茶会の付き人~転生トリニティ生によるブルアカ生活、何かオレたちの知ってるのと色々違わなぁい?~ 作:新米ユーリ/神座/DMP
自分で加減が分かってる相手ならラインを超えないぐらいにキツいお仕置きをしてきそう。
ナギサやミカたちの過去捏造してるけどいいよね? 答えは聞いてない!
優しい奴ほど怒らせると怖い。
友達に優しい奴がいるなら、この言葉は覚えておいた方がいい。自分がそいつをいつ怒らせるか分からないからな。
それにそういう奴が怒ると何をするのかは、案外分からない。
いつもは優雅でお淑やかな令嬢でも、ブチぎれたらおもむろにロールケーキを勢いよく口に突っ込んでくるだとか、ヒールの踵で思いっきり小指を踏んできたりだとか。予想のつかないことをしてくる。
オレの場合はナギ──幼馴染の桐藤ナギサがそういうのだ。
「あ、あの……ナギサさん? 何でオレは寮の共同スペースでふんじばられた挙句、正座させられた上から鉄の重りを積み重ねられてるんだ?」
「あら、まだそのような軽口が叩けるならば、もっと重さを増やした方がいいかもしれませんね」
――ガァン!
そういってナギサは怖い笑顔でオレの膝の上に重りを放り投げた。既に乗ってる重りとぶつかってデカい音を立て、オレの膝を押し潰す。
「ああああァァァァァ!!!」
タンスに小指を勢いよくぶつけたなんて比較にならない程の激痛がオレに襲い掛かった。
今すぐにでも痛みに悶えて暴れたいが、しっかりと拘束されていて身動きが全く取れない。
中学校の学生寮、その共同スペースでオレは多くの視線に囲まれていた。同級生に後輩たちが苦笑いを浮かべてこっちを見てる。
なんで皆の視線を集めてるのかと言うと、今のオレが置かれてる状況だ。
いざ寮についたと思ったら、寮の皆に取っ捕まれて、手を後ろにして手錠をかけられたと思ったら、次はロープでグルグル巻きにされた。
そしたら共同スペースで仁王立ちしてたナギサがオレを迎えてくれた。
『ハオさん、正座を』
『いや、あの……ナギ?』
『正座』
『あの──』
『せ・い・ざ!』
『あはいッ!』
怖えよ、いやマジで怖えよ。
だって顔が黒いんだよ、ニッコリと笑ってるんだぜ? 微笑んでるんだぜ? なのにめっちゃくちゃヤバい圧があるの!
それで準備されてたのは三角木材で出来た敷物。そこに正座させられた。
そう今のオレがされてるのはちゃんとしたやり方からは離れてるけど
見事な拷問だよ、拷問。
いやなんで!? なんでオレは幼馴染に拷問をされてるの!?
「な、なぁナギ。確かに説教はされても仕方ないって思ってるけどよ、なんで拷問までセットなんだよ!?」
確かに門限破って外にいたし、スケバンと追いかけっこしてたけど、だからって拷問まではやりすぎじゃないか!?
「まだご自身のしたことの重大さが分かっていないようですね……!」
「先輩諦めよ? 完全に先輩が悪いもん」
『うんうん』
「ちょ、オレの味方ゼロ!?」
オレとナギサを見てる皆はこれまた呼吸よく頷く。呆れたという言わんばかりに溜息を吐く同級生までいた。
ナギサはと言えば、黒い圧を放ちながら青筋を浮かべてる。
「当然です! 寮の門限を破ったと思ったらスケバンと喧嘩をする! それどころか逃げても振り切れずにスケバンの群れを連れてくる! 正義実現委員会とヴァルキューレの皆さんに迷惑をかける! 後輩たちの規範にならなければならない三年生が、何をしてるのですか!」
「うっ……」
思いっきり怒鳴りつけるナギサに、オレは言葉を詰まらせる。
まあ、うん。言われてしまうと確かに、かなりやってるなオレ……。
廃墟でのスケバン共との追いかけっこ、アレはすぐには決着がつかなかった。
いや、振りほどけると思ったんだよ。そしたらアイツらピラニアみてぇにしつこいったらないのよ。
オレはさっさと帰りたかったし、弾が減るのも嫌だったからそのまま逃げに徹したの。
弾代だってバカにならないからさ、塵も積もれば山になるんだよ。
でもその選択がよくなかった。そしたらアイツらトリニティ自治区まで追いかけてくんのよ。
まあ、こんなことになったら色々と出てくるってもんだ。
黒の制服なびかせたトリニティ正義の守護者──正義実現委員会。
皆の隣人、優しい皆のお巡りさん──ヴァルキューレ警察学校。
そんな正義の味方な皆さんのおかげで無事にスケバンたちは捕まったというわけで。
なんだかんだでオレは寮に帰って来たってわけ。
まあそれで色々な所を巻き込んだから、オレは今寮生の面前で拷問が合わさったお説教を受けてるわけで。
