茶会の付き人~転生トリニティ生によるブルアカ生活、何かオレたちの知ってるのと色々違わなぁい?~ 作:新米ユーリ/神座/DMP
マジで死ぬかと思った……
「きゃはははははははは!!!」
「ちぃッ!」
舞い上がる土煙、連続して轟く爆撃の多重奏。
ショットガンから放たれる散弾の群れとサブマシンガンによる弾の雨、そしてダメ押しの手榴弾による爆風。
ボク──早見ミキの視界の先で正義実現委員会の訓練場は、あまりにも酷い様相となっていた。
おびただしい数の空薬莢と穴ぼこ塗れとなった地面は、注意を配らなければあっという間に足を掬いかねない。
対峙する二つの人影──この惨状の原因である二人の少女はそんな惨状など知らぬ、見えぬ、聞こえぬと言わんばかりに激しい踊りに興じていた。
『黒』と『茶』の衝突。ぶつかれば離れ、爆ぜるという華やかさも何もない硝煙臭い踊り。
「キえええエェェェェ!!」
『黒』の制服──正義実現委員会の制服を纏った少女は剣先ツルギ。
入部早々に一年のエースと称されるほどの戦果を挙げた期待の新星。その前進はコンクリート程度では決して止めることは敵わない。
その両手に握られた二丁のショットガンによる面制圧と組み合わされば、恐ろしさは推して知るべしだろう。
「いい加減しつこいな!」
対するのは『茶』の外装──ポンチョを纏い改造制服に身を包む女子──焔羽ハオ。
トリニティにいながら、暴走族じみた不良狩りをするという貞淑さとはかけ離れた自由人。
制服は彼女の手によってパンツスタイルに大改造され、もはやその容姿も相まって凛々しい姿へと変わっており、もはや原型など欠片も残っていない。
彼女の手に握られているのはサブマシンガン。その外装の内側にはグレネードがいくつも姿を覗かせている。
その戦いは激しさを保ったまま、泥沼と化していた。
ショットガンが火を噴こうとすれば、ハオは接近し面制圧を潰しに行く。そうなればツルギはすぐさま銃を鈍器として、ハオへ振りかざす。
対するハオもそれを押さえれば、超至近距離でサブマシンガンが火を噴いた。
「キエェァ!」
「グぁッ!」
だがこれで厄介になるのはツルギが生来持つ超耐久。普通ならば一発K.Oになるはずの火力であっても、彼女は伸びない。
それどころか距離を詰めては肘打ちで姿勢を崩させ、殴り飛ばして距離を開けさせた。
すぐさま火を噴く二丁のショットガン。面制圧の暴力がハオの身体を蹂躙する。
だが、
「!?」
次の瞬間、ツルギの身体が下からの爆発に襲われる。
それはハオが距離を開けさせられたのと同時に落したグレネード。
距離を開けさせてくることすら織り込み済みな爆撃がその身体を貫いた。
(恐ろしいな、本当に)
その光景に恐怖を感じずにはいられない。
もはや戦闘などできるはずがないほどに両者はボロボロになりながら、それでも身体は止まる様子はない。
いい加減倒れろとお互い内心で思いながら、両者の顔は笑っていた。
銃撃戦が常であるキヴォトスで、あまりにも異色極まる超近接戦。
もはや対人戦にカテゴライズできない破壊の嵐。これは戦術兵器のぶつかり合いだ。
「なあ、ツルギ。そのタフさって特別な訓練でもしてるかい? よければ内容を教えて欲しいんだけど」
「悪いが自前だ。それにタフさで言えばお前も大概だぞ」
「そりゃどうも、でもマシンガンの近接射撃喰らってもピンピンしてるのに言われても皮肉にしかならないな」
「殴り飛ばされながらグレネードを投げつけた奴がよく言う」
酷過ぎる状態を生み出した元凶二人は、なんてこともなさげに笑っていた。
両者ともに弾を込めながら笑っていた。
ハオはいつもと変わらず静かに透かして気取っている。
一方のツルギの笑みは、言っては悪いがかなり珍しかった。普段の彼女がする表情はかなり独特だ。だが、今の彼女の笑みはかなり落ち着いたものだったのだから、驚くのも無理はないと思う。
その次の瞬間、両者が動いた。
開かれた距離をハオが詰めに行き、ツルギが迎撃に入る。
放たれた散弾が直進するハオを襲う。既にボロボロになっているハオの詰みだ。
「いい加減、終わらせようか」
そう、詰みのはずだった。
ハオの身体が傾いた。それもスライディングで。
「冗談だろ?」
その体勢を見て、ボクはハオが何をしようとしているのか察してしまった。
ハオの身体は散弾の下を通り抜けて、ツルギの股下にまで滑り込んだ。
そして、
「一緒にベッドでだべろうぜ!」
二人の身体は爆発に巻き込まれた。
『はぁ!?』
「あら……」
「あっちゃー」
爆発によって砂塵が舞う。砂煙はそう簡単には晴れないだろう。二人がどうなったのか、ボクたちは生殺しを食らう羽目になってしまった。
そんな光景に正実の皆はあんぐり顔だ。まさか一対一の戦いで自爆戦法を取るなんて思わないだろうしね。そりゃそうなるよ。
ナギサお嬢様は少しばかり驚き顔で、ミカに関してはボクと同じようにハオが何をしようとしたのか察したみたいで、呆れて顔を押さえてた。
さてと、こうなったら仕事ができてしまった。
「お嬢様、これ救護騎士団案件でしょか?」
「そうですね、病床は二つほど準備していただきましょう」
「かしこまりました。すぐに連絡いたします」
後始末をしないとね。
砂煙が晴れるのを待ちながら、ボクはスマホを取り出した。
連絡するのは救護騎士団。トリニティの生命線だ。
さて、誰が来るかな。