茶会の付き人~転生トリニティ生によるブルアカ生活、何かオレたちの知ってるのと色々違わなぁい?~   作:新米ユーリ/神座/DMP

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いざ辛抱たまらんっ状態になると突拍子のないことをする。
目の前でヤバいことになると冷静な行動が取れなくなる。

何が言いたいかというと。
いや、うん。ウイ、ごめんね……。マジでごめん……。


病室で何があったのか、どうぞ。


文学少女は怒ると怖い

「暇だ……」

 

 トリニティ内のとある病院、その大部屋の一室。

 そこで焔羽ハオは退屈を持て余していた。

 左手と右足はギプスによって固められてしまい、身動きが大幅に制限されてしまっている。

 

「スマホはお釈迦、最初に持ち込んだ本はすぐに読み切ったし、おまけに大部屋なのに一人っきり、流石に暇だ」

 

 暇を潰そうにも使っていたスマホは破損してしまって使うことはできず、ナギサに頼んで持ち込ませてもらった本はあっという間に読み終えてしまった。

 1度読み楽しんだ作品をすぐさまリピートする趣味などハオは持ってはいない。

 しかも大部屋には今、ハオだけが取り残されていた。同室の病人たちは各々部屋を出ており、話し相手すらいないのだ。

 

(それにしても、まさか決闘騒動になるなんてなぁ)

 

 ベッドに倒れ込み、仰向けに寝て考えるのは自分が入院することになった原因である剣先ツルギとの決闘だった。

 初めはハオ自身困惑していたが、戦いが続くにつれてテンションは高揚し、ノリノリになっていた。

 結果はハオの自爆による引き分け。

 だが──

 

(引き分けって言っても、あれはツルギの勝ちだよな)

 

 自分は二週間の入院に対して、相手のツルギはすぐに元気となって今も業務をこなしているのだろう。

 これでは負けてない、など口が裂けても言えたものではない。

 

(流石は将来トリニティが誇る『歩く戦略兵器』になる乙女だ。あのタフネスはチート級だろ)

 

 思わず苦笑が漏れた。

 

(電車に吹っ飛ばされてもピンピンしてたんだ、集中爆撃を受けても復帰は早いよな……)

 

 自身の中にある記憶──転生者として持っている記憶の中にもツルギの驚異的な超耐久は色濃く残っている。

 そんな先天的に持ち合わせた才能にこれから戦闘経験を積み重ねていくのだから、戦略兵器扱いも致し方ない。

 だというのに今でも出鱈目すぎるのを見せられたら笑うしかないだろう。

 

(でも──)

 

 しかし、楽しかったと思う一方でハオは決闘騒動に少し落胆していた。

 

(当事者と戦っても、メインストーリーの活躍は思い出せなかったか)

 

 その理由は自身の中にある転生者としての記憶、その欠落への回復に光明が差さなかった故。

 自身の中にある記憶、そこには多くの生徒の個人情報がある。

 だが、その生徒達がどのように物語を駆け抜けていったかの記憶がどうしても欠けていたのだ。

 

(今のオレにとって一番重要なのは、トリニティが舞台になる”エデン条約編”の記憶だ。これが取り戻せれば、ミカやナギサに何かあっても守れるように立ち回れる)

 

 知っているということは強い武器になる。

 大切な親友たちをこれから起きうる事件から守るためにも、どうにかして記憶を取り戻さなければならない。

 

(でも、どうやったら記憶が戻るのか皆目見当がつかないんだよなぁ)

 

 トリニティ内でキーパーソンになりうる人物に接触しても記憶は戻らず、ツルギと戦っても記憶は呼び起されなかった。

 ハオ自身が思いつく手段は全て試しつくしたのだ。これで戻らないのでは万事休すである。

 そんな時だった。

 

『失礼します』

「んぁ?」

 

 ノックが響き、病室の引戸が開く。

 ハオは沈んでいた思考を浮かび上がらせると、いくつかの本とノートを抱えた少女がこちらに向かってきていた。

 明らかに外へ出ていない雰囲気と伸びた黒髪の少女──古関ウイである。

 

「……ウイじゃん。やっほ。なんでここにいるの?」

 

 予想外の来客にハオは思わず呆けながら頭を傾げた。

 すると、

 

「まさか覚えていないとは……!」

 

 それの何かが気に障ったのか、ウイは声音に怒りを滲ませ、持っていたノートをハオの顔面に叩き付けた。

 

「ぐえッ! いってっ!」

 

 ノートはパチンといい激突音を上げると、ハオの膝へと落っこちた。

 

「ん? これって古文の翻訳? あ!」

 

 落下のよって開かれたページを見てみると、そこには古文の授業で出た翻訳の課題の内容が記されていた。

 それを見てハオはあることを思いだした。

 

「そうだ……そうだった。そう言えば、お前に古文の課題を教えてもらうって約束、昨日の予定だったな」

 

 どうにも苦手な古文の授業。その翻訳課題の手伝いをハオはウイに頼んでいた。

 だが勃発した決闘騒動とその負傷によって、ハオは見事に入院し、約束の日にはベッドの上に。

 しかも戦いの高揚による満足感で見事に約束はハオの頭からすっぽり落ちていた。

 約束を破られ、一報も入れないのは怒りを抱かれても仕方ないことだ。

 

「悪いウイ、完全に忘れてた。一報も入れずに──」

「そっちの事は別にどうでもいいです」

「って、えっ?」

 