「ごめんなさい……」
流石に色々と限界だった。体力的にも、体裁とかも。
もう痛いのよ。ずっと重たいもの乗せられて、鋭いものに押しつぶされてるの。
拷問とか初めてなんだよ。色々とヤバいって。
「ねぇーナギちゃん。そのぐらいにしたらー?」
オレが抜け殻寸前になっていたその時、共同スペースに置いてあるソファーから呆れ声が聞こえてきた。
「ミカぁ……!」
その声にオレは嬉しくなって、思わず勢いよくソファーの方を向いた。
声の主はオレの状態なんて見向きもせず、ソファーで寝ながらコスメ雑誌を眺めていたが。
ジャージ姿にまとめた桃色の髪、銀河のような美しいヘイロー。
そう声の主は、ナギサとオレの幼馴染の一人である聖園ミカ。
可愛らしいけど我が儘なお姫様だ。
「ミカさん! ハオさんに甘いですよ! 今回の件は偶然にもヴァルキューレや正義実現委員会の迅速な対応のお陰で何もありませんでしたが、次に同じことが起きたらどうするんですか!」
「別に次なんてないんじゃないかな? ハーちゃん強いんだし、あんなスケバン群れになっても勝てるでしょ」
「ハオさんの強さは今関係ありません! 別に疑ってませんし……今回は一人で対処できる人数を超えていました。いくらハオさんが強くとも、数の暴力が相手では──」
「だからさぁ、そこを間違えてるじゃんね。別にあんな数でもハーちゃんは倒して帰って来るよ。今日は単純に蹴散らしてくるより、急いで帰る方を優先した。遅くなればなるほどナギちゃんのお説教が長くなると思ったんじゃない? それが嫌だったんでしょ、ハーちゃん?」
「ちょ、そこでオレに振るの!?」
思わぬキラーパスに面食らった。
どこ吹く風のミカと年長者としての責任と共に怒っているナギサ。
二人の視線がオレに向く。しかも皆の視線もオレに向いてきた。
(やめろォォ! そんなジロジロ見るなぁ!)
大勢にガン見されて恥ずかしくなってきた。これじゃあ公開処刑だ。
一応学校じゃ、ちょいワルのイケメンで通ってるんだ。
ミカが言ってたこと認めたら、オレのキャラが総崩れする!
「それで? 実際のところどうだったの? ハーちゃん」
そんなオレの心情なんてお構いないでミカが聞いてくる。
「分かったよ! そうだよ! ナギサに怒られるが嫌だったから、帰るのを優先しました! あんな通話だったからもう説教が長いのは確定してただろ! それがもっと長くなるが嫌だったんだよ! たかがスケバンの群れだから振り切れると思ったんだよ!」
寮の共同スペースでヤケクソに叫ぶ。こうなったらヤケだ。
(ああ……さらば、ちょいワルイケメンキャラ。記憶が戻る前からしてたから、結構気に入ってたんだけどなぁ……)
思わずションボリしてしまう。
1年の頃から築いてきたのに三年になって、大勢の前で散ることになるなんて思わなかった。
今までイケメン枠でヴァレンタインチョコが貰えてたこともあって誇らしかったのに。
「…………ふぅ、もう」
そんなオレの姿を見てなのか、ナギサは息を吐くと米神を押さえた。
頭が痛いってポーズだ。
それでオレの方に近づくと、屈んでオレに視線を合わせてくれた。
「先ほど言っていたことは本当ですか?」
「今の状況でオレに嘘が言えると思うか? バレたらお前からの折檻が増えるんだぞ?」
「その言い方で嘘じゃないと分かりました…………もう」
「ふぃ~」
オレの答え方に呆れたのか、溜息を吐くナギサ。
なんとか事が終わりそうだと感じたオレは安堵で息が漏れた。
だが、
「でしたら」
次の瞬間、オレの右耳が触られた。
そして──
「なんで事が大きくなる確率が大きな方を選んだのよォォ!」
「ウぎゃぁぁぁぁぁァァァァァァ!?!!!!」
オレの右耳がナギサの力が思いっきり篭った引っ張りに晒された。
「あああぁぁ! 千切れる!! 千切れる! やめろォォォォ!」
ナギサの細腕に込められる力にオレは悲鳴を上げるしかなかった
そうして寮の夜は更けていく。
しばらくしてナギサの説教から解放されたオレは長時間の説教もあって立てなかった。
しかも耳が凄く痛い。それを見かねてか後輩の子が氷嚢を持ってきてくれたのが凄く嬉しかったね。
後輩たちは騒ぎが終われば、それぞれの部屋へ帰っていった。
ミカとナギサはというえば、オレが動けるまでなんだかんだ共同スペースに一緒にいてくれた。
なんだかんだ幼馴染は優しいね。
読んでもらえると嬉しいです!
ちょっと感想とか怖さもあるけど……