてもらいました」

 

「そうしたアイデアがあったとしても、いきなり変えてしまえば、農奴や地主から大きな反発が生まれてしまう。その気骨があってこそ、貴女のお父様、ジョセフ氏が貴方を重宝する理由でしょう」とローランド様はお世辞を言う。

 

「お父様には、男だったらどれほどよかったかと何度も小言を言われましたわ。それよりも、私も貴方様について詳しく聞きたいです」と言葉を区切り、次のように続ける。

 

「貴方の領地において、工場内の作業を分業化。それも、既存のものと異なる、作業内容を厳格にすることで、製品の質を高い水準で一定のものを作り出していると聞いております」と聞くとローランド様の表情がほんの少しだけ、口角が上がったかのように見えた。

 

 貴族の世界において、相手の表情の変化を読み取ることは必須であったことからこそ、読み取れた本当に一瞬の変化であった。

 

「なかなか、良い所を指摘されますね。指導者としてはそうした所に気付いて頂けると非常に嬉しいです」とローランド様は天狗になることなく、次の言葉を続けた。

 

「勘違いをしてもらえないと嬉しいのですが、今回のお見合い、実際は余り気が乗らなかったのですよ。しかし、貴女との会話は他の令嬢たちとは異なり、心が躍るような感覚がする」

 

「喜んでいただければ幸いです。そのような言葉を貴方ような勇ましい方から言われて、私も非常に嬉しいです」と返す。

 

(――他の子女たちにも、同じことを言ってるのでしょう)と心の中で考える。

 

 ソフィアはそう考えていたが、実際の所、ローランドが他の子女に対してそのような言葉を言ったことはない。大半は相手の話を引き出し、ちょうどいい時間が程度たった後に去るといったものであった。

 

「そうだ、是非聞きたいことがあるのだが、いいか?」とローランド様は質問をしていいかと頼んできた。

 

「もちろんです。私がお力になれるのであれば、是非お話して下さい」と快諾する。

「領地内の工場で働く労働者の食事事情についてなんだが…」と続け、その問題についての解決策を述べる。

 

「はい、その問題については私の管轄する領地でも危惧されていましたから、次の様な…」と答えるとローランド様は

「なるほど、そういった視点から考えることもできるか。ならこういった…」と更なるアイデアを提案なされる。

 

「素晴らしい考えですね。私からも質問をしてもよろしいでしょうか?」と問うと

「もちろんだ、私たち二人ならば、より良い解決策を得られるだろう」とローランド様は答えてくれた。

 

「実は紡績工場において、機材にこういった不具合が…」と聞くと

「そういったことは、動力の出力にムラがあることで、機材の素材に耐えらずに負担がかかっていることで…」と話してくれ

「では、さらに強度の高いものにするということに」と提案すると

「それだけでなく、水力を動力にすることで…」と話し合いは白熱していった。気が付いたころには、西日が部屋を照らし、時間の経過を伝えてくれた。ローランド様も気づいたようで

 

「おや、もうここまで時間が経っておりましたか。今日の貴方の意見、非常に興味深いものでした。また、このような機会がありましたら是非お会いしましょう」と部屋の外の召使いに指示を出した。

 

「私も非常に貴重な時間を過ごせましたわ。お見合いがここまで、深い意見交換になるとは思いませんでした」とローランド様に言うと

 

「ふふ、確かにこのようなお見合いになるのは私たちぐらいだろう。感謝する。麗しき月光のような深い灰色の髪をもつ貴方に出会えたことを」とおっしゃるので

 「私も、勇ましき黄金の髪の深き洞察力をもった貴方に合えたことに、心から感謝いたします」と答える。

 

ローランド様は、満足したようで、一歩一歩、堂々とした足取りで去っていった。

 「なかなか、奇特な方でしたね」と独り言を、少し前まで白熱して意見を言い合っていたが、もうすでに静まり返った部屋で呟いた。

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