 自分のやらかしに申し訳なく思った矢先、ハオは予想外の返答に面食らった。

 一方のウイは怒りの雰囲気を隠さない。それどころか放つ雰囲気がその背後に阿修羅を幻視させた。

 

「そんなことはどうでもいいです。いえ、いきなりやって来た挙句宿題手伝えとか言っておいて当日ぶっちとか腹は立ちますが、それはそれとして!」

「いや、その、ウイさん?」

「それよりも許せないのは!」

「っ!?」

「一週間もの本の返却遅延とかふざけてるんですか! 私があなたに強く出れないと思ってるから正々堂々遅延しようとしてるんでしょう!」

「? え? 返却遅延? …………ん!?」

 

 急上昇する怒りのボルテージ。

 今のハオにとっては、目の前にいるウイの方が闘っていたツルギよりも恐ろしく感じた。

 気圧されながらも記憶の棚をひっくり返し、ウイの言っていたことを思いだす。

 

(ああ!? 忘れてたぁぁ! そうだった、小説借りてたの忘れてた!)

 

 それは今から二週間前、ハオが一冊の小説を図書館から借りていたことだった。

 トリニティの図書館は返却期間が一週間と定められており、管理は徹底されている。

 返却遅延が起きれば取り立て役(図書委員会)が趣き、本が乱雑な扱いを受けていれば、実力行使も辞さないのだ。

 校内の図書館で問題を起こせば、放り出されて蜂の巣に。公共図書館で粗相を起こせば、銃身を口の中に突っ込まれることもあるらしい──閑話休題。

 

(やっべ、あの本ってどこにあるっけ? 確かここには持ってきてもらってないよな……)

 

 ハオは読んでテーブルに積んだ本を横目に見る。

 そこにあるのは漫画や雑誌の数々。アクション漫画や恋愛漫画、ファッション雑誌やバイク雑誌。そこには一冊も小説の姿はなかった。

 

(…………部屋だ、寮の自室だ)

 

 そして思い出したのは、自室の机の上に本を置いた記憶。

 読み終わったのは今から四日前、決闘騒動の前日だ。なお、返却期限を忘れていたのはハオ自身の落ち度である。

 

「もういい加減限界です。本を返してもらいますし、今まで振り回したことへの落とし前も……!」

「待った待った! ちょっと待て! 本は寮の自室なんだ! すぐに取って来るから待ってくれ!」

(流石に今のウイはなんかヤバい! どうにか怒りのボルテージを下げてもらわないと本当にヤバい!)

 

 目の前にいる恐ろしき本の虫──否、王蟲の気迫にすっかりハオは飲まれていた。

 恐ろしさとは厄介なもので、それは普段取る冷静さを他人から奪い取り、突拍子もないことをさせる。

 ハオはベッドから出ると、窓を開けて身を乗り出そうとした。

 だが、

 

「させるかぁ!」

 

 いつの間にか距離を詰めたウイが、腰に抱き着いて身動きを止めに掛かる。

 

「おい離せって!」

「どうせあなたの事です! 私が病院に入れなくなる時間まで逃げるつもりでしょう!」

「んな分けねぇだろ! オレがそんなことするか!」

「人が愛しい本たち(子たち)に囲まれてる平穏を毎回ぶっ壊してくる嵐が言うか!」

「テメェ人を何だと思ってやがる!?」

 

 どうにかウイを引きはがそうと引っ張るが、相手の抵抗はしぶとく、そう簡単には離れそうにない。

 

「それに平穏がどうとか言ったがな! 四六時中古書館に閉じこもってるのがわりぃんだろうが!」

「はぁ? 暴れるしか能のない蛮族が言いますか!」

「誰が蛮族だ! 好きで騒動なんぞ起こすか! っていい加減離せ!」

 

 双方共にエスカレートする罵詈雑言と篭る力。

 この時点でハオにとって誤算だったのは、ウイの力強さだった。

 分厚く重量のある古書、その膨大な数を取り扱う図書委員はその腕っぷしを普段の業務が鍛えているのだ。

 

「ちょっ、やめろ! 脱げるッ!?」

「だったら抵抗するのをやめてください!」

「だから引っ張るな!」

 

 どうにか窓へしがみつき、抵抗を続けるハオの病衣は確実にはだけつつあった。

 そんな時、

 

 ──ツルっ

 

「え?」

 

 緊迫状態が災いしたのか、手汗によって手が滑り、ハオはウイ目掛けて飛んで行った。

 

「あっ! ちょっ!」

 

 ──ギシッ! ガシャン! 

 

 当然ながら、急なことにウイは避けることが出来ず、二人の身体は激突し諸共ベッドに倒れ込んだ。

 

「いってぇ……おい、ウイ大丈夫か?」

「いったぁ……」

 

 ウイの上にのしかかる形になったハオは、腕で起き上がってウイの状態を確認する。

 対するウイも痛みに悶えて顔を押さえていた。

「ちょ、何事!?」

 

 その次の瞬間、病室の引戸が勢いよく開いた。

 現れたのは巨大で胴長な猫のぬいぐるみを抱えた女の子だった。

 

「み、ミカ……」

 

 ピンクの髪をなびかせた、可愛らしい女の子。

 ハオの幼馴染である聖園ミカであった。

 

(終わった……どう言い訳すりゃいいんだ……)

 

 その姿にハオが内心諦めていたのは、自業自得である。

 




後輩のシミコがあそこまで力強いなら、きっとウイも力強いのではと考えた次第です。


我ながら筆が遅い……。
みんな―! オラに発想力を分けてくれぇ!
高評価や登録、感想などよろしくお願いします!
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