茶会の付き人~転生トリニティ生によるブルアカ生活、何かオレたちの知ってるのと色々違わなぁい?~ 作:新米ユーリ/神座/DMP
「つまり、ハーちゃんがパニくった挙句病室から逃げ出そうとしたら、ウイちゃんがそれを止めて、互いに取っ組み合いになったってことでいいんだね?」
「あぁー、はい……その通りです」
「ねぇハーちゃん。ハーちゃんはおバカなの?」
「やめてくれミカ! そんな可哀そうな奴を見るような目で見ないでくれ!」
病室での経緯を話した後、オレはミカからお説教を受けていた。
ミカは心底哀れなものを見ているようなジト目を向けているが、やめて欲しい。十年来の幼馴染に向けるものじゃないと思う。
ウイはミカが上に乗っていたオレをどかした後、ミカの後ろでオレたちのやり取りを見ていた。
「だって、ウイちゃんが落とし前付けに来たのだって、ここしばらくのハーちゃん自身から出た錆じゃん」
「いや……それはそうなんだが、返却遅延が一週間になったのは入院したせいだし、その原因は決闘騒動のせいで……」
「その時には既に本返すの忘れてたでしょ? それにハーちゃん自身のノリノリだったじゃん」
「いやぁ? 別に忘れてたわけじゃぁねぇよ?」
「なんて白々しい嘘なんでしょう……」
「ハーちゃん嘘つくのが下手なんだよねぇ」
「うぐぅ……」
どうにか抵抗を試みるが、突き付けられるオレ自身の落ち度に思わず言葉が詰まる。
ミカはそんなオレに苦笑い、ウイは心底呆れたと表情が語っている。
「じゃあ本に関しては私がハーちゃんの部屋から取って来るから、一緒に来てくれる?」
「まあ、本を返してもらえるならそれでいいですが」
「いや部屋の主を無視するなよ、許可なく入ろうとすんなよ」
「寮長に話を通せば大丈夫でしょ? 返却遅延の取り立てに来たっていう正当な理由なんだから。それにこれはハーちゃんに非100%でしょ」
オレが言うことに困っていると、二人はトントン拍子で話を決めていく。
「そうだ。ハーちゃん、これ渡しとくね」
「おっと……サンキュ」
事の段取りが付くと、ミカは持っていたぬいぐるみをオレに投げ渡した。
頼んでいたウェーブキャットのデカいぬいぐるみ。オレの抱き枕だ。
「それじゃあ私たちは帰るね。それと部屋に入るから」
「一応言っておく、頼むから部屋を漁るのはやめてくれ。本は勉強机の上に置いてあるから」
「えー? どうしよっかなー?」
ダメ元で頼んでみるが、
どうやらオレの部屋はお姫様に蹂躙されるらしい……。
「じゃあねー☆」
「失礼します」
「ああ、気を付けてなぁ」
ミカはそれまた良い笑顔をしながら、ウイを連れて部屋を出た。
部屋の外から何やら二人の声が聞こえるが、話の内容までは分からない。
それからしばらくして、二人の声は聞こえなくなり、病室はまた静かな所に戻っていった。
一人残されてやることもないから、また仰向けでベッドに倒れ込む。
(まさか、ウイとミカに接点ができるとはな)
この接点は原作──辛うじて役立つだろう関係性についての記憶にはない。
もっとも、メインストーリーの記憶がないせいなのかその関係性についても情報は確実性があるとは言えないけど。
(友達、増えるといいな)
それでも今ここで生きている友人として、ミカに友達が増えるかもしれないのは喜ばしい。
小さな変化がこれからも積み重なれば、大きな変化が起きるかもしれない。
(まあ、オレっていう
そんな楽観を思いながら、暇をつぶすためにオレは目を瞑って昼寝をすることにした。
オレとミカたちが出会ったのは本当にただの偶然だった。
まだオレ自身に何の自覚すらなかった幼少期。あまりにも煩わしいと思ったお茶会を抜け出してた時にオレとミカは出会った。
居たくなかったお茶会を抜け出したと思ったら、会場に行きたがっている迷子と出会うなんてふざけんなって当時は思ったよ。
でもそれで困ってる迷子を無視するのは違うと思った。その時のミカが思いっきり泣いてたからほっとけなかったってのもあるにはあるけど。
迷子を届けたらまたこっそりと抜け出せばいいと思ってミカを連れて会場に戻った。
その後の光景は今でもハッキリと覚えてる。
「ナギちゃん、ミキちゃん!」
「ミカ! どこに行ってたのよ! 心配したんだから!」
「よ、よかったぁミカちゃぁん!」
ミカを見つけたナギサとミキは凄いギャン泣き顔でミカに抱き着いたんだからな。
会場に着くまで泣いてたミカが二人をなだめる光景は少し面白かった。
それを見届けて、今度こそお茶会をサボろうとした時だった。
「待って!」
ミカに呼び止められて、それをオレは無視できなかった。
振りかえるとそこには二人に揉みくちゃにされてたミカがオレの方を見ていた。
「ねえ! 名前! 名前教えて! 私はミカ、聖園ミカ!」
その時の笑顔がとても美しかった。満開の花のような、太陽のような、明るい笑顔。
無邪気な笑顔に見惚れてしまって、言葉を返すのが遅れた。
「……ハオ、焔羽ハオ」
ここからオレたちの関係が始まったんだ。
ミカは二人にオレを紹介して、すぐに四人で遊ぶようになった。
ミカがお茶会を開きたいと言えば四人で集まり、オレが外で遊びたいと言えば全員で森へ行った。
外遊びはオレ以外にナギサも乗り気だった。今はお淑やかな令嬢って雰囲気だけど、昔は外で元気よく走り回るワンパク娘だった。
一方でミキは中遊び、取り分け本を読むことやおままごとが好きだったから、四人で絵本を読んだし、おままごともした。昔のミカは大人しかったから、こっちの方がよりテンションが上がってたな。
そんな時間が続く中で、ミカは大人しかったのが活発的に、ナギサは令嬢らしくお淑やかに、ミキは従者として礼儀正しく、それぞれが変わっていった。
でもオレたちの関係は何も変わらず、ずっと四人で一緒だった。
ミカが悪戯をすればナギサが叱って、それをミキがなだめればオレがそれを笑った。
ナギサが庶民文化で頭を傾げたらミカとオレが煽って、仲良くロールケーキをぶっこまれた。
中等部の時にオレとミカがテストで大失敗した時は四人で勉強会を開いては苦労もした。
ナギサとミカはオレにとって二人とも”お姫様”なんだ。
ミカはお花畑が似合うお姫様で、ナギサは夜会の景色が似合うお姫様さ。
じゃあミキはどうなのか? あいつは従者って感じだよ。ナギサを守る完璧な従者。
互いに姫様を守る者としての戦友でもある。
そんなお姫様たちとの人生はどこをとっても楽しいもので、例えオレが転生者だとしても、今の人生は紛れもない本物で、かけがえのないものなんだ。
例え命を賭けることになっても構わないほどに。
きっとハオは転生者って自覚がなくても、大切にしたいもののために厄介ごとに首を突っ込むと思います。
